The World of us   作:君下俊樹

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宮本フレデリカ担当なので初投稿です。ついでに無言サイレント修正です。

二宮飛鳥のウワサ
()(ゴエ)派らしい。

寺田遊馬のウワサ
悲鳴(亡き声)派らしい。


ナキゴエセカイ

  もし、神様なんて奴がいるのなら。俺は一つだけそいつに聞きたいことがあるんだ。まず始めに、殴り飛ばしてからかもしれないが。

 

 

 

 

 

 手を伸ばしても、時を止めても届かない。

 もう二宮飛鳥は俺の手の届かないところにいる。いや、そもそも今までも届いていただけで触れられてはいなかったのだ。勘違いをしていたつもりはないが、少し驕っていたのかもしれない。そういう自覚はある。

 

 

 

 

 

 なぜ、こんなクソの役にも立たない力が俺に与えられたのか。無ければ無いで、俺は────

 

 

 

 

 

 歓声が上がる。ステージに立つ二宮は、獰猛な笑みを浮かべて俺たちに威光を振りまく、ボクの歌を聴けと叫ぶ、数千の観客を無制限に沸かせる。

 煌めく。世界中の光を、そして同時に闇をそこに集めたかのような一瞬が次々と感動を塗り替えていく。いつかの屋上の様に魂をウタう彼女の姿は何よりも輝いていた。全ての音が、煌めきが彼女を引き立たせるためだけに存在しているかの様な錯覚。俺たちの頭上を飛び越すレーザーライトの一本ですらも俺たちに感動を与えた。

 

 

 

 

 

 ────はて。俺は、何が出来るのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二宮の休みは前よりも多くなった。忙しくなったのだろう。テレビでも、街頭でもSNSでも。彼女を見かける機会は逆に多くなった。

 必然、会話は減り、今日なんか俺の口は3時間目に指されてから開かれていない。

 

 開いた。パンをかじる。バターロールのほのかな甘みが口に広がり、どうでもいい。

 学校がつまらない。常々思っていた事だが、二宮が居ないだけでこうまで顕著になるとは考えたこともなかった。パッと思いつく様なことで学校に来てまでしたいことと言えば読書ぐらいのもので、いっそ学校を休んでしまうというのも────親に怒られるだけだ。やめておこう。かといってこのままでは何の為に学校に来ているのかすら危うくなる。目標がないというのはマンネリを呼ぶから。

 

 一人の昼食も屋上も、今更に寂しいと思うことはないが、止むことのない風が鬱陶しいほどにカサカサとビニールを攫おうとする様は普段は気にも留めないことだった。しかしそれすらも煩わしく感じてしまい、手を離して風に攫われたビニールに手をかざせば、パシャンと屋上の隅に小さなシミを付ける。

 二宮が居なければ、事件が無ければ人生などこんなつまらないものなのかと独りごちる。しかし、俺は常に二宮の側にいることなんて出来ないだろう。アイドルにでもなるか? それとも近しい仕事に? 馬鹿馬鹿しい。こんなにも多くの力を持っておきながら、呆れたことに彼女に寄り添うことも出来なやしないとは。

 

 昔の臆病癖が戻って来たような気分だ。見るもの聞くもの触れるもの全てが自分を責め苛むような幻。今ならば首でも振ってリラックスすれば無くなる程度のものだが。抗う術のない当時の俺はオドオドと何かの陰に隠れるばかりだった。

 

 時を止めてコンクリートの海に向かって吼える、そうするだけで少しスッとして気分が落ち着いた。荒い息を鎮め、東京ジャングルを見下ろす。学校があるくらいなのでそこまで都会というわけではないが、それなりに発展はしていて、川沿いに小さく工場地帯やその向こうにビル群が見える。

 

 手をかざし、少し意識を向ければ文字通り全てが水泡に帰すだけの力。伝説の剣を引っこ抜いた記憶もなければ、ゲロマズい謎の実を食べた覚えもない。俺は何を望まれてこんな力を手にしたのだろう。俺は何をしろと言われているのか、好き勝手やれとでも? 世界征服だとか? それこそ馬鹿馬鹿しいってもので、食指も動かない。

 せめて…………いや、あるいは能力のことを話せるような人が居ればこのモヤモヤは無くなるのかもしれない。他にあるとすれば、一発ドカンとぶちかますとか。例えば、世界丸ごと水にしてしまうなんて、流石に冗談だが。

 

 今日のところは、星の光の過去でも眺めて気を紛らわす事にする。視界が埋まるから好きではないが、当たりを引けば下手なドラマなんかより面白いから、サイコメトリーの使用頻度は少なくない。

 俺は星々から注がれる光に触れた。ハズレの様でその光の見てきた景色は同じ真っ暗な世界が延々と続くだけであまり楽しいものではなかったから、直ぐに教室へと戻り机に突っ伏してため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、久しぶりだね」

「ん、ああ確かに。こうして会うのは久しぶりだ」

 

 俺が屋上に辿り着くと、上から二宮の声が聞こえた。給水塔を見上げれば制服姿の二宮が、片膝を立てて座っていた。はて、今日も休みだと聞いたんだが。

 

「4時間目に来たんだ。撮影ではなく、軽いインタビューだったからね。話しすぎて、予定より時間はかかったけれど」

 

 そう言って二宮は楽しくて仕方がないと言ったように笑う。それに俺はなるほど、と軽く相槌を打つ。そのまま、彼女は仕事の話をし続けて俺はそれをひたすらに聞いて時折相槌を返すという、普段とは違う会話形式が成立する。

 

「────まあ、その日は無事に終わったんだけど」

「今日は随分と饒舌だな」

「え? あぁ、ごめんよ。何か言うことでもあったかい」

 

 いや、そんなことはないが。楽しそうで何よりだ。何時ものような会話形式なら何か他のことを考える余裕もあるが、今日のように矢継ぎ早に新たな情報が出てくると、他の事を考えながらだと全ての情報を処理しきれないってだけで。

 

「いや、珍しいなと思っただけだ」

「そうかな……そうかもしれないね。実は、久しぶりのキミとの対話でボクも昂ぶっているのかもね」

 

 そう、こうして意味深な発言の奥底の意図を考える間も無く、二宮は口を開く。例えば神崎蘭子がどうの、とか。市原仁奈がどうで、とか。一ノ瀬志希がどうだ、プロデューサーがどうして、こう、なんて。楽しそうに、時に困った様に二宮は言葉を重ねる。

 

 

 

 

 もやり、とした影が心をなぞる。

 

 

 

 

 はっ、と時を止めて一度彼女から目を逸らす。俺はなんて事を考えてしまったんだろう。どうせ出来やしないのに。今までそうだった様に、きっと俺はかざした手を何をするでもなく下ろすだろう。

 俺は充分に恵まれているのだ。彼女とこうして屋上で話すことが出来るし、こうして軽い気持ちで時を止めてズルをする事もできる。誰かを羨むなんてそんなことはしちゃいけない側の人間なのに、心が余りにも弱すぎる。

 それなのに俺は。嫉妬だとか怨みだとか、一時の気の迷いの様な感情でパッと世界丸ごと水にしてしまおうという冗談が少し行き過ぎるのはこれで四度目の事で。

 

「────どうかしたかい?」

 

 

 ほら、こんなにも沢山の力があるのに。

 

 

「…………いや、何も」

 

 

 俺は何もできない。何も。この取り繕う様な笑顔すらきっと完璧で、嫌になる。

 

 

 

 




実は気分的に前後編ですが、だからといって後編が速く投稿されるとかそういうのは一切ないです。

神崎蘭子のウワサ
ハルピュイアの白雨(泣き声)派らしい。

一ノ瀬志希のウワサ
()(ごえ)派らしい。
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