四葉を継ぐ者   作:ムイト

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九校戦編
第1話 四葉真夜の息子


 ここは旧山梨県の山奥。

 そこでとある実験が行われていた。2人の男が立っており、その内の1人が5kmほど先にある巨大な岩に向けて魔法を放つ。

 その岩に魔法が命中すると、なんの抵抗もなく融解して周囲も溶かしながら消え去った。

 

 すると後ろに立っていたもう1人の男が拍手をした。

 

 

 「お見事です」

 「いえ、まだまだですよ」

 「しかしあっという間にこれらの魔法を習得なさるとは・・・さすが真夜様のご子息ですな」

 「葉山さん・・・・・・」

 

 

 この男は葉山忠教(はやま ただのり)といい、四葉家に仕える執事で本宅の執事長を勤めている 。

 四葉家の先代当主である四葉英作から仕えており、四葉家の中でも重鎮の存在。

 他の7人の執事と違い、主のプライベートな用向きを果たす本当の意味での執事(バトラー)は彼だけである 。初老に見えるが、実年齢は70歳を超えているらしい。

 

 達也のことを他の者の様に『出来損ない』と軽んじておらず、高い評価をしている。また警戒すべき魔法師とも思っている 。理由は簡単。本当の事を知っているからだ。

 ちなみに達也に(深雪のコーヒーより)美味しいと言わせるコーヒーをいれる技術を持っている。

 

 葉山はいいタイミングで迎えに来た車をチラリと確認した。

 

 

 「では帰りましょう。真夜様がお待ちしておられるはずです」

 「わかりました」

 「智宏様。こちらへ」

 

 

 先程の魔法を放ったのは四葉智宏(ともひろ)

 14歳まで東京の隅っこで育てられてきたが、女手1つで育ててきた母親が病死し、葬式で四葉の当主真夜と出会う。そこで智宏は自分が真夜の息子だと知る。そして今まで育てて来てもらった母親は智宏の代理母だった事も。事情を聞くと子供が産めなくなった真夜の卵子を代理母に預けていたと言う。

 本当は二十歳になったら迎えに来る予定だったらしい。

 

 達也と深雪を含めた四葉家とは既に顔合わせ済みで、1年半前に正式に四葉家の本家に入る。その後数人だけで山奥に行き、真夜の命令で本気の達也と戦わされたが結果は惨敗。しかし特訓しおよそ6ヶ月でとてつもないサイオン量をその身体に収めることができた。また、大型電動二輪(バイク)の免許もとらされたので運転もできる。

 

 使う魔法は真夜の流星群(ミーティアライン)や領域干渉、そして対人戦で最も得意な重力核(グラビティコア)。あとおまけにサテライトアイ。種類は少ないが威力は馬鹿にできない。ちなみにサテライトアイは、精霊の目と同じように1度認識した物を遠くから視れる。しかし違うのはその範囲。サテライトと名がつくだけあって、世界中のどこにいても対象を見つけられる。また、他の効果も精霊の目と同じでエイドスを認識して魔法を放ったり、話しかけたりする事ができる。

 先程の魔法は戦略級魔法の実験。達也のマテリアルバーストに並ぶ魔法を使っていた。まだ改良の余地はありそうなので実戦にはまだ至らないだろう。それと体術も九重八雲から教わっており、設定では達也は会ったことのない兄弟子という風になっている。

 

 智宏と葉山を乗せた車は帰ってきた道を走り抜け、気がついたら四葉家の本家が姿を表した。

 玄関前に到着し、車を降りた智宏は真夜が待っている部屋に向かう。中に入ると既に葉山が2人分の紅茶を入れており、その横には真夜が微笑みながら座っていた。智宏の姿を見た途端に真夜の顔がパアッとなったのは気の所為だと思いたい。

 

 

 「母上。今帰りました」

 「お帰りなさい。どう?戦略級魔法はできました?」

 「なんとかですね」

 「じゃあこれで四葉は戦略級魔法師クラス・・・いえ、それ以上の猛者を2人持ったと。さすが私の息子ですね」

 「ありがとうございます」

 「さ、座って」

 「はい」

 

 

 四葉真夜。この女性に関しては詳しい事は何も言うまい。世界最強魔法師の1人で『極東の魔王』『夜の女王』などの異名をもち、なおかつ智宏の母親でもある。

 

 智宏が初めて真夜にあった時不思議と他人とは感じなかった。逆に代理母と暮らしていた頃は歳を重ねるごとに何か違和感を感じていたほど・・・

 葬式にいきなり現れ、目に若干の涙を浮かべた真夜に抱きしめられて智宏はなぜか安心したように泣いたのだ。もしかするとその時から気づき始めていたのかもしれない。

 

 智宏はソファーに座り、葉山が入れてくれた紅茶をひと口飲む。

 すると真夜が再び口を開く。葉山曰く「智宏様がいらしてから真夜様が明るくなった」らしい・・・・・・

 

 

 「さてと。智宏さん、一応流星群は使えるのね?」

 「はい」

 「それでは問題ありませんね。智宏さん、昨日達也さんがブランシュのアジトを襲撃しました」

 「へぇ」

 「学校はあと数日後には一段落つきそうなので智宏さんには1高に行ってもらいます」

 「・・・なるほど。九校戦ですか?」

 「その通り。智宏さんには九校戦に出て四葉の力を世間に知らしめてもらいます」

 「そして達也の事を世間から逸らすための工作でもあると」

 「あら?気がついた?おそらく達也さんはいやでも九校戦に出場する可能性が高いの。だから・・・ね?」

 

 

 智宏が聞く限り達也は二科生。しかしその実力は一科生を遥かに越しており、出場してしまうかもしれない。

 本来達也と深雪は四葉とは関係のないようにしたかったのだが、この大会でいろいろと怪しまれる可能性もある。なので智宏が活躍し、少しでも世間の目を2人(主に達也)から逸らす必要があった。

 

 智宏は事情をしっているのでさほど悩む必要はなく、すぐに返事をする事ができた。

 

 

 「わかりました。母上の息子として恥じぬように挑みます」

 「ありがとうね」

 

 

 その後しばらく話し、夕食の時間が近づくと智宏は1度自室に戻る。

 着替え終わり時計を見たらまだ時間があった。

 

 丁度よかったので1高に転校する事を達也と深雪に伝えようと思い、電話をかけた。

 2度目のコールで大きなパネルに司波家の居間が映し出され、達也と深雪が立っていた。

 

 

 「達也、深雪。久しぶり」

『智宏兄様。お久しぶりです』

『元気そうだな』

 「ああ。相変わらず2人は仲がいいなぁ」

『か、からかわないでください・・・』

 「ははは(そのわりには嬉しそうだな)」

『智宏。本題に入ろう』

 「おっとそうだった。達也、ブランシュの話は聞いた。これで達也の実力は高校の上層部に知れ渡っただろう。とくに・・・十文字克人にはな」

『そうだな』

 「もうすぐ九校戦だし・・・俺は母上の命令で1高に転校することになった」

『え!?智宏兄様がですか!?』

『・・・・・・なるほどな』

『お兄様?』

 

 

 智宏がそっちに行くと話すと達也は全て察したような反応をし、深雪は素直に驚いていた。深雪は智宏の事を『兄』と読んでいるが、智宏の誕生日は4月25日。達也の1日後なので一応同い年だ。しかし智宏の事は従兄であり信頼できる人間の1人なので、もうひとりの兄として慕っているのだ。

 

 そして智宏は予想通りの反応が少し嬉しかった。

 

 

『深雪、叔母上は世間の目を俺から智宏に向けさせたいんだよ』

 「その通り。まぁそれでも達也は九校戦でそれなりに注目を浴びるだろう。母上は四葉の跡継ぎを決めるまでバレなければいいと言っていた。深雪はともかく達也は探られるとめんどくさい事になる」

『そうだったのですか・・・』

 「それに当たって・・・深雪」

『はい』

 「俺の事はできるだけ『兄』をつけないで欲しい」

『そうだな。世間の目が届かない自宅や四葉家の息がかかった所はともかく学校ではな。俺達が四葉の者と知られたらいろいろとまずいだろう』

『お兄様と智宏兄様が仰られるのなら・・・かしこまりました。それでは・・・智宏さん、と呼ばせていただきます』

 「よろしく頼む。ではまた」

『はい。お待ちしております』

 

 

 智宏は通話を切ると食堂へ向かい夕食を取った。

 その日は真夜から1高に行くにあたり詳しい説明を聞くことになる。

 

 智宏が住むのは達也と深雪が住んでいる家から50mほどの空き地に建てる新築の家だ。

 少々2人の家と近い気もするが、逆にこれくらいの方がお互い何かあった時にすぐに駆けつけられるし周りの警戒もしやすい。

 

 もちろん四葉と知っていてもよからぬ輩が来るかもしれない。なのでセキュリティも万全にしてある。

 まぁ智宏ならば別に問題ないだろう。ただし『再生』は使えないので、腕を吹き飛ばされたら達也に直してもらうしかないだろう。吹き飛ばせる奴がいればの話だが・・・

 

 それから数日後。

 四葉家の玄関では荷物を抱えた智宏が真夜や葉山達と別れの挨拶をしていた。

 

 

 「智宏さん。いってらっしゃい」

 「いってきます、母上。葉山さん。母上をよろしくお願いします」

 「もちろんでございます」

 「もう・・・私はそんなヤワじゃないわ。あ、そうそう。智宏さん、この娘も連れていきなさい」

 

 

 そう言って真夜の後ろから出てきたのは智宏と歳が近そうな女の子。

 深雪には劣るがその美少女に智宏は少し見とれてしまう。しかしただの女子ではないとすぐに察した。

 

 

 「母上?この人は?」

 「智宏さんの護衛兼メイドよ。今は私服ですけれど」

 「メイド?」

 「お世話をする人が必要でしょう?あとついでに周りの監視もしてもらおうかな・・・ってね?」

 「は、はぁ・・・」

 「では挨拶なさい」

 「はいご当主様。初めまして智宏様。私は『月シリーズ』の香月彩音と申します」

 

 

 香月彩音。彼女は深雪を例に作られた『月シリーズ』の1番目。2番目以降はまだ時間がかかるようだ。容姿は深雪を参考にしただけあって可愛く、髪は黒髪のセミロングで身長は160cm程度、腰周りは細く足もスラッとしている。出ているところは出ているので、私服で街中を歩かせたらモデルと間違われるかもしれない。

 得意といている系統は振動系。彩音は防御や隠密の魔法に特化している。

 

 

 「この娘は深雪さんよりは弱いけどウチの調整体魔法師ではトップクラスの実力よ」

 「準完全調整体?」

 「俗に言えばそうね」

 

 

 このまま行けば話が長くなりそうだったので、横から葉山が「そろそろ・・・」と口を挟む。本来ならばこのような事は許されないのだが、これは葉山にしかできないだろう。証拠に真夜は少し頬を膨らませただけで文句は言わなかった。

 

 智宏と彩音は車に乗り込むと四葉家を出発して行ったのだった。




こんばんは。
魔法科高校の劣等生の二次小説をこれから書かせていただきます。
原作通りに物語を進めていきますので、よろしくお願いします。
前書きはありません。後書きはなんとか書きます。

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