魔法科高校の益良雄 作:RAINY
2092年8月某日
どうやら俺の家系『川村家』は精霊魔法を扱う古式魔法師の家系だったようだ。川村家の蔵には、精霊魔法に関して記された書物が多く貯蔵されているのをその蔵の中で確認した。
(古式魔法師の家としては随分と新しい家みたいですね。他の古式魔法師の家はその歴史が200年越えなんてざらの様なのですよー)
(たったの80年程度、ほぼ最新の古式魔法師の家系みたいだけど。随分と面白いことになってるわね)
俺がウィル子達と一緒に確認している古式魔法師として認められてからの家人を記した家系図、その天辺には『川村英雄』と記されていた。因みに、俺の曾祖父にあたるようだ。
「この世界にヒデオが存在したことになってるのか。どっちの原作でもありえない話だから、神様による俺の存在の辻褄合わせってところか」
俺が転生特典として授かったウィル子とノアレ。この世界では神霊とされる存在である二人と、もしぽっと出の何の魔法師の家系でもない少年が契約していたら。十師族と古式魔法師による少年を奪い合う大乱闘スマッシュブラザーズの開催である。
「例え歴史が浅かろうが、魔法師の家系でさえあれば後ろ盾か」
多少心もとないモノではあるが、より強固な後ろ盾を得る前の保険としては十分だろう。
「サー、これ!これはとっても面白そうなのですよー!」
「『英雄武勇伝』ですって。ぷくくっ、どんな面白い武勇伝が書かれてるのでしょう。ねぇ、陛下」
二人が実体化して何やら黒歴史のノートのようなものをこちらに差し出した。
今ここで語るべきことかは分からないが。マスターや閣下ではヒデオ本人と被っていて紛らわしいし、俺としてはヒデオと同列なんて烏滸がましいのでサーと陛下に呼び方を変えてもらった。
「分かったから、読むから実体化は出来れば控えてくれよ?」
神霊が実体化してるところなんて見られたら大変な騒ぎになる。神霊だと思われなくても彼女たちの見た目は幼いので大変な騒ぎになる。
(サー、イエッサー!なのですよー)
(分かってるわよ、陛下)
彼女らは俺のお願いを聞き入れ、本来彼女らがいる領域・神霊の住む現実とはフィルタようなモノを1・2枚挟んだ領域に引っ込んだ。
……なんじゃこの本は。
差し出された本を開いてみれば。武勇伝とは名ばかりに、この世界の川村英雄に関する伝聞が箇条書きのような状態で記されていた。
第三次世界大戦時に日本防衛のため軍に協力すること数度・対馬奪還作戦にも協力し見事奪還・その後も対馬防衛etc.
これ、控えめに言って護国の英雄なのでは?
(写真を見る限り完全に年取っただけの閣下ね)
(こっちのマスターは随分と表立った活躍をしていたのですね)
書物にはしっかりその武勇伝が偽りでないと最低限証明する写真が散りばめられていて、ノアレが言った通り我らが川村ヒデオのしわが所々に見える白髪の姿が映されていた。少し猫背ではあるが、見た目の年の割には背筋が伸びている。
そして、その武勇伝の項が終わった後には、彼が使っていたとされる魔法が記されている。
電子機器のハッキング・影を生み出し、それに触れたものの消失・銃器の創造及び破壊・未知の金属の創造。
これ、ウィル子でノアレでマックルでエリーゼなのでは?
お分かりいただけただろうか。なんと、この世界のヒデオは完全体・
(私が引くくらいチーターね。チートなんて恥ずかしくないのかしら)
止めてくれノアレ。その言葉は俺に効く。
現・
(おほほほほ。御免あそばせ、チーター陛下)
流れ弾と思いきや割とわざとっぽい。
(マックルも能力が使えて、エリーゼとも契約してたとなると、流行りのチート主人公みたいなのですよ)
それ、マスラヲ終盤の時点で(俺に)言われてたことだから。まぁなんにせよ。これならウィル子やノアレの力を使っても、ヒデオの子孫である俺の魔法ってことで通せるかもしれんな。
(無茶苦茶なごり押しの気がするのですが)
(その理論が通ったとしても、陛下が厄介な連中に目を付けられるわね)
……言うな。
ノアレの予想が容易に想像できて、俺の今世がストレスでマッハなことに気付いたのだった。
「英人ー!
蔵の外から母の呼ぶ声がする。どうやら俺の友人たちが遊びに来たようだ。
「今行くー!」
読んでいた書物を元の位置に戻し、俺は蔵を出た。
◆◆◆
「はい、クッキー」
所々近未来な技術が見え隠れしているが、畳が敷かれていて全体的に古風な日本家屋を思わせる俺の自室。友人らと囲むちゃぶ台に、母は手作りのクッキーを添えた。
「ありがとう、母さん」
「ありがとうございます、
「おいしくいただきます、幸恵さん」
「ふふ、ごゆっくりどうぞ」
上から俺・幹比古・エリカの反応である。母は俺の自室から退室した。
さて、先ほどの幹比古の発言から分かる通り。俺の母は幹比古の父・
「月並みな挨拶だが。二人とも元気だったか?」
「あたしは特に事件に巻き込まれず元気よ?」
「僕も元気だったけど。事件と言えば、沖縄と佐渡で大きな事件があったね」
元気というには裏腹に、そう述べる幹比古の顔は少し青い。
大亜細亜連合による沖縄海戦と新ソビエト連邦による佐渡侵攻事件。どちらもまだ終結して2週間と経っていない。
(陛下は起こると知ってて干渉しなかったのかしら?)
……。
(陛下?)
(サー?)
忘れてたんだよバカヤロウ。原作開始から3年前だからと油断してて、そういえば原作追憶編とか語られてる設定とかでそういう事件があるの完全に忘却の彼方だったんだよぉ……。仕方ないじゃないか。だって追憶編で細かく描写された沖縄海戦ならまだしも、佐渡侵攻事件はあんまり言及されてないんだから。俺は悪くねぇ!俺は悪くねぇッ!
(陛下……)
(サー……)
見るなよ。そんな可哀想な生物を見る目で俺を見るなよ……。
「あ~ぁ、あたしもそこにいれば活躍できたのになぁ」
「中学生の僕らじゃ高が知れてるし、巻き込まれたらただじゃすまないんだ。あまりそういう言葉は、ってどうしたの?英人」
ウィル子たちの憐みの視線にしょぼくれていた俺に気付いたようだ。人が居る前でのウィル子達との会話はこういう事態が起こるので怖い。
「い、いや。離れてるとはいえ二つの事件か一気に起こって怖いと思ってな。ちょっと不謹慎だけどさ、ここらへんでああいう事件が起きないでほしいなって」
「そうだね。そもそも事件なんてどこでも起きなければいいんだけど」
自然に流せたようだ。その話題に乗って平和を噛みしめるとともに、今後も何事もないことを幹比古と一緒に祈った。
その後は他愛もない世間話や女子がいるとは思えない馬鹿話で盛り上がり、楽しい時間が過ぎていった。