「ここが国立魔法大学付属第一高校か、高校にしてはかなりの広さだな。もはや大学に近いな」
俺はいまだに慣れることのない新たな世界で二度の高校の入学式を迎えるため、門をくぐった。
「納得できません!何故お兄様が補欠なのですか!入試の成績はお兄様の方がトップだったじゃないですか、本来なら私ではなく、お兄様が…」
あれは確か試験会場にいた、話から察するに二人は兄妹か?
「深雪!!それは口にしても仕方がないことなんだ。わかっているだろう?」
前にいる兄妹の間に暗い空気が流れた。なるほど、兄妹での格差か、確かにここは筆記よりも実技の方が優先されるからな、そう言うことが起きても仕方がないのか。
「今の子ウィードじゃない?」
少し歩いたときふと横から小言のようなことが聞こえた。よく見ると、先ほどの兄と呼ばれていた男がベンチに座っていた。
「ウィード」、雑草と書く二科生の総称と聞いていたが、「ブルーム」、花冠と書く一科生の差別意識がこれほどとはな。
「隣にいいか?」
「ああどうぞ」
「君も二科生か、同じだな」
「それは皮肉なのか?」
「まさか、俺の名前はバダップ・スリードだ」
「俺は司波達也だ。よろしく」
「よろしく達也、俺はバダップと呼んでくれればいい。そうだ、名前で呼ぶのはよかったかな?」
「ああかまわない」
「同じ二科生仲良くやろう」
俺が手を出すと、達也も手を握り握手を交わした。
「そういえば先ほど達也と一緒にいた妹さんでよかったか?」
「深雪のことか?ああ、先程の話を聞いていたのか、騒がしくさせてすまないな。妹は先程答辞の打ち合わせに向かったよ」
「答辞ということは新入生総代か、兄として鼻が高いな」
「そうだな、出来のいい妹がいると嬉しいものだ」
「ふっ、達也はそう思うのか、いいことだな」
初めて会ったばかりだが、この男とは仲良くやれそうだな。
ピッ『あと三十分です』
もうそんな時間か…
「新入生ですよね?」
俺と達也がベンチを立ち上がった時、前から声が聞こえた。
「そろそろ会場に向かった方がいいですよ」
「すいません、今いきます」
達也がその場で立ち尽くしている、よく見ると前にいる女の腕にはCADが見える。と言うことはこの人はー
「あっ、名乗っていませんでしたね。ごめんなさい。私は第一高校生徒会長、七草真由美です。あ、ななくさと書いて、さえぐさ、と読みます」
生徒会長?何故こんなところに…
「俺、いえ、自分は司波達也です」
「自分はバダップ・スリードです」
俺は達也に続き軽い挨拶を交わした。
「そう、あなた達が司波くんとスリードくんね…」
何故この人は意味がありそうな感じで頷いているんだ?
「先生がたの間ではあなた達の噂で持ちきりよ」
どういうことだ?達也は黙り込んでいるが、二科生への皮肉でも言うのかと思えばそうではないらしい。
「司波くんの方は入試試験七教科平均100点満点中96点。スリードくんは100点満点中二教科を除いて全て満点で平均も99点。そんな点数前代未聞の高得点よ?」
「ペーパーテストの成績です。情報システムの中だけですよ」
「そんなすごい点数、少なくとも私には真似できないわよ?」
達也も中々だな、流石あれだけの優秀な妹の兄だな。俺はその事に強く感心した。
そろそろ時間ですので…失礼します」
達也はまだ話したりなさそうな生徒会長にそう告げると、返事を待たす背を向けて歩いていった。
「会長、失礼します」
俺も会釈をすると、達也の方向へと向かった。
会場に入ると、もうすでに席の半分以上は埋まっていた。
「かなり埋まっているようだな、何処か空いてる場所は…」
「バダップ、こっちだ」
達也は後ろの丁度中央辺りの席に座っていた。俺は達也の横に座ると、壁の時計を見たりした。
「あの、お隣空いてますか?」
その時、自分達に声をかけてきた女子生徒がいた。
「どうぞ」
達也は優しい口調で返し、俺はジェスチャーで返答した。
ありがとうございます、と声をかけた女子生徒はこちらに会釈をし、腰をかけた。すると、その横に三人の女子生徒が腰を下ろした。
なるほど、多く空いてる席でなければその人数を集団で座ることは難しいだろう。だから一人の所ではなく、多く空いているここにしたのだろう。
「あの……」
先程声をかけてきた女子生徒がまた声をかけてきた。
「私、柴田美月って言います。宜しくお願いします」
突然の自己紹介に困惑した俺たちだったが、すぐに自分達も
「司波達也です。こちらこそよろしく」
「バダップ・スリードだ。よろしく美月さん」
「おお、初対面の人に下の名前で呼ぶってすごいね。あたしは千葉エリカ。よろしくね司波くん、バタップくん」
先程話していた美月という女子生徒の奥から声が聞こえた。
「名前で呼ぶのはいけなかったか?気を悪くさせたならすまない」
「いえいえ!!」
「いやいや冗談だって、あたしも名前呼びの方がいいしね」
「そうか、あらためてよろしく」
最近の若者はもこういった冗談を交えた会話などをよくやるのか?今も前の世界も似たようなものだな。
「でもさ、これって面白い偶然だと思わない?」
「何が?」
「だってさ、シバにシバタにチバでしょ?なんか語呂合わせみたいじゃない?」
俺ははいっていないのだが、多分これも冗談何のだろう。
「エリカちゃん、その、バダップくんが入っていないと思うのだけど……」
「あ、忘れてた。ついさっきひらめいちゃった事だからつい」
本当に忘れていたのか、なぜだろうか少し心が痛い気がする。
「ごめんって、このとおーり許して」
そう言うと、エリカは顔の前で手を合わせ謝った。
「いや、謝る必要性はない。エリカが言ったさっきの語呂合わせはかなりうまかったよ。」
そう笑顔で言うと、その場の空気は和らいだ気がした。
二人の自己紹介が終ったところで、達也が
「四人は同じ中学なのか?」
と聞いたが、エリカの返答は意外なものだった。
「違うよ、全員さっき初対面」
意表をついたことが可笑しかったのか、エリカはクスクスと笑いながら説明した。
「場所がわからなくてさ、案内板とにらめっこしていたところに、美月が声をかけてくれたことがきっかけ」
「…案内板?」
達也が疑問に思うのも無理はない。何故なら入学式のデータは会場の場所を含めて、入学者全員に配布されている。それに、仮に読んでいなくても携帯端末で見れるはずだ。
「あたしたち、三人とも端末持って来てなくて」
「だって、仮想型は禁止だって入学案内に書いてあるんだもん」
「せっかく滑り込めたのに、入学早々目をつけられたくないし」
「あたしは単純に忘れたんだけどね」
「そういうことか」
達也は呆れた口調でそう言った。まあ、俺も同感で全員に呆れていた。
『入学生の皆様お座りでしょうかー』
会場の方からアナウンスが聞こえ、俺達は気を張り直し、俺にとっては二度目の高校の入学式が始まったのであった。
バダップは更生して優しくなったというイメージで書いています。
では次回