TS系アイドルと結婚するお話。   作:ヘイ!ゼエン!

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評価ありがとうございます。TS好きを広める為に頑張っていきたいと思います。


2話 遺産

 346プロダクション、日本有数の芸能プロダクション。アイドルに限らずモデル歌手俳優声優等々各部門が存在し、あらゆる分野で活躍している。特徴は何と言っても所属するメンバーの多さであり200人以上が所属している。

 

 そんなプロダクションに務めているのが目の前にいる男、武内プロデューサー

 

「アイドルに興味は・・・あまりないな。それよりどうして俺に声を掛けたんだ?」

 

「あなたが何かに必死になっていると思いました。その情熱に輝きを見たからです。」

 

 必死か、確かに俺は必死だ。なんせ一度死んでるんだからな。冗談はともかく台詞がまるで詩人か中二病だ。こんなこと言うのはホストくらいだと思ったが目の前の男は真剣だったようだ。

 

「アイドルは分からんが、そんなモノが俺にあるのか?」

 

「はい。」

 

 即答かよ。

 

「あなたには揺るぎない信念があると、私はそう確信しています。そしてアイドルとして輝けるはずと」

 

 ・・・まるで心を読んだような答えだな。確かに俺には譲れない思いがあるがそれは辰の為だ。この子の幸せのために動きたいだけだ。

 

「・・・あんたは俺が本気でアイドルになるべきだと思うのか?」

 

「はい、間違いなく。」

 

「あんたはアイドルの為に何でもできるか?」

 

「私の出来ることは全てやります。」

 

「死ぬことになってもか?」

 

「・・・私は彼女達の輝きを見届けなければなりません。ですが、プロデューサーとしてアイドルを最後まで守りぬくつもりです。」

 

 本気だ、この男はアイドルの為に何でも出来るだろう。俺は男として武内さんを尊敬が出来る。俺が辰の為に動くように、武内さんもアイドルの為に動くのだろう。俺の中だけだが共感できた。

 

「久嶋辰だ。アイドルに興味はないが、あんたの話は本気だって伝わった。」

 

「それは--」

 

「ただ返事は少し待ってくれ。少し家族の事情で忙しいんだ。」

 

「勿論です。何時でもお待ちしています。」

 

  

 

 武内さんは俺にパンフレットを渡し、こちらに一礼した後去っていった。

 本当にどうしようか。アイドルならそれなりに稼げるかもしれないが、辰の体をそんなことに利用していいのかという倫理観を問われる選択だ。特殊すぎて俺の考えでは判断が出来ない。ともかく家に帰ってからゆっくり考えよう。

 

 

 

 公園を出て家に戻り、玄関を開けと見知らぬ靴が幾つか置いてあった。鍵は確かに閉めたはずだが、不審者の靴にしてはおかしい。ヒールにパンプスそれに男性用の革靴、社会人が三人居るのだろう。しかし何故鍵を開けられたのか、久嶋夫婦の親戚だろうか?

 疑問が浮かんでいたが居間の方から話声が聞こえてきた。とりあえず向かってみよう。

 ドアをあけると予想通り大人がいた。スーツを着た男性に喪服姿の女性、場違いなカジュアルな服装の女性の三人だ。

 

「辰ちゃん、居たのね。勝手に上がらせて貰ったよ」

 

 喪服姿の女性が話かけてくる。多分、日記に親戚の集まりで撮った写真に載っていた”美崎叔母さん”だろう。もう一人の女性とスーツの男性が誰かは知らないが恐らく親戚なのだろう。

 

「誰?兄貴の子供?」

 

「久嶋 辰さんでよろしいでしょうか?私はあなたのお父さんが所属していた芸能プロダクションの弁護士です。今日はあなたの両親が残したお金とこの家のことをお話しにきたのですが」

 

 久嶋夫婦の遺産の事か。確かに辰が居なくては話しは進められない。挨拶を返し、イスに腰を下ろして話しを聞く体勢になる。

 

「そっちは知らないみたいだから言うわ。あたしは九条 恋、あんたの父親の妹。言っとくけどちゃんと貰えるもんはもらうから」

 

 遺産のことだろうか。確かに久嶋夫婦はかなり持っているかもしれないが、それを何もしていない奴に取られるなんて。いや、久嶋 辰の体に入った俺が言えることではないが。

 

「それについては私から説明があります。」

 

 弁護士を名乗った男性が会話に入ってくる。正直相続税とかはよく分からないので助かる。

 

「久嶋 和正さんと久嶋 美沙さんは久嶋辰さんが生まれた時から遺産相続についての書類を残しています。それがこちらの用紙です。」

 

 バックから一枚の用紙を取り出し、それを机の上に広げる。

 書類の内容を簡単に訳すとこうだった。

 

1)久嶋 和正が亡くなった際に相続する遺産の二分の一を妻に、残りの二分の一を娘に。父と母及び妹の相続権を廃除。

 

2)久嶋 美沙が亡くなった際に相続する遺産の二分の一を夫に、残りの二分の一を娘に。姉の相続権を廃除。

 

3)夫及び妻の両方が亡くなった際に遺産のすべてを娘に相続する。

 

4)これは公正証書遺言なので裁判で争うことになっても不当な相続だと請求することは出来ない。

 

 と、いうものだった。辰が生まれた時に遺言書を準備しているのだから相当だな。

 それにしても全ての遺産が辰にか。どれだけになることか。

 

「はぁ?じゃあ私のところに入って来ないじゃない」

 

「ええそうです。和正さんは既に実家と絶縁に近い状態で遺産の廃除を望んでいましたから。美沙さんも姉である美崎さんよりも娘である辰さんの事を考えています。」

 

「ですが辰はまだ未成年です。2人の遺産を預けるには荷が重すぎます。」

 

「ええ、ですから辰さんは後見人を決める必要があるのです。」

 

 それもそうか。まだ未成年の辰をいつまでもほっといて置くわけにはいかない。

 

「それでね辰ちゃん、私の養子にならないかしら?私は辰ちゃんのこともよく知っているし安心でしょ。」

 

「とかいってあんた、ただ遺産が欲しいだけなんじゃないの。”養子に”なんて都合いい事言ってるけど全部自分の手元に欲しいからそんな事言ってるんじゃないの?」

 

「あら、私はあなたみたいにがめつく無いのよ。勘違いして貰っては困るわ」

 

「ま、口だけなら何とでもいえるわね。辰とか言ったっけ?こんなおばさん信じないほうがいいわよ」

 

「あなたねぇ!いい加減にしなさい!」

 

 口だけならか、確かにその通りだ。辰が苦しみ、自殺仕掛けていた時に周りには誰もいなかった。そんな人を信じていいのか、疑問が浮かんだ。それに久嶋夫婦が辰の為に残したものをそう簡単に渡してしまってもいいのだろうか。

 

「ともかく、決めるのは辰さんです。両親が亡くなってまだ間もありません。一度引いて、時間をおいてからということにしましょう。」

 

「分かりました。」

 

「あたしはもういいや。兄貴が少しくらい分けてくれると思ったから来ただけだし。」

 

 九条と名乗った女性は本当に金が貰えないと分かり、どうでもよさそうな顔をしている。対して美崎さんはこちらを心配したような顔をしている。本当に心配しているのかもしれないが、やけに九条の言葉が耳に残る。

 

「では失礼します。」

 

 三人は部屋を出てゆき、部屋がまた静かになる。

 どうすべきか。美崎さんを辰の後見人にするべきかもしれないが、美沙さんは遺言にわざわざ美崎さんに遺産が渡らないようにしていた。それが気になるのだ。それに遺言書を辰が生まれた時に書いておきながら美崎さんを後見人に指定してなかった。まさか本当に美崎さんを信用していなかったのか?

 久嶋夫婦の真意は”辰が信用出来る人に後見人になってもらいたかったから、その為に後見人にを指定しなかった”ということだろうか。美崎さんを信用するのは辰だが、その辰もここには居ない。俺が決めるしかない。

 

「美崎さんを信用出来ない。かと言ってもう一人は無理だし・・・」

 

 流石に九条の方に頼むなんて出来ない。弁護士の方は・・・判断が付かない。

 

「さて、どうするか」

 

 辰は未成年だが、俺は既に成人済みだ。保護者が居なくても学校にも通えるし家事も出来る。だから後見人なんていらないのだが、法律が許してくれない。未成年は判断がまだできないとされているので無茶をさせないように保護者が必要なのだ。

 

「あ~どっかに抜け道とかないかな。」

 

 どうしようかと考えていた時、ポケットにしまっていた紙が床に落ちる。拾い上げてみると武内さんから貰った346プロダクションの名刺だ。会社の電話番号だけでなく武内さん個人の番号まで記載されている。

 

「・・・あーとびっきり最悪の方法があったわ。」

 

 辰からすれば最悪で最低な手段だが、俺は耐えられる。この子のためならなんだってやれる。もし辰が体に戻ってきたらとんでもなく怒るだろうな。

 怒られる覚悟を決めて、武内さんに電話を掛けた。

 

 

 

 

 

 

------

 

 

 

 

 

 

「お待たせいたしました。ご注文のコーヒーとカフェオレになります。」

 

「コーヒーはこっちの人に、カフェオレはこっちで。」

 

 電話を掛けてから俺は喫茶店に来ていた。わざわざ家に来てもらうのも悪いし、丁度よい位置に喫茶店があったのでそこで合流したのだ。

 

「それで、話したいというのはアイドルのことでしょうか?」

 

「いやまぁ、その前に聞きたいことがあってさ・・・あんたってさ誰かと付き合ってたりする?」

 

「・・・・・・それはアイドルとお付き合いしているように見えるということでしょうか。」

 

「確かに私はプロデューサーという立場にありますが、それを利用して彼女達に近づこうなど思ったこともありません。私は彼女達の輝きを応援したいのです。ですから付き合うなど-」

 

「いや、普通に恋人がいるのかってことなんだけど・・・」

 

「そ、そうですか。現在お付き合いしている方はいません。」

 

 どうやら武内さんは思っているよりも誠実な男だったようだ。性格はいいが顔に怖がられて恋愛したことのないタイプだろう。なんにせよ都合が良い。

 

「・・・あんたさ、アイドルの為だったら何でもやるって言ったよな。」

 

「・・・はい。」

 

「一つ頼みがあるんだ。」

 

「それは何でしょうか?」

 

 唾を飲み込む。緊張で胸がバクバクしているせいでちゃんと言葉を出せるか分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、俺と------結婚してくれ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




2018/2/17 追記しました。
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