その便意が物語を変えた   作:ざんじばる

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いやー。たまには朝に投稿するのもいいものですねー
(酔っ払って気付いたら寝ていたわけではない)




02.春を愛する人

 

「ただまー」

 

 俺はお土産を手にアパートへ戻った。

 今日は弟子二人の他にJS研メンバーも勢揃いしている賑やかな日だ。

 

「あっ! くじゅりゅー先生! お帰りなさい!!」

 

「ただいま、澪ちゃん」

 

居間から顔を出して出迎えてくれたのはあいのクラスメイトにして将棋仲間の水越澪ちゃん小学四年生だ。

 

「お帰りなさいです、先生」

 

「はい、ただいま。綾乃ちゃん」

 

 続いて貞任綾乃ちゃん。京都出身のお嬢様風メガネJSだ。そして———

 

「ちちょー! おかえりー!」

 

「ただいま! シャルちゃん♡ 待たせちゃったね♡」

 

 金色のふわふわ天使ことシャルロット・イゾアールちゃん、御年6つだ。

 かわいくて、かわいくて、震える。

 

 この3人に弟子の『あい』2人を加えてJS研だ。

 月2回から3回、俺のアパートに集まってみんなで将棋を指すというシンプルな集まりなのだが、周囲の目は厳しい。

 世知辛いものだ。昭和の時代は地域皆で子供を育てるということが当たり前だったというのに。平成の世の人心の荒廃が俺のことをやれロリコンだとか性犯罪者だとか後ろ指ささせるのだ。

 ※八一は2000年生まれです。

 

 だが俺はその程度で屈しない。将棋界の未来のため子供達を教え導くことに何の躊躇があろうか。俺は竜王、九頭竜八一! 将棋界の最高位! 退かぬ! 媚びぬ! 省みぬぅ!!

 

「ちちょー。しゃうね? ちちょにね? おねがいがあぅんだよー?」

 

「うん? シャルちゃん、お願いって?」

 

「あっ! ちょっと師匠———」

 

「だめです。先生———」

 

 あいと綾野ちゃんの二人が止めに入るが時既に遅し。

 

「あのね。しゃうをね。ちちょーのね。でちにしてくだしゃい」

 

 へ?

 

「……シャルちゃん、俺の弟子になりたいの?」

 

「ん!」

 

 頷きながら俺に抱きついてくるシャルちゃん。

 だめ。のうみしょとろけちゃう。天使すぎんだろ、jk。

 だがぎりぎりのところで耐える。将棋の道は長く険しい。俺について弟子になるということは一生をかける覚悟となにより才能が求められる。

 シャルちゃんが天使なのはいうまでもないが、それとこれとは別の話だ。

 残念ながらシャルちゃんに天衣やあいほどの才能は感じない。俺が大成させてあげられるとも思えない。

 断腸の思いだ。だが伝えなければならない。

 

「ごめん。シャルちゃん……俺は君の師匠にはなれない……」

 

 天使の瞳に涙が浮かぶ。すまない……すまない……

 

「ふぇ……?しゃう……ちちょのでちぃになえないの?」

 

「……ああ。すまない」

 

「なんでぇー!? なんでしゃうはだめなのぉー!?」

 

 ああ、ついに天使が泣き始めてしまった……

 あいたちもおろおろとするばかりだ。

 

 たしかに俺にシャルちゃんの師匠になれるだけの力はない。

 だけど願わくば神よ

 俺に目の前の幼子の涙をぬぐうだけの力を──

 

 シャルちゃんの心に流れる涙を、俺の飛車で(以下略)

 雨模様のシャルちゃんの心に、俺の角で(以下略)

 ※略した部分は原作2巻を参照ください

 

「シャルちゃんを俺の弟子にすることはできない。だけど俺のよ」

 

「よ……?」

 

 

 嫁にしてあげるよと言おうとしたその時、俺の脳裏に閃光が走る!

 

『好き! 好き! 八一先生! 天衣を師匠のお嫁さんにして!!』

 

 そうだ! 俺には既に嫁がいるんだった! 

 これでは……シャルちゃんを……お嫁さんにしてあげることはでき……ない。

 一体どうすれば……

 

 そうだッ!!

 

「よし! おれの愛人にしてあげるよ!」

 

 そのとき俺とシャルちゃん以外の空気が凍った。

 

「あいじぅー?」

 

「そう。愛する人と書いて愛人だよ?」

 

「あいすぅー!! しゃうね! しゃうね! ちちょーのことだいすぅきなんだよー♡」

 

「はっはっはっ。俺もシャルちゃんのこと愛してるよ」

 

 よかった。天使が笑ってくれた。

 俺はドヤ顔であいを見る。泣き出したシャルちゃんになすすべもなかったあいも俺に尊敬の眼差しを……おっとゴミでも見るような目ですね。

 

 「ししょーのだら! 変態ッ!! ド変態!! DER変態!! 変態大人ッ!! 小学生の女の子を愛人とか、何考えてるんですか!? このロリ王ッッ!!」

 

 なぜ人はわかり合えないのだろう……

 俺は救いを求めて天衣を見る。……おっとこちらもゴミでも見るような目ですね。

 

「……きもっ」

 

 辛辣ぅー!

 

 そして他のJS達からも、

 

「そうだよ! くじゅりゅう先生!!」

 

「見損ないましたです!」

 

 OH……大惨事。

 

「だいたいですね———」

 

 まだ何かあるのか、あい? もう師匠のライフは0よ。

 

「シャルちゃんが愛人ってことは本妻は誰なんですかっ!?」

 

「「「えっ!? そっち!?」」」

 

まさかのあいの追求に思わず突っ込む一同。(天衣のぞく)

 

 

 

こうして、JS達と囲む夕べは賑やかに過ぎていくのであった。

 

 




■原作との違い
・天ちゃん、JS研メンバーの一員に
・天ちゃん、シャルちゃんの婚約をブロック
・八一、シャルちゃんを愛人にする

果たしてこのことが外に漏れたら八一の社会的命はどうなってしまうのか……

※2月10日12:37追記:活動報告にちょっとした新情報をアップしました。よろしければご確認ください。

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