美少女指揮官(♂)と艦船達の日常   作:ゆっくりいんⅡ

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 アズレンSSまさかの続きました。今回はtwitterでフォロワーさんと話して書こうと思ったプリンツ・オイゲンの話です。最初ケッコンしたから書きたかったってのもあるんですけどね。
 ……え、じゃあ何で一番に赤城書いたのかって? 趣味と気分です(オイ)
 


魅せ始めたもの

 

 

「指揮官、一緒にお酒でも」

「断る」

「……遮ってまで拒否するのは酷いんじゃない? 加賀とは一緒に呑んでた癖に」

「年末年始にリバース直前まで呑ませた奴の誘いに乗る訳ないだろ」

 日が落ちてしばらくして執務終了。自室へと戻る途中、遭遇したアドミラルヒッパー級三番艦、プリンツ・オイゲンにジト目を向けておく。断られた当人ははいつもの口元に指を当てるポーズでつまらなそうにしている。

「根に持つ男は嫌われるわよ?」

「女でも嫌われるだろそんな奴。危うく酒がトラウマになりかけたんだぞ」

 酒は薬にも毒にもなるという言葉を、自分の身で実感することになるとは思わなかった。そこそこ強い方だとは思っていたが、許容量を遥かに越える摂取は一種の拷問である。

「年末年始でちょっとタガが外れてたのよ、流石に反省したから……ね? ちょっとくらい、いいでしょ?」

 指を唇に当てたままこちらに近付いてきて、体勢を変えて胸を強調する。恒例の『お願い』ポーズでこちらをジッと見つめてくる。

 毎度されてるのだから慣れてもいいものだが、悲しい男の性かどうしても右胸部分のホクロに目がいってしまい、揺れるツインテールが手や顔に触れてこそばゆさが妙な気分を助長させる。こういうのを魔性の女、というのだろうか。

 気恥ずかしさから視線を逸らし、溜息を吐く。顔に赤みはない……と思いたい。

「……悪いが、今日は呑む気分じゃない。前回の鉄血艦隊の後始末がようやく片付いたんでな、起きてるのがちとキツイ」

「あら、それじゃあよく寝れるように添い寝でもしてあげましょうか?」

「公序良俗って言葉知ってるか?」

「人間じゃなくて艦船だからセーフね」

「発想がアウトだよ。……他人が横にいると落ち着かないんだ、勘弁してくれ」

 両手を挙げて降参の意を示す。寝起きの条件反射で赤城に武器を向けてしまうんだ、艦船によってはトラウマになるぞ。

「……むう。本当に疲れているみたいね、仕方ない。これ以上無理強いするのは可哀想だし、やめておくわ。指揮官の困り顔を見るのは楽しいけど、働きすぎはし・ぬ・わ・ね」

 何故そこでいつもの如く区切る。

「理解してもらえたようで助かる。ついでに困り顔させるのもやめてくれるとありがたいんだが」

「それは無理ね。指揮官の困り顔はカワイイもの」

「男捕まえてその評価はおかしい」

「その美少女顔で言われてもねえ……」

 言うな、自覚はあるけどしたくない。

「それに、指揮官の困った顔は一部で人気なのよ? 普段の無表情がちょっとでも変わるもの、意地でもどうにかしてやりたくなるじゃない」

「……仏頂面なのは認めるが、そんな姿見て誰が得してるんだ」

「私を含めて比叡、セントルイス、愛宕、ベルファスト、翔鶴、エイジャックス、後は雷電姉妹、真っ先に浮かぶのはこれくらいかしら。あとは――」

「もういい、聞きたくない」

 指折り数えるオイゲンに、本気で頭痛がしてきた。とりあえず、今聞いた奴等の前では無表情に努めよう(←フラグ)

「……酒なら今度付き合う」

「まあ、それならいいわ。お疲れ様、指揮官」

「ああ、お休み」

 横に退いてくれたので挨拶だけをし、再び歩を進める。さて、さっさと風呂に入って――

「ところで指揮官」

 などと思ったら、プリンツが再び話しかけてきた。何故か背中に抱きつきつつ。

「何だ、まだ用か。……あと、くっついてくるのはなんでだ」

「ふふ、そうやってちょっと言い淀むところがカワイイのよね」

「……当たってるぞ」

「慣れてるでしょ?」

「慣れてない」

 そこを認めたら人としてダメになる気がする。今も押し付けられた部分から感じる柔らかく大きな双丘と肌の温もり、回された華奢な腕の密着感で気を静めるのに苦労しているんだし。

「別に、困らせようって訳じゃないわ。最後に一個、聞きたいことがあっただけよ」

「なら抱きつく必要はないだろ。……手短にしてくれ」

「ふふ、別に嫌なことを聞くわけじゃないわ。ねえ指揮官」

 

 

 最近、山城と混浴したんだって?

 

 

「何の話だ?」

「ちょっと動悸上がってるわよ。くっついて正解だったわね」

 声には出さないよう努めたが、無意味だった。というかその口振りだと引っ付いたのは特に意味ないのか、いや分かってたが。

「……山城が俺の入浴中に間違えて入ってきただけだ、意図的なものでも何かあった訳でもないし、アイツも寒中水泳でボケてたのか水着のままだった」

「まあ身持ちが清純乙女並みに硬い指揮官ならそうでしょうね、何かの間違いだってのは予想できるわ。

 ああ、先に言っておくと別に責めるつもりはないから言い訳しなくてもいいわよ? ただ、偶然見た娘から話を聞いて、確認したかっただけ」

「こんな状態なら白状した方がマシと考えるだろ。あと、誰が見たんだ」

「ライプツィヒ。テンパリ過ぎて気絶しかけてたから、忘れるように言い含めておいたわ」

「……それは、迷惑を掛けたな」

 山城が原因とはいえ、その後のことを考えなかったのは少し迂闊だったか。口外するような連中(青葉とかグリッドレイとか)じゃなかったのは不幸中の幸いだな。

「別に。変な噂が広がっても面倒だしね」

「ああ、面倒なのは間違いない。で、用件は済んだんだし離して」

「で・も。今の話、赤城の耳にでも入ったらどうなるかしらね?」

 後ろを向くと、悪戯っぽく笑うプリンツとがっちり視線が合った。蠱惑的と言えば聞こえはいいだろうが、俺には悪魔の笑みにしか見えない。

「……お前が喋らなければいいだろ」

「そうねえ、それはそうね。でも、折角余計な噂が広がらないようフォローしてあげたんだし、これでなにもなしだとうっかり(・・・・)口が滑っちゃうかもしれないわねえ」

「…………」

 さっきよりでかい溜息を一つ。赤城が味方を攻撃しないのは先の一件で分かっているが、山城はそこまで気の強い部類ではないため、ヤンデレの気迫で迫られたら最悪泣き出したりするかもしれない。そうなれば確実に面倒ごとだ、内輪揉めほど厄介なものはない。

「……何が欲しいんだ?」

「あら、私は何か欲しいなんて言ってないわよ?」

「……」

「冗談よ、冗談だからそう睨まないで、怖いから。じゃあ、そうねえ――」

 面白そうな顔でオイゲンが出してきた条件とは――

 

 

「……なんだか指揮官様に手を出そうとする悪い虫の気配がするわねえ。帰ったら念入りに調べて駆除しないと……う、ふふふふふ」

「姉様、戦闘中くらい真面目にやってください」

 

 

 オイゲン曰く『脅迫(お願い)』の結果、混浴することになった。

 ……いや、マジでどうしてこうなった。

「ふう……いいお湯ね」

「……そうだな」

 隣り合った位置でお湯に浸かり、疲労が溶けていく感覚を存分に味わう。これで横に誰かがいなければ存分に堪能できるのだが、最早詮無いことだろう。

 本当なら水着でも着させようと思ったのだが、「重桜で水着の入浴はマナー違反でしょ?」と論破されてしまった。どこで身に着けたその常識。

 一応タオルは着けているが、それも湯船につかる際頭に乗っけているため、お互い生まれたままの姿である。お湯が白くなかったら色々まずかったと思う、まあオイゲンもそこを理解して混浴に誘ったのだろうが……「んぅー」とか変に艶っぽい声を出して伸びをするのはやめて欲しい、胸とか脇とか見えて完全に目の毒である。

「ねえ指揮官、折角のお風呂なんだしそんな怖い顔しなくてもいいじゃない」

「顔は元々だ」

「眉間の皺がいつもより一本多いのに?」

「……よく見てるな」

「付き合いも長いもの、それくらい分かるわ。……ねえ、やっぱり迷惑だった?」

 水温を立てながらこちらを見てくるプリンツの表情は、申し訳なさげだ。強引なアプローチだったのは自覚があるのだろう。

 顔だけ彼女の方に向け、少し罪悪感が湧き上がる。こちらに非はないというのにそう思わせるとは、つくづく女はズルイ生き物である。

「迷惑ではない。……単純に緊張してるんだ、察してくれ」

 正直な気持ちを吐き出すと、不安そうな顔から一点目を丸くし、

「指揮官が緊張することなんてあるの?」

「お前は俺をなんだと思ってるんだ」

「(鬼灯の)冷徹」

 余計なものが入ってる気もするが、とりあえずスルー。

「感情を失くした殺人兵器じゃないんだ、喜怒哀楽もあるし緊張くらいする」

「普段は眉一つ動かさない鉄の心臓持ちがよく言うわ」

「状況が違うだろ。お前みたいな美人と混浴なんて、戦場の百倍は緊張する」

 あ、口が滑った。オイゲンは一瞬ポカンとした表情の後意味を察し、「……真正面から口説かれるとは思ってなかったわ」と顔を湯気越しでも分かるくらい朱に染めている。別に口説いたつもりはなかったが、そう受け取られても仕方がない。

「「…………」」

 しばらく二人とも無言で湯に浸かる。少し気まずいが、温かさがそれを誤魔化してくれている――と思いたい。

「ところでオイゲン」

「な、なあに?」

 気分を変えようと話題を振ったのにどもらないで欲しい、気恥ずかしさが増す。

「いや、髪を結んだままなのは何故かと思ってな」

 言う通り、髪型はツインテールのまま。普通風呂に入るなら解いてくるものだと思うが。

「ああ、これ? 後で頭を洗うから、その時に解こうかと思って」

「髪留めが痛むと思うが」

「大丈夫よ、海水でもサビ一つ付かない特注だし。髪を洗うのも解くのも指揮官にやってもらうから」

「オイマテ、追加サービスをする予定はないんだが」

「? 女の髪を解くのって、男は興奮するものじゃないの?」

「どこで仕入れたその知識」

 首を傾げているあたり、本気でそう思っているらしい。明らかに特殊性癖の一種だろそれ。

「違うんだ、ふうん……でも、指揮官ならやってくれるでしょ?」

「混浴だけでもギリギリな自分に直接触れろと申すか」

「髪だけならいいでしょ?」

 そういう問題ではない、と口にしようとしたらオイゲンは急に距離を詰め、

「私だって恥ずかしいのよ? でも、指揮官だからこんなこと頼んでるの。

 だから、ね? お・ね・が・い」

 指をこちらの唇に当てて喋れなくしてから、こちらをジッと見つめてくる。

 馬鹿言え、と拒否するのは簡単だったが、触れる指が微かに震えているのに気付いた。嫌われたらどうしよう、などとでも考えているのだろうか。

 別にこの程度でどうこうなる仲ではないが、怖いならやらなければいいだろうに。……それとも、そうまでしても距離を詰めたかったのだろうか。

「……他言無用だぞ」

「! 勿論よ」

 我ながら自制心が弱いと思う、それとも女の涙と笑顔には勝てないという奴だろうか(別に泣いていないが)。こういう状況から逃げ出したり上手い事避ける物語の主人公には素直に感心する、単なるヘタレなのかもしれないが。

 というわけで不本意だが、オイゲンの髪を洗ってやることにした。髪留めを外す際「どう、興奮した?」などとまだ言ってるが、俺にそんな性癖は無い。

「んっ……指揮官、洗うの上手ね」

「そうか? まあ、長い髪にはよく触れているからな」

「自分の髪がそうだものねえ。ケアとか何かしてるの?」

「? 洗えば十分じゃないのか」

「……そういえば、いつも髪濡れたままでお風呂から出てるけど、ドライヤーは?」

「しない、自然乾燥」

「何でそこだけ男らしいのよ、よくそれで綺麗な髪を維持できるわね……愛宕が髪のことで口うるさく言ってたの、納得したわ」

「別に乱れてないからいいと思うんだがな。流すぞ」

「そう思ってるのは本人だけよ……ん、ありがと」

 振り返って笑いながら礼を言うオイゲンは、髪型が違うせいかいつもより大人っぽく見える。濡れているせいか色気も増して感じ、思わず視線だけ逸らしながら口を開くが、

「どういたし――」

「さ、次は指揮官の番よ」

「オイマテ、自分で洗う」

「ほらほら早く座って、湯冷めしちゃうわよ?」

「聞けよ話」

 結局強引に座らされてしまう。風呂場で暴れたくないのもあってあっさり抑えられた。

「ほら、髪は洗うだけじゃダメなのよ? 例えばこっちのトリートメントとか」

「……全然分からん」

「赤城あたりにも話して指揮官の髪を洗う係でも決めた方がいいかしら」

「やめろ胃が壊れる」

 そもそも他言無用が破られるんだが。オイゲンはクスクス笑いながら「冗談よ」などと言うが、心臓に悪いのでやめて欲しい。

「……それにしても」

「~~♪ ん、なあに? 目に泡が入った?」

「いやそうじゃない。お前も変わったな、と思っていただけだ」

 海軍部から配属されたばかりの頃は顔こそ笑っていたが、内心厭世家で無気力な雰囲気を漂わせていた。それが今では楽しげな表情も見せるようになったのだから、そう感じていた。

 口にするとオイゲンは小さく笑い、

「そりゃあ、あの時とは状況が違うもの。新しい仲間も出来たし、ヒッパーや鉄血の皆とも再会できた。独り取り残されたあの時とは違う。

 まあ、一番変わったのは指揮官のせいでしょうけどね?」

「……俺か? 別に特別なことはしてないが」

 ただ単に、一人の艦として接してきただけだ。他のと比べて贔屓したわけでもなし、変わるほどのことはなかったと思うが。

 オイゲンはまたも笑いながら、今度は何も言わない。なんだその意味ありげなのは。

「まあ、指揮官はそのままでいいと思うわ。いつも通りの無愛想で気遣いの出来る美少女(仮)でね」

 (仮)はいらん、男だよ。

「ねえ指揮官。興味本位の質問なんだけど」

「何だ」

「別に答えなくてもいいんだけど、出来れば正直に言って欲しいの。

 私達の好意は迷惑? それとも嬉しい?」

 ……また何とも答え辛いことを。自分の立場を考えれば言わないのが吉だろうが、それだとお互いしこりが残るだろう。

 何より、こういう問題は親しい男女なら避けられない問題だ。……女顔の自分が言うのもあれだが。

「そうだな。……指揮官としては、お前等と必要以上に仲良くなるのは問題だ。情で判断を誤るかもしれん」

「……」

「だけどな」

 泡が流され、鏡に映された自分の身体を見る。腰まで伸びた艶のある黒髪、必要以上に女性を感じさせる顔、華奢でか細い体躯。

 自分から見ても十人中十人が女子だと間違えるような容貌だ、神に性別を間違えたと告げられても納得いく。それでも、

「こんな見た目の俺を『男』として見てくれて、慕ってくれている。それが、とても嬉しい。

 だから、オイゲン」

 ありがとうな。そう告げて振り返り、彼女の髪を取って軽く口付ける。

「それじゃあ気取られるのも面倒だし、俺は先に出る。お前はもう少しゆっくりしていくといい」

 硬直したままのオイゲンへ一方的に告げ、脱衣所へと向かう。それから髪を拭き手早く着替え、扉を開けて廊下に出る。

「……何やってんだ俺」

 扉脇の壁にもたれて額に手をやる。ああすげえ恥ずかしい、何告白紛いのことしてるんだ俺、髪にキスするのも必要なかっただろ、あのタイミングだと意味分からんかったし。

「ちょっとアンタ、報告あるのにどこほっつき歩いて――」

「…………」

「何、そんな顔して何かあったの? インフルエンザにでも掛かった?」

「……いや、風邪の類じゃないから大丈夫だ」

「ハァ? じゃあなんでそんなに真っ赤なのよ」

 お前の妹と恥ずかしいこと話してた、等と当然言えるわけがなく、適当に誤魔化して逃げるように自室へと戻った。ホント、のぼせてでもいたのだろうか。

 

 

「……ああもう、なんなのよもう。あんなこと言われて嬉しくないわけじゃない、女として。おまけに髪とはいえキスなんかして、ちょっとだけど笑ってて、あんな見たことない顔卑怯よ卑怯。

 しかもこっちの話なんて聞かずに逃げ出すなんてとんだヘタレよ、普通の女なら愛想尽かすに決まってるわ。

 とりあえず、もう一回お風呂入ろうかしら。……明日から指揮官の顔、まともに見れるといいんだけど」

 

 

 

 




後書き
 何このラブコメ、山城と指揮官が混浴したっていうネタがあったから試しに書いてみただけなのに、どうしてこうなった。
 ……はいどうもゆっくりいんです、今これ喫茶店で書いてるんですけど、正直羞恥心で死にそうです。なんでこんなもん書いたしと言われたら、筆が進んだとしか……
 とりあえず、今回はここまでです。アズレンSSはリクエストあるか気が向いたらまた書くと思います。好きなキャラはいっぱいいるんで、まあ一番はオイゲンなんですが(何)
 感想・評価・誤字指摘などあれば送っていただけると嬉しいです。ではここまで読んでくださった方、ありがとうございました~。さて、アリアSSの続き書かないと……

 

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