その便意が物語を変えた   作:ざんじばる

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んんwww
誤投下はありえないwww
眠さに負けて間違って予約投稿設定をするなんてあるわけないですぞwww







正直済まんかった。


盤外戦
1-00.灰被りの願い


私はお姫様にはなれなかった。

 

女の子はみんな、幼い時分は自分のことをお姫様のように思うものではないだろうか。世界は自分を中心に回っていて、自分は全てから愛されているのだと。

 

幼い頃の私も自分のことをお姫様のように思っていた。いえ、私の年齢は9歳なので今も世間一般的には十分幼いのだろうけれど。とにかく今よりももっと幼かった時分のこと。

 

けれども。両親が亡くなったあの時に、世界は自分の思うようにはいかないものなのだと痛感させられた。世界は決して私を中心に回っているわけではなかった。

 

そして今。ガラスの靴が自分の前を通り過ぎて他の女の子のものになったことを知って、またもそのことを思い知らされるのだ。私はお伽噺の主人公などではなく、お姫様になりあがるチャンスもない、単なる灰被りに過ぎないのだと。

 

あの人が。私と同い年の女の子を弟子にとったと聞いた時、私が思ったのはそんなことだった。

 

けれどそれも仕方のないことだ。私はただあの人がいつか迎えにきてくれるのではないかと待ち焦がれるばかりで、自ら動き出そうとはしなかったのだから。

 

だというのにその女の子に嫉妬したり、あの人に苛立ちを感じてしまうあたり、そもそもお姫様にふさわしい女の子ではなかったのだろう。私という存在は。

 

ああ、だけど。いつまでも未練たらしく忘れることもできないでいるのだ。

 

 

 

 

 

 

その日、お爺さまからあの人が私の将棋の指導をするために聞いた時に浮かんだのは激しい怒りと少しの期待だった。

 

今更なにをしに来るのだと思いながらも、もしかしたらあの約束を思い出してくれたのかしらという一縷の期待を持ってしまうことがたまらなく情けなかった。だからだろうか。あの人と顔を合わせた時にあのような失礼な態度をとってしまったのは。

 

けれどあの人は、そんな私を見捨てることなく懐へ受け入れてくれた。今思い返せば、あれは単なる好意というだけではなく、彼なりに事情や打算があってのことだったのだろう。それでもあの時の私は嬉しくて、でも腹立たしくもあって、そしてやはり彼にとっては二番目なのだと知って落ち込んで。そんなふうに一喜一憂していた。

 

あの人がいる生活は続いて、私はあの人への思いを自分に対しても誤魔化して。でもあの時。その誤魔化しは……ついに誤魔化しきれなくなって。思いを自覚した。

 

私は思いを叶えるために今度こそはと立ち上がって。灰にまみれようが泥にまみれようが、最後に勝つのは私だって。あの人の心を手に入れるのは———

 

 

 

そして、王子様は別のお姫様を選んだ。

 

 

 

 

 

 

神様。もし私が。貴方の御技で。あの人の初めての女の子になれたのなら。その時はきっと。

 

素直な気持ちで。私の全てで。

 

 

 

信じてもいない。それどころか憎しみの対象であったはずの神様へ、そんなことを願った。




神様「その願い叶えて進ぜよう。むぅん!」



師匠「おぅふ!? 腹にギュンと来た!」

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