色々との言い訳はあとがきにて言わせていただきます
では、どうぞ
四日間と言う短い時間の中に濃密な内容の合宿は終わりを告げ、それぞれの目標が出来た
高町ちゃん達初等科組は予選突破と都市本戦出場。アインハルトさんも多分、高町ちゃん達と同じだろう
次にミルテ。目標は都市本戦入賞か都市選抜に出場。初出場でその目標は些か難しいものがある。それにブロックによるけど、上位陣は特に強い。都市本戦に出るのだって一苦労だ
アスは僕と同じ場所に来ること。まぁ結局なところ都市本戦に出るって言うのがまずの目標。そして、僕と同じ都市決勝に来ること
次に僕。二年前とは勝手が違う。立っていた足は立てないし、使っていた技術は相当錆びついている。そんな僕が出した目標は逃げて置いてきたものをすべて取り戻すこと。信頼も友情もすべて。そして、行けるなら今度こそ都市選抜にっ!!
あの日から一週間。僕たちはまず昔のように三人で鍛錬を開始した。普段は僕が組んだメニューをこなし、二日に一回くらいは模擬戦をやってそこで出来てなかったところは重点的に反省して復習する。そんなことを続けている
アスは合宿中になのはさんに少しだけ集束のコツを教わったのか、前より集束する速度が上がっていた。そしてミルテは師匠との稽古も熱が入ってるのか技の鋭さ、キレの良さが上がってきている。
僕はと言うと少しでも昔のスタイルに戻そうと足に魔力を流して立てる時間を延ばしたり、その状態で素振りなんかもやっている。無理は禁物だけど、正直そんなことを言ってる余裕はない
そしてこの週末。今日はロンドにコンタクトを取っていてもらった人に会いに行く日。
ミルテとアスはミルテの師匠のところで模擬戦だったりしてると言ってた。少しくらいは休まなきゃ体がついていかなくなるのに……
コンタクトを取った人の場所に行くには少し遠く、あちら側が車を回してくれるというのだ。それを待っている間、ロンドと話している
《それにしてもマスター。コンタクトを取ってあちらも会うとは言ってますけど、何故今になってなんです?》
「ロンドは不自然に思ったことない? 今の僕の状況に」
《不自然に、ですか? あまり思わないですよ。あのクソみたいな親戚共は少ないとは言え、こちらの援助はしてくれています。ホントに微量ではありますが》
そう。まぁ言っちゃうとギリギリ学費が払えるぐらいしか援助はしてもらえていない。まぁ何よりかかる学費を援助されてるだけでも充分っちゃ充分ではあるが……
「じゃあ、僕が日々生活していくだけのお金。どうしてると思う?」
《そりゃあ、援助から捻出……。出来ませんね……》
やっとそこに気付いたね
《まさかマスター! 私の預かり知らぬところで犯罪に手を染め「バラスゾ」ハイ……》
滅多なことを言わないでほしいな。全く
「そのお金。毎月の初めに僕の口座に振り込まれてる。毎月の額は一定はではないけど、そう少ない額じゃない。正直、あの親戚達はそんな気を利かせるなんてことはしない。だとすると、たどり着くのは……」
《他の援助者?》
その可能性だった。他に僕を援助してくれてる人がいる。気付いたのは初等科の卒業式間近だった
「そして、僕に援助をしてくれる。そんなことをしてくれる人は現状一人しか考えられない」
《それが今回のってことですか?》
「それもあるって言った方がいいかな。でも本題はそこじゃないから」
そこまで言うと僕たちの目の前に一台の車が止まり、運転席から一人の男性が出てくる
「お久しぶりです。エーレン様」
「うん。久しぶり。エドガーさん」
執事服を身にまとった男性。エドガーさん。ダールグリュン家当主、ヴィクトーリア・ダールグリュンの専属執事。色々となんでも出来てしまう存在
「どうぞ。お乗りください。エーレン様がそのまま乗れるように改造してありますので、問題なくお乗りになられるかと」
後部座席のドアを開けてそう言うエドガーさん
「ここまでしてくれるんですね」
「はい。どうぞ」
車輪が乗る足場まで完備とは恐れ入った。てか、色々と用意周到過ぎないかな?
「では、出発いたします」
エドガーさんの運転で、僕はダールグリュン邸に向かった
「いつ見ても大きいし、崖っぷちだよね。この家」
《まぁお屋敷って感じはしますけどね。色々な意味で》
ミッド郊外に位置するダールグリュン邸。その立地は崖の上となんとも言い難い場所である
「では中へ。お嬢様がお待ちです」
エドガーさんの後ろにつき、お屋敷の中に入っていく。
広間の前まで来ると、一瞬ピリッとした感覚が体に走った
「……うん。まぁそうだよね。そうじゃないはずがない」
そして、僕にはそれを甘んじて受けなきゃいけない
「よろしいですか?」
「うん。大丈夫、開けてもらえますか?」
エドガーさんが扉を開けると正面に仁王立ちしている一人の影
「久しぶり。ヴィクター」
「ええ。ホントに久しぶりですわ。この大バカ」
全盛期の戦友。ヴィクトーリア・ダールグリュンはそう言って僕に不機嫌な顔を向けた
「とりあえず、色々と言いたいことはありますわ。ですが……」
ズンズンと僕の前まで歩み寄るヴィクター
あぁ。雷撃付与のビンタかな? 結構ヴィクターのって痛いんだけどなー
覚悟を決めて目を閉じる
「……?」
だが、いつまで経っても予想していた衝撃や痛みは飛んで来ず、変わりに
「ヴィクター……?」
ヴィクターは僕を優しく抱きしめていた
「今はそれより、これを優先しますわ。おかえりなさい。クロ」
優しげな声でおかえりなさいとそう言ってくれた
「……うん。ただいま。そしてごめんね。二年間も連絡を取らずにいて」
「今は良いですわ。それに、あなたにバレないように援助はしていましたもの。ちゃんと無事なことはわかっていましたわ」
その言葉でやっぱり援助していたのはヴィクターだってのがわかった。
ヴィクターは昔から世話焼きさんだもんね。ジークの事だって今でも面倒見てるんだろうし
「でも僕、ヴィクターに口座系統を教えた覚えが……」
そう言うと僕を離し、少し顔を背けるヴィクター
「す、少しあなたの親戚に協力してもらっただけですわ」
あー。全力で脅したな。これは……。
その答えにたどり着くのはそう遅くはなかった
「まぁどういう経緯があれ、援助してくれていたのは変わりないからね。ありがとう。ヴィクター」
「ええ。別にどうってことありませんわ」
そこは素直に受け取ってほしいな
「エドガー。お茶を」
「かしこまりました」
とりあえず、座って話すことにする。流石にソファに座るとバランスを崩すから車椅子のままだけど
「それで? クロからコンタクトを取ってくるってことは何かありますのね?」
「うん。援助の事に対する援助と、今年のインターミドルに出場するっていうことの報告かな」
そう言うと少し渋い顔をするヴィクター
「クロ。あなた、足は……」
「うん。二年前からずっと動かないまま。でも魔力を流せば無理矢理動かせるし、最悪射砲撃も使える。ブランク以外は特に問題はないよ」
「はぁ……。クロ、どうしても今じゃなきゃダメなんですの? その足が完全に治ってからでも」
ヴィクターは優しい子だ。こんなにも心配してくれる。でも
「ごめん。僕がもう一度都市選抜を狙えるのはこの一回きりだと思ってる。まず、これ以上年月をおいちゃうと今ある制度を使えなくなって、インターミドル自体に出られなくなる。僕がすべてを燃やして来たインターミドルにこんな悔いの残し方、したくない」
「……はぁ。何を言っても無駄、と言うわけですわね」
そう言って困り顔で微笑むヴィクター
「わかりましたわ。本来わたくしにその権利はありませんが、あなたのインターミドル出場を許可します。クロ」
「ありがとう。ヴィクター。これで、またあの舞台で戦える」
「ええ。やっとわたくしにまともにダメージを与えられる選手が戻ってくるのね」
僕以外にも十分にいると思うけど? ジークとかジークとかジークとか
「ヴィクターにはハリーって言うライバルがいるじゃないか」
そう言うと少し不機嫌そうな顔をして
「あんな不良娘。わたくしのライバルなんてありないですわ」
そう言った
「あれだけの接戦を繰り広げてよく言うよ」
あれだけの殴り合いの試合。滅多に見れるものじゃない。お互いの実力が拮抗していないと出来ないことだしね
「昔のあなたと戦った時はすぐに終わったじゃない。1RKOでクロの勝ちで」
「いやー流石にあの堅すぎる鎧を貫くのは流石に苦労したよ? それにダールグリュン式の魔法にも手を焼かされた」
いくら同属性の変換資質でもダールグリュン式は火力が違うからもの凄く手を焼いた。1RKO出来たのももの凄く偶然
「正直あの試合で手を見せすぎてジークにほとんど対策されたって言っても過言じゃないしね」
「じゃあわたくしは知らず知らずにジークに協力していたのね」
しかもジークは一度見た技の大半は効かないから面倒ったらありゃしない
「……。クロ、私以外にインターミドルのことは?」
「ううん。……まだ幼馴染みの二人にしか言ってないよ。二年前から連絡取ってないからね」
すべてから逃げたあの日から僕はインターミドルに関する人達との連絡を絶っていた。
「そう……。連絡を取る気は?」
「あまり進んで取るつもりはないよ。でも、街やどこかで会った時には言うよ。最低限のけじめだからね」
と言ってもあまり会わないんだよね。僕がそこまで出歩かないのもあるけど
「わかりましたわ。とりあえず、この話はおしまい」
「そうだね」
ふと部屋の時計に目を移すと午後三時を回っていた
「今日はどうしますの? せっかくですから夕食を一緒にと思っていたのだけど」
「あ、うん。これからの予定もないし、今日はヴィクターを説得するのに時間割こうって思ってたから大丈夫だけど。いいの?」
正直こんなにあっという間に説得できるとは思ってなかったしね。
《よろしいのではないですか? マスター。せっかくのご招待なんですし、無下にするのはいかがなものかと思いますよー》
「ロンド。今まで何も言わなかったから寝てるのとばかり思ってたんだけど?」
《寝てましたよ。ふざけられる雰囲気ではないですからねー。起動してると茶々いれそうだったんで、寝てました》
そしてこの時になって起きたと……。ホントに僕のデバイスは自由気ままだよ
「クロ。わたくしは構いませんわ。そうでなければわたくしから誘いませんわ」
「そっか。なら今日はご馳走になろうかな。ヴィクター」
「ええ。エドガー。今日は二人分、お願いするわ」
「かしこまりました」
その後はヴィクターと二年の時間を埋めるように話をした。
と言ってもヴィクターはエドガーさんを使って僕をたまに監視してたみたいだから、ほとんどヴィクターからジークのことを聞いてたのが正しいけど
夕飯はもの凄くおいしかった。久々にエドガーさんの料理食べたけど、やっぱり美味しい。教わろうかなー……
そんなこんなでそろそろお暇しないといけない時間
「もうこんな時間ですのね。送りますわ。エドガー」
「お車の方はご用意出来ております」
「うん。ありがとう。ヴィクター」
ここに来ると何から何までお世話になりっぱなしだ。まぁ僕が何かやろうとすると先回りしてエドガーさんがいるんだけど
「またいらしてください。待っていますわ」
車に乗り込み、窓を開けヴィクターと話す
「うん。これからは頻繁に連絡すると思う。その時はお願いするよ。またね。ヴィクター」
「ええ。またですわ、クロ」
そう言うとヴィクターは僕の頬に一つキスを落とした。
一瞬、何をされたかわからないくらい素早く
「え? え!?」
「ん、んん!! エドガー!」
その声と共に窓が閉まり、車が発進する。
混乱する頭で最後に見た光景は顔を目を逸らし顔を真っ赤に染めたヴィクターだった
……すたー……ます……ま…た……
《マスターッ!! そろそろ反応してください!!》
「ふぇい!? なに!? 敵襲!?」
《誰がマスターなんかに敵襲するんですか。ていうか色々とベタ過ぎますよー》
何だが知らないけどデバイスにダメ出しされている
《全くいくらヴィクター様予想外のアプローチを受けたからって、動揺し過ぎですよ。マスター》
「い、いや、でもさ。あ、あのヴィクターだよ!? あのヴィクターが僕にき、キスだなんて……っ」
《頬へのキスは親愛の証。別に深い意味はありませんよ(まぁ正確には、あそこまでしか踏み出せないってところでしょうけど)》
親愛って言ってもヴィクターとは二年も疎遠だったのに親愛もクソもないような……。あーもうわかんないー!!
《(マスターが頭をぐしゃぐしゃしていますねー。そんなに気にすることですかね? まぁマスターは今までそんな直接的な愛情表現を受けたことありませんしねー。仕方ないと言えば、仕方ないですよねー)》
《マスター。いい加減現実逃避してないでお風呂とか入っちゃったらどうですかー? 明日はミルテ様やアス様との予定があるんですからねー》
「はっ!! そうだった! ロンド、補助お願い!」
《はいはい。わかりましたよーっと》
こうして夜は更けて行った
「おい。こりゃあ、どういうことだ?」
薄暗い道場のような場所。そこには十二人の男女が長方形を作るように座っている
「エーレンがインターミドルに戻ってくるってことか? それは貴様が気にすることか?」
「気にする気にしねぇの話じゃねぇ。なんでこいつが参加出来んのかって言ってんだよ! こいつの足は動かねぇはずだろ!」
そのうちの一人が声を荒げる
「今のインターミドルには戦績があれば予選会免除の制度があるのだから、戻ってきてもおかしくはないわ。」
「しかもこの制度には如何なる障害もないものとするというものまであるし、足が動かない程度なら出て来れるよ」
どうやら不服を示しているのは声を荒げた少年だけらしい
「そのことに対しては何の不正もない。私達十二家には関係のないことだ。態々話題にあげる必要はないだろう」
傍らに竹刀袋を置いた女性がピシャリと話題を終わらせる
「おー。流石序列上位様は言うことが違うねー」
「君もそんなくだらないことを話すより成果を見せてもらえると嬉しいよ」
そう言って睨む女性
「はっ。そう睨むなよ。アンタに睨まれると喉元に刀を突きつけられてるような感覚に襲われて敵わねぇ」
「私としては本当に突きつけても構わないのだけどね」
竹刀袋に手をかける女性
「そろそろやめませんかー? いくら議題がないからってこんな狭い場所で血生臭い私闘されても困りますしー」
白い中華風の衣服を纏った少年から声をかけられ、舞っていた殺気が霧散する
「……今日はこれ以上出ないようだな。ならば今日の会議は終わりとしようか」
中央に座っていた男性からの掛け声でそれぞれが動き、部屋を出ていく
最後に残ったのはさきほどの女性
「……私は、まだ……っ!!」
竹刀袋を強く握りしめ、後悔が滲んだような声を出す
「……クロ……」
その名を呼んだ女性の頬には一筋の涙が流れていた……
十八話でした。
まず、更新が遅れて申し訳ないです。どうやら今年は色々と大変なことばかりです
体調崩して入院して、叔父さんになってと色々と……。ホント色々と……(遠い目)
まぁ一応、何があってもいいように不定期更新のタグはしていますけどね。
話が変わり、今回の話のことです。いよいよインターミドルへと近づいてきたクロム一行。
まだ予選ブロックとかも決まってないので、色々とこれからが大変です。
そして姿を見せてきた十二家の存在。そしてクロムとの関係性。
これからが一番難産になるだろうと思います。シリアス上手く書けるかなー……
次回はオリキャラ第一弾を触れていきたいと思います!
感想、評価、誤字報告、指摘待ってます
では次のお話で……