なんか犬みたいな後輩に懐かれた話   作:アゲキツネ

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皆さんお久しぶりです。
めっちゃ久しぶりの更新です。
体育祭の後編ですね。忘れてる方も多いと思うので一つ前から見てもらった方が良いかもです。


別にロリコンじゃないです

凛と花陽(かよ)と昼飯を食って、ようやく自分の席に戻ってくることが出来た。

花陽(かよ)の呼び方は、『凛ちゃんだけじゃなくて自分も名前で呼んでください……。』っていう花陽のお願いがあったからだ。ついさっきまで俺にビビってた彼女がめちゃくちゃ頑張って言ったのが分かったから、どうせならとあだ名で呼ぶことにした。

小学生とはいえ女子を名前呼びするのは抵抗があると考えていたが、意外とすんなり呼ぶことが出来た。年下だからということにしとこう。

 

穂乃果?海未?ことり?

知らない名前だな。

 

さて、今まで俺があの二人とずっといたのはみんな知ってるらしく、視線がとても痛い。

それを見かねた英二が事情を聞いてきてくれたからみんなに聞こえるように掻い摘んで説明した。全員が納得した訳では無いがとにかくお咎めは無しのようだ。

 

「貴方って本当にロリコンだったの?」

「違う。断じて。」

 

午後の部が始まった。

今の得点は白:250, 赤:221とだいぶ負けて越している。

俺はもうどうにも出来ないから後は他の奴らに任せるしかないんだけどな。

 

「つーわけで、暇だ。」

「応援するべきにゃ。」

「あ、はは……。」

 

ほんとに暇で結局凛と花陽のところに戻ってきてしまった。

凛は冷たい視線と共にご最もな言葉を寄越してきて、花陽は苦笑いしている。

自分の競技の合間ならまだしも、応援するだけとかつまんないんだよな。

 

「たっくんってもしかしてぼっちかにゃ?」

「いや、多くはないが友達はいる。ただ今日に限っては混ざりづらい。」

「ど、どうしてですか?」

「んー、そもそも俺があんまり競技に出てないところから話さないといけないんだが……、」

 

花陽は俺がここに来た理由を知りたいらしく質問してきた。

それに応える前に左腕の故障のことを伝えて、今こんなに暇になっている理由を教えてやった。

 

「応援しながら友達と話せばいいにゃー。」

「そうなんだけどな?俺も体育祭ははっちゃけたい人種なわけで。競技を楽しんでる奴らと一緒にいるとちょっと惨めに思えてな。」

「それでここまで逃げてきたの?」

「言い方を変えてほしいが。まぁ、そんなところだ。」

「それなら、仕方ないのかな……?」

 

俺の話を聞いてズバッと核心をついてくる凛と、俺の話を聞いてちょっと哀れみの視線を向けてくる花陽。

こっちに来たらまた別の意味で惨めな思いをするハメになったな。

 

「ところで、お前らは何でここに来たんだ?どっちかに兄姉がいるのか?」

「ううん?たっくんに会いに来たんだよ。」

「はぁ?」

 

二人で見に来たのは普通に身内の応援かと思ったが全然違う理由だった。

そもそも何故俺がこの学校か疑問だったが、あの時見た制服がここのだと言うことはわかっていたらしい。それで体育祭なら自分たちでも入れるし、高確率で俺も出場してるだろうとやって来たようだ。理由はもちろんこの間のお礼を言うため。

それだけのために小学生二人が身内もいない中学校に来るなんて随分根性と行動力があるな。

 

「それに凛とかよちんは来年からここに通う予定にゃ!」

「……そうか。」

 

二人が来年入学するということは俺の後輩になるということだ。絶対つきまとわれそうだ。想像しただけでうんざりしてくる。

高坂たちもそうだが、毎日後輩の相手をすると言うのは中々疲れるのだ。

今日は1日限りの関係だと思ったから話していただけだし。

 

「あー!ちょっと嫌そうな顔した!」

「してない。わーい、後輩ウレシイナー。」

「ぼ、棒読みだね……。」

 

いや、冷静に考えて流石に1年生女子がわざわざ3年生男子に絡みに来ることもないか。

そう思うと二人の入学は普通におめでたい事だと言うことができた。

 

「たっくんの部活は……あ、そっか……。」

「別に気を遣わなくてもいいぞ。お前らはなんか入りたいところあるのか?」

「凛は陸上部!」

「私は特には……。」

 

凛は想像しやすいな。一方で花陽は特に入りたい部活とかは無いらしい。もし、入るとしたらイメージ的に文化部だな。家庭科部とか似合いそうだ。

 

せっかく音中に入るということで二人の質問に俺が答える形の会話が続いた。俺の恋愛事情とか全くどうでもいい話題もあったが短時間でそれなりに仲良くなれた気もする。

特に花陽は数時間前とは違いだんだんくだけた話し方ができるようになって来ていた。凛は最初からタメ語の方が多かったが今では花陽もそんな感じだ。

おどおどしている花陽だが、昼飯の時の白米へのこだわりとアイドルの話になるとガッ!と食いついてきて熱弁し始めていた。この2つが大好きらしい。

 

「なんだか、たっくんとは話しやすいな。」

 

と言ってくれたのは花陽だ。

思っていた通りクラスの男子とかとは全く話せないらしい花陽だが、俺相手だとそこまで緊張せずに話せる。俺も女子相手で話しにくいとかは全く感じなかった。

こういうのを波長が合うとか言うのだろう。

 

二人のおかげで暇潰しをすることができた。

そう考えてようやく意識が体育祭まで戻ってきた。ふと、得点板を見ると点差が1桁にまで迫っていた。

 

「んじや、そろそろ戻るわ。付き合ってくれてありがとうな。」

「凛もたっくんと話せて楽しかったにゃー!来年からよろしくお願いします!」

「ほどほどにな。」

「私もたっくんとお友達に慣れて嬉しいです。よろしくお願いします。」

「おう。」

 

残りの競技が少なくなって来たので自陣に戻ることにした。二人にお礼を言って戻るとちょうど綱引きをやっているところだった。

琥珀さんがらめちゃくちゃ面白い顔で綱を引っ張っていたから写メに残しておいた。後でこれ使ってからかおう。

他に知り合いがいないかと探してみたら英二がいた。心なしかここで応援してる女子達は自軍ではなく英二個人を応援している人が多い気がする。

あいつのモテ具合は昔から変わらないらしい。

 

綱引きは我が軍の勝利となり、ついに同点まで追いついた。

残すは玉入れ、3年の学年競技である学年リレー、最後に選抜リレーだ。

果たして、結果はどうなるのだろう?

自分が参加してないとテンションが微妙なところまでしか上がらないな。

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

 

「南雲先輩!私たちの勝ちです!!」

「そうだな。」

 

園田の嬉しそうな宣言と共に近寄ってくる白組の後輩3人。

体育祭が終わったばかりなのに元気だな。その元気は俺相手ではなく片付け作業にぶつけてほしいものだ。

 

「朝のこと覚えてますよね?」

「ふっふっふっ!さぁ、穂乃果たちを名前で呼ぶ時ですよ!!」

「はいはい。今回は俺の負けだな。穂乃果、海未、ことり。」

「うんうん!やっと名前で呼んでもらえるようになったね!」

「「うん(ええ)!」」

「じゃ、俺はこれで。」

「あ!待ってください!」

 

勝ったのがよっぽど嬉しいようだ。きゃあきゃあ騒ぐ3人を横目で見つつ自分の椅子を持って教室に戻ろうとしたら南に呼び止められた。

 

「あの、これは今日がんばった先輩への景品です!受け取ってください!」

「んー?」

 

景品と言われた紐のようなものを南から受け取る。

オレンジ、青、白の3色が綺麗に三つ編みにされているようだ。

 

「これは……ミサンガか?」

「そうだよ!作ったのはことりちゃんだけど、穂乃果たちで考えたんです!」

「はい。普通のミサンガと違って願い事はもう込められてますが……。」

「ふーん?その願い事って何?」

 

3色はそれぞれのイメージカラーのようだ。

3人の想い、願いが既に込められたらしいそのミサンガは女子中学生が作ったものとは思えないほど綺麗に仕上がっていた。長さも俺の足首に巻けばピッタリに作られてるっぽいな。

ただ、その願い事というのが非常に気になる。ものによってはせっかく作ってくれたものでも付けないぞ?

俺の問いは既に予測済みだったのか、3人は声を揃えて答えた。

 

 

 

あなたの怪我が治って、来年の大会に出られますように。

 

「っ!」

 

もっとふざけた願いかと思っていたら、もっともっと真剣に作られていた。答える時のそれぞれの微笑みに不覚にもときめきそうになってしまった。

ここまでされて断るはずもなく、ミサンガはその場で右足首に付けさせてもらった。

少し気恥ずかしいな。

 

「その、ありがとうな。ことりも二人も。」

「どういたしまして♪」

「ずるい!ことりちゃんだけ名前呼んでもらってるー!」

「ず、ずるくないよぉ?」

「だって、作ったのはことりなんだろ?」

「そうですが……少しもやっとします……。」

「はいはい。穂乃果も海未もありがとうな。」

「「はいっ!」」

 

それから少し話をしてそれぞれ教室に戻ることになった。俺らの他にもわいわい騒いでいるやつはいたから遅れている訳では無いだろう。

 

「太一、お疲れ様。」

 

教室に戻ってすぐに英二が労いの言葉をかけられていた。なんかクラスの奴らに囲まれていたがわざわざ抜けてきてくれたようだ。黒板には【本日のMVP えいじくん!!】と大きく書かれていた。

 

「ほとんど何もしてないけどな。英二の方こそお疲れだろ。」

「それはそうかも。……太一、負けたのに嬉しそうだね?」

「そうか?」

「うん。いい事あった?」

「……まぁな。」

「そっか。」

 

何もかも知っていると言わんばかりに優しい笑みを向けてくる英二。俺はいいから、そういうのは女子に向けてやってくれ。

しかし、その笑みはだんだんと哀れみの色を含むようになってきた。

 

「あの女の子達と出会えたのがそんなに嬉しいんだね。……親友の性癖を否定しないけど、色々頑張れ。」

「ちっげーよ!!何でそうなる!?」

 

訳分からんこと言い出した英二に全力で否定のツッコミを入れた。それに反応したのかゾロゾロと男子生徒が寄ってきた。

 

「そりゃ、借り物競走であんな事されるとな?」

「なー?高坂さんたちに靡かないと思ったらまさかロリコンとはな。」

「僕、午後の部で応援そっちのけであの子達と楽しそうにだべってる南雲見かけちゃったよ?」

「俺も!」

「おいおい、マジでガチじゃねえか!!」

「だあああぁ!!うるせえ違うっつってんだろ!?」

 

いつの間にかクラスの間で俺がロリコンだということが定着してしまっていた。男子はいい獲物だと言わんばかりにからかってくるし、女子は割りと本気で引いている気がする。

おい、委員長、目を逸らさないでくれ。

ロリじゃなくてごめんとかいいから。俺は至ってノーマルだから。

こんなことになるなら凛と花陽のところに戻るんじゃなかったな。

黒板に【衝撃の事実!南雲くんはロリコン!?】とか書き始めやがった。

 

「そんな……北原くんが本命じゃなかったというの……!?」

「それは無い。断じて。」

 

一部の女子が黒板を見て絶望に染まった表情をしていた。ブツブツ呟いている音を拾うと鳥肌モノの呪文が唱えられていたから真顔で否定した。

そっちの気は欠片もないから例え冗談でもやめてほしい。

そろそろ誰か場を収めてくれないかな、とか他人任せなことを考えていたら英二がまた話しかけてきた。

 

「そうだ。太一は打ち上げ来る?」

「行く。」

 

英二の提案には即答して打ち上げに参加した。

中学生の打ち上げなんてサイゼで駄べるだけのものだったが、それなりに楽しかったと思う。

しかし、途中からロリコンだの紳士(笑)みたいに呼ばれ始めいじりの標的にされてしまった。

次の登校日には皆飽きてくれることを願うばかりである。

 

 




ここ数ヶ月(この先も)忙しいですが頑張って書いていきたいと思います。
そんな感じですが読んで貰えるととても嬉しいです。

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