その便意が物語を変えた   作:ざんじばる

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06.サヨナラバス(乗車寸前)

 

 

 

 今日は生石さんとの研究会(一方的な指導とも言う)はお休みだ。

 なんでも奨励会員との研究会をする日のため俺たちの相手はできないとのことだ。竜王が研究会を申し込んでも渋るくせに奨励会員とは研究会をするとはどういうことなのか……。納得いかない。

 その間道場も銭湯も好きに使って良いとのことなので久しぶりに弟子達への指導with JS研を開催することとあいなった。

 

「「おじゃましまーす!!!」」

 

 やってきたのは天衣やあいと同学年の澪ちゃんと綾乃ちゃん。そして———

 

「ちちょー、おしゃまぁすぅよぉー」

 

 天使すぎる天使ことシャルロット・イゾアールちゃん(小一)だ。

 天使達を歓待せねばなるまい。俺の全身全霊で。

 

「いらっしゃいみんな。先にお風呂にする? それとも将棋にする? そ・れ・と・も・お・れ?」

 

 ———その時、世界は氷に閉ざされた。

 

 

 

「もしもし? 今、京橋のゴキゲンの湯っていう銭湯に極めて残念な変質し———」

 

「おい、ちょっと待て!? 何してるんだ天衣!?」

 

 咄嗟に天衣のスマホを取り上げると、光の速さで終話ボタンを押す。

 

「目に余る気持ち悪さだったから、市民の義務として警察に通報しておこうと思って」

 

 止めて!? 明日の朝刊に載っちゃう!?

 

「た、単なる冗談だろ!? そこまでしなくても———」

 

「師匠……今のはないです。普通にキモいです」

 

 普段俺マンセーのあいにすらキモいって言われた!?

 

「そうだよ! くじゅるーせんせー! とってもキモかったよ?」

 

「弁護のしようがないです。ギャグにしてもキモすぎでしたです」

 

 止めてくれ。JSからキモいの集中砲火はさすがに俺に効く。

 

「反省します……」

 

「おー?」

 

 今のやり取りがよく分かってなかったシャルちゃんだけが俺の救いだ。

 

 

 

 

 やはりというかまずは将棋となったみんなは俺や道場のお客さんとこの後、滅茶苦茶将棋指した。

 そしてようやくお風呂タイムとなったのである。

 みんなを女湯に送り出して俺もついでに入っておこうと男湯に向かう。そうして脱衣所で着替えを始めた所でトテトテと金色の天使がやってきたのだ。

 

「ちちょー♡ しゃうもちちょといっしょにおふりょはいぅよー?」

 

 ……えっと?

 

「……シャルちゃん俺といっしょにお風呂入りたいの?」

 

「しょうだよー? だってしゃう、ちちょーのあいじぅだからぁ」

 

 そうか。愛人ならいっしょにお風呂に入るのも普通だな。

 よぉしお兄さん、シャルちゃんの背中いっぱい流しちゃうぞー。

 

 

 

 ってそんなわけにいくか!?

 シャルちゃんのあまりに巧妙な話術に危うく乗せられてしまうところだった。

 だけどどう考えてもそれはいかんでしょ。

 さっきの天衣の通報が途中で切れたのを不審に思い、警察がここを見に来る可能性もないとは言えない。疑われかねない行動は断固として慎むべし。

 

 シャルちゃんには悪いがなんとか諦めてもらって———

 

「ああーっ! 澪も! 澪もいっしょに入るー!」

 

 シャルちゃんを追ってきていた澪ちゃんもなぜか乗ってきて。

 

「あの……みんなが入るならうちも付き合うです……」

 

 さらに綾乃ちゃんが続く。

 さっき暴落したはずの九頭竜株に大暴騰の兆しだ———!

 その気持ちはとても嬉しいのだが、ぽりすめぇんが現れる可能性のある銭湯でJSに囲まれながら入浴する勇気は俺には……ない……。

 どうにか諦めてもらわねばとは思いながらも、すっかり盛り上がる三人をどう押し止めたものか……?

 

 心底困っていた俺に救いの手をさしのべたのは意外な人物だった。

 

「もぉーみんな! 師匠が困ってるでしょ! 馬鹿なこと言ってないで女湯に戻るよ!」

 

「えー!? そんなぁ! あいちゃんはくじゅるー先生といっしょに入りたくないのー?」

 

 そう。みんなを止めにかかったのはあいだった。

 

「ダンジョナナサイニシテセキヲオナジウセズ、だよ!」

 

「おー? しゃうろくしゃいだぉー?」

 

「もんどうむようです!!」

 

「……なんか怪しい」

 

「……怪しいです。普通ならあいちゃんが一番いっしょに入りたがるはずなのに」

 

「そ、そんなことないよ!?」

 

 確かに。この間の銭湯での乱入事件を考えてもあいが止める側に回るのは意外だ。

 

「逆よ。この間自分は貴方と混浴しているからそのリードを守るために今回は阻止に回っているんでしょう」

 

 俺の腑に落ちない顔から心を読んだのかいつの間にか隣にいた天衣がそう囁いてくる。なるほど。

 ちなみにみんな脱衣途中に飛び出してきたのか下着姿だが天衣だけはきっちり服を着ている。チッ。

 

 ともかくあいの必死の説得により混浴は回避された。飛鳥ちゃんによるとそのちょっと後にお巡りさんが巡回に来て何も起きていないか確認していったらしい。

 

 

 

 危なかった……

 

 

 




■原作との違い
・八一、悪ノリ後やけど
・あいちゃん反対派に
・お巡りさん、徒労

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