唯我独尊自由人の友達 IFルート   作:かわらまち

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続きです。
龍園くんがホワイトです。


椎名ひより√ 中編

 

 

 

 1学期が終わり、夏休みに入る。その間に中間テストや期末テストがあったが、特に問題なく乗り切った。こう見えて勉強はできる方なのだ。みんなが友達と遊んでいる時間に復習やら予習をしているからね。自分で言ってて悲しくなってきたな。友達を作らないと決めたのは僕だけど。

 

 しかし、そんな僕にも気付けば、友達といえるものができていた。

 

 それが椎名ひより。

 

 あの日図書室で話しかけてから、仲良くなり、今では毎日一緒にいるほどだ。といってもお互いに同じ空間で本を読むだけが多い。でも僕はその空間が好きだった。彼女も同じだと思う。

 

 それから変わった事といえば、下の名前で呼び合うことになったこと。僕はひよりと呼び、彼女は僕をゆうくんと呼ぶ。僕の名前は『はやと』なのだが、ひよりが『ゆうと』だと思っていたことからそうなった。ちゃんと自己紹介のときに名前も言ったのだが仕方がない。

 

 他にも変わったことがある。それは周りの反応。ひよりと僕が仲良くなりだしてからは色々と噂が流れたが、今では一緒にいることが当たり前となり、2人でセットだと思われている。

 

 休日にもひよりが僕の部屋に来るのが当たり前になっていた。最初は意識しまくりで落ち着かなかったが、ひよりがあまりにも動じなさ過ぎて、今では日常の一部となっている。

 

 そしてもうひとつ。変わった事といえば。

 

「おい、イチャついてないで茶でも出せよ」

 

「別にイチャついてないし、お茶なら冷蔵庫に入ってるから好きに飲んでくれ」

 

「めんどくせぇな」

 

「ゆうくん、龍園くんは一人で無人島に残って寂しかったんです。もう少し優しくしてあげましょう」

 

「適当な事言うんじゃねぇよ、ひより」

 

 そう、もうひとつは龍園翔と仲良くなったこと。元々、彼に気に入られていた僕とひよりは色々あって3人仲良くなっていた。今では下の名前で呼び合うほどになっており、今日も船の部屋で集まっていた。

 

 僕たちは今、豪華客船2週間の旅に来ている。もちろんプライベートとかではなく、学校行事のいっかんである。最初に聞いていた話では前の1週間は無人島のペンションに泊まり、後の1週間はこの船での宿泊の予定だった。

 

 しかし、案の定普通の旅行ではなく、特別試験が行われた。無人島での1週間はサバイバルだった。尤も、翔の作戦でCクラスの3名以外は早期にリタイアという形で客船に戻っていたので全く大変ではなかった。無人島ではただただ海を満喫しただけだった。

 

「まぁ、無人島の試験ではDクラスに仕掛けて完敗しちゃったもんね。翔にも優しくしてあげようか」

 

「別にAクラスとの契約を取り付けれたからいいんだよ。それに面白くなってきたからな」

 

「Dクラスに翔の策を見破るやつが居たことか?確か、堀北さんだっけか」

 

「鈴音は確かに頭が切れるが、今回のはあいつじゃない。Dクラスには黒幕がいる」

 

「ミステリー的には熱い展開ですね」

 

 聞いた話では今回の無人島での試験も翔の策を破ったのは堀北さんだということだったのだが、違ったのか。黒幕ときたか。ひよりが言う通り、なかなか熱いな。

 

「まだそんな気がするだけだがな。少しずつ探っていくさ」

 

「本当に楽しそうだね」

 

「当たり前だ。どうやって潰すか考えるだけで興奮する」

 

「龍園くんは相変わらず変態さんですね」

 

「翔は執念深いからね」

 

 思えば石崎君やアルベルト君を屈服させたのもその執念深さだ。何度負けても立ち上がり、最終的にはCクラスを支配した。見方を変えれば漫画の主人公みたいだな。やり方は少年誌に載せれるようなものではないが。

 

「負けても負けても這い上がって来る。まるでゾンビですね」

 

「ゾンビで結構だ。何度負けても最後に勝ってたやつが強いんだよ」

 

「その考えは否定しないよ。それでAクラスになれれば僕たちもありがたいしね」

 

「お金が増えれば、新しい本がいっぱい買えますね」

 

 翔は暴力と恐怖でCクラスを支配している。だけど、それだけでクラスの皆が付いてきているわけではない。皆、翔の力を信じているのだ。彼に従っていればAクラスに上がることができると信じている。だからこそ今回の敗北に文句を言う奴はいない。

 僕も彼が暴力だけの男じゃないことを知っている。彼の強さを知っている。同時に弱い部分も知っているが、これは僕が言うことではない。翔自身が経験し理解しなければならない。

 

 願わくば、その黒幕とやらが彼に真の敗北を与えてくれますように。

 

 

 

 

「ゆうくん、次のページをめくってください」

 

「ああ、ごめんごめん」

 

 ひよりに催促され本のページをめくる。その様子を翔がジト目で見てくる。

 

「何だよその目は」

 

「それのどこがイチャついてないんだよ。自分たちの体勢を見てから言え」

 

 彼が指摘するのは僕らの体勢。足を広げて床に座る僕の前にひよりが座り、僕に寄りかかっている。その後ろから腕を回し、本を持っている。要するに僕がひよりを後ろから抱きしめるような形となっている。

 

「別に変ではないです。同じ本を読むには一番適している体勢なのですから」

 

「じゃあアルベルトともその体勢をできんのか」

 

「それはありえません。本を一緒に読むのはゆうくんだけですので」

 

「確かに、アルベルト君が小説を読むとは思えないしね」

 

 嫌とかじゃなくてありえないか。別に僕に対して異性としての好意があるわけではないのは分かっている。本が好きなのが周りに僕しかいないからという意味だろう。

 

「お前らは未だに噛み合ってないみたいだな」

 

「ん?どういうこと?」

 

「うるせぇ、自分で考えろ」

 

 噛み合っていないとはどういうことなのだろうか。気になるが教えてくれそうにない。それにひよりは全く気になってないようだったので追及するのは止めた。

 

「んなことはどうでもいいんだよ。今回の試験の話だ。お前らのグループの優待者は誰だ?」

 

「試験は昨日始まったばかりだよ。そんなすぐに見つけられるとでも?」

 

「今回の試験はお前ら向きの試験だろ。無人島のは楽させてやったんだ、ここで働け」

 

「確かに龍園くんだけに寄りかかるのもよくありませんね。一応私もCクラスですし」

 

「それもそうだね。無人島で頑張った翔へのご褒美って事で」

 

 クラスの争いに興味がないと言っても、全く関与しないのも良くないだろう。偶にはクラスに貢献しておかなくては。この辺で貢献しておけばしばらく動かなくても文句は言われないだろう。

 

 今回の試験は色々とややこしいが、僕たちは優待者を探し出せばいいだけ。あとは翔がどうにかしてくれる。僕らは指示通りにすればいい。要は自分が優待者ではないと嘘をついている奴を見つけ出すだけ。簡単な話だ。

 

 見つけ出すと言っても、すでに誰かは分かっているので翔に伝える。ひよりも既に見つけ出していたようで、同じく正体を伝えた。

 

「ふぅ、よく働きましたね」

 

「そうだね。これで心置きなく旅行を楽しめる」

 

「大して何もしてないだろうが」

 

「そんなことはありません。私もゆうくんも素晴らしい働きでした」

 

「そうだそうだー」

 

「うるせぇ、黙れ。しかし、まさか1回目で見つけ出してるとはな。お前らが本気出せば簡単にAクラスに上れそうなんだがな」

 

「それじゃあ面白くないんでしょ?」

 

「ああ、折角Dクラスに面白そうなやつが出てきたんだ。楽しまねぇとな」

 

 龍園翔という男はただこのゲームを楽しみたいだけなのだ。だからこそ僕やひよりに強制はしない。本当に必要な時だけ求めてくる。今回のも僕らに聞かなくても彼なら直ぐに見つけ出していただろう。この試験が僕ら向きと翔は言ったが、彼にこそ向いている試験であることは間違いない。

 

「後は何もしなくていい。最終日までイチャイチャしてろ」

 

「分かりました。後は任せます」

 

「今回は足元すくわれないようにね」

 

「はっ!ありえねぇよ。今回は俺が勝つ」

 

 結果的には宣言通り、予想外の動きはあったものの、Cクラスがトップでこの試験が終わるのだが、それはまだ先の話だ。

 

 

 

 

「ひよりはそろそろ自室に戻ろうか。もう、寝る時間だ」

 

「……そうですね。ではまた明日」

 

「うん、また明日」

 

 夜になり、ひよりに自室へと戻るように促す。この部屋は僕と翔だけなのだが、さすがに一緒に寝るわけにはいかない。ひよりは全く意識しないだろうが、僕の方がキツイ。

 

 

 

「どうでもいいが、お前らはいつになったらくっつくんだ?いい加減うぜぇぞ」

 

「そんな事言われても……」

 

 ひよりが出て行ったのを確認してから翔が話し出す。以前から言われていることだ。

 

「男ならさっさと告白すればいいだろうが」

 

「よく分かんないんだよね……確かにひよりのことは好きだけどそれがどういう好きなのか。それに仮に告白しても脈はなさそうだし」

 

「まだそんな事言ってんのか。まぁ、本当にどうでもいいがな」

 

 今まで人を好きになったことが無い僕にはよく分からないんだ。それにひよりのほうが僕のこと何とも思ってないだろうし。そうじゃなければ僕とあんなにくっつけないだろう。あれは異性として見てないと言っているようなものだ。

 

「翔はさ、僕とひよりが付き合ったら嬉しいの?」

 

「は?どうでもいいっつってんだろうが。だが、今の状況見せられるよりかはマシにはなるだろうな」

 

「翔……」

 

「なんだよ」

 

「お前ってすごいツンデレだよね」

 

「上等だ、表出ろ。ぶっ殺してやるよ」

 

 思っていたことを口にしたら切れてしまった。しかし、彼は口は悪いし、やることは汚いけど誰よりもCクラスのことを考えている男だ。彼に報いるためにもはっきりさせないとダメだよな。

 

「この試験が終わるまでにどうにかしろ。じゃねぇと全力でCクラスから排除する」

 

「この試験が終わるまでって1週間しかないじゃん!」

 

「そんなけありゃ十分だろーが」

 

「そんなこと急に言われても無理だよ。どうにかしろって言うことは、僕がひよりに告白をしろってことだろ?人生でそんなことしたこともないし、第一……」

 

「ごちゃごちゃうるせぇんだよ。決まったことだ。腹くくれ」

 

「マジかよ……」

 

 こうして試験よりも難しい試練が幕を開けた。




次回でひより√が終わります。

龍園くんが、かなり丸くなってますね。原作7巻を読んでからは龍園くんの印象がかなり変わったんですよね。
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