なんか犬みたいな後輩に懐かれた話   作:アゲキツネ

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はじめまして。
試験前&就活控えてる状況なのでしばらくは更新少なめで行きます。


俺の話をするとしよう

音ノ木坂中学。

音ノ木坂学院へエスカレーターで行けるその学校は歴史と風格があるいい学校だと、現二年生の俺はそう思っている。

元々、学院のほうは女子校だったんだが来年の三年生、つまり俺達の代から受け入れがされることになった。その理由は入学希望者数の減少で、それを少しでも増やすために男子生徒の受け入れも初めたそうだ。

女子校で学びたいという人がどっかに流れ出るという懸念はあるものの、これが音ノ木坂の回復へ繋がることを祈るばかりだ。

「それにしてもあっついな……。」

 

季節は秋の始まり頃、そろそろ気温も下がり始めてもいいと思うのだがその気配は微塵も無かった。

気温自体が高いのもあるが、一番の原因はこの蒸し返したような体育館だろう。俺はバスケ部に所属しているのだが、先の夏の大会で肘を故障してしまったため見学中だ。と言うか、もう試合には出られないと医者に宣告されてしまった。

自分で言うのもなんだが、俺はそれなりにバスケが上手いという自信がある。レギュラーとして大会でも頑張っていたんだがある試合で肘をやってしまいそのまま部は負けてしまった。

怪我の原因は身体が出来上がっていないのに無茶なプレイを続けたからだ。利き手の左腕をやってしまい、出来るのは軽い運動だけだ。

「レイアップ!フリーで外すな!」

 

故障が発覚し、医者の宣告を受けてからは辞めようと考えていた。しかし、監督と何人かの部員に引き留められて残っている。

残ったからには出来ることがないか考えて、ここ最近は一年生の練習を見るようにしていた。が、蟠りはずっと残ったままだ。

部の方は、基礎がまだ固まりきっていないためかフリーの状態でも外すことがあるレベルだ。これでは試合に勝てない。

 

「はい!すみません!」

「基礎を固めれば安定感が生まれる。試合ではその安定感が大事だぞ。」

「ありがとうございます!」

 

と、こんな感じでアドバイスしている。また、フォームとかのお手本を見せるぐらいなら出来るから頼まれたら見せている。

今の俺に出来ることはこれぐらいしかない。

 

「よし、今日はこのくらいだな。各自片付けをしてから解散だ。」

『はい!』

 

監督の号令で部員達が片付けを始める。

 

「おい。南雲、これよろしく。」

「あと、モップがけもなー。どうせそれしか出来ねえだろ?」

 

故障してから、ボールを雑に投げてくる先輩や自分の仕事を押し付けてくる先輩、果てには少し力を示し始めてる一年生も俺に片付けを押し付けてくるようになった。

試合で役に立てない俺はこれくらいしか出来ないから引き受けていた。が、少し辛いと思うのはしょうがないよな。

そして、片付けが終わった後は監督に頼んで右手での特訓をしていた。バスケは両腕を使うし、体の負荷も大きいから結局試合には出られないと思うが、今の俺にはまだ踏ん切りが付いていないんだと自覚している。

 

「……。」

 

ボールがゴールを抜けて床へと落ちるのを見届ける。フリースローならそこそこ入るようになってきた。ハンドリングも右手でそれなりに出来るようになったが、どうやっても相手を抜ける気はしない。

どこぞの赤い人みたいに相手の動きを先読みできればまだ出来るだろうが、まぁ俺にはそんなこと不可能だ。

「はぁ……。」

 

どうしたものか。

部に残っても試合は出られないどころか、まともにバスケも出来ないのだ。引き留められて残りはしたものの胸のつっかえはずっと残っている。

 

バスケは好きだ。

 

だからこそ諦められず、無駄とわかっていても居残りなんてしている。故障のリハビリも先は長いものの完治すると言われているからバスケは直にできるようになるだろう。

 

しかし、この部が好きかと言われればどこが違う。

 

試合に出ている時からそうだったが、先輩を差し置いていた俺は上からは疎まれていたし、同期からは妬まれていたと感じている。一年生は尊敬してくれていたが、故障をしてからは見下した目をする奴らが増えてきた。

片付けを俺に押し付けるようになったのがいい例だ。

 

少しの居残りを終えて部室へと向かうが、聞こえてきたのはまだたむろしていた1年生達の会話。

 

「南雲、マジうざくね?怪我してんなら黙って見てろって感じだよな?」

「ほんとほんと、今なら俺のが上手いぜ?」

「そんなん殆どの奴がそうだろ!」

 

そして嘲笑。

こんな会話を聞くのも初めてじゃない。

そして、そのまま気にせず部室に入れば気まずい沈黙からそそくさと出ていく後輩達。

あんな奴らに教える意味があるのだろうか。

一部の後輩は未だに俺を慕ってくれているし、同期や先輩も皆が皆俺を疎ましく思っている訳ではないのも理解している。

しかし、故障から2週間弱、この部に意味を見い出せなくなってきているのは確かだ。

 

「やはり、辞めるべきか?」

 

その問はもう何回目だろうか。

何かきっかけがあればすぐどちらにでも転がりそうなんだが、そんなものに期待するのも良くないか。

色々考えていたら、何か甘い物を食べたくなった。

そう言えばこの近くに和菓子屋があった気がする。

通学路から少し外れていたため行ったことはないが、丁度いい機会かもしれない。

 

「ごめんください。」

「いらっしゃいませ!」

 

扉を開けて店の中へ入ると、自分と同い年くらいの子が働いていた。バイトかなにかだろうか?

 

「何か、オススメはありますか?」

「あ、それならこの穂むまんがオススメですよ!」

「じゃあ、それを三つ。これお代です。」

「ありがとうございます!」

 

少女は慣れた手つきでお饅頭を包んで俺に差し出してくれた。

同年代の子がこうして働いているのを見て、やはり自分もこのままではだめだと思い至った。

 

「あ、あの……。南雲先輩、ですよね?」

「へ?まぁ、そうだが。どこかであったか?」

「いえ!穂乃果が一方的に知っていただけです!私も音ノ木坂中学似通っているんです。一年生です!」

「あー、後輩ちゃんって事ね。」

「はい!あ、私は高坂穂乃果って言います!」

 

どうやら店番の子は俺の後輩にあたるものだったようだ。

それなら俺のことを知っていてもおかしくはない。

高坂から話を聞けば、ここは両親が経営している和菓子屋で自分はたまにお手伝いしているんだとか。意外と人気があるのだと自慢げに語っていた。

 

「そう言えば、先輩の怪我は……?」

「んぁ?……まぁ、もうバスケは出来ないかな。」

「す、すみません……。私もその時の試合応援に行ってたので気になってて。」

「心配してくれたんだろ?なら、謝らなくていい。むしろ俺が感謝しないとな。」

 

久々にこういう態度を取られたために少し驚いてしまったが、何とかそう言ってフォローを入れる。言ったこと自体は本当に心から思っている事だ。

 

「あまり気にすんな。」

「は、はい。でも、もうバスケ出来ないんですね?」

「それは、まぁ。……実はな、バスケ部も辞めようと思ってる。」

「え!?……でもそっか。しょうがないですよね。」

「けど俺からバスケを取ったら何も残らないんだよなぁ、っと後輩にする話じゃねえな。」

「いえ!穂乃果で良ければいつでも聞きますよ?」

「その言葉だけ受け取っておく。じゃ、手伝いがんばれよ。」

「あ!ありがとうございました!また来てくださいね!」

 

店を出ていこうとする俺に笑顔でそう言う高坂に、心の中でもう一度だけ感謝をして外へと出た。

誰かにこんな話をしたのは初めてで、話してみれば自分がどうしたいかなんてすぐに分かった。

何故、後輩の、しかも初対面の女の子にこの話をしたのかは分からないがそのお陰で随分と気が楽になった。

これから何をするかは決まってないが、不思議と退部に対して前向きになれた気がする。取り敢えずは、考える時間を作ろう。

 

 




穂「南雲先輩かぁ……。まさかうちに来るなんて思わなかったよ。怪我、大丈夫かなぁ?」
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