「つきましたよ、最終地点です」
嘘だろ? とマツムラは思った。 そこは飛行場ではなく、ましてや飛行機の姿などなく、果てしない水平線と日本軍艦艇しかない。 太平洋上である。
「あのー、これは…」
「私たちも任務の内容は聞いてないからなぁ… お、内火艇がきましたよ さあ乗って乗って」
言われるがままに、マツムラは内火艇に乗り込む。
きっとこの駆逐艦で日本まで向かうのだろう… そう思う他ない。
内火艇が駆逐艦に接舷し、駆逐艦へと乗り込む。
「ようこそ、我が艦へ。貴官と共に行動する隊は中におられますぞ。」
「はぁ…どうも。」
艦艇の中に入るとなんともいえない臭いと共に、数十人の男たちの姿があった。
彼らは日本陸軍の兵隊のようだが、これから戦地に向かう様相には見えず、疲弊しきったように見えた。そんな中から、マツムラに話しかけてくる者が一人いた。
「お前さん、純日本人じゃないな?俺はタナカだ。傭兵と見たが、どうだ?」
そう話しかけてきたのは、彼らの服にある階級章で、唯一横線の入った者だ。
「そ、そうだ。私は傭兵で、日本軍の要請を受けてきた。」
「そうか。ここにいる奴は中国で戦ってきた奴らだ。全員戦車兵だよ」
彼の言う通りだろう。この部屋に入ってからの異臭も、単なる汗や体の臭いではなく、機械油のような臭いなのにも説明がつく。
「中国での実戦経験を買われてな、戦車中隊ごとガダルカナルへ移動が命じられたのさ。」
「となると、この船は今からガダルカナルへ?」
「そういうことだ。よろしく頼む。」
マツムラはうすら笑いを浮かべながら、内心愕然とした。まさか、ここにきて戦車に乗れとは…
乗ったことがないわけではなく、傭兵軍に入る際に初級訓練として搭乗したことがあるが、どうせなら一度実戦を経験した飛行機の方がまだマツムラとしてはやりやすい所があった。
(こんな初心者同然の俺をなぜ日本軍は雇った?実戦経歴はわかっているはずなのに…いくら日本人傭兵が少なく、俺が日系人だからといって…)
マツムラは仕事内容を聞かずに飛び出してきた自分を恨んだ。
傭兵というのは自国の兵でないため、何か損害が出ても支払った金以外に手間がいらない。
ならば初心者だろうが、人手が足りないなら構わない。 移動にかかる費用も行きだけなら単純に半分だし、今回に限って報酬は成功しなければ出ない。
完全にやらかした―――
マツムラが後悔しているのを察したのか、周りの日本兵もじろじろと睨んでくる。
「おい皆!長い移動で疲れてるだろうが、俺たちはこれから米兵と戦うんだ!中国人と違って敵も戦車を出してくる! 今はしっかりと各々休むんだ。」
タナカの声に従って、周りの日本兵は布団に寝包まったり、外に出たりしていく。
マツムラも我に返り、戦車の乗り方、操縦、砲手、何を任されても戦えるように――生き残れるように、訓練で覚えたことを思い出し始める。
マツムラの戦いは、もう始まっている。
登場人物の名前をセリフを前につけると読みづらいので思い切って消してみました。
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