導入部のため東方要素が限りなく無いです。
ビュービューと風が吹く音が聞こえる。
真上には暗澹と広がる空の中に煌煌と輝く満月、真正面には人工の光で輝く摩天楼、そして下には仕事帰りだろうか忙しなく歩く人々に多くの車が小さく見える。
「······やっぱり五階建てだと高いなあ。」
私がいるのは数年前に倒産したとある会社の廃ビルの屋上である。予算などの問題によって取り壊されることなく残り続けているこの廃ビルは世間ではそれなりに有名な心霊スポットだ。しかし、心霊スポットだからといって別に事件や事故が過去にあった訳ではない。聞いた話によると、誰もいないのにどこからともなくヴァイオリンやトランペットにキーボードの音色が聞こえてきたり、薄緑のウェーブのかかったボブの髪で電気を纏う下半身のない幽霊などがでるらしい。だが、それらはすべて下の階での出来事であり、屋上で何かあったという話は聞いたことがない。それなら何故私はそんな廃ビルの屋上に、それも真夜中という時間に来ているのか。簡単な話、私はここに『自殺』しに来たのだ。
「若者の死亡原因の一位が自殺っていうのもよくわかる気がする。」
私は高校生までは順調な人生を歩んできたと思っている。小学校、中学校と多くの友達ができ、部活でも表彰されたことだって何回もある。高校も第一希望の高校に入学でき勉強もしっかりとし、授業もついていけていた。しかし、私は大学受験において第一希望の大学に落ち、あまつさえ第二希望さえも落ちてしまった。親からまた来年があると慰められた。だが、一浪し必死に勉強した上での二回目の大学受験でも落ちてしまった。それからだろう、自分の周りの世界が急に輝きを失ったのは。毎日をただ何もせず無意味に過ごし、自室に引きこもっていった。それから一年が経ち、今私はこうして自殺するためにここにやって来たのだ。
「ふふっ、下手に落ちて死ねなかったら意味が無いから、確実に死ねるように上手に落ちないといけないなあ。」
先ほどからポケットに入れてあるスマホが震えている。おそらく私の書いた遺書を見た親がかけてきているのだろうが、まあ、無視しておけばいいだろう。別に話すことも何も無いし。······さて、そろそろ良いかな。
「有名な心霊スポットで死ぬんだから幽霊や人外のひとつやふたつは死ぬ前に一度見ておきたかったかな。まあ、そういうのは信じてはいないけどね。」
私は屋上の端に靴を脱いで立つ。真正面から吹く強い風がまるで私の自殺を止めるかのように私の髪や服をなびかせる。
「でももし、この世に輪廻転生があるならば、次はもっと良い人生歩めますように。」
心の底からそう願いながら私は一歩踏み出し空にその身を任せた。
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