wt戦闘日誌   作:ゆずポン胡椒

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マツムラ戦闘日誌 二冊目 太平洋の雷雲 E

マツムラ達が乗るチハ計16両はガダルカナルに次々と上陸した。

 

「……いないな」

 

そこにいるはずの日本兵は誰一人とおらず、ただ夜明け前の清々しく落ち着いた空気が流れているだけであった。

 

マツムラは不安に思いチハから顔を出し周りを見渡す。 見ると他の車長たちも落ち着かない様子で木々の生い茂るほうを見ていた。

 

**各車、予定通り展開せよ**

 

1号車からタナカの手信号が見えた。指示に従い、各4両ずつ4分隊に分かれて輸送艦から離れる。

先ほどの駆逐艦、輸送艦にいた人員で分かれているため、タナカが乗る1号車、2号車、3号車、マツムラが乗る4号車の編成である。

 

マツムラ達チハ16両が上陸したのはエスペランス岬。ビーチ、そして島の北西に位置する。

この付近は日米多くの艦艇、航空機が沈み、アイアンボトムサウンド――鉄底海峡ともよばれている。 そういった名称からは想像できないほど綺麗な景色で、思わず見とれてしまう。ヨーロッパでは見られない光景だから。

 

16両4分隊は、2つのグループに分かれることになった。 ビーチを見張るB中隊、車両用の道路を見張るA中隊。 マツムラ、タナカはA中隊として行動する。

 

『おい、マツムラ。この状況、どう思う?』

 

タナカが直接話しかけてきた。

日本兵が見当たらないことにタナカも疑問を持っていたようだ。

 

「そうだなぁ…うまく隠れているんじゃなかろうか」

 

そうであってほしいものだ。もし隠れてもいなく、本当にこの場所にいないのであれば、それはすなわち全滅しているということだろう。 生きているならば戦闘に巻き込まれているのかもしれないが、銃声一発聞こえないのであるから、兎に角ここにはいないだろう。

 

<<作戦本部から戦車隊へ>>

 

封鎖しているはずの無線が、いきなり開いた。

 

<<なんだ、無線は封鎖の予定だぞ>>

 

<<すまない。 今連絡がこちらに入ったのでそれを君たちに伝える。>>

 

「なんだ、日本兵からか? 自分たちが撤退するならば無線なんぞ送っては敵に時間がばれてしまうだろうに。」

 

無線手が呆れたように話す。 確かにそうだろう。何か余程の事がなければ…

 

 

<<隊ノ足ガ非常二遅ク、到着マデ時間ガカカル。シバラクヲ待チイタダケマスカ だそうだ。>>

 

 

無線機から、そしてマツムラの乗る車内からも複数の笑い声が聞こえてきた。 中にはタナカの声もあった。

 

<<いわれずとも待つさ。 撤退がこの作戦の目標だからな。のこのことは帰らん>>

 

<<それを聞いて安心した。 こちらも海岸を見張っている。 戦車隊も頼んだぞ>>

 

それほどまでに焦っているのか、もしくはジョークを言うだけ余裕があるんだろう。

おそらく予定通り、少しは遅れても早急に作戦は終了するだろうとマツムラは見越した。

夜明けが近いガダルカナル。島と海の水平線は、明るく照らされていた。

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