入学式の新入生総代である達也の妹、司波深雪は新入生総代として堂々としながらも品があり、その答辞は以前の世界で総理大臣をしていたバダップにすら見事ともいえるものだった。
(いや、いい答辞だった。あそこまで堂々としている高校生は中々いるものでもないだろう。ふっ、まだ俺も昔の職業柄の癖が出ているな)
「司波君、何組?」
「E組だ」
達也の答えに
「やった!同じクラスね」
子供のように無邪気に飛び跳ねている姿は彼女自身の活気さをあらわしているのだろう。
「私も同じクラスです」
エリカと正反対でリアクションが伴わない美月は内気な性格だと感じられる。
「バダップ君は?」
当然のような振りでこちらに回してきたが俺は
「同じくだ」
と軽めに返答を返した。クラスとしては知り合いがいるから学校生活にしては安心できるだろう。
「じゃあ、三人ともこれからよろしくね」
「ああ」
「うん!」
「そうだな」
この三人が友人ならば頼もしい限りだろう。やはり俺は恵まれているのかもな。
「どうする?あたしらもホームルームへ行ってみる?」
俺も美月もエリカも達也の方向を見た。
「悪い。妹と待ち合わせているんだ」
改めて中のよさを感じさせる兄妹だろう。確かに兄弟の中ではブボーもゲボーも似たような感じだったな。
「へぇ……司波くんの妹なら、さぞかし可愛いんじゃないの?」
エリカそれはさすがに答えにくい質問だろう。
「妹さんってもしかして……新入生総代の司波深雪さんですか?」
確かに今まで流してきたが、同級の兄妹というのはどういった感じなんだ?
「そういえば言われてみればそうだが、達也と妹さんは双子なのか?」
その返答に達也は意外な返答をした。
「よく聞かれるけど双子じゃないよ。俺が四月生まれで妹が三月生まれだ。それにしても良くわかったな。司波なんて珍しい苗字でもないはずだが」
達也の反問に、二人は小さく笑った。
「いやいや、十分に珍しいって」
「面差しが似ていますから…」
「確かに人と話すときの堂々とした姿は兄妹共に同じだな」
「何て言えばいいのか…」
エリカがどう表現すればいいいのか四苦八苦していると、ふと美月が
「お二人のオーラは、凛とした面差しがとてもよく似ています。さすがに兄妹ですね」
「そう!オーラよ、オーラ」
エリカはその場で大きく頷いた。確かにそうも言えるが、その言葉自体は雰囲気と何ら変らないのではと思えるものだった。
「千葉さん…君は実はお調子者だろ」
達也はエリカに苦笑しながら言ったが、エリカは、お調子者ぉ?ヒドーイ、という感じに軽く聞き流された。
「お兄様、お待たせ致しました」
達也の背後の人垣に囲まれていた深雪が抜け出してきたのだった。しかし、それは達也が予定していた待ち人だけでなく、背後には予定外の同行者を伴っていた。
「こんにちは司波くん、スリードくん。また会いましたね」
達也と俺は入学式前に出会った人物に頭を下げた。そう、生徒会長・七草真由美がその場にいたのであった。
「お兄様、その方たちは……?」
「こちらが柴田美月さん。そしてこちらが千葉エリカさん。後ろにいるのがバタップ・スリードだ。同じクラスなんだ」
「そうですか…早速、クラスメイトとデートですか?」
これは、不味いな。達也、妹さんの目が全く笑っていないんだが、仕方がないフォローをいれた方がよさそうだな。
「達也の妹さん、それは俺も入っているのか?」
突然、それを真顔で言ったためか、その場にいた全員が驚いたような顔で見た。
「そんなわけないだろ、深雪。それと冗談はよしてくれバタップ」
達也は呆れた顔だったが、そのまま話を続けた。
「深雪を待っている間、話していただけだ。そう言う言い方は三人に対して失礼だよ?」
すると我に返ったかのように司波深雪は一瞬ハッとした表情を見せたが、すぐにその顔は可憐な笑顔へと変わっていった。
「はじめまして柴田さん、千葉さん、スリードさん。司波深雪です。私も新入生ですので、お兄様同様、よろしくお願いしますね」
「柴田美月です。こちらこそよろしくお願いします」
「よろしくあたしのことはエリカでいいわ。貴女のことも深雪って呼ばせてもらっていい?」
「ええ、どうぞ。苗字では、お兄様と区別がつきにくいですものね」
三人は改めて自己紹介した。達也はエリカの気さくさを心配していたようだが、気にしていない様子でほっとしているのだろう。
「あはっ、深雪って見掛によらず、実は気さくな人?」
「貴女は見た目通りの、開放的な性格なのね。よろしく、エリカ」
どこかしら気が合うところがあったのだろう。二人はすっかり打ち解けている雰囲気があった
「それと、あなたは?」
そうだな、俺も改めて自己紹介をしなければな
「俺はバダップ・スリードだ。以前はバダップと呼ばれていたからそう呼んでくれると助かる。よろしく深雪さん」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
これで、全員の自己紹介は済んだな。そういえば、会長を待たせていたな
「深雪。生徒会の方々の用は済んだのか?まだだったら適当に時間を潰しているが」
「大丈夫ですよ」
「今日はご挨拶させていただいただけですから。深雪さん…私も呼ばせてもらっていいかしら?」
「あっ、はい」
「では詳しいお話はまた、日を改めて」
生徒会長は軽く会釈して講堂を出ていった。しかし、その背後にいた男子生徒は何か言ってるようだったが、軽い舌打ちが聞こえた後、そのまま生徒会長と共に人混みの中へ消えていった。
「……さて、帰ろうか」
どうやらこの学校には上層の生徒会でも差別意識があるらしいな。人の関係においてどこの世界でも差別意識が出てしまうのは何としても改善しなければいけないな。
「すみません、お兄様。私のせいでお兄様の心証を」
「お前が謝ることじゃないさ」
どうやら達也達も先程のことを考えているのだろう。
「せっかくですから、お茶でも飲んでいきませんか?」
「いいね、賛成!美味しいケーキ屋さんがあるらしいんだ」
何かしら話題を変えようと出てきたのは、ティータイムの誘いだった。
「入学式の会場の場所はチェックしていなかったのに、ケーキ屋は知っているのか?」
「当然!大事なことでしょ?」
自信満々にエリカは言った。
「「同然なのか…」」
達也と俺はハモるような形でエリカに呆れた。
「お兄様どういたしましょうか?」
「いいんじゃないか。せっかく知り合ったことだし。同性、同年代の友人はいくらいても多過ぎるということはないだろうから」
「司波くんって、深雪のことになると自分は計算外なのね…」
「妹さん思いなんですね…」
「兄妹の仲が良いのはいいことだ」
俺はいたって真面目によいと思ったが、達也自体は褒められてるのか、呆れられているのか、多くの眼差しを前に苦い顔をするしかなかった。
エリカの勧めの「ケーキ屋」では、実際にはそうではなく、「デザートが美味しいフレンチカフェ」だったため、時間からか、その場で昼食をとった。会話としては三人の女子が主体でしゃべるというものではあったが、達也がいてくれたおかげで、自然にその中でも話にはいっていけ、有意義な時間はあっという過ぎていき、その場で全員は解散となった。
夕方の空、家に帰る帰路を歩いていると、
ウマクイカナイコトガアッテモ~♪クヨクヨシテモハジマンネーダロ♪
端末から着信音が鳴り、俺は迷わずそのコールに応答した
『やあ一日お疲れちゃんちゃらちゃん』
「ふっ、中々有意義な時間を過ごさせてもらった。二度目のこの生活も悪くはないな」
『気に入ってくれて結構、結構。そうそう、まだ君に言い忘れていたことがあるんだよ』
「うん?どんなことだ」
『君が築き上げた力、つまり君と以前いた仲間たちの証であるあれは、いつでも発動できるから、自分がここぞっていうときに使えばいいと思うよ』
「それは朗報だな、あれは俺達とサッカーを通しての絆のようなものだ。連絡助かる」
『いいよ、それじゃあまた連絡するねぇ~♪』
プツン
連絡は途絶えた。そしてまた俺は歩き出す。空は茜色に輝いていた。
連絡の着信音は、「イナズマイレブン3 世界への挑戦!!ジ・オーガ」のオープニングにしました。
それでは次回