とある部屋。ここは普段、休憩室だったり、喫煙所として使われている部屋だった。そこに深夜、複数の人間が集まっていた。顔ぶれを見れば、そこには男だけが集まり、わざわざ雰囲気を演出するためか、ろうそくで雰囲気づくりをしているようだ。
「ロマニ、準備はいいか?」
「ああ、抜かりはないさ」
「じゃあ…………」
「ああ…………」
『第十二回! 野郎語りを開催する!』
何か始まったようだ。
「ロマニ、説明を頼む」
「オーケー、任せて! 野郎語りとは、カルデアの独身率の高さから、なんとかいい感じの雰囲気になれないかなーなんて集まりだした馬鹿たちの集まりだ! いわゆる魔術師気質じゃない人間が主に集まり、ぶっちゃけ、下種な下ネタ話をしようという企画である!」
「さあ、諸君、ここで日頃の鬱憤、主に性欲を吐き出すがいい! ここに、変態に対する制約は――――ない!」
『うおおおおおぉぉぉおぉぉぉぉっ!』
ああ、つまり、これはただの馬鹿の集まりか。
「はい!」
「よし、会員ナンバー
いや、ちょっと待ってくれ。そこは数字でナンバーを決めてくれよ。どうしてわざわざπなんて――だいたい予想できるのがひどい。
「おっぱいを、おっぱいを語らせてください!」
やっぱり予想通りかよ、ちくしょう!
「ふむ、おっぱいか……やはり、主な趣向として分かれるのは、大きいを選ぶか、小さいを選ぶか……だな。ちなみにπ、君はどうだ?」
「おっぱいを愛するものとしては、制限をするようなことは愚行、それをわかっていながら、私は巨乳を選びました! ていうか、研究職の白衣にたわわに実ったはち切れそうなおっぱいを見て、我慢できるかよぉぉぉっ!」
うわぁっ、泣いているよ……。この男、おっぱいを揉みたさに涙してるよぉ……。
「待てぇい! 白衣には、スレンダーな胸こそが美学! どうして誰もこの趣向を理解しようとしないのだ!」
「ふざけるな、会員ナンバー
「待て、その発言は私も聞き逃せないな、π。
『ハッ!?』
いやいや、どうしてそこで全員、目が覚めたみたいな顔をしているのかな? それ、一番ダメな奴だからね? せめて自分の趣味趣向は最後まで貫けよ! オールオーケーはいろいろとダメだろ! どうでもいいけど、会員ナンバーにおっぱいに思い入れあるやつ多すぎる!?
「そ、そうか……私は大切なことを忘れていたよ。女性が裸白衣になっている。その時点で、私はもうある意味イっているだろう」
「ああ、そうだとも。我々にとって重要なのは、胸の大きさももちろんだが、そもそも――――女の子とめっさイチャイチャしたいんだった!」
「どうやら、理解したようだな」
「プ、プロフェッサー! それに、ドクター!」
いや、何を君たちは驚いているのかな? そこの馬鹿筆頭二人は、さっきからずぅっとそこにいたよね?
「そうとも! 我々に必要なのは、妄想のおっぱいではない! 現実にいる揉んでもオーケーな上に、イチャイチャできる恋人おっぱいなのだ!」
「ああ、ボクたちは忘れてはならない! この場で吐き出した思いを胸に、いつか現実で掴んでみせるんだと! 妄想ではない、本物のおっぱいを!」
『おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい――――』
…………カルト教団か何かかな?
「静粛に! 君たちのおっぱいに対する情熱は理解した、そのうえであえて聞こう! 君たちは――誰を望む?」
「わ、私は、医療部にいる元気印の彼女がいいです! 彼女の笑顔に癒されました!」
「自分は後輩がいい。彼女の先輩思いのところに癒されました」
「あ、いや、あの後輩は俺と付き合ってるからなしで」
「貴様ぁぁぁぁぁっ!?」
いや、付き合いがあるならこういう会議に参加してやるなよ……。ああほら、場が混沌としだした。
「いつからだ!? いつからそんな羨まけしからんことになっているんだおめでとうだよどちくしょう!」
「あー、今のは俺が悪かったからとりあえず、涙拭けよ……」
実は君たちとてつもなく仲がいいんだろう? そうなんだろう?
「そういえば、プロフェッサーとドクターはそこらへんどうなってるんです?」
「ん? 私たちか? さて、とりあえずドクターは、某天才とよろしくしているようだ」
「おいぃぃぃぃぃっ!? 仕掛けた側の君がそういうこというのか!? ていうか、ボクと彼女の同室はいつ解除されるんだよ!?」
おい、まさか君は私との同室をやめたいと? 普段から私の胸に顔を埋めている君が? 冗談はいい加減にしてほしいよ、まったく。
「そういう君は、少女二人とどこまで進展したんだよ!? 言っておくが、嘘やごまかしは禁止だ!」
「――――少なくとも姉貴分の方から告白されたのは間違いない」
「お、おぉ……なんていうか、その、おめでとう。まあ、彼女に関してなら、もうそういうお年頃なのは間違いないからねぇ……」
「ああ、あそこまで堂々と告白をされると確かにまあ、嬉しいものだな」
「で、どう答えたんだい?」
「丁重にお断り――するつもりだったのだがね。どうやら私も自分が想像しているよりも彼女に惹かれていたようでね。思わず受け入れてしまったよ」
「マジか!? 朴念仁だと思っていた君が!? とうとう恋人を持ったとで言うのかい!?」
お、おー……この情報はまさかの予想外のものだね。いや、確かに最近、彼女の様子がおかしいとは思っていたが、まさかこんなことになっているとは……。
「ただなぁ……君も言ってはいたからわかっていると思うが、妹分の方がな……」
「あ、あー……彼女は純真無垢を地で行くからねぇ……なんか、この前も変なリスみたいな動物を連れていたし……」
「彼女はフォウさんと名付けたようだがね。もちろん、彼女にも伝えたが最近の様子を見るとどうにも大変なようでね。ああ、とは言っても、彼女場合は私に異性としての好意を抱いているのではなく、あくまで親しい人間の恋仲をどう処理したらいいか悩んでいる様子だった」
「へぇ……ボクとしては彼女も脈ありな感じだったけど、違うのかい?」
「少なくとも今は確実に違うと言えるよ。まあ、彼女もまだ幼いからね」
ふむ、確かにその意見には私も賛同しよう。彼女場合、彼に感じているものは父性だろうね。ただし、あくまでも“今”はという条件が付く。乙女心と秋の空。何が起こるのかわからないのが、あの年ごろの少女というものだ。ふむ、これは今後も期待できそうだ。
――――――…………
「やれやれ、気まぐれに覗いてみたけど、私の知らないところで意外な進展があったものだ」
相変わらずロマニのヘタレ具合は変わりそうにないが、レフの方が先に進んでいるとは意外だった。何より、あのレフがオルガマリーの告白を受け入れたというのだから、驚きである。あの男なら、年齢を理由にしてでも断ると思っていたのだが……。
「ふふっ、さしもの天才にも人の心は読めない……か……」
さて、あの男に訪れた変化がこれから先、どうなっていくのか……本当に楽しみだよ。
「んー、さてと! いい加減、あのヘタレにも多少は覚悟を決めてもらおうかな?」
ダヴィンチちゃんの本気、とくとご覧あれってやつさ。