魔法科高校の益良雄 作:RAINY
2095年4月5日
俺は登校時間を少しずらすことによって、達也たちが生徒会長に絡まれるイベントをスルーする。巻き込まれるのは御免だ。しばらく生徒会長とは会いたくないし、ついでに言うなら三巨頭とできる限り接触したくない。特に次期当主である
今日の一日は何事もなく平和に終わる。
(そうは問屋が卸さないってね、陛下?)
「英人さん、少しよろしいですか?」
昼休み。生徒会室から戻ってきたであろう深雪から声をかけられた。
「深雪さん?どうかしたかい?」
「七草先輩から放課後、生徒会室に来てほしいと言伝を預かりました」
予想外だった。まさかご指名されるなんて露とも思ってなかった。
「私も放課後に生徒会室へ行くので一緒に行きましょう」
「ちなみに拒否権とかは?」
「引っ張ってでも連れて来いと言われましたので。何かしたのですか?」
「俺が訊きたいよ……」
生徒会長からは逃げられない。生徒会室直行が余儀なくされた。
◆◆◆
放課後。生徒会室、ではなく第三演習室に来ていた。理由は知っての通り、生徒会長と風紀委員長で達也の風紀委員加入を画策したが生徒会副会長が異議を申し立て、決闘の元に達也の実力を証明することとなったからだ。それ故に演習室の真ん中で
「川村だったか。どちらが勝つと思う」
俺の隣で今まで黙して語らなかった彼がそう静かに問いを投げた。
「俺はどちらの実力も知りませんから、勝敗を予想することはできません」
「そうか」
彼はそうして再び黙する。彼も達也については実力を知らない。俺から達也について何か聞き出せないかと期待したのかもしれない。俺は原作知識でしか彼らの実力を知らない。この世界の俺が彼らの実力を知っているはずがないのだ。予想も達也の実力も述べられるはずもない。
「ですが、あえて言うなら」
「?」
「面白いモノが見れるかもしれません」
この言葉は、九重寺で達也の体術を見た俺なら言える言葉だろう。
試合開始の合図が鳴る。達也は即座に動き、三か所で三度CADの引き金を引く。軍配は達也に上がった。
完全原作通りだな。
(ニンジャ=タイジツ、ジッサイスゴイ。のですよー!)
(あの先輩今どんな気持ちなのかしら?愛しの会長の前で無様晒してどんな気持ちなのかしら?)
止めろ暗黒神。
◆◆◆
「それで、俺は何故呼ばれたのでしょうか?」
生徒会室。異議がなくなり、達也の風紀委員入りが決定した後に今まで放置されていた、俺が生徒会室に連行された理由を尋ねた。三巨頭はそろったままである。
「お前には生徒会・風紀委員・部活連のどれかに所属して貰う」
「はい?」
十文字克人がそう口火を切るが、全く意味が分からなかった。
「川村英人君には生徒自治組合3つの内、どれか選んで所属して貰います」
異音同義語で再度繰り返されても困る。何も理由が説明されていない。
「えーと、生徒会には既に深雪さんが入りましたよね?」
「人手が多いにこしたことは有りません。多すぎるのも問題ですが」
「部活連はもう十分人手が足りていると思うのですが?」
「人手が十分という事はない。今の人数でも時期次第では猫の手も借りたいくらいだ」
「風紀委員はもう推薦枠が埋まっているはずでしょう?」
「生徒会長・風紀委員長・部活連会頭の三者の推薦と職員室の同意があれば入れる一般枠というのがある」
「……」
拒否権も逃走経路もないことは分かったが、彼らがどうしてそこまでするのかが一切見えてこない。何が彼らをそこまでさせるのか、自身の知識から探り出してみるが。1件、もしかしたらという事項が浮かんだ。
「……『川村』である俺を、監視するためですか?」
俺の懐疑を受けて三巨頭はそれぞれ視線を交わす。最後に生徒会長に視線が集まり、仕方ないと彼女はため息を吐いた。
「今まで現代魔法師に不干渉を貫いてきた『川村』であるというのも、貴方を私たちの目が届くところに置いておきたい理由の一つです」
生徒会長はこちらをまっすぐに見つめる。そこにおふざけは一切ない。俺は真剣な視線を返し、続きを促す。
「主な理由は、貴方が昨日校門での騒ぎがあった際に使った魔法です。あの後に一科生の方々が、魔法が発動できなかったことを訴えました。すぐに治ったようですが。私は、貴方の魔法によるものだと思っています」
三巨頭全員がこちらを睨む。他は詳細を聞かされていなかったのか驚いた顔をしていた。
「一年生とはいえ、一科生から魔法技能を奪った。あの魔法は何ですか?」
虚偽は許さないという三者からの圧力。他家の魔法師から他家の魔法の詳細を聞くというマナー違反。それでもなお、彼らは俺に問わねばならないのだ。三人は生徒を守るため、うち二人はさらに日本の現代魔法師を守るため。
「……あの魔法は魔法師から魔法技能を奪うものではありません」
俺は圧力に負けたわけではなく、彼らの思いに応えるため詳細にとはいかないが答えることにした。
「CADに対し、起動式の構築を阻害する、精霊魔法に分類されるものです」
「魔法師の魔法式ではなく、ですか?」
「はい、あくまでCADに対してのみです。CADを介さない魔法の発動は阻害できません」
それを聞いて生徒会長と風紀委員長はほっと胸をなでおろした。
「なぜ件の際に使用した?」
会頭はまだ圧力を緩めていない。
「友人らに身の危険が及ぶ可能性があったからです。千葉エリカといえど、複数人のCADを一瞬では叩き落せません。友人の身を守るために必要でした」
悪意のあった物ではないと分かり、俺の答えに会頭が気を緩めた。
「千葉と友人なのか?」
「風紀委員長は千葉道場の門下生ですよね?エリカから聞いてませんか?」
「いや、千葉とはそんなに話が出来てなくて……」
そんな議題のそれた風紀委員長の質問で全体の空気も和んだ。
「誤解は解けたようですね。では、俺が所属する件が無効ということで」
「『川村』であることも理由の一つですから、そちらも説明してもらえますか?」
和んだ空気がまた引き締められる。先ほどとまではいかないが。
「『川村家』は現代魔法師界隈を害するつもりはありません。俺が一高に入学したのはあくまで更なる研鑚の為の、現代魔法の知識が目的です。これも
「これで充分でしょうか?」
「ええ」
「では」
「言葉では何とでも言えるでしょうから、やはりどれかに所属してください」
「……」
彼女は今までと打って変わっていい笑顔をしている。言葉の通り、まだ懸念は残っているというのもあるかもしれないがそれ以上に、「この子は弄り甲斐がありそう」というふうに見える。
「……」
三者を見やる。生徒会長はやはりいい笑顔、風紀委員長は不敵な笑み、会頭は目を伏せている。
「……生徒会で」
肉体労働は嫌である。
「待て!さっき言ってた魔法なら風紀委員が適任だろう!」
「彼に選択権を渡そうって言い始めたのは摩利でしょ?」
「だが!」
何か目の前でコントを始めた。さっきまでの重いふいんき(何故か変換できない)はどこへやら。
「まぁ、そのなんだ……。よろしく頼む、深雪さん。それと、頑張れ達也」
「はい、よろしくお願いします」
「ああ、そっちも頑張れ」
◆◆◆
2095年4月6日
放課後の生徒会室。達也含む風紀委員らと
「それにしても摩利ったら、最後まで英人君を貸し出せってうるさかったわね」
会長とは
「CADを封じる魔法は珍しいですからね。争いを収めるには一見適しているように思えます」
会計の先輩・
「何度も説明している通り、あの魔法は精霊魔法という性質上、効果の反映が遅いんですよ。発動済みの魔法は封じられませんし、俺は現代魔法全般が苦手でCADに入ってないからまともに応戦もできません」
辟易する。何度も「ウィル子の対応は遅い」なんて嘘をつかなければいけない現状は大変ストレスになる。ウィル子達は俺の魔法の展開など待たずとも即実行・即終了させる力を持つというのに、俺はそれを過小表現しなければいけないのだ。
「現代魔法が苦手なんて、入試成績23位が言う言葉じゃないわね。英人君?」
会長は本当に男性を弄る時はいい笑顔をする。
「個人情報の漏洩はいただけませんよ、会長。それに、生徒会の先輩方は試験成績一桁の常連で、深雪さんは主席入学です。ここで苦手と言うのは差し支えないでしょう」
改めてその事実を鑑みると、何故俺が生徒会役員なのかと疑問に思う。約200人中23位と上位のはずなのに自信も湧かなければ誇りも感じない。
「さらに付け加えるなら。俺が現代魔法を使った場合、静かで加害者もいない試験ならまだしも、実践なんて人が暴れてる場所では良くて不発、悪くて暴発ですよ」
それが俺の現代魔法技能の事実である。集中さえさせてもらえればそれこそ上位の成績を出せるが、実践となればそこで使えるレベルのものなんて魔法式の構築もままならない。信頼できない現代魔法を使うくらいなら、初速が遅かろうと迷わず使い慣れた精霊魔法を使う。
「本当に精霊魔法一辺倒なんですね」
深雪からは少なくない呆れが見て取れる。
「古式魔法師は一つの魔法を極めてこそ、という価値観が主流だからな」
俺がそう肩をすくめて答えた。その時、生徒会室の内線がコールされる。
〈七草、至急部活連本部に来てくれ。問題が起こった〉
「分かりました」
ヴィジフォン越しに会頭と会長が真面目な面持ちで応答する。どうやら原作通り、達也が巻き込まれたようだ。
◆◆◆
「俺はキャスト・ジャミング擬きより、英人のCAD封じの方が凄いと思うが?」
部活動勧誘も例の剣道部と剣術部の諍いの事後報告も終わった後、適当なカフェテリアにて達也達と談笑していた際、キャスト・ジャミング擬きにはそれ以上触れられたくないのか、達也が話題の矛先を俺に向けた。
「「「CAD封じ?」」」
エリカ・美月・レオは聞きなれない言葉に首を傾げる。
「エリカは知らないのか?」
「知ってるわけないだろう?あれは三巨頭に睨まれたから仕方なく答えたが、川村家の秘儀の一部なんだ。本当だったら門外不出、他言無用の代物なんだよ」
達也はエリカと俺が長い付き合いであることを知っているから、エリカが知っているモノだと勘違いしたのか。もしくは、家同士の繋がりを探るための質問だったのか。とりあえず、エリカとは長い付き合いとはいえ、家同士の付き合いではない。あくまで個人の付き合いに、家の秘儀など晒せない。
「川村家の秘儀、か……」
「それってどんな魔法なんだ?」
達也の小さな呟きは、レオの好奇心によってかき消された。
「アンタねぇ……」
「な、なんだよ」
レオはマナー違反をしていることに気づいていないが、エリカはそれを暗に諌めている。
「レオ、これ以上CAD封じについて聞きたいと言うのならば。最悪お前を……」
低い声で多少脅す。これ以上は本当に―――
(
(
違う、そうじゃない。
「とまぁ、冗談だが。本当にこれ以上の詮索は止めてくれよ?達也もな?」
「あ、ああ。冗談か。ちょっとブルっちまったぜ……」
「ああ、分かった」
◆◆◆
2095年4月23日
この日に至るまで色んなことがあった。達也がエガリテという同盟に嫌がらせされたり、達也が
ほぼ達也に関することだが彼は原作主人公なのだから当たり前だ。俺は新入部員勧誘週間時には昼休みも放課後も生徒会室に立てこもり、生徒会長に「友達が少ないのか」等心配もとい弄られ、放送室占拠の際はすぐに向かったがほぼ傍観を決め込んだ。原作知識を持つ俺が今日この日ブランシュ事件と呼ばれるそれが起こることを知っていながら、何故事前にエガリテの一員である
それで、現在は放課後。公開討論会が開かれようとするさなか、風紀委員と生徒会長除く生徒会はその警備にあたっていた。俺も生徒会役員なので(とても不本意だが仕方なく)その警備の一員となっている。
「なぁ、達也。放送室を占拠した面々、いや、壬生先輩だけでもいい。この討論会に来てるのを見たか?」
警備の一人としてこの疑問は当然出せるだろう。この後の行動を怪しまれぬようにするために布石となる。
「……いや、見ていない」
少し目を瞑って黙考してから答える達也。もしかして
「あれほどのことをする熱意が有った面子なのに一人もいないのはおかしくないか?杞憂であればいいんだが。ちょっと俺、壬生先輩を探してくるよ」
「ああ、いちおう気を付けておけよ」
達也の忠告に頷いてから俺は講堂を出る。一切の迷いなく図書館へと向かった。図書館に着いた頃、轟音が講堂の方から鳴り響いた。事件が始まった。
◆◆◆
図書館内部。俺はすぐにテロリスト鎮圧に動くのではなく、彼らが所定の位置に着き、落ち着くまで待った。さすがに二科生とはいえ、複数人の魔法師の目の前に出て鎮圧できるほどの腕はない。
(私を使えば良かったんじゃない?)
CADだの武器だのを消したとしても、相手は非魔法競技の運動部がだいたいだ。体術だけで負ける自信があるぞ。
(そうでしたね。陛下、運動は人並みにできるけど体術や武道はからっきしですものね。プークスクス)
笑うならその辺を川村家の技術に入れてなかった先代たちにしてくれ。それよりだ。ノアレ、敵の位置を教えてくれるか?
ノアレやウィル子は普段魔法師だろうと知覚できない領域からこちらの領域を知覚できる。隠れていない潜伏など意味をなさない。
(二階特別閲覧室に四人、階段の上り口に二人、階段を上り切ったところに二人かしら)
ありがとう、助かる。
俺は教えられた場所に、まずは階段上にいる二人に対して汎用型CADに収めた魔法を放つ。
「ぐあっ!」
「がっ!」
威力はさほど強くない雷撃が襲う。彼らはそれで気絶した。
「なんだ!」
「な、何が起こった!?」
再度声がした方、上り口の二人に雷撃を放つ。以下同文。
(サー!やりますねぇ!)
ありがとナス。
魔法展開の時間さえもらえれば精霊魔法でこの通りである。ウィル子達のおかげで隠れながら攻撃できるのだから一方的である。
俺はゆっくりと歩を進め、特別閲覧室の電子錠がかかった大扉の前で止まる。
ノアレに、部屋の中の壬生以外の位置を教えてもらい、芸もなく雷撃を放つ。その後にウィル子に頼み、電子錠を解除し、扉を開けてもらう。
(にほほほほ。電子錠なんて脆い鍵、ウィル子の前ではノーロックに等しいのですよー)
ウィル子以外には強固な鍵なんだがな……。
扉が開いた先には、倒れて動かないブランシュ構成員と思しき者3人と、現状を理解できず慌てふためいている壬生の姿があった。
「!あ、あなたがやったの!?」
「まぁそうなんですけど。どっちかっていうとそれ俺のセリフなのでは」
まるで立場が逆転しているような言い方である。あちらの方がテロリストのはずなのだが。
「壬生先輩、大人しく投降を。他もだいぶ鎮圧されてますよ?」
この目で見たわけではないが、正直言って相手方は魔法師の学校を狙うにしては装備が整っていない。鎮圧は必然だろう。まぁそれらは陽動で、特別閲覧室のデータを盗むのが本命だったからだ。こちらの人員はアンティナイトも支給されてる訳である。
「わ、私は、間違ってたっていうの……?」
もはや悲壮感に満ちた面持ちである。俺はそれを見て、哀れさにため息すら零れた。
「貴女の考えが正しいか正しくないかは、もはや問題ではありません。
「っ!」
間違いを指摘され、彼女は声にならない悲鳴を漏らす。
暴力に頼った時点で間違いなのだ。それによって一時の成功を収めたとしても、いずれは瓦解する。さらなる暴力で滅ぼされる。
「私は、私は……。……っ」
されど彼女は竹刀を握る。彼女は自身のテロ加担の大義を信じられなかったが、その剣は信じて疑わぬモノなのだから。
「やぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ぐっ」
彼女の踏込みによる急接近。大上段から頭を狙う一撃。普段の彼女だったら素人に防御を許す程度ではなかっただろうが、彼女の中には行動の迷いがあったのだろう。左腕での防御が間に合った。が、魔法未使用とはいえその道の剣だ。俺を腕の痛みで動きを鈍らせるくらいは容易い。
「はぁ、はぁ……。っ!」
彼女は俺に追撃をせず、蹲る俺の横を駆け抜けた。
「壬生先輩!?」
外からエリカの声が聞こえる。どうやら達也達が来たようだ。
「エリカ!」
俺がそちらに向かうと、既にエリカと壬生の戦いが始まっていた。達也と深雪は事の成り行きを傍観している。手を加える素振りがないことに俺は安心した。
その戦いは素人目で見て、美しいモノだった。精錬された技は、人の本能にそう感じさせる。人の努力の結晶を称賛させるのだ。長く見ていたいと少し思ったが、残念ながらエリカの最後の一撃で短く終わった。
戦いの後、少し会話して気絶した壬生は達也に運ばせた。達也は俺に押し付けようとしたが、俺は左腕が痛むのでもちろん断った。
◆◆◆
「なんだ、あたし、バカみたい……。勝手に、先輩のこと誤解して……自分のこと、貶めて……。逆恨みで、一年間も無駄にして……」
保健室。彼女に対する事情聴取で誤解が解けたが、解けるまでが一人の少女を追い詰めるくらいには長すぎた。
「……無駄ではないと、思います」
達也がそう述べ、壬生の努力を肯定する旨を伝える。彼女は達也にしがみつき、堰を切ったように泣き出した。
◆◆◆
壬生が泣き終えた後、ブランシュが背後にいることを聞き出し、攻め入って撃滅する達也の案を十文字会頭が賛同する。日本支部の所在も表向きはカウンセラーの
「俺は辞退しますよ」
ブランシュへの襲撃グループの話になった時、俺はそう先に制した。
「怪我人を駆り出すほど、俺たちは非人道じゃない」
「達也はそう理解してくれるけどさ。エリカが睨んでくるんだが」
彼女はこの程度の怪我で音を上げる俺ではないとでも思っているのだろうか。そもそも今回ばかりは精霊魔法では分が悪いのだ。エリカは渋々納得し、保健室に居た面々はぞろぞろと退室していく。
「ちょっといい?」
俺も最後尾で退室しようとした時、壬生がそう呼び留める。
「俺に、何か用でも?」
彼女と話す内容はないと思ったが、彼女にはあるようだ。
「まずは、その。ごめんなさい。左腕怪我させちゃって」
「腫れてる程度ですよ。ひびも入ってません。そっちは、エリカが利き腕にひびを入れたようですし。それで御相子で」
申し訳なさそうに謝っているが、俺はあの事態を予想していた。だから利き腕でない方で防御したし、事前にウィル子達の行動を制していたので咄嗟に庇いもしなかった。むしろ俺としても襲撃班に加わらない大義名分が出来たので有り難かった。
「ありがとう。それと、どうしても聞きたいことがあったんだけど。結局私って、間違ってたのかなって」
特別閲覧室での際の俺の言葉が引っかかっていたようだ。あの時、俺は彼女を否定も肯定もしなかった。
「差別をなくしたいと思うのは正しいと思いますよ?ですけど」
「?」
「貴女の本当の動機はそれではないでしょう?本当はただ、自身の努力を、認めてほしかっただけ。ではありませんか?」
「!」
彼女は驚いて見せたが、徐々に表情を穏やかに戻した。
「そうね。そうだったと思う。だって、司波君に認められた時、とっても嬉しかった」
「ええ、それも悪いことではありません。誰もが認められたくて、もがいてるんですから。でも貴女はもっと早く気付くべきでしたね。貴女のことを、ずっと認め続けている存在に」
彼女はまるで意味が分かっていないようだが、それは短い病院生活で気付かされるだろう。俺の口から述べることではないので、俺はそれ以上何も言わず退室した。
後に、ブランシュ日本支部が無事壊滅したことを達也から聞いた。事後処理は十文字会頭が十文字家の権力でどうにかしたようだ。