唯我独尊自由人の友達 IFルート   作:かわらまち

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椎名ひより√ 後編

 

 

 

 試験が終わるまであと5日。まずは自分の気持ちを整理しなくてはならない。そして、ひよりが僕のことをどう思っているかも探らなければ。そのためにもまずはデートに誘ってみよう。クラスメイトが船のデッキにあるプールが凄かったと言っていた。どう凄かったかは分からないが、とにかく凄かったそうだ。今日はそこにひよりを誘ってみよう。

 

 朝ご飯を食べた後にひよりと合流する。このまま船内の本屋に行って本を読む予定だ。しかし今日は予定を変更させてもらおう。

 

「あのさ、ひより……この後なんだけど」

 

「はい、どうかしましたか?」

 

「何か聞いた話だとプールが凄いらしいんだよ。今から一緒に行かない?」

 

「うーん、遠慮しておきます。暑いので外に出たくありません。それより早く本を見に行きましょう」

 

 1日目終了。そういえばひよりは暑いのが苦手だった。無人島でも海で遊ばずに、パラソルの下で本を読んでいたくらいだ。

 

 結局、予定通り一日中本を読んで終わった。

 

 

 

 2日目。試験終了まであと4日。今日も朝ご飯を食べた後に合流する。今日は昨日みたいにいかないぞ。今回はクラスメイトが感動したと言っていた劇に誘ってみよう。しかもその劇は恋愛ものだと聞いた。そういう劇を観た後ならいい雰囲気になるかもしれない。

 

「ひより、今日は劇を見に行かないか?船内の劇場でやっているんだ」

 

「劇ですか、面白そうですね。いきましょう」

 

「劇は昼過ぎだからそれまでお店をぶらぶらして時間をつぶそう」

 

「はい、わかりました」

 

 よし。昨日とは打って変わって滑り出しは順調だ。この船には様々なお店がある。そこを見て回ってから劇を観る。プランとしては悪くないだろう。

 

 訪れたのは雑貨屋さん。お店の商品はプライベートポイントで購入することができるらしい。しかし、豪華客船ということもあり、商品はどれもお高めだった。毎月の支給額が少ない僕たちでは簡単には買えないだろう。

 

「色々なものが売ってますね」

 

「雑貨屋だからね。大体のものは売ってるんじゃないかな」

 

「それは本もですか?」

 

「あるかもしれないけど、とりあえず本のことは忘れよう」

 

 一番に本が出てくるあたり、ひよりらしい。しかしこのまま本を見に行けば間違いなくプランが崩れる。今回は本が絡まないようにしなければ。

 

「ほら、眼鏡なんかも売ってるよ。おしゃれなデザインのやつ」

 

「本当ですね。すごいカラフルです」

 

「あ、これとかカッコイイな。どう?似合うかな?」

 

「はい、いいと思います」

 

 商品の眼鏡を手に取り、かけてみる。お世辞でも似合っていると言われて嬉しい気持ちになる。

 

「ゆうくんは本を読むときに眼鏡をしてますよね?」

 

「うん、最近少し視力が落ちてきててね。本を読むときは度が低い眼鏡をしてるんだ。ひよりは目が良かったよね」

 

「私は眼鏡はしたことがありませんね。どうでしょうか?」

 

「うん、よく似合ってるよ」

 

「ふふっ、ありがとうございます」

 

 眼鏡をかけたひよりは控えめに言って可愛かった。普段眼鏡をかけていない彼女がかけることによって、普段とは違った印象になる。微笑んだ彼女に見とれそうになり、慌てて視線を外して話題を変える。

 

「結構気に入ったけど、さすがに買えないな」

 

「どうしてですか?」

 

「ほら値段」

 

「……なかなか高価なんですね」

 

 タグを見れば桁が一桁多い。これを買うお金は残念ながら持ち合わせていない。眼鏡は諦めて他の商品を見る。

 

「あっ」

 

 色々見て回っていると、ひよりがある商品を見て声を出した。

 

「これは、栞?」

 

「そうみたいです。かわいいですね」

 

「装飾がかなり凝ってるね。やっぱり高価なんだろか」

 

「みたいですね」

 

 ひよりが持っているタグを見てみると、これまた高い値段が書いてあった。学割とか無いんだろうか。……あるわけないか。

 

 次にぬいぐるみのコーナーへ。様々な動物や、アニメのキャラクターのぬいぐるみが所狭しと並んでいた。それを見たひよりが目を輝かせていた。

 

「わぁー可愛いです!」

 

 実はひよりは大の動物好き。使っている文具などは動物の絵がプリントされたものばかりだし、彼女の部屋にはここにあるようなぬいぐるみが何個か置いてあったのを覚えている。

 

「見てください、ゆうくん。うさちゃんです。可愛いですよね」

 

「うん、可愛い」

 

 子供のようにはしゃぐひより。でも僕的にはぬいぐるみよりも、それを抱いている人の方が何倍も可愛く見えるけどね。

 

 ふと、別の棚を見るとある商品を見つける。それを見た瞬間、衝動に駆られる。それを手に取り、ぬいぐるみを見ているひよりの背後に立つ。そしてそれを、ひよりの頭につけた。

 

「ふぇ?ゆうくん、何ですかこれ。耳?」

 

 僕がひよりにつけたのは、犬の耳を模したカチューシャだ。ヤバい。似合いすぎて言葉が出ないくらいに可愛い。垂れ目で小動物のようなひよりにはピッタリだった。猫耳ではなく、犬耳を選んだ僕は天才だと思う。

 

 沈黙している僕を見て、ひよりがオロオロする。どうしたらいいのか分からないのだろう。その姿は主人とはぐれた子犬にしか見えない。

 

「えっと……ワン?」

 

「ぐっ」

 

 何を思ったのか、犬の鳴き声の真似をするひより。可愛すぎるだろ。ワンとか言っておきながら、手は猫の手になっているところとかが更に可愛い。

 

「ごめん、僕が悪かったから、それをはずして」

 

「変なゆうくんですね」

 

 これ以上は僕がもたない。怪訝に思われながらも外してもらい店を出る。しばらくはひよりの顔を直視できそうにないな。

 

 

 そろそろ劇が始まる時間なので、劇場に向かう。席は自由席の様で適当な場所に座った。この劇を見ていい雰囲気になればいいな。

 

 しかし、現実はそう甘くなかった。それは劇の内容が予想していたものとは違ったからだ。最初は聞いていた通り、恋愛ものだった。ある国に過去の出来事から人と関わる事を避けて生きてきた独りぼっちの騎士と人に興味がなく本ばかり読んでいた独りぼっちのお姫様の物語。独りぼっちの二人がひょんな事から話すようになり、次第に惹かれ合う恋物語だった。しかし物語の途中にお姫様が跡目争いにより殺され、それに怒り狂った騎士が様々な人に復讐をして、最後には国を滅ぼし、自殺してしまう。バッドエンドといえるものだった。

 

 劇が終わっても僕たちはすぐに席を立たず、しばらく座っていた。何となく、すぐに動く気になれなかった。それは劇の余韻に浸ってるわけではなく、劇中の騎士にどこか親近感を覚えていたのでこんな結末になってしまい少しやるせない気持ちになっていたからだ。

 

「悲しい話だったね」

 

「はい、とても。……もし、ゆうくんが騎士だったら復讐をしていましたか?」

 

「うーん、僕が騎士だったらか……正直よく分からない。騎士がお姫様を想う気持ちが僕にはよく分からないんだ。人を好きになる気持ちがどういうものなのか」

 

「そうですか……」

 

 僕の返答を聞いてひよりは黙り込む。僕もなんて声をかけていいのか分からず黙ってしまう。しばらく沈黙が続いた後、ひよりが口を開く。

 

「もし、私が……」

 

「ん?」

 

「もし、私がお姫様だったら、ゆうくんはどうしますか?」

 

 おっとりとした目が僕を捉える。その表情にいつになく真剣なものた。質問の意図が分からない。それは単に劇の感想を聞きたいがためのものなのか、それとも僕がひよりをどう思っているかの質問なのか。

 

「ぼ、僕は……」

 

『本日の演目は終了いたしました。会場はこれより閉場いたしますので、お忘れ物が無いようにご退場ください』

 

 僕が返答に躊躇していると、場内にアナウンスが流れだした。

 

「そろそろ行きましょうか」

 

「え、う、うん」

 

 ひよりはそのまま僕に背を向け、歩き出す。その背中には落胆のようなものが見えたのは僕の気のせいだったのだろうか。

 

 

 

 

 

 

「そりゃ、告白だろ」

 

「ええ!?」

 

 翔の言葉に思わず驚いてしまう。その時に足をテーブルにぶつけてしまい蹲る。

 

 劇を見た後、そのまま何事も無かったかのようにご飯を食べて解散になった。そして今日の出来事を翔に話して返ってきた言葉がこれである。

 

「まぁ、普通ならそうだろうが、相手がひよりだからな。告白だとは断言できねぇな」

 

「だ、だよね。僕が騎士の気持ちが分からないって言ったから想像しやすいように身近な人を当てはめただけかもしれないし」

 

「それで?」

 

「へ?」

 

「だから、お前はどう答えるつもりだったんだって聞いてんだよ」

 

 その質問を「それで」だけで分かったら僕はエスパーだと思うんだけど言ったら怒られそうなので言わないでおく。

 

 もしあの時アナウンスが流れていなければ、僕は何て答えていたのか、改めて考えてみる。僕が騎士で、ひよりがお姫様で……。あの時はすぐに答えれなかったはずなのに、自分の中であっさり答えが出た。そうだったんだ。僕は……

 

 

「僕はひよりが好きなんだ」

 

 

 僕の中で出た答えはひよりのことが好きだということ。異性として、一人の女性として好きだと確信した。何だか心の中に溜まっていたものがスッと消えていく感覚だ。

 

「おい、何一人で悟った顔してやがんだ。俺の質問の答えになってねぇよ」

 

「そんなことはどうでもいいんだよ。やっとひよりに対する気持ちが分かったんだ。これが人を好きになるってことなんだね」

 

「チッ、はしゃぐんじゃねぇよ、中坊かお前。そんなもん初めから分かってたことだろうが」

 

「フッ、そういうな翔よ。素直に祝福してくれてもよいと思うのだがねっ痛った!」

 

 胸のもやもやが無くなりテンションがおかしくなって高円寺の物まねをしだした僕に翔は容赦なく拳を振り下ろした。うん、これは仕方がない。逆の立場だったら僕も間違いなく殴っている。

 

「ひよりのことが好きと分かって、これからどうすんだ?」

 

「なんやかんやで話を続けるあたり、翔ってやっぱりツンデレだよね」

 

「もう一発いっとくか?」

 

「ごめんなさい」

 

 これ以上怒らせるとさすがにヤバいので自重しよう。僕は真剣な顔で翔を見てこれからやるべきことを言う。

 

「ひよりに気持ちを伝えるよ」

 

「ハッ、勝手にやっとけ」

 

「ほんと、ツンデr痛った!」

 

 今のは翔が悪いだろ。自分でツンデレですって言っているようなものじゃないか。

 

「問題は告白するタイミングだよね。できれば成功したいし」

 

 翔から拳骨をくらった頭をさすりながら考える。どうせなら気持ちを伝えたうえでひよりと彼氏彼女の関係になれたら嬉しい。

 

「そういうことなら俺に考えがあります!」

 

「うおっ!石崎君いたの?てか聞いてたの?」

 

「ずっといましたよ!同室なんですから聞いていたより、聞かされたって感じっす」

 

 石崎君が居たことに驚き、話を聞かれていたことに気恥ずかしさを感じる。穴があったら入りたいというのはこういう時に言うのだろう。因みに石崎君が僕にも敬語なのは翔と対等に話せる存在だかららしい。よく分からん。

 

「それで俺に良い考えがあります」

 

「なになに?」

 

「いいですか、倉持さん。女ってのは強い男に惚れる生き物なんです。だから不良に襲われているひよりさんを倉持さんが助ければ、惚れること間違いなしっすよ。その流れで告白すれば100%です」

 

「そ、そうなのか……」

 

 そんな単純なものなのだろうか。でも僕は恋愛初心者。この手の話はずぶの素人だ。対して石崎君は中学時代に彼女がいたことがある、いわば恋愛の先輩だ。そんな彼がこう言っているのだから間違いはないのではなかろうか。

 

「でも、そんなシチュエーション起こらないでしょ」

 

「甘いですよ。起こらないなら起こせばいいんです!俺に任してください」

 

 イラっときたが、無駄に頼もしいな。こうも自信満々に言われてしまえば任せるしかない。とりあえず石崎君に任せてみることにしよう。隣で翔が頭を抱えていたが気のせいだと思うことにした。

 

 

 

 3日目。試験終了まであと2日。石崎君に言われて僕はひよりを誘って船内を歩いていた。石崎君に言われたのはひよりと一緒に指定された時間に指定された場所に行くことだけだ。時計を見ると指定された時間丁度。場所はこの辺のはずなんだけど。あたりを見渡していると、物陰から三人組の男が出てきた。そしてそのまま軽くひよりとぶつかった。

 

「きゃ」

 

「痛ってー!ああ、これは骨いったわ。マジで折れてる」

 

「大丈夫か兄貴!おい、お前。どうしてくれんだ?」

 

 ちょっと待て、作戦ってこれのことか?石崎君ともう一人は金井君か?マスクとサングラスをかけて変装はしてるがバレバレだろ。それに問題はもう一人。

 

「イシャリョウ、ハラエ」

 

 アルベルト君だよ。まんまアルベルト君。いつもサングラスかけてるから、マスクしてても風邪をひいているただのアルベルト君だよ。明らか人選ミスだよね?そもそも肌の色と体格で分かるし。これはさすがにひよりにもバレているだろうと思い、ひよりの方を見る。

 

「誰ですかあなた達。軽くぶつかっただけで骨が折れるとは思えないのですけど」

 

 まったくバレてなかった。天然な子だとは分かっているがこれはさすがに気付くだろ。いや待てよ、そもそも石崎君たちの顔を覚えてない可能性もある。だが、アルベルト君を覚えていないことはないだろう。翔の隣に良くいるし、何よりあの見た目だ。それならひよりは何かの遊びだと思ってそれに乗っている?それこそあり得ない。ひよりにそんなリア充みたいなスキルはない。

 

「骨が折れたって言ったら折れてんだよ!本人が言うんだから間違いないだろ!」

 

「そ、そうだ!石崎じゃなくて兄貴が言うんだから間違いない!」

 

「イシャリョウ、ハラエ」

 

 凄い暴論を言い出した石崎君もとい兄貴。というか、アルベルト君はそれしかセリフを貰ってないの?

 

「確かに本人が折れているというのなら折れているのでしょうか。どうしましょう、ゆうくん」

 

 うん、違うよ。そんなトンデモ理論を信じちゃダメだ。オロオロしているひよりは可愛いけど、それ以上にこの状況をどう収束させるかで頭が痛い。翔が頭を抱えていた理由が分かった気がする。石崎君がバカだったのを失念していた。

 

「慰謝料が払えないなら仕方がねぇ。その体で払ってもらおうか!」

 

「おら、こっちにこい!」

 

「イシャリョウ、ハラエ」

 

 石崎君達が囲むようにひよりにじりじりと寄って来る。しかし、ひよりの近くまで来ると、何もせずに止まっってしまう。ひよりは急に止まった石崎君達を見て困惑している。どうしたものかとこちらに視線を向けた。それと同時に石崎君達も僕の方を見る。この場にいる全員が僕を見ている状況。ホント何だこれ。

 

 そこでふと気づく。あ、これ僕の出番待ちか。ここで間に入ればいいんだな。正直、こんな茶番に参加するのは恥ずかしいが、僕のためにやってくれたことなのだから腹をくくるしかない。

 

「あんたたち何やってんの」

 

 意を決して飛び込もうとしたら、背後から声がかかった。振り返るとそこには伊吹さんが立っていた。これは嫌な予感。

 

「い、伊吹!?じゃなかった。お前には関係ないだろ!痛い目見たくなかったらどっかに失せな!」

 

「そ、そうだ!大人しく回れ右してくれ!」

 

 石崎君はサングラスを少しずらして伊吹さんにウインクをした。どうにかこの場から去ってくれとアイコンタクトしていた。察しの良い伊吹さんなら石崎君の意図を汲んでくれるに違いない。

 

「は?あんたたち何言ってんの?それと石崎のそれ、きもいからやめてくれない?」

 

 石崎君の気持ちが伝わるどころか、精神的ダメージを食らわされていた。残念ながら石崎君の作戦は伊吹さんの登場により失敗に終わった。ちなみにひよりには劇の練習をしていたとか何とか言って強引に誤魔化していた。細かいことを気にしない性格で良かった。

 

 

 

「すみませんでした!!」

 

 その日の夜、自室では石崎君が僕に向かって土下座をしていた。

 

「いやいや、顔を上げてよ。作戦の内容はどうあれ僕のためにありがとうね」

 

「伊吹さえ現れなきゃ完璧だったのに!」

 

 あれで完璧だったんだ。僕には穴だらけに見えたのだがそれは言わないでおこう。

 

「本当にありがとね。おかげで決心したよ」

 

 石崎君達がここまでしてくれたおかげで勇気をもらえた。

 

「明日、ひよりに正面から気持ちを伝える」

 

 

 

 

 4日目。試験終了まであと1日。僕は前に劇を観た劇場に来てほしいとひよりに連絡をした。告白するならここかなと何となく思ったからだ。約束の時間までまだあるので先に寄り道をして劇場へと向かった。

 

「ゆうくん、おまたせしました」

 

「僕も今来たところだよ」

 

 デートの待ち合わせのお約束みたいなやり取りになってお互いにくすりと笑う。

 

「今日は劇はやってないみたいですよ」

 

「うん、別に劇を見に来たわけじゃないからね」

 

 僕の返答に可愛らしく首を傾げる。劇場に来て劇を見る以外に何をするのかと疑問に思っているのだろう。

 

「前に劇を見に来た時にひよりが僕に質問したの覚えてる?」

 

「……はい」

 

「今日はそれの返事をしようと思ってここに連れてきたんだ。聞いてくれるかな?」

 

「……分かりました」

 

 ひよりは戸惑いながらも決意を固め、あの時と同じように垂れた目で僕を捉える。それに答えるように、僕もひよりの目を真っ直ぐにみつめ、話し始める。

 

「もし、ひよりがあの劇のお姫様で、殺されてしまったら僕はどうするか。……僕はね、復讐はしないよ」

 

「っ!そ、それは……」

 

 ひよりの目が大きく開かれ、目が泳ぐ。次第にその目には涙が溜まってきた。僕の言葉を聞いて次にくる言葉を予測したんだろう。でも、それは違う。僕が伝えたいことはひよりが考えていることではないんだ。

 

「復讐はしない。だって、僕はお姫様を死なせるつもりはないから」

 

「え?」

 

「僕はお姫様と一緒に笑って、泣いて、時には喧嘩したりして生きていきたいから。だから死なせない。僕が必ず守る」

 

 そして、一番伝えたいことを言葉にする。

 

 

「僕はお姫様(ひより)が好きだから」

 

 

 

 ひよりが先程溜めていた涙を流す。でもそれは、悲しい涙なんかじゃない。

 

 

「それじゃあ私も絶対に死にません。だって騎士(ゆうくん)と一緒に居たいから」

 

 

 涙を流しながら微笑む。それをみて僕も笑顔になる。思いが通じ合うっていうのはこれほどに嬉しいものだったんだ。

 

「ひより、僕と付き合って下さい」

 

「はい、よろしくお願いします。ゆうくん」

 

 こうして晴れて僕たちは恋人になった。嬉しくて気恥ずかしくてとても幸せな気持ちだ。

 

「あ、そうだ。これ」

 

 そう言ってひよりに小袋を渡す。ここに来る前に購入してきたものだ。ひよりは不思議に思いながらそれを開ける。

 

「この栞……」

 

「あの時欲しそうにしてたからプレゼント」

 

「ありがとうございます……とても嬉しいです」

 

 まるで新しいおもちゃを買ってもらった子供のような無邪気で嬉しそうな顔をする。この顔を見れただけでも買ってよかったと思う。

 

「それでこの後はキスはするのですか?」

 

「はい?」

 

 人が嬉しさに浸っていたら急にぶち込んできた。キス?キスって言ったか?

 

「な、なな、何で?」

 

「想いが通じ合った後はキスをするのが普通ではないのですか?私が読んだ本では大抵キスをしていたのですが」

 

「それは物語だからでしょ!まぁ僕もそういう経験ないから分かんないけど」

 

 この場合ってどうするのが正解なんだ。キスするのが普通なのか。いや、でもいきなりキスってのもよくない気が。

 

「ゆうくんは私とキスしたくないのですか?」

 

「いや、そういうわけじゃなくて。でもそういうのってもっとムードとか色々あるんじゃないかって」

 

「私はしたいです」

 

「なっ!?」

 

 そう言ってひよりは目をとじる。本当にずるい。そんな事言われたら引けないじゃないか。あれこれ考えていた自分が馬鹿らしくなってくる。

 

 グダグダだし、ムードなんて全くないが、僕たちはこれで良いのだろう。お互いに恋愛初心者なのだ。一緒にゆっくりと歩んで行けばいい。高校生活はまだ始まったばかりなのだから。

 

 そして僕はゆっくりとひよりの顔に自分の顔を近づけ、そっと唇を重ねた。

 

 




次回は櫛田桔梗編の予定です。
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