その便意が物語を変えた   作:ざんじばる

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04.戦慄、鬼の住む家(印象)

 翌日、紹介された夜叉神さんのお宅へ早速行ってみた。

 

「なぁにこれぇ?」

 

 神戸、灘区。六甲山の麓の閑静な住宅地、その中にそのお屋敷はたっていた。まるで要塞と見紛うほどの大きさだが。

 

「おい」

 

 そのお屋敷のあまりの威容に圧倒されて立ちすくんでいた俺の後ろから女性の、しかしドスのきいた声がかけられる。

 振り向くと黒スーツにサングラスの若い女性。美人で胸が大きい(重要)。

 だがどう見ても『ヤ』のつく職業の方に見受けられる。辛い。

 

「九頭竜八一先生……でいらっしゃいますね?」

 

「人違いです」

 

 肩を掴まれ、俺の写った雑誌――将棋世界竜王特集を顔の横に並べられる。

 

「九頭竜八一先生……でいらっしゃいますね?」

 

「はい…… そういえばそうでした……」

 

「先生のご到着だ!」

 

 美人さんが声を張ると、門が開き出す。するとその中には──────

 

 

 なんということでしょう。玉砂利を敷き詰めた美しい石庭には、これまた折り目美しい、背広を着た精悍なお兄さん達が整列し、膝をついてお出迎えしてくれています。

 

 

「先生!お疲れ様です!!」

 

 うん。これあかんやつや。

 

 ビフォーアフター的に語って、現実から目を逸らそうとしたけど駄目だった。むしろこの屋敷に入る俺のビフォーアフターを心配しなければならない。

 俺は心の中で大切な人たち──師匠と姉弟子を思った。浮かんだのは最後に見た彼らの姿。全てを解放し恍惚とする師匠。そして悲劇に襲われ、白目を剥く姉弟子だった。

 勇気をもらおうとしてかえってげんなりとした俺は改めて桂香さんを思った。帰りたくなった。今すぐ桂香さんの巨乳に逢いに。

 

 さらには陣太鼓まで鳴り出すとあってはもはや誤解しようもない。ヤクザやさんだ。

 今すぐ帰りたい気持ちでいっぱいの俺を、黒スーツのお姉さんがグイグイ押し込んでいく。

 やめ─── やめろぉぉ───

 俺も懸命な抵抗をしたが、背中に何か硬いものが押し当てられるに至り、すべて流れに身を任せることにしたのだった。

 どうせなら柔らかいものを押し当ててほしかった。それでも俺は抵抗できなくなっていたであろう。

 

 そうして玄関まで来た俺を一人の老紳士が出迎えた。

 

「この度は遠路お越しいただき、ありがとうございます。九頭竜先生」

 

「こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。それに私のような若輩者をこんなに歓迎していただいて。何だかかえって申し訳ないです」

 

 一縷の望みをかけて、俺は帰りたいオーラを滲ませる。

 

「いえいえ、月光会長と鬼沢さん、お二人揃ってご推薦いただけるほどの方をお迎えできるなど、本当に光栄です」

 

「あの二人が私を・・・・・・?」

 

 おのれぇ!鬼沢!お前もか!!

 俺の知らないところで何言っちゃってくれてんの!?

 ※鬼沢さんの詳細については原作(神)2巻を(以下略)

 

「ええ。私の孫娘の師としてこれ以上ない方だと。どうぞこちらへ――」

 

 夜叉神師に奥へと案内される。背後からはあの黒スーツのお姉さんがぴったりと着いてきている。即ち逃げ場はない。

 

「これが孫娘の天衣になります」

 

 夜叉と天女の描かれた襖を夜叉神師が開く。

 

 そして―――

 

 

 

 その日、俺は運命に出会った―――

 

 

 




■原作との違い
 ・夜叉神邸訪問前倒し。
 ・初JS効果で印象値原作比10倍

天ちゃんと邂逅した八一の心境は、セ○バーに出会ったシ○ウ程度とお考えください。
「問おう、貴方が私のマスター(師匠)か?」

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