「君の名は。inクロマティ高校」   作:高尾のり子

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第3話

 

 三葉は朝起きて、ぼんやりと顔を洗った後に鏡を見て叫んだ。

「眉毛がぁぁ!?!」

「おはよう、お姉ちゃん。朝から元気だね」

「私の眉毛がぁあ!! ないィィ?!」

「なんで剃ったの。バカみたいだよ」

「ぅううぅ……そんな覚えはないのに……。なんとか、誤魔化さないと。……男の子になる変な夢はみるし……それにしても変な夢だったなぁ……ゴリラとかロボットまでいて。あんなヤンキー校、あるわけないよね。うん、やっぱり夢だよ」

 三葉は前髪をおろして眉のあたりを隠す髪型にすると登校した。通学路で克彦と早耶香に出会って言われる。

「おはよう、三葉。……今日も髪型を変えたのか…」

「おはよう、三葉ちゃん……思いっきり前髪、おろしたんや」

「うん…まあ…」

 眉毛がないことを知られたくない三葉は前髪をできる限りおろしていたし、パッツン前髪にもしたくないので、かなり髪の毛で顔が隠れている。ギリギリ前が見えるくらいに髪をおろしていた。

「昨日は73で今日は……おとなしい感じというか……。……」

「三葉ちゃん、それ貞子みたいだよ」

「うぅぅ……今日は、そういう気分なの!」

「そうか。まあ、恥ずかしくなって顔を隠したい気持ちはわかるけどな」

「そうかもね。三葉ちゃん、昨日のことは、そんなに気にしないでいいよ。クラスのみんなも、からかわない感じだから」

 おもらしを授業中にしたことを三葉が気にして顔を隠しているのだと思った二人が慰めるように言うと、三葉は首を傾げる。

「昨日のこと? 私、なにかした?」

「「…………何も。何もなかった。ごめん」」

「う~ん……?」

 違和感を覚えつつも登校して教室に入ると、やはりクラスメートから微妙な視線を感じるけれど、それは髪型のせいだと考えて、いつも通りに着席する。すぐに朝のHRで点呼が始まった。

「勅使河原くん!」

「はい」

 ごく普通に出欠確認されていき、三葉の番になる。

「宮水さん!」

「はい」

「…………」

 点呼したユキちゃん先生は迷った。明らかに三葉の前髪は、それほど厳しくない校則の運用基準からしても問題があり、ほとんど顔が見えない。まるで宮水三葉ではなく宮水貞子が着席しているように見えた。それを注意するべきか迷い、おもらしのことを思い出した。昨日は平然としていたけれど、今日になって恥ずかしくなって顔を見せられないのだと配慮して、注意せず職員室に戻ると他の教師にも事の次第を伝えた。もともと三葉は問題児ではないけれど、家庭的な問題は多い。両親不在で、なおかつ父親は町長という取り扱いを誤ると教師たちの立場も苦しくなる生徒で、万が一、おもらしのことをクラスメートからバカにされて、思春期の多感な時期なので衝動的に自殺でもされると担任や校長が吊し上げを受けることは明白で、しばらく三葉のことは最大限の注意と配慮をもって取り扱うことが教職員の共通認識になった。

「今日の国語の時間は道徳に替えます」

 ユキちゃん先生は時間割を緊急に変更して一時間目を開始する。

「テーマはイジメは犯罪、無くそう自殺、イジメた人は犯罪者です」

「「「「「……………」」」」」

 それを聴いたクラスメートたちは、すぐに察した。おもらしのことと、その後に三葉が豹変して糸守では見たことがないようなメンチを切って、からかった生徒を震え上がらせたことを。そして、教師たちの自己保身への意気込みも察したので、もう三葉のことは誰も言わなくなる。明らかに貞子だったけれど、それも言わないし、言うと教師も怒りそうだし、キレた三葉が貞子というより本場のヤンキーだったので、誰もが教室にいる貞子さんのことは居ながらにして、居ないことにする。

「……よし、眉毛が無いのバレてない」

 三葉の方も、動くと前髪も動いてバレるかもしれないので、着席してジッとしているので、ますます貞子だった。授業中も可能な限り、動かないようにしていたので三葉の周りだけ空気感が違ったし、どの授業の教師も注意しなかった。お昼休みになると、いつも通りに克彦と早耶香の3人で校庭の木陰で昼食をとった。

「ぅ~……食べにくい」

 うっかりすると髪の毛が口に入ってしまいそうになるけれど、髪をあげると眉毛がないのがバレると思い、そのまま食べている。昼休みが終わりかけになり、早耶香が誘った。

「三葉ちゃん、おトイレ行こう。ちゃんと行っておこう」

「え? ……うん…、でも中休みに行ったから今は、そんなに…」

「まあ、そう言わずに行っておこうよ」

「そうだね。じゃ」

 いつもより強く誘われたので何かトイレ内で内緒話でもあるのかと思ったけれど、普通に用を済ませただけで終わった。放課後になり3人とも帰宅部なので自宅へ向かうけれど、三葉は途中でコンビニへ寄った。

「ちょっと買い物してくる」

「あ、トイレ? それなら私が何か買ってもいいけど」

「買い物だよ?」

「……そっか。買い物か…」

「ん~? ………二人は、そこで待ってて。あんまり見られたくないし」

「「………わかったよ」」

 見られたくない何を買うのだろうと思いつつ、早耶香と克彦はコンビニへ入っていく三葉の背中を見送った。外から店内を見ると、貞子がコンビニに居るように見える。早耶香は克彦に問う。

「ねぇ、テッシー。三葉ちゃんは、おもらしのこと気にしてると思う?」

「ど…どうだろうな……一日中、顔は隠してたけど、……気にしてるような、ぜんぜん忘れてるような」

「クラスのみんなも、黙ってるし。……まあ、昨日、あれだけ豹変して脅せば、からかう気にもならないだろうし。今日は今日で、貞子だから、なんか怖いし……」

「そういえば、三葉をからかった女子、今日は休んでたな」

「脅されて、あの子も漏らしたから。普通、高校生にもなって教室で漏らしたら、休むよ。三葉ちゃん、えらいなぁ」

「……けど、わざと我慢して漏らさなかったか?」

「うん………そういう遊び小学校の頃、女子の間で流行ったけど何人か漏らして、いじめにつながって先生に怒られて終わったよ」

「そんなことしてたのか……あ、出てきた」

 三葉は買った物をカバンに入れてコンビニを出てきた。

「お待たせ」

「おう。じゃ、帰るか」

「うん」

 おもらしと貞子のことには触れず克彦と早耶香は三葉と帰り、帰宅した三葉は鏡の前でコンビニで買った化粧品のアイライナーを出した。

「明日の朝、ちゃんと眉毛を描けるよう練習しておこう」

 髪をあげて、アイライナーで眉毛を描く練習をして一日を終えた。

 

 

 

 朝、高志は残念そうにクロマティ高校へ登校してきた。

「普通の高校に通えると思ったのに……儚い一夜の夢だったか………けど、クロ高にも、もう仲間がいる。そうだな、現実を受け入れて積極的に生きよう」

「おっ」

 林田慎二郎が声をかけてくる。

「オメー、今日は、いつも通りだな」

「え? そういえば、こちらの時間でも一日経っていた。林田くん、昨日のボクは、どうしていました?」

「はぁ? 自分のことだろうが? 今日も、やっぱり変か?」

「昨日は、どのように変でした?」

「昨日はよぉ、なんかナヨナヨして女みてぇだったぞ。まあ、もともとオメーは、うちの校風には馴染めてねぇけどな」

「女性のように……ナヨナヨ……」

 高志は気になることがあったので図書室へ行ったけれど、顔を伏せた。

「この学校の図書室は、使えたものじゃない」

 荒廃した図書室は冬場に暖を取るために本が燃やされたりしていて、ろくな資料が残っていなかったので早退して都立図書館へ向かおうとすると、林田が興味をもってついてくる。

「オメーが早退とは珍しいな。槍でも降るんじゃねぇか」

「ちょっと調べたいことがあるのです」

 しばらく図書館で糸守町のことを調べていた高志は悲しそうに言った。

「そうか、彼女は死んでいたんだ。そして、ボクに乗り移って……替わりにボクの魂が彼女へ……」

「オメー、何を言ってるんだ?」

「実はですね。昨日、ボクは不思議な体験をしまして、この女性と魂が入れ替わっていたのです」

 高志は当時の新聞記事に載っている犠牲者一覧にある三葉の写真を指した。

「入れ替わってたァ? けど、こいつ死んでるじゃねぇか。隕石? 運の無い女だな。でも、けっこうかわいいな。もったいない」

 林田も見た三葉の写真は修学旅行で撮影されたもので、女子高生らしく写りを気にして顔の角度を工夫して最大限に可愛く見えるよう撮られていた。

「かわいいなぁ。生きてたら、もう20歳か、いい女になったろうに」

「彼女は、すでに亡くなっていた。……よほど、この世に未練があったのでしょう」

「そりゃ17歳で死んだら、未練たっぷりだよなァ」

「かわいそうに。どうか、安らかな眠りを」

「そうだな。ザーメン」

 高志と林田は三葉の冥福を祈って涙ぐんだ。そして、林田が問う。

「昼飯、どうする?」

「駅前のラーメン屋さんに行きましょう」

「おう、そうだな」

 もう三葉のことは忘れて、二人は昼食のことを思った。

 

 

 

 前略、お母さん、悪夢は一晩で終わらなかったみたいです、また私は高志くんの身体で起きていて、仕方なく東京一番の不良高校に向かっています、と三葉はクロマティ高校の校門前でタメ息をついていた。

「はぁぁ……あ、林田くん。もう早退なのかな?」

 校門から林田と、他に5人ほど不良が出てきている。

「すごいなぁ、朝一番から何人も早退して。さすが、東京一の不良校。けど、そんな早くに早退するくらいなら、いっそ休めば……いやいや、そこが不良の不良たるカッコ良さなのかも。糸守とは感覚が違うんだよ、きっと」

「おっ、神山。お前も間違えてきたのか!」

「え? 林田くん、間違えたって何が?」

「今日は日曜日だぜ。うっかり登校しちまったよ。オレらバカはカレンダーなんか見ねぇからな」

「おう。休みたい日に休み、登校したい日に登校するんだ。家族が止めてくれねぇと、つい日曜日に来ちまったりな。ははははは!」

 他の不良も笑い、林田が高志の肩を叩いてくる。

「わはははは! けどよ、賢い神山が間違えて登校とは珍しいな。槍でも降るんじゃねぇか」

「いえいえ、私もけっこうカレンダーとか気にしない方ですよ」

「そうか、そうか。あんな数字ばっかり並んでるもん。どうでもいいよなァ!」

「そうそう! 基本、私もカレンダーなんて見ませんよ。今が何年かなんてこと、お正月に確認すれば、もう後は一年間、見ないですから! 曜日の感覚も超テキトーですし! きゃはっははっは!」

「だよな! クロ高に通うアホたる者そうでなくっちゃ! わははははは! ん? オメー、また女っぽいな。もしかして宮水三葉か?」

「っ?! …………わ、……わかるんですか? どうして…」

「さすがにオレみたいなアホでも、女っぽいか、普通の神山かくらいはわかるぞ。そうか、宮水さんか……また、神山に取り憑いて……」

「取り憑く?」

「ぃ、いや、なんでもない。せっかく、こっちに来たんだ。オメー、かなり田舎から来てるんだってな? せっかくだ、東京を楽しんで行け! 思い残すことのねぇように! そうだ、カラオケでも行くか?」

「え?! カラオケ?! カラオケってアプリとかで歌うアレじゃなくて、ちゃんとお店でマイクで歌うアレですか?! 個室とかある! ネットカフェといっしょの?!」

「そうそう。オメー、ネットカフェも行ったことねぇのか?」

「ないの! ぜんぜん無い!」

「よし。たっぷり遊んで行け! 付き合うぜ! 思う存分、思い残すことのないほどにな! クロ高のオレらが付き合ってやれば、東京じゃ無敵よォ。さァ行くぜ!」

「キャー♪ ヤッター!」

 お母さん、とても楽しい日曜日でした、しかも日曜日じゃなかった気がして起きたのに日曜日だったので、とてもお得な気分でした、草々。

 

 

 

 前略、オフクロ様、何の因果か、また私は三葉さんの身体で目が覚めました、と高志は鏡を見つめて考え込む。

「ということは今頃は私の身体に三葉さんがいる……今頃? いや、三年先の私の身体に三葉さんが……」

 考えながら、おっぱいを見ないようにして高志は女子の制服を着ると、髪型を整えるために再び鏡を見る。

「うむ、慣れた73か、オールバック、どちらがいいか。………やはり、おもらしの件もあるから迫力優先でオールバックで行こう。三葉さんも死ぬ前に、おもらし少女として、からかわれたのでは死んでも死にきれまい。ガンつけてくる奴には容赦なくメンチを切っていこう。ん? 眉が少し生えてきているな、きっちり剃っておこう」

 カミソリを探して眉を剃ると、四葉たちと朝食を摂りながら、固定電話とカレンダーを見つめて考えた。

「自宅番号は確認し直した。今なら、中学生のボクに連絡して運命を変えることもできる……いやいや、ダメだ。よく考えたら宇宙の因果を乱すことになるじゃないか。運命は変えてはいけない。どんな悲惨な運命だったとしても、受け入れていくべきなんだ」

「お姉ちゃん、また変になってる」

「四葉ちゃん」

「……何?」

「一日一日を大切に生きてください。人間、必ずしも思っているより長生きでないこともあるのですから。光陰矢のごとし。男子たるもの三日あらば刮目せよと言います」

「女子だし」

「女子ならば、恋など良いでしょう」

「小学4年だし」

「美しい初恋の想い出には、ちょうど良い時期です」

「………オールバックで眉毛剃った人に言われてもなぁ」

「三葉、四葉、早う食べて学校に行き」

「「はい」」

 通学路に出ると、克彦と早耶香に出会った。早耶香が驚いて問う。

「み…三葉ちゃん、その髪型……っていうか、眉毛が…」

「………」

 少し考え、異論を唱えてくる者に対してメンチを切ることにした。

「あん? 何か文句あんのか、アマ」

「ぃ、いえ! 何もありません! すいませんでした!」

 あまりに怖かったので、早耶香は反射的に謝った。見慣れた友人の顔なのに、眉毛が無くてオールバックだと印象が変わりすぎて同一人物と思えないほどだった。その後も三葉の顔を見てくる人物には容赦なくメンチを切っていったので、昼休みになる頃には廊下で道を譲られるようになった。

「うむ、宮水三葉さんとしての生活を守れているな。さて、昼食はテッシーとサヤチンと食べるのが、習慣のようだった。声をかけよう」

 克彦と早耶香に近づいた。

「お昼にしましょう」

「「は、はい!」」

 二人とも素直に校庭の木陰に出て、克彦がイスを用意してくれる。

「どうぞ」

「ありがとう」

 イスに座って校庭を眺めると、気づいた。

「よく考えれば、この木陰、校内で一番いい場所だ。お昼休みに、ここを占拠できている、この三人は糸守高校のウラ番なのかもしれないな。三葉さんは町長の娘で、テッシーは土建屋を牛耳る家系、まさにウラ番」

 弁当を食べ終えて、さらに考え込む。

「さて、ここからが勝負ですね」

「「………」」

「サヤチンに、究極の質問があります」

「な、何でしょう?」

「私こと宮水三葉は、あなたの知る限り処女でしょうか?」

「っ…」

「ぶっ! ごほっ、ごほっ!」

 克彦がお茶を噴いているけれど、三葉の顔が生真面目に早耶香を見つめているので同じ女子として真剣に返答してみる。

「私の知ってる限りは、そうやと思うよ。っていうか、ほぼ絶対バージンじゃないかな。彼氏できたことないし」

「そうですか。では二つめの問いです。女性にとって身体の中で一番見られたくないであろう場所を同意なく、たまたまクジ引きで選ばれたような好きでも何でもない男性に見られ触れられることは、どのくらいの苦痛ですか? しかも、自分が処女である場合で」

「そんなん死ぬほどイヤに決まってるよ!」

「なるほど、やはり。では最期の質問です。いずれ近いうちに処女の自分が死んでしまうとして、ある日とてもオシッコをしたくなったのに両手をケガしたりしていてパンツをおろしたり拭いたりできないとき、クジ引きで選ばれた男性に脱がされたり拭かれたりするのと、処女として大切なものを守り通して死ぬの、どちらを選びますか?」

「…………それって……オシッコを我慢し続けると漏らす状況で?」

「その可能性もあります」

「………………どうして近いうちに死ぬの?」

「それには答えられません。病気かも交通事故かもしれません」

「…………」

「ファイナルアンサー!」

「……守り通して死にたいです」

「ありがとう。覚悟が決まりました」

 すくっと立ち上がった三葉の脚が教室へ向かうので早耶香は心配になる。

「み、三葉ちゃん、朝からトイレに行ってないよね? いっしょに行こう」

「いえ、人として、それはできません」

「「……………」」

 とてもとても心配しながら早耶香と克彦は5時間目の間、三葉の姿を見守っていたけれど、ごく無表情に授業を受けてチャイムを迎えた。恐る恐る早耶香が声をかける。

「三葉ちゃん……トイレに、いっしょに行こう?」

「今、話しかけないでいただけますか。集中が乱れますから」

「…………」

 三葉の顔は無表情だけれど、両肘を机につき、手で額を支え、何かに集中しているし、両膝はピッタリと閉じられている。そして瞳が真剣そのものだった。

「三葉ちゃん………」

 チャイムが鳴り授業が始まる。

「…………」

 もう三葉の手はノートをとっていない、昨日の宮水貞子が動かなかったように今も微動だにせず、時間の流れに耐えている。けれど、授業開始15分で静かな教室に水音が響いた。

 ピチャピチャピチャピチャ…

 三葉が座っているイスの前後から、おしっこが滴っている。

「くっ……限界だったか……だが、前回より長時間……」

 時計を見た三葉の瞳が、講義中の老教師を見て言う。

「先生、お茶を零してしまいました。拭いてよろしいですか?」

「拭いておきなさい」

 年老いた教師は細かいことに気づかず授業を続ける。静かに三葉のお尻が立ち上がると、座ったままの失禁だったので、お尻が大きく濡れていた。

「「「「「……………」」」」」

 どうしてもクラスメートたちが見てしまうけれど、その視線を感じて睨み返すと、誰もが顔を伏せて、何も言わなかった。静かに雑巾で拭き終えると、そのまま何事もなかったように授業を受け、帰りのHRを終え3人で帰宅する。

「なぁ……三葉…」

「はい、何ですか?」

「………いや……何でもない…」

 あまりに平然と言われたので克彦は何も言えなかった。しばらく歩き、今度は早耶香が意を決して告げる。

「ぉ……おもらしするまで我慢する遊び、やめた方がいいよ。膀胱炎になったりするし」

「あれは、お茶です」

「っ…………はい、そうでした。ごめんなさい」

 メンチを切られて早耶香も怖くて漏らしそうだったので、もう黙った。

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