本鈴が鳴り、教室では異様なまでにざわついていた。その理由は、本鈴直後に、前側のドアが開き、スーツを着た女性が入ってきたからであった。女性の名前は小野遥、学校での総合カウンセラーという簡単に言えば、相談相手となり、その問題を適切な専門的カウンセラーに相談させるといった職業の人物だった。
ある程度の紹介の後、希望者は退室してもよいということになった。
「達也、昼までどうする?」
達也の前席のレオが、達也に声をかけていた。
「ここで資料の目録を眺めているつもりだったんが……OK、付き合うよ」
「レオは何を見に行くんだ?」
俺は二人に声をかけた。レオは少し引くかと思ったが、切り替えが早いのか、先程の説教を気に止めてないようだった。
「工房に行ってみねえ?」
「闘技場じゃないのか?」
俺の予想ではレオは闘技場を言ってくるかと思ったのだが、達也も同じことを思っていたようだった。
レオはニンマリと笑うと
「硬化魔法は武器術との組み合わせで最大の効果を発揮するもんだからな。自分で使う武器の手入れくらい、自分でできるようになっときたいんだよ」
レオ自身はかなり将来に向けてのことを考えてるらしい。こういう面での性格は仕事をしていてもいい人材になることだろう。
「工作室の見学でしたら一緒にいきませんか?」
3人の話し合いを聞いていた美月が同行の申し入れがあった。
「柴田さんも工房の?」
「ええ…私も魔工師志望ですから」
「バダップはどうする?」
レオが俺の同行を気になっていたようだが
「すまない、俺は図書館へいくよ。ここの図書館は多くの知識を学べそうだからな」
「そうかぁ…」
わかりやすいように肩を落とすレオを見て、俺は思わず苦笑した。
俺はその後、達也たちと別れ、図書館へと向かった。
図書館の中に入るとおびただしい棚と、並べられた本の数々が所せましに置いていた。
「中々の数だな、今日は少しにしておいて後はまた後日か、借りていくか」
俺はひと時の時間を図書館で過ごした。
なるほど、会長の七草先輩は数字付き(ナンバーズ)という家系なのか、魔法師としての才能は、遺伝的素質に大きく左右されるとはあるが、この日本においては苗字に数字を含む十師族が現在のトップを滑るものなのだろう。それよりも俺が驚いたことは、この世界の戦争の数である。俺がいた世界ではここまでの状況にはなっていなかった。これが魔法か、やはりこの世界力による武力行使の思想が強すぎる。これを改善していくのが俺の運命なのかもな。まずはウィードとブルームという差別意識を無くさなければな。
俺は本を閉ざすと、二冊本を借り、図書館を後にした。
「いい加減に諦めたらどうなんですか?深雪さんは、お兄さんと一緒に帰ると言っているんです。他人が口を挿むことじゃないでしょう」
図書館から出て、校門の方へ向かうと、聞き覚えのある女子生徒の怒声が聞こえた。
状況を見ると、達也たちと、一科生がどうやらもめているようだった。
「達也何かあったのか?」
「別に深雪さんはあなたたちを邪魔者扱いなんてしてないじゃないですか。何の権利があって二人の仲を引き裂こうとするんですか」
美月がここまで感情をだしていることに驚いたが、次の言葉からそうなるのも当然だというものだった。
「引き裂くとか言われてもなぁ……」
「僕たちは彼女に相談することがあるんだ!」
「そうよ!司波さんには悪いけど、少し時間を貸してもらうだけなんだから!」
自分勝手な言い分でまとめようとしているが、それでは何の理由にもならない。むしろ司波妹が今の状況で一科生と一緒に帰ることが、彼女と彼らとの溝を深めかけない。
「君達は普段からクラスで話し合うことができないほど時間に余裕がないのか?俺達の方では話し合いができる時間はいくらでもあったはずだが?」
「うるさい!他のクラス、ましてやウィードごときがブルームに口を出すな!」
あまりに暴言で横暴な態度をとる一科生に俺は呆れてしまった。横にいた美月は怒りをあらわにした。
「同じ新入生じゃないですか。あなたたちブルームが、今の時点で一体どれだけ優れているというんですか!」
その言葉が種火になったのか、一人の一科生が
「どれだけ優れているか、知りたいなら教えてやる」
と嫌な笑みを浮かべながら言った。まずいな、下手をしたら魔法が人に向けられる。そう直感した矢先、
「ハッ、おもしれぇ!是非とも教えてもらおうじゃねぇか」
と売り言葉に買い言葉、その発言からその場にいた一科生はヒートアップしていった。
「だったら教えてやる!」
そう発言した一科生は手元から小型拳銃を模した特化型CADを出し、レオに銃口を向けた。明らかに危険行為、いやもうこの時点で犯罪行為である。今の状態はいわば刃物を相手に向けているようなものであり、下手をしたらけがでは済まされないものである。
-バチン!! 「ヒッ…!」
小さい悲鳴が聞こえると、銃口を向けていた一科生の手元からCADが弾きとんだ。
「この間合いなら~体を動かした方が速いのよね」
CADを弾いたのはエリカだった。エリカの手には警棒のようなものを握っており、その身のこなしは、疾風のごとく、一瞬のものだった。
「達也、俺は他の一科生を無効化する、その後は何とか場を収めてくれないか」
達也の耳元で小声で話すと
「策はあるのか?」
と達也が聞いてきた。俺は短く
「ある」
と答え、少ししゃがみ、足に触れた。
ブオンー
足に魔法式が展開された。時間と視線誘導はレオとエリカの口喧嘩を繰り広げていたおかげで稼げた。
俺は少し前に一歩を踏み出した。
「スプリントワープ」
ビョンービョンービョンー
俺は一科生の間を高速で隙間を縫いながらすり抜けた。
俺は一番後ろの一科生の背後で止まり、それと同時に後方から何かが割れるような音がした。振りかえると、先ほど達也に言った女子生徒が、もう一人の女子生徒によりかかる状態になっていた。
「やめなさい!自衛目的以外の魔法による対人攻撃は、校則違反である以前に、犯罪行為ですよ!」
強い声が聞こえた方向を見ると、一科生の顔は蒼白になっていった。声の主、生徒会会長・七草真由美と、生徒会のメンバーの数名がその場にはいた。彼女の手からはサイオンの光が輝いていた。
「風紀委員の渡辺摩利だ。事情は聞きます。全員ついてきなさい」
風紀委員か、この場を収めてくれるのはいいが、どう言い分をつけるべきか…
「すみません、悪ふざけが過ぎました」
泰然とした足取りで妹と共に、達也が摩利の前へ歩み出た。
「悪ふざけ?」
その場の光景では疑える発言を唐突にし、摩利の眉が軽くひそめられた。
「はい。森崎一門のクイックドロウは有名ですから、後学のために見せてもらうだけのつもりだったんですが、あんまりに真に迫っていたもので、思わず手が出てしまいました」
なるほど、だが、先程魔法しようとしたあの女子生徒の言い分はどうする達也。
「ではその後に1-Aの女子が攻撃性の魔法を発動しようとしていたのはどうしてだ?」
「攻撃といっても、彼女が発動しようと意図していたのは目くらましの閃光魔法ですから。それも、失明したり視覚障害を起こしたりする程度のレベルではありませんでしたし」
「ほぅ……どうやら君は、展開された起動式を読み取ることが出来るらしいな」
魔法式は情報量の塊のようなものだが、その量は読み取れるほどの量ではないほど膨大なものだ。つまり不可能に近いものなのだ。いったい何者なんだ達也。
「実技は苦手ですが、分析は得意です」
「…誤魔化のも得意のようだ」
「摩利、もういいじゃない。達也くん、ホントに見学だったのよね?魔法の発動を伴う自習活動は、一学期の授業で教わる内容です。それまでは控えた方がいいでしょう」
「会長がこう仰られている事でもあるし、今回は不問とする。以後このようなことがないように」
摩利は一歩を踏み出したが、その場で背中を向けて聞いてきた。
「忘れるところだったが、一科生の後ろにいる二科生、君は何をやっていた?」
気づかれていたか、まあ、俺も誤魔化すとしよう。
「いえ、万が一のために念のためCADを回収をしていただけですよ」
バダップの手の中にはその場にいた魔法を発動しようとしていた女子生徒以外の全てのCADがあった。先程の高速移動時に、CAD解除と同時に回収を行い、全員を無力化したのだった。
「君の名前は?」
「一年E組、バダップ・スリードです」
「君もだ」
そう言うと、達也の方を少し見た。
「同じく一年E組、司波達也です」
二人の名前を聞くと「覚えておこう」と言い残し、生徒会はその場を後にした。
バタップの設定では、今までのアニメやラスボスとチームオーガのわざは交流により使えるという設定です。いつかあのシュート技をかける日が来るはず。
また次回