その便意が物語を変えた   作:ざんじばる

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06.成立、新たなる師弟

 悔しさのあまりこぼれたツンJSの涙、プライスレス。

 

「最後の最後まで俺の攻撃をしのぎ続け、逆撃を諦めなかった胆力は素晴らしい。だが実力はまだまだだな」

 あの後、行っていた感想戦を俺はそう締めくくった。死体蹴りではない。

 

 天衣はボロボロと涙を流しながら、無言で立ちあがる。

「挨拶!」

 立ち去ろうとする彼女にそう声をかける。重ねていう、死体蹴りではない。

 JSをいじめて俺のS心を満たしているわけではないのだ。

「・・・・・・ありがとうございましたッ」

 そう吐き捨てるようにいい、今度こそ部屋をでようとする彼女に最後の言葉をかける。

 いじめていたわけではない証拠に優しく、優しく。飴と鞭という言葉は聞きたくない。

「天衣、俺は、俺の力は君の師匠に相応しかったか?」

 天衣はこちらを振り返り、そして涙はそのままだが頬を上気させて答える。

「そんなの、言わなくてもわかるでしょうっ・・・!」

 そしてそのまま部屋から駆けだしていく。

 その後を黒服の女性が追いかけていき、部屋には俺と夜叉神氏が残された。

 

 俺は、彼女が最後に見せた表情に、不思議な感覚に襲われていた。

 紅玉の瞳、そこに輝く涙。そして赤らんだ頬。脳裏に浮かべると何かこう、もにゅもにゅする。

 この感情はいったい・・・。

 そう、いとしi、いや違う!相手は9歳のお子様だぞ。そして俺は由緒正しき年上系巨乳党!

 大小何でもよしの日本おっぱい党党首とは違うんだ!

 これはそう、保護欲だ、有望な弟子候補に対する!

 

 そんな葛藤をしている横で夜叉神氏が長い深い溜息を漏らし、俺は我に返った。

「すみません。少しやりすぎてしまったようで・・・」

「いやあれでよろしい。それに先生も手応えを感じていただけたのでは?」

 きっぱりと夜叉神氏は言った。

 

 そう。確かな手応えがあった。

 天衣の才能を確認し、そして弟子をとるという意思と覚悟も固まった。

「それで、先生。天衣を指導していただく件ですが」

「はい、天衣さんは非常におもしろい才能をお持ちです。私が是非育ててみたい。まだまだ若輩の身ではありますが、お任せいただけるのなら幸いです」

「ありがとうございます、先生。天衣のことなにとぞよろしくお願いします」

 夜叉神氏はそういって、深々と腰を折ったのだった。

 

 その後、夜叉神氏と天衣の指導方針について話をし、本人への伝達と、指導の初動のため、今日から数日泊めてもらうことになった。

 そして、弟子取りの件を会長に報告するため、一人にしてもらった俺は早速電話をかける。

「会長!何ですかありゃ?完全に極道ファミリーじゃないっすか!」

 開口一番、俺は会長にくってかかる。結果的にうまくいったが、それとこれとは別である。

 例え永世名人相手とはいえビシッと言ってやる。リュウオウエンリョシナイ。

 

『人聞きの悪いことを言わないでください。日本将棋連盟は公益社団法人です。反社会的勢力とつながりがあるわけないでしょう?』

「ですが―――」

『確かに夜叉神会長の過去にそういった経緯はありますが、現在は建設業、芸能プロダクション、警備会社、パチンコ遊技台開発などの事業を手広く営んでおられるまっとうな事業家です』

「・・・・・・まっとうと言うには、今会長があげた事業には偏りがありませんか?」

『偏見です。会社の役員には警察OBの方々も名を連ねています。何の問題もありません』

 これが大人のやり方かよぉ・・・・・・。

 

『それで?弟子取りの件、引き受けていただけましたか?』

「はい、それは滞りなく。本人もかなりの才能です」

『それはよかった。これからの貴方たちの活躍を期待していますよ。竜王』

 名人には勝てなかったよ・・・・。

 

 

 そして、この夜は夜叉神氏に用意してもらった部屋に泊まった。滅茶苦茶泣き寝入りした。

 

 




■原作との違い
 ・天ちゃんの好感度が増しているため、やや素直
 ・八一は(会長の策略で)弟子をとるつもりでいたので、無事天ちゃんが一番弟子に【朗報】
 ・会長の根回し+弟子取り成功により八一、数日間夜叉神邸に逗留
 ・あいちゃん、八一が帰宅しなかったため、また会えず【悲報】

天衣ちゃんのご両親情報開示は先送りすることにしました。
どこかで師弟の絆イベントとして使いたいと思います。
まあ、どこにも入れられず、しれっと改版して本章に付け足すかも知れませんが。


感想並びに評価を入れていただいた皆様、ありがとうございます。
また、個別の返信は改めて。取り急ぎここで御礼申し上げます。
初投稿への初体験に作者、感謝感激の舞を舞っております。

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