wt戦闘日誌   作:ゆずポン胡椒

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マツムラ戦闘日誌 二冊目 太平洋の雷雲 最終話

飛行機のエンジン音も、戦車の砲撃音も聞こえなくなり、島に静寂が戻る。

マツムラは先ほどまで戦闘を共にしていた戦車の損傷確認を終え、1号車に呼びかける。

が、1号車がその無線には応じることはなかった。

 

不審に思い、マツムラは戦車から身を乗り出し付近を見渡す。

戦闘が開始する前に1号車が居たはずの丘を探すが、やはり戦車を見つけることはできなかった。

 

しばらくすると、空にエンジン音が響く。マツムラは全車の移動を命じた。

 

「敵二両の行方がわからないが、我々の任務は撤退する隊の防衛だ。 敵を探しに行く必要はなし、後退、各車回避するように」

 

エンジン音が小さくなったと思うと笛のような音が聞こえる。 マツムラはそれをとっさに爆弾だと判断し、空を見上げ、操縦手に指示をだす。

 

回避できた、と思うと爆弾の向かう先には10号車が居た。

 

<<10号車、避けれません…ご武運を>>

 

爆弾が爆発すると無線にノイズが走った。

 

「くっ… 9号車、転回して上陸地点に向かうぞ」

 

<<了解。>>

 

気持ちを入れ替えたのも束の間、司令部から無線が入る。

 

<<こちら司令部、輸送艦に敵飛行機が接近! 一度海岸から離れる!>>

 

無線には、エンジン駆動の鐘の音がはっきりと入っていた。

ここで異を唱えたところでもう遅い。どちらにせよ、輸送艦には無事でいてもらわなければこまる…

 

「車長、僕らの覚悟はできてます」

悟ったように砲手が口を開く。

<<車長、このままここにいても仕方ないです 山へ一気に登ってしまったほうがよいと思います>>

 

 

 

もう我々には、ここに残って生き延びる、もとい戦うしか道はない。

 

 

 

「わかった、全員で山を登ろう。 16号車は上陸地点へ向かって、残存している兵隊が居たら… 無線をくれ」

 

<<16号車、了解>>

 

三両で列をなし山を登る。飛行機のエンジン音が聞こえるたび、一度戦車を木々に隠れさせる。

少しずつではあるが着実に前進していた。

あと少しで山(というより丘だが)を一つ乗り越える所であった。

 

が、事はそううまくは行かない。

 

丘の頂上に着くと、その先には木々が生えていなく、航空機から丸見えになっている場所であった。 いわゆる禿山である。  戦車で動けば確実に見つかるとわかっていたが、マツムラは戦車から降りるように命令することを躊躇した。 生身で飛び出せば、それこそ機銃掃射の餌食になるからだ。

 

「…これより先は、各隊の判断に任せよう   投降するものはここで戦車から降りて、木々に身を潜め待機するんだ」

 

<<………>>

 

返事をするものはいなかった。

 

「…車長さん、あんた傭兵だからって自分だけ助かる気か?」

 

通信手がそういった。

 

「いや、そんなつもりじゃ―」 「もしそういう気持ちがあるんならそうしてくれ。 俺たちは戦う」

 

「………いや、そん――」――バコガォォォン――

 

「被弾被弾!」 「9号車がやられたぞ!」

 

マツムラは戦車から脱出する。 続いて、通信手、操縦手が抜け出してくる。

砲手は出てこなかった。

 

こうして残った戦車は11号車と、海岸に向かったきり連絡がつかない16号車である。

 

流石にこの戦力では戦うことはできないだろうし、降伏を選ぶしかない。が、日本兵たちは各々拳銃を取り出し始める。

 

「何故だ!?なんのために戦うって言うんだ?」

 

11号車とともに、開けた道を進む日本兵たちは、特に何も答えずにどんどんと山奥へと進んでしまった。

 

マツムラは、背後から戦車のエンジン音が聞こえてくるのがわかった。 後ろを振り返ると、姿が確認できなかった1号車、タナカの姿があった。

「マツムラ、お前は日本兵じゃない 傭兵だ」

 

――だからここに残っていい、投降しろ。

と、マツムラは言ってほしかった。が、そのままタナカは戦車を走らせる。

白布をマツムラに投げ渡し、11号車の後を追って戦車を追って行った。

 

 

マツムラは、自分だけ一人残された者の気持ちを味わうことになった。

自らもつい先刻まで、あちら側で、共に戦ってきたのに。

第一、奴は、1号車は何をやっていたのだ。 見張っていたのではなかったのか。

誰にもぶつけようのない怒りを籠め、白布を放り投げた。

 

 

マツムラは怒りで染め上がった白布を拾い上げ、海岸へと向かった。 個人的に、16号車が気になっていたからだ。

だが、軽い気持ちで海岸へ向かったことを後悔した。

 

最期の力を振り絞ったであろう陸軍兵のほとんどが、自らの拳銃や刀で自決していた。

力のない目で、生きているのかわからない体で、座っている者もいる。

16号車は、その中央にいた。

 

「あんたは…2号車の傭兵さんか…」 「…傭兵さんも投降するのか?」

マツムラは無言でうなずく。

「そうか…なぁ、欧米の人間って比べると、俺達っておかしいよな?」

 

「そんなことは…ない」 投降せずに山奥へ進んでいった日本兵たちの姿が過り、言葉が詰まった。

 

「―――愛国心が、強いだけだ」

 

ついぽろっと、自然に言葉が漏れた。 だが、おそらくそうなのだろう。

そうでなければ、戦う理由などない。 撤退作戦が失敗した今、この島から日本へ帰る手段は投降しかない。   彼らが例え捕虜となって、ひどい扱いを受けようが生き延びるにはそれしかないはずなのだから。

 

 

16号車の搭乗員が刀を持っていたので、それを借りて、先ほどの白布と合わせ投降の用意をすすめることとした。

海岸であれば開けた場所なので、投降の意思が伝われば誤射の可能性もないだろうとして、戦車の周辺に生存者を集め、上空を飛んでいた飛行機に白旗を見せる。

 

敵飛行機は2,3回周囲を回ったかと思うと、低空で飛行し元来た方向へと帰って行った。

しばらくすると、米軍のトラックと戦車がやってきて、マツムラ達を拘束した。

 

 

マツムラは傭兵で有ることを伝え、傭兵軍の名前、所属部隊等… 覚えている情報すべてを米兵に伝える。

日本兵たちとは別のトラックに載せられ、その場を後にした。

 

 

 

 

 

私は、傭兵としてはまだまだ未熟であり、2回しか実戦には出撃したことがない。

だが、戦争のもたらす大きな意味は、十分に理解できた。 もちろん、私以上の体験をした人の方が多いだろうが、私個人、もうたくさんだというほど深く傷を残していったのだ。

 

私の体験談は、誰かに読まれることはないだろうが、ここに、祖父の書籍に、伝記として残しておきたいと思う。

 

 

今日からは、傭兵としてではなく、平和になったこの世界で、搭乗員『パイロット』として活躍するのだ。

 

どういうことかって? WarThunderのパイロットとして、活躍するっていう意味さ。





一応最終話ということになります
wtの中でwtがwtみたいなよくわからないお話になりましたが、一応なんとかまとまったかなと

補足>
本物語の中でまさにwtに似た戦闘が行われていますが、これは惑星wtの中で実際にあった戦争のお話というオチです。  彼らは、今は平和な世界で、戦闘機や戦車を使い戦争をしています。
命とかはどうなっているかと言われるとそれはGaijinが知るのみぞ…

勝手にこういった物語書かせていただきました お見苦しい箇所あったと思いますが(今話もミスあるかも><;)最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございました!

次回作ですが海軍oβtもしくはcβtが始まったら書いてみたいと思います
その時も、マイペースで気楽に書いていきたいと思うので、お付き合いいただけたら嬉しいです。

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