一同はホテルに到着し、荷物を持ってそれぞれの部屋に入っていく。
その中でも智宏と深雪は最後まで残り、エンジニア組の到着を待つ。達也達はそんな遅くはなく、選手のバスが到着して15分ほど遅れてホテルに到着した。
智宏と深雪は機材を運んでいる達也の所に向かった。
「お兄様!」
「達也」
「2人共待っていてくれたのか?」
「お兄様を置いて先に入れませんよ」
「俺は深雪のガードさ。一応従妹だからな」
「そうか」
「ところで達也。さっきの事故で俺の領域干渉を吹き飛ばしたのはお前だろ?」
「ああ。あれでは深雪が魔法を使えなかったからな」
「やっぱり干渉力は達也に負ける・・・か。本気を出していないとはいえまだまだ修行は必要だな」
「智宏さんも充分お強いですよ」
「そうか?」
「智宏、深雪。言っておくがあれは事故ではない」
「・・・やっぱりそうか」
「え?では人為的な・・・」
「そうだ。あれはわざと起こしたのだろう」
先程の事故。常に警戒していた達也曰く、あの事故の時吹き飛んできた車に魔法がかかっており、タイヤをパンクさせる魔法、車体を回転させる魔法、車体に斜め上の力を加えてガードレールをジャンプ台として飛び上がらせた魔法。この3つの魔法が全て車内から放たれていたという。
つまり魔法を使ったのは魔法師である運転手自身なのだ。ちなみにその運転手は焼死体になっていたが、一応病院にまわされた。
「自爆攻撃・・・」
「卑劣な・・・!」
智宏は理解したように頷き、深雪はその犯人とその首謀者に対して怒りを覚えていた。
誰かを殺しそうな雰囲気を出している深雪を見た達也はまずいなと思ったのか、智宏に話題を振った。
「智宏。彩音はどうした?」
「彩音は本家に帰らせている。母上は彩音と九校戦を見たいらしくてな」
「そうか」
「彩音ちゃんが本家に?まぁ1人にするよりは安全ですし」
深雪の表情が元に戻ったのを確認した達也は少しほっとしたのだった。
この会話の内容までは聞こえなかったが、最後にバスから降りた桐原は3人を見ていた。
そして俯きながら前を歩いている服部に桐原は声をかける。
「よぉ。何辛気臭い顔してんだ?」
「桐原・・・そんな事はないさ」
「本当か?」
「・・・少し自信をなくしてな」
「お、おいおい。競技に差し支えるんじゃねーか?」
桐原の言う通り、競技に影響を与えるほどに精神状態はよろしくない。服部は一高の主力選手なのだ。特にモノリス・コードはチーム戦なのでこのままでは大きな影響を及ぼしてしまうかもしれない。
「桐原、俺はあの事故の時何もできなかった」
「ありゃ凄かったな。しかし何もしなくてよかったんじゃねーか?お前まで先輩に怒られるとこだったしな」
「ああ・・・・・・それでも四葉と司波さんはやってみせた」
「領域干渉だっけか?あれは俺達魔法師としてはちょっとめんどくさいな」
2人は事故の事を思い出しながらホテルの中に入っていく。
服部は一瞬立ち止まって達也を見る。すると再度桐原が絡んできた。
「ん?司波兄か?」
「俺は春にあいつに負けた」
「知ってるぜ。瞬殺だってな」
「あの時から俺は悩んでいるんだ。二科生とはなんだ?なぜ俺はこんなにも差別意識を持っていたんだ?とな」
まさか服部がこの事で悩んでいるとは桐原には想像もつかなかった。
ますます自信を無くしていく服部に桐原は慌ててフォローにはいる。
「いやいや、あれは司波兄が特別なだけだ。だが・・・・・・ありゃ殺ってるな」
「殺ってる?実戦経験があるという事か?」
「ああ。親父の知り合いにいる海軍の軍人と同じ気配がするぜ」
「魔法師として必要なのは実技試験の結果だけが全てではない。似たような事を司波さんは言っていた」
「正論だな。その証拠に俺も司波兄にやられた。奴は強い。その上妹も強いんだからシャレにならねぇ」
「四葉はどうだ?」
「あいつはもはやバケモノだ。まだ人を殺した事はなさそうだが・・・おそらくなんの抵抗もなく殺るだろうな」
「現当主の魔法を使いそれ以上の魔法も使っている。確かにそうかもな」
「ま、お前が二科生差別をおかしいと思い始めているなら・・・会長は喜ぶと思うぜ?」
「な、な・・・」
「はっはっは!」
「お、おい待て!」
桐原は最後に服部をからかったところで再び歩き始める。2人がホテルの中に入っていき、角を曲ったところで智宏達もロビーに到着した。
すると達也にここに居ないはずの人から声がかかる。
その人はバカンスにでも行くのか?というくらいラフな格好でロビーの椅子に座っていた。
「やっほー。達也君」
「エリカ?」
「エリカ。なぜここに?」
「いやね?あたし達も見たくなってさ。そっちが四葉智宏君ね。
「どうも。君は千葉家のご令嬢か?」
「そうよ〜。あ、エリカでいいわ」
「わかった」
「エリカちゃん。お部屋とれた・・・よ」
エリカと話していると、受付からもう1人の女子が小走りでこっちに向かってくる。
それはエリカに連れてこられた美月だった。
「美月も来ていたのか」
「達也さん、深雪さん、こんにちは」
「ああ。美月、こいつは四葉智宏だ」
「四葉です。智宏でいいよ」
「柴田美月です。よろしくお願いします」
「ところでエリカ。ここは軍の施設のはずよね?よく部屋がとれたわね」
「ふふん。家のコネよ」
「実家はあまり好きではなかったのか?」
「使えるものは使うのよ」
ぶっきらぼうに言い張ったエリカは罪悪感の欠けらも無い表情だった。
他にも西城レオンハルトと吉田幹比古が来ているはずなのだが姿は見えない。どこかで荷物でも持たされているのだろうか。
すると達也は「先輩を待たせているから」と言い、機材を押してホテルの奥に入っていく。
智宏は達也から視線を戻すと、深雪が美月の服を上から下まで視線を巡らしているのが見える。
「深雪さん?」
「美月。その服装はここに来るにはどうかと思うのだけれど・・・」
「や、やっぱりですか?エリカちゃんにこれにしろって言われたんですけど」
深雪はエリカに視線を向けるとエリカは顔を背け誤魔化すように口笛を吹いていた。(吹けていない)
美月は自分の服装を改めて見て項垂れている。
「美月?他には服はないのかしら?」
「ありますよ。部屋に行ったら着替えます。念の為に制服も持ってきましたし」
「その方がいいわね」
「深雪。そろそろ行こうか」
「はい。エリカ、美月」
「うん、じゃーね。でもすぐに会うと思うけど」
「「?」」
「あたし達〝関係者〟だから」
智宏と深雪はエリカ達と分かれ、選手が集まっている部屋に向かったのだった。
はんぞー君はやればできる子