問題児と刀使いが異世界から来るそうですよ?   作:zkneet

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第12話

門の開閉がゲームの合図らしく、生い茂る森が門を絡めるように退路を断つ。

 

光を遮る程の密度で立ち並ぶ木々、その木々の下から迫り上がる巨大な根によって街路と思われる道は人が通れるような道ではなくなってると人が住んでいた場所とは思えない程であった。

 

ジンと飛鳥はいつ奇襲されるかと緊張した面持ちで周囲を警戒していたので心配させないように声を掛け、落ち着かせることにした。

 

「多分周りには誰もいないぞ?」

 

「そうだよ。もし隠れていたら匂いで分かる」

 

「………そう?春日部さんは犬にもお友達が?」

 

「うん。二十匹ぐらい」

 

「そう。なら葉月君はなんで周りに誰もいないことが分かったの?」

 

飛鳥は耀の五感が優れているのですぐに信頼するが、葉月はギフトも使わずになぜわかったか気になるようだ

 

「気配が一切感じられないからかな?」

 

 

「耀さん、ガルドの正確な位置はわかりますか?」

 

「分からないけど、風下にいるのに匂いがないから何処かの建物にいると思う」

 

「では外から探しましょう」

 

「2手にでも別れる?」

 

「それもそうね」

 

「どう別れるの?」

 

耀が聞いてくる

 

「んー、ジンはどう別れるのが正解だと思う?」

 

 

「こう別れるのが一番だと思います」

 

それは葉月と飛鳥、ジンと耀の組み合わせだった

 

「どういう理由でこの組み合わせかしら?」

 

飛鳥は疑問に思い問いかける

 

「戦力的にこれが一番だと判断しました、索敵能力のあるお二人を別けただけですよ」

 

「これでいいんじゃないか?」

 

「私も異論は無いわ?」

 

「私も」

 

「それでは、少ししたらまたこの場所に集合しましょう」

 

それから数分、葉月と飛鳥、ジンと耀がペアを組みヒントを探したが見つからなかった

 

「ヒントも武器も何一つなかったな」

 

「こっちもなかった…」

 

「もしかしたらガルド自身がその役目を担ってるにかもしれません」

 

「それなら耀のギフトで」

 

「もう見つけてる」

 

耀が樹の上に上り、遠くを見つめていた

 

「影が見えただけだけど、本拠にいた。」

 

耀の瞳は普段と違い、猛禽類を彷彿させる瞳になっていた

 

「そういえば鷹の友達もいたのね。けど、今はみんな悲しんでるんじゃない?」

 

「それを言われると少し辛い。」

 

しゅん、と元気がなくなる耀。

 

その後、四人は少し警戒しながら館に入る

 

「しかし、虎だから森の中で奇襲をかけると思ったらそんなことはなかったな。」

 

「けど、あんな自己顕示欲の強いガルドが自分の屋敷を荒らすとは思えません」

 

「それじゃあ代理人に頼んだのかなぁ?」

 

「代理に頼むにしても罠もなかったし、屋敷を荒らす必要はないわ。」

 

四人は少しだけ考える

 

「悩んでてもしょうがない。今、ガルドはどこにいるかわかるか?」

 

「多分、二階にいる。」

 

「それじゃあ手分けして一階を探すか。」

 

「それなら一人ずつで探しましょうか」

 

「そうですね」

 

そうしてがれきを退けたりして隈なく探したが何も出てこなかった

 

「どうだった?」

 

葉月の言葉に全員首を横に振る

 

「二階に行くか」

 

「それならジン君は此処で待ってなさい。」

 

「どうしてですか?僕だってギフトを持ってますから足手まといには」

 

「違うわ。あなたには退路を守ってほしいの」

 

ジンは不満そうだったがしぶしぶ納得した

 

三人はその後順番に部屋を調べたが何もなかった

 

そして最後の部屋の扉に着いた

 

「準備はいい?」

 

「ええ」

 

「うん」

 

葉月が二人の声を聞き勢いよく扉を開けると

 

「―――………GEEEEEEEYAAAAAaaaaa!!」

 

昨日とは変わり果てた姿をしたガルドが白銀の十字剣を背に守りながら立ち塞がった。

 

三人が雄叫びに怯んでいるとガルドが突進を仕掛けてきた

 

それをなんとか葉月が夜叉で受け止めるが、“契約”で守られているからか全然止まる気配がない

 

「1回下がるぞ!!」

 

葉月が叫ぶと飛鳥はジンの方に走ったが耀は部屋に入り十字剣を取ろうとした

 

「馬鹿、逃げろって!」

 

耀の姿が見えたのか、ガルドは葉月を気にもせず耀に襲いかかる

 

「えっ、きゃあ」

 

剣をとったが、想像以上に距離を詰められていた

 

ガルドの牙が耀に襲い掛かる瞬間

 

「えっ?」

 

「っ!」

 

葉月が耀を押し出して居場所が変わった

 

その為、ガルドの牙は葉月に襲い掛かった

 

「GRRRRRRR」

 

「離せってんだよ!」

 

葉月が残った力でガルドから逃れ、窓を割る

 

「飛び降りろ」

 

その言葉に耀は我に返り、葉月を連れ飛び降りた

 

上を見てみるとガルドが追ってくる様子はなかった

 

「大丈夫なの!?」

 

耀が珍しく慌てた様子で聞いてくる

 

「見た目より大分ましだ。命には関わらないと思うけど」

 

「良かった」

 

少し涙ぐんで笑いかける耀

 

「だけど、さすがにすぐには動けそうにないから飛鳥たちと合流してガルドを、任せていい?」

 

「わかった。それじゃあ待ってて。」

 

耀がグリフォンのギフトを使い飛鳥たちがいるであろう方へ飛んでいく

 

「さてと、外傷はあまり目立たないけど、出血が多いな」

 

葉月は耀が見えなくなると自分の状況を再確認する

 

「ぐっ!?」

 

しかし、少し体を動かしただけで激痛が走る

 

「ちょっとやばい……」

 

あまりの出血量に葉月は意識手放した

 

 

 

「あれ?俺はガルドとのゲームで気を失っていたはずじゃ……」

 

俺は何故かベットに寝ていた

 

「あっ!皆さん葉月さんの意識が戻りましたよ」

 

「本当だ、良かった」

 

何故か黒ウサギが喜び、耀が胸を撫で下ろしていた

 

「しかし、あんな小物にお前が傷を負わされるとは思わなかったぜ。俺の見込み違いか?」

 

「それは」

 

「小物だと思って慢心した結果がこれかな、油断してたよ」

 

耀が何かを言う前に葉月は十六夜の問いに答える

 

するといきなり横から平手打ちが飛んできた

 

「下がれって言ったくせに自分は下がらなかった罰よ」

 

そのまま飛鳥は部屋を出る

 

「じゃあそれなら俺も」

 

十六夜も手を振りかざすがジンと黒ウサギが急いで止める

 

「やめてください!怪我人なんですし、十六夜さんがやると命に関わります!」

 

そのまま十六夜は二人に外に連れていかれた

 

部屋には葉月と耀の二人だけになった

 

「ごめんなさい」

 

「ん?いきなり謝ったりしてどうしたの?」

 

「だってそのけがは私のせいだし・・・」

 

「いや、止められなかった俺も悪いよ、気にしないで」

 

「でも、私が勝手に飛び出したから。」

 

「いいって、俺は気にしてないから、別に死んだ訳じゃないんだし、この話は終わり!」

 

 

無理やり話題を途切れさせる

 

「・・・わかった。」

 

「それじゃあジンが何処にいるかわかるか?」

 

「多分図書室」

 

「そうか、ありがとう」

 

俺はそういうとベットから降りて扉を開けた

 

「だめ」

 

「いや、もう治ったし」

 

「呼んでくるから待ってて」

 

耀が俺の話を聞かずに飛び出して行った

 

数分すると耀がジンを連れてきた

 

「連れてきた」

 

「あの~僕に何の用なんでしょうか?」

 

「聞きたいことがある」

 

「なんでしょうか?」

 

「今回のゲーム、ジンは何かに気がついてたよね、それは何?」

 

「!?」

 

「おかしいと思ったのは最初の木を見たときの反応、何か知ってる反応だったからな」

 

「そ、それは・・・」

 

「それとこれは俺の勘だが、吸血鬼が関わってると思うんだけど」

 

「なんでそれを」

 

ジンが驚きの表情で葉月に詰め寄る

 

「ガルドに牙で噛まれたとき、血を吸われた感じがあったんだ。それでかな?」

 

「そうですか。それでは僕が思うことを話します」

 

ジンが話したのは吸血鬼の仲間がいるということと、あれほどの木々を鬼化できるのはその人くらいということだった

 

「けど、仲間ならそんなことをする必要はないと思うんだけど」

 

「そうなんです。なので本当に彼女かどうか確信が持てないんです」

 

「勝手な想像なんだけど、俺たちの事を聞いてコミュニティの力になるか試したかったとか?」

 

葉月の説明になるほど、といった感じで頷く二人

 

そのまま葉月は立ち上がりジンに礼を言い、外に出ようとした

 

「何しに行くの?」

 

それを耀に止められる

 

「いや、軽く運動を」

 

「駄目、今日は絶対安静」

 

結局耀に念を押され、その日は一日寝て過ごすことになった


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