The World of us   作:君下俊樹

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主にWITCHER3とCODのせい。別にやってたとかじゃなくて(やってたけど)、会話のトゲトゲしさとか。一回半分くらい消えたからそのせいでスレた説もある。

会話の省略のしすぎで読みにくかったので追記もろもろしました。


イントルードセカイ

 ようやく屋上の噂も掠れてきた頃だ。その間、奇妙なことに俺たちの間に数回の会話があった。しかしそれもやあ、おう。だとかごきげんだな、そう見えるかい? なんていう簡潔で質素なものだ。けして俺らが同じ方向に向かうことはなかった。

 

「…………」

 

 もすもす、と昼食のパンを頬張る。俺はあの日からも昼食は屋上でとっている。たとえこれを教師に見つかったとしても俺一人ならどうとでもなる。なにせ11秒あればトイレの個室に逃げ込むことくらいなんて事ない。廊下を走るなと口うるさい委員長も居ないのだから、気兼ねなく廊下を全力疾走できる。ゆえに俺は屋上での昼食を止める気はない。

 何より屋上にいることは俺の一種のアイデンティティでもある。後輩に『屋上の先輩』と呼ばれていることも知っている。次期の鍵持ちを狙う後輩から挨拶をされることもあった。こちらからする事はないが。

 

「────そろそろ来る頃だと思ってた」

 

 キィと小さな音を立て開かれた扉から二宮が顔を覗かせた。俺のいかにもな強キャラムーブ(先読み)が琴線に触れたのか、若干嬉しそうだ。ただのズルである事は誰にもいうまい。

 

「時は来た────というヤツかな。ボクらがここに集まったのは偶然じゃないはずだから」

「何が始まるんだ? そんなご大層な」

 

 これは分からない振りである。今週の頭に久しぶりに予知夢を見た。前回から二ヶ月の間が空いて見た予知夢の内容は今もはっきり覚えている。ここで、予知夢の通りにスマートフォンを見た。水曜日。

 たしかに予定通りである。こうして平坦な日常を夢見る分にはただただ役に立つだけの奇妙な夢なのだが。何がおかしいのか、たまに化け物相手に能力を大盤振る舞いして、無双を決め込む俺の似姿を見せてくる。そこだけが難点である。

 

『今日の昼、二宮が屋上に姿を現し、少し勿体ぶって話を切り出す』

 

 その台詞すら予知通りで、安心する。

 

「なに、たいした事じゃあない。ただほんの少し針が動いただけさ」

「ふぅん……?」

 

 ここまで全て予知夢の通り。彼女のセリフも、仕草も。物心ついた時から一、二ヶ月に一度のペースで見る夢はきっちりかっきりと一週間以内の出来事を先回りして教えてくれる。違えた事はなかった。

 

「これを」

「…………これは?」

 

 彼女が渡して来たのは1枚のチケット。タイトルも見えているし、俺も予知夢を見るまではどうして手に入れようかと迷ったものだった。こうして手に入れられると分かってからは今日という日を待ち遠しく感じていた。そして彼女は予知夢と一字一句違わず、正確に、俺に手を差し伸べてこう言った。

 

『「シンデレラの舞踏会────。

 

 …………ボクらの世界にキミを招待しよう」』

 

 

 

 

 俺は、差し出されたその手を取った。

 

 

 

 

 

 

 とは言ってもまだ先の話だ。もう来週に迫っている、なんて事はないから、俺たちは屋上でのんびりと風を詠むふりをする。二宮はまだそわそわとしているようだが、予知夢では昼休み終了まで教師がここに来る事はなかった。

 なぜか隣から視線を感じる。何かを探っているような視線だ。

 

「なんだよ」

「いや、こう言うのもアレだけれどね。素直に受け取るものとは思わなかった────いや、別にキミが捻くれて見えるとかそう言うわけじゃあないよ」

 

 これはいわゆるイメージの問題でね。キミは必要な物以外は持たないように感じたからであって。云々。少し早口気味に二宮はそう告げた。大変そうだ。

 少し笑みが溢れた。意図せずして嘲るような笑いになってしまったかもしれない。二宮が眉根を寄せた。

 

「いや、確かにそうだ。俺の部屋には布団とクローゼット、あとは携帯の充電器しか置いてない」

 

 あとは多少の秘密だけ。ピンクなものではない、かといってそうやすやすと衆目に晒せるものでない事は同じだが。

 

「だが、何か。俺が友人からの贈り物を破り捨てるような男にでも見えるか?」

「……いいや、全く」

「そりゃいい」

 

 そこで会話は途切れた。気まずい空気はなく、いつも通りの和やかとは言えない程よい緊張感を持った沈黙だ。まるで戦場の隅に座り込む戦士のような。

 こうして二宮と過ごす時間は何物にも代えがたいものだ。例えば、時が止められなくなっても二宮と屋上で他愛の無い話ができるならそれでよかった。

 ひゅう、と風がか細く鳴いた。

 

「風が────心地いいね」

「そうか? 酔うには少し弱すぎる。もっと強くないと、慟哭をかき消してくれるくらいには」

 

 恥ずかしい独白も、聞きたくないことも、何もかもかき消してくれる強い風が好きだ。強風も能力を活用すれば凪と変わらない。ただぼうっと突っ立ってるだけでも、嵐の中で平然としている方がカッコいい気もする。

 

「どちらかというと蘭子の方なのかな」

「なんの話だ。神崎蘭子がどうかしたか?」

「いや、なんでもないよ」

 

 まあ、なるほど。と言えるかもしれない。たしかにおれは厨二病の種別で言えば神崎蘭子のような邪気眼系の方が近いのかもしれない。ダークイルミネイトの2人は綺麗に厨二病の型が分かれている。それで俺がどちらに当てはまるかということだろう。

 実際、『特別な力』を擁しているからこそ、想像しやすく創造しやすい。もちろん二宮のような斜に構えた『特別な視点』を良しとする厨二病も当てはまると思っている。灰色の世界を知るのは俺だけのはずだし、もっと言えばこんなに異能力を持って人生を歩む人すらいないんじゃないか。そう思えば俺のこの視点も唯一のものだから、そちらもまた当てはまる。

 つまり俺は、

 

「救いようのないバカってことだな」

「……そこまでは言ってないよ」

 

 はて、そうだったか。いやそもそもなんの話だ。二宮も同じ事を言った。

 

 

 

 

 

 

 

「ところでこれは」

「どうしたんだい」

 

 ひらひらと、先ほどのチケットを風になびかせてみる。日程は2日目と書かれている。思えば、ライブに行きたいとは思ったものの、結局何一つ調べていない。まず第一に何処でやるのか。ほう、埼玉。電車で行くのが一番か。

 

「お前の他には誰が出るんだ」

「そうだね、出演者は18人。言ってもわからないだろうけど、説明はいるかい?」

「頼む。だがはじめに言っておこう、わからん」

 

 だろうと思った。呆れたようにそう続けて二宮は説明を始めた。

 その18人というのが、塩見周子、中野有香、市原仁奈、橘ありす、一ノ瀬志希、大槻唯、鷺沢文香、五十嵐響子、片桐早苗、速水奏、櫻井桃華、姫川友紀、二宮飛鳥、宮本フレデリカ、相葉夕美、神崎蘭子、水本ゆかり、城ヶ崎美嘉。

 あえてもう一度言うが、さっぱりわからない。普段からロックバンドしか聞かないのがここに響くとは全く思わなかった。二宮と、神崎蘭子は話をよく聞くから分かるとしても、他の名前が頭の中で記憶と結びつくことはない。あいや、待てよ。

 

「一ノ瀬志希は知ってるぞ。完全に振り回されていたな」

「その通りだけど、そういうことは言わなくていい」

 

 自由奔放を人にしたような少女だった。この間見た番組では、ニオイにつられてあっちへこっちへと、見てる分には楽しかったが、カメラマン等同行者は非常に疲れただろう。ロケに慣れているはずのMCも楽しそうではあったが、ひょいひょいと行き先を変える少女に振り回されっぱなしだった。そしてここに同行者が1人。

 二宮にしては珍しく疲れた表情だ。やれやれ系主人公のような気持ちなのだろう。喜悦の混じった感情が目に見える。なんなら、聞こえる。仮初めのペルソナはどうした、と伝えてやればすぐに元のカッコつけたような表情に戻ったが、根底の憂うような感情は隠しきれていない。どうしたかと聞けば一ノ瀬のことのようだ。どうにかして大人しくしてもらうということはできないのかと聞けば。

 

「彼女のアレは仕方ないよ。異次元すぎる」

「ほう?」

「ギフテッドというヤツなんだろうね、一ノ瀬志希という少女は」

 

 曰く、彼女は海外ですでに大学を出ており、日本に戻ってきた彼女は暇つぶしと称してすっ飛ばした高校生活をエンジョイしているらしい。主席のおまけ付きで。

 気まぐれで、失踪癖があり、天才で、そんな彼女を止めるものはなく、縛ることもできやしない。凡人は彼女に振り回されるしかない、と。ほーん。

 

「ボクらのような凡人では、彼女がずっと前に通ったであろう道を探りながら進んでいくしかないのさ」

「────そりゃ、可哀想だ」

「可哀想? そうかな、ボクは別に……」

「お前のことを言ってるわけじゃないよ」

 

 一瞬、何を言われたのか分かってないような二宮の間抜けな顔が視界に映った。

 

「それじゃ、一ノ瀬が可哀想だろ。みんながみんな、一ノ瀬を追っかけてるから、ひとりぼっちじゃないか。後ろの方じゃ、凡人どもがイチャイチャしてるってのに」

 

 言ってからもう少し言葉を選べばよかったかなと後悔する。これもまたコミュニケーション不足の賜物である。負の。

 けれど、二宮は笑った。

 

「フッ…………ははは! ひとりぼっち、そうか。ひとりぼっちか。そういう考え方はなかったな」

「知ってるか、自分以外に人がいないってのは案外寂しいもんなんだぜ?」

「知ってる…………つもりだったのかもね。でも、ボクらはそれならどうすればいい? 君に聞くのはお門違いかもしれないが、ボクには見当もつかないんだ」

 

 お門違いか、そうかな。大っぴらにいうことでないが俺だって天才なんだろう。この能力だって天から与えられた才能の塊だ。俺にこそ、されるべき質問なんだと思う。こんな、この上なく恥ずかしい独白も、この能力がなければ考えることはないだろう。

 

「簡単だよ。全員、手前の道を行けばいい。ぐねぐね曲がって、気まぐれに方向を変えて、どこか適当なところで失踪して。その先で出会えたら声掛けて、会話して、訣れる。それだけでいい」

 

 天才なんてチョロいもんだよ。才能以外、全部凡人と同じなんだから。

 

「そう、なのかな」

 

 きっとそう。俺だってそうだから。うるさい、英語のテストの話は関係ないだろ。52点め。ん、なんだって? 風が強くて聞こえないな。おっと、いかん。イラつき始めた。

 

「そら、ペルソナはどうした」

「…………」

 

 睨まれた。そうなんども使える手ではないなこれは。

 気がつけばもう昼休みは残りわずか。二宮は無愛想な顔のまま扉へと早足で歩いていった。一言も言葉を発すことなく、足音だけを響かせた。

 扉を開き、その身を隠し切る直前に彼女は振り返る。何事かと思って見ていると。

 

「…………感謝はしておく。絶対、ライブには来てくれよ」

 

 顔を少しばかり赤らめて足早に去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 とんでもない破壊力だった。




時を止めるだけと誰が言った?

読まなくても損しないキャラクター紹介
二宮 飛鳥
都立水代中学校2年Fクラス26番
厨二病を患う少女。自分がイタいヤツだという理解はあるが、止める気は無いようだ。友人以外は平均的な少女。
【特徴】
・いわゆる厨二病である。
自身を特別な存在だと思い込む中学生ぐらいの年頃の子供にありがちな例のアレ。多くは他人とは違う自分を想像/創造するが、それが『能力』であるのか『視点』であるのかなどは個人による。彼女は後者である。
・彼女はアイドルだ。
人誑しにたらし込まれた内の1人。世はアイドル戦国時代、その中でも強力な力を持つ346プロダクションに所属する新進気鋭のアイドルである。彼女の握手会等のイベントでは黒いマスクをした理解者や、ガーゼの眼帯をする理解者が多いらしいが……?
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