Deap Ocean   作:ナルミヤ

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No.6 ヴィランなんてくそくらえ

「ハァ・・・ハァ・・・。皆無事かな」

 

 燃え上がる建物の間をくぐり抜けながら、尾白は呟く。

 火災ゾーンに送られた尾白。送られた瞬間、大量の敵が襲撃してきたがそれをいちいち相手にするのは得策ではないと判断し、ヒット&アウェイで何とか切り抜けていた。

 

「皆俺と同じで一人なのかな。そうだったら早く合流しないと・・・!」

 

 クラスメイトを探しつつ火災ゾーンの出口を探す尾白だったが、

 

 

──────ぎゃああああ!!

 

 

 遠方から微かに聞こえた悲鳴に足を止める。

 

「今の悲鳴・・・! もしかして誰か戦っているのか!?」

 

 悲鳴の主が誰かは分からないが、もしクラスメイトだったら─────。そう考えた瞬間、尾白は声の聞こえた全速力で駆け出していた。

 

 

 

 *

 

 

 

(な、何だよこれ・・・)

 

 尾白は目の前に広がる光景に絶句していた。

 

 彼が今立っているその場は赤く染まっていた。ただし『炎』ではない。そこに倒れている(ヴィラン)たち。腹を押さえて呻く者、何かに押しつぶされたかのように手足がひしゃげた者、白目をむいて気絶している者。彼らから流れている『血』によって辺り一面真っ赤だった。

 そんな死屍累々の真ん中で一人の少年が敵の胸ぐらを掴んでいた。敵はひどく怯えた表情をしている。

 

「お前らはどうやってオールマイトを殺すつもりだ?」

「ひ、広場に居た全身掌の奴と靄みたいな奴、あいつらが・・・脳みそむき出しの顔面が鳥みたいな奴のことを『対オールマイト用』とか呼んでた・・・」

「そいつらの”個性”は?」

「詳しくは知らねえ・・・。靄みたいな奴がワープ系ってことしか・・・。ほ、本当だ!! これ以上は何も知らない!!」

「そうか・・・。じゃあ眠ってもらおうか」

「!! おい待ってくれ!! 知ってること全部話したら逃がしてくれるって約束したじゃないか!!?」

「約束?────────」

 

 

 

 

 

 

「────────虫けらと約束なんざするわけないだろ。」

 

 

 

 背筋も凍るような冷たい声色と共に少年の手から伸びた水が、敵の顔を包み込む。鼻と口を塞がれた敵は何とか気道をを確保しようともがくが、流動体である水を引きはがすことができない。敵はだんだん動きが鈍くなり、終いには力なく地面に倒れ伏した。

 

 その凄惨な場面を見ていた尾白はたまらず逃げ出しそうになる。

 しかし、ひとつ確認しなければならない。少年の髪色、服装、声はどれも記憶の中の友人に当てはまる。

 

「・・・・・・天海?」

 

 尾白がその名を口にした瞬間、少年は両足から水を噴射して猛スピードで向かってきた。

 少年から発せられる殺気に気圧され、尾白はたまらず眼を瞑る。

 

 しかし、いつまでたっても攻撃されない。

 

「尾白?」

 

 自分の名を呼ばれゆっくりと眼を開くと、そこにはいつもと変わらぬ天海が不思議そうな顔でこちらを覗き込んでいた。

 

「もしかして驚かせちまったか?」

「う、うん。急に突っ込んでくるから・・・」

「悪いな。ちょっとピリピリしてた」

 

 普段通りの口調で喋る天海だったが、尾白にとっては変化が大きすぎて、かえって気持ち悪かった。それほどまでに先程の出来事は衝撃的だったのだ。

 

「尾白もこっちに送られてたんだな。お前一人だけか?」

「うん。とりあえずヒット&アウェイで逃げ回ってたら天海を見つけたんだ」

「なるほどな。俺はこいつらが舐めたこと言うもんだから、痛めつけて情報吐かせてたんだ。おかげで色々分かったぞ」

 

「・・・なぁ天海。これ全部お前がやったのか?」

「ん? そうだけど。」

 

「お前、何も思わないのか!? こんなに人を傷つけて何も感じないのか!!??」

「うぉ!?」

 

 天海のなんとも思っていないような反応に尾白は声を荒げる。急な大声に驚いた天海だったが、頭を掻きながら淡々と述べる。

 

「そうは言ってもな、尾白。こいつらは俺たちを殺しにきてるんだぞ。はっきり言って命があるだけ儲けもんだろ。俺はここにいる奴ら全員殺してもいいと思ってるんだぞ」

「お前自分が何言ってるか分かってるのか!? 俺たちはヒーロー目指してるんだぞ!! さっき13号先生が言ってたじゃないか! 俺たちの力は誰かを救ける為にあるんだって! 例え敵だろうとどんな理由があろうと、ここまで人を傷つけるのは間違ッ!?」

 

 尾白が言葉を続けようとしたが、突如天海に首を掴まれ地面に押し倒された。

 

「・・・お前に何が分かる」

 

 尾白の首を掴む手に力が入る。その表情は怒りと悲しみに満ちていた。

 

「お前に何が分かるんだ!! 人を殺すことをこいつらは何とも思ってないんだぞ!! そんなゴミ屑ども殺したところで誰が困るんだ!! こんな奴ら・・・!! こんな奴らさえ居なかったら・・・・・・あんなことっ・・・!!」

「天海・・・!? 一体何をッ・・・!!」

 

 突然の天海の怒りに戸惑う尾白。直後、我に返った天海は尾白の首から手を離す。

 

「す、すまん」

「ゲホッ・・・! いや、俺こそごめん。急に怒鳴ったりして・・・。」

「悪いのは俺だ。・・・くそ、友達に手ェ出すなんざ最悪だ・・・」

 

 ひどく落ち込んだ様子で片手で頭を押さえ、その場に座り込む天海。何て言葉をかけようか悩む尾白だったが、しばし悩んだ後口を開く。

 

「なぁ天海。俺とお前と出会ったのはついこの間だし、お前にどんな理由があってこんなことをしたのかなんて俺には分からない。でもさ────────」

 

 

 

「────────人を殺したら、それこそ敵と同じなんじゃないか?」

 

 

 

「・・・・・・ああ。そう・・・だよな」

「「・・・・・・。」」

 

 絞り出すような声で天海がそう返した後、沈黙が二人を包み込んだ。

 

 

 

 

 

「・・・今後の動きを決めるぞ。他の奴らも戦ってる奴らもいるだろうし」

「・・・ああ。そうしよう」

 

 落ち着いた二人は周辺を警戒しながらも作戦をたてる。

 

「俺があいつらから聞き出せたのは、生徒はバラバラの災害ゾーンに送られたこと。それと敵の目的はオールマイトの殺害ってことだ」

「そういえば広場でも靄の男が言ってたな。本当にそんなこと出来るのか?」

「出来なきゃこんなことしねえよ。現にこいつらには切り札があるみたいだしな」

 

 平和の象徴オールマイト。存在自体が犯罪者への抑止力となる彼は、敵たちにとって目の上の瘤であり多くの敵に疎まれている。当然命を狙う輩だっていたが、彼の常識離れした圧倒的な力の前に息を潜めることしかできなかった。そんなオールマイトを堂々と『殺す』と宣言したのだ。何か策がない方がおかしい。

 

「とりあえず、二手に分かれて他の奴らと合流しながら出口を目指そう」

「単独行動は危険じゃないか?」

「俺一人でこんだけ出来たんだ。尾白含め他の連中でも十分相手出来る。ただし格上とは絶対やり合うな。特にセントラル広場にいる三人は特にな」

 

 尾白に注意を促し、天海は立ち上がる。

 

「さて、それじゃあ尾白は先に山岳ゾーンに向かってくれ。俺はもう少しここを回ってから水難ゾーンに向かう。」

「分かった。天海、気を付けろよ」

「おう、そっちもな」

 

 尾白はそう言って燃え盛るビルの隙間を駆けていった。

 尾白が去るのを見送った後、天海は瓦礫の山に向かって口を開く。

 

「いつまで隠れてるつもりだ?」

 

「・・・へぇ、気付いてたのかァ」

 

「そんな殺気ダダ漏れじゃあな。それに・・・俺はお前を知ってる」

 

 瓦礫の陰から一人の男がゆらりと姿を現した。濃い紫色のスパイキーヘアに穴だらけのボロボロの服のその男は、不気味な笑みを浮かべている。その姿を見た天海は怒りの眼を男に向ける。

 

「なんでてめーがここにいやがる!!」

「あァ? 何だ、もしかしてどっかで会ったかァ?」

「・・・八年前、八年前だ!! 八年前のあの日のことを、俺は一度だって忘れたことはねえぞ!! 『スキュアラー』!!!!」

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 ────────今から八年前のとある日。

 

 当時七歳の天海はその日、両親と共にショッピングモールに来ていた。周りには自分たちと同じような家族が大勢いた。

 

 至って平凡な日常。しかし、それは悪夢に豹変することとなった。

 

 目の前から歩いてきた女性が突如、背後から鋭利な何かに貫かれた。血を噴き出して倒れる女性。その後ろでは実行犯であろう男が楽しそうに笑っている。

 

 辺りから上がる悲鳴の数々。そして男の凶刃は天海へと向かう。

 

 天海の両親は自分の息子を庇うように間に入る。そんな二人の命を男は、なんの躊躇いもなくその手で刈り取った。

 

 突然のことに呆然とする天海。かろうじて働く頭で体に指示を出し、目の前で血溜まりをつくる()()()()()()()に声をかける。しかし返事が返ってくることはない。それでも声をかけ続ける。

 

 そんな天海を見て男は、

 

『ハハハハ! いいなァ、その絶望に歪んだ顔!! 悲しみに震えた声!!! いいもん見させてもらったよォ!! ありがとな!!』

 

 高らかに笑いを上げ、そんな言葉を残し去っていった。

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

「────────思い出した。あの時泣き喚いていたガキかァ。大きくなったなァ」

 

 その男こそ、今目の前に立っている『スキュアラー』という敵だった。

 

「お前にそんなこと言われても何も嬉しくねーんだよ。それより質問に答えろ。なんでてめーがここにいる」

「なんでって言われてもなァ。俺はとにかく人が苦しむ顔をみたいだけで、それ以外に理由はねえよォ」

「そうか。お前に聞いた俺がバカだったよ。なんにしろ俺がやることは決まっている」

 

 変に間延びした口調で飄々と答えるスキュアラーに、天海はぶっきらぼうに告げた。

 

「お前を殺す」

 

 天海は両足から水を噴射し、猛スピードでスキュアラーに接近する。そして目くらましも兼ねて右手から水流を放った。

 

「うぉ!?」

 

 スキュアラーがひるんだその隙に左手で水を横に放出して、背後に回り込む。そのまま足裏から水を放出して勢いをつけた回し蹴りを背中に喰らわせる

 

 

 

 

 

 はずだった。

 

 

 

 

 

「おいおい、仮にもヒーロー志望が簡単に『殺す』なんて言うなよォ」

「・・・・・・ぐっ!!」

 

 天海の回し蹴りはスキュアラーの背中から生えてきた無数の針によって阻まれた。

 右脚に走る痛みに顔を歪める天海。なんとか脚を貫く針から逃れようとすると、針は驚く程簡単に折れた。刺さった針はそのままに、とりあえず天海は距離を取った。

 

「それがてめーの”個性”か。随分簡単に折れッ・・・!!?」

 

 直後、天海の脚を先程とは比べものにならない程の激痛が襲い、たまらず脚を押さえてかがみこんだ。

 

「いいなァその顔。どうだ、俺の毒の味は?」

「ぐぁっ・・・!! 毒・・・だと?」

 

 激痛に苦しむ天海をみて口元を吊り上げるスキュアラーは得意げに言葉を続ける。

 

「俺の”個性”は『ガンガゼ』。体の至るところから毒入りの針を出せる。毒がまわったところはめちゃくちゃ痛くなるし、針は刺さっている間毒を流し続けるから早めに抜いた方がいいぜェ。ただ、針には返しがついてるから簡単には抜けねェ」

 

 スキュアラーの言葉を聞き、天海は針を抜こうとするが中々抜けない。それどころか、針が根元から折れてしまった。これではもう自分で摘出することはできない。

 

「さあどうした。俺を殺すんだろォ? さっさとかかってこいよォ」

 

 ニヤニヤと笑みを浮かべながらスキュアラーは挑発する。それに乗ったわけではないが天海は痛みを堪えながら立ち上がる。

 

「そのベラベラと五月蠅い口を閉じろ。言われなくてもやってやるよ。

 

 

 

 

 ────────俺は今日というこの日を、今まで待ち望んでたんだからなあ!!!!」

 

 火災ゾーン中に響き渡りそうな雄たけびを上げて、天海は再びスキュアラーに躍りかかる。

 

 今ここに、一つの復讐劇が幕を開けた。




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