ということで日頃よりご愛読いただいている皆様ありがとうございます。
引き続きよろしくお願いします。
「すげえええええええええええええええEEEEEEEEEEEEEEーーーーーーッ!!」
豪華リムジンで移動した先はハワイでも最高級のホテル。広大な中庭には、例のプールとは比べものにならないほど広大なプールを完備。その向こうには白い砂浜が眩しいプライベートビーチが広がっている。
これはテンションが上がらざるを得ない! が
「キャッホーーーーーーウ!! わしが一番乗りやぁぁぁーーーーーーー!!」
それ以上に我慢できなかったのは我が師匠、清滝鋼介御年50歳だ。ビニサンで砂浜を蹴立てて、オッサンが駆けていく。俺たちも師匠を追いかける。
海をバックに一門の集合写真を撮影、その後アロハに着替えて名人と記念撮影。ちなみに撮影してくれたのは観戦記者兼カメラマンの鵠さんだ。
その後名人一行と別れ、ホテルの自室まで案内されることに。途中、中庭にある教会についてスタッフから結婚式場として人気なのだと説明があった。
「はぁ……すてき♡ こんな場所で結婚式ができたら、本当に幸せでしょうね……♡」
とは桂香さん談である。あいといっしょに大盛り上がりだ。姉弟子は特に感慨はないようだが。意外だったのは、最後尾をついてきていた天衣もじっと教会を見上げていることだ。天衣もやはり女の子。こういったものには興味があるのだろうか。どこかぼぉっとした、だけど熱の籠もった視線を向けている。
「天衣もこういうの興味あるんだな。なんだったら対局が終わったら俺と二人で式を挙げていくか?」
「……ッ!? き——」
俺の軽口にワンテンポ遅れて天衣が気付き、抗議の声をあげようとしたがその前に外から強烈なツッコミが寄せられた。
「ぶちころすぞ、ロリ王」
そう言って姉弟子が俺の膝裏にヤクザキック。
「9歳の女の子と結婚なんてできませんよ。ししょーのだら」
そう言って倒れた俺の背中を二番弟子がストンピング。
「あぎッ」
「……………………はぁ」
俺の悲鳴と天衣の呆れた声で一連の新喜劇は幕を閉じるのだった。
その後、ホテルのエレベーターでみんなと別れ、対局者専用の個室に案内された。これまたオーシャンビューの素晴らしい部屋で、こっそり着いてきていたあいが歓声を上げる。その後、ホテルスタッフからあいとの関係を疑われ、性犯罪者のように見られたり、『ひな鶴』の女将さん(あいのお母さん)が宿泊業界ではワールドワイドに有名人だったことが判明したが、これは別の話だ。
◇
翌日、清滝一門の皆でプライベートビーチに来ていた。やはりハワイに来たからには海を堪能しなければなるまい。俺は今、女性陣が水着に着替えてくるのを待っているところだ。姉弟子は日差しに弱いため、制服に日傘といつもの格好だが。
「よほほーい♪」
師匠は、一足先に渚で波と戯れている。美しいハワイのビーチの中であまりに美しくない光景だった。オッサン自重しろ。
「師匠、お待たせしましたー」
「八一君、お待たせ」
女性陣が着替えて出てきたようだ。振り向くと———
「し、ししょー?」
「自然吸気2ℓ高回転エンジンを軽自動車並のボディに収めた、キビキビとした軽快な走りを実現したスポーティモデル」
「八一君、何を言って?」
「ミッションにはGETRAGの六速マニュアルを主にマルチリンク+ベルシュタインの足回りはマッシヴ。暴力的なパワーをたたき出す過給器付きV8ユニットの特性はピーキーでヒステリック。周囲を圧倒するわがままなブリスターフェンダーはリアルスポーツの———」
「何わけわからないこと言っとるんじゃ、われ!」
ドゲシッ
「痛いッ!?……ってあれ、姉弟子?」
姉弟子の蹴りで俺は我に返った。
「大丈夫、八一君? 意味不明なこと言っていたけど」
「そ、そうですか? いやー、二人ともとてもよく似合ってるから取り乱しちゃいました」
「そう? ありがとう、八一君」
「そんな、師匠……似合ってるなんて……恥ずかしいですー」
桂香さんは特に動揺することなく、あいは恥ずかしそうに俺の褒め言葉を受け止めた。
桂香さんはホルターネックのビキニを着ているが、そのわがままボディを包み込むにはやや頼りなく、今にもキャストオフしてしまいそうな危うい魅力がある。
あいは面積広め、フリルたっぷりの白いビキニを着ている。かわいさの相乗効果で非常に眩しい。
「全く、海外に来ても騒がしいのね。貴方達は」
この声は天衣か。どれ。どんな水着を選んだのかな?
振り向くとそこには……妖精がいた。
ほっそりとした肢体にフリルで飾られた黒のチューブトップタイプのビキニを身につけている。ビキニのポイントポイントには赤の小さなリボンが付いておりアクセントとなっている。黒いビキニの生地が白い肌をより強調していている。白黒のコントラストが効いていて周囲から浮かび上がってみえる。
「八一先生?」
「……きれいだ」
「ッな!? 貴方何言って!?」
「あ、いや。……普通に見とれてた」
「ッ……!!」
顔を赤くする天衣。照れてるのだろうか?
「そうだ、天衣。写真を撮らせてくれよ。晶さんから頼まれてるんだ」
「嫌よ。なんかキモいから」
嫌よ嫌よも好きのうち。天衣の反対を無視してスマホのカメラを向ける。
「さぁ、天衣ちゃん。ポーズ取って」
「はぁ? だから嫌だって言ってるでしょ」
ひとまず無視してパシャリ。
「何撮って」
「いいよー。かわいいよー」
パシャリ、パシャリ。
「だから何撮ってるのよ!」
パシャパシャパシャパシャパシャッ
「イイ! これはイイよぉ!!」
パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャッ
「ちょっと! いいかげんに!」
天衣が恥ずかしがって、体を手で隠す。だけで何か逆にエロティックだ。
「イイイイイイイイッ!! イイよぉぉぉぉぉぉッ!! 富竹フッ!?」
ドゲシッ
後ろから蹴りが飛んできてシャッターチャンスを逃す。
「なんだよ!? 今いいところな……のに」
振り返ると、そこには阿形と吽形がいた。
「ぶちころずぞわれ」
「だらぶち」
「……あ、はい」
◇
その日、俺はワイキキヨットクラブで将棋イベントに出て、その後ショッピングモールをぶらついてからホテルに帰ってきた。そしてホテルの中庭で行われている前夜祭に参加している。今はちょうど月光会長が挨拶をしているところだ。
その挨拶の途中でどよめきが起こった。清滝一門の女性陣が『ムームー』というハワイのドレスを着て会場に現われたからだ。抜群のプロポーションを誇る桂香さんはその豊かな胸がこぼれ落ちんばかりに。……ムームーってこんなやらしい衣装なんだね。対して姉弟子と俺の弟子たちはタオル巻いたみたいになってる。すとーんだからね、仕方ないね。胸囲の格差社会よ……。まあ、みんなJS・JCということで将来性に期待だ。
その後、俺と名人から挨拶をし、花束代わりにレイを掛けてもらう。名人には日本領事の娘さんが、俺には二人の弟子が手作りのレイを掛けてくれた。領事の娘さんもかわいらしかったが、こちらは超アイドル級の二人。ビジュアル面では圧勝だ。俺も鼻が高い。なおこの場にいるもう一人の超アイドル級女性から冷ややかな視線が飛んできている模様。あれ? 南国のはずなのに超寒いよ?
さらに会長はサプライズを仕込んでいた。
『ただいま竜王にレイを掛けてくださった雛鶴あいさんの、十歳のお誕生日なのです!』
そう宣言した会長が用意していたプレゼントは——
「詰将棋のケーキ!」
そう。あいが歓声を上げたとおり、将棋盤ごと詰将棋を再現した大きなケーキだった。プレゼントのセンスといい卒がなさ過ぎる。さすが永世名人。これがモテる男の仕事か。
とはいえ、そんな会長にも読み切れないものがあったらしい。それはあいの詰将棋を解くスピード。会長が得意げに説明をしている途中であいが詰将棋を解いてネタバレしてしまったのだ。会長、(´・ω・`) みたいな表情になってる。27手詰めじゃ秒殺ですわ。ある程度喋る時間を確保するには、その三倍は持ってこないと。
けれどあいの凄さは十分伝わったらしい。歓声をあげるギャラリーにあいが囲まれる。これじゃ近づけそうにないな。俺は天衣に話しかけることにする。
「天衣、楽しんでるか?」
「見世物になっているみたいで気にくわないわね。さっさと引き上げたいわ」
「そうか。まあその格好、とてもかわいいからな」
「ッ!……そう」
咄嗟に反論しそうになり、抑える天衣。
「黒以外も似合うじゃないか。もっと普段から色々着ればいいのに」
天衣は青色のムームーを着ていた。深い海の色に白い花が咲き乱れる上品ながらも華やかなデザインだ。普段、黒のゴスロリ系の服ばかりのイメージなので新鮮だ。起伏がないので、すとーんなのだがチュニックタイプのためか裸にタオルを巻いているようにも見えて、不思議な色気がある。
「ッーーー! ……考えておくわ」
そう、ムームーの裾を引っ張りながら言う。
「おう。もっといろんな天衣を師匠に見せてくれな」
そう言いながら俺は天衣の頭を撫でる。天衣は顔を赤くして俯いてしまう。
そうして、ハワイでの最後の穏やかな日は過ぎていった。
いよいよ名人との竜王位をかけた長い勝負が幕を上げようとしていた。
■原作との違い
・八一、天ちゃんと挙式しようと持ちかける
・水着イベント発生
・天ちゃんムームーを着る
次回から対名人第一局です。
が、ちょっとこのところあまり書く時間が確保できず間が空きそうです。