四葉を継ぐ者   作:ムイト

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第21話 新人戦開始

 

 

 九校戦4日目。

 今日、8月6日から10日までの5日間は1年生のみで競う新人戦が行われる。

 現在の総合順位は1位が1高、2位が3高、3位からは混戦状態だ。

 

 競技内容は本戦と同じで、その順番も似たような感じだ。

 初日はスピード・シューティングとバトル・ボード。雫やほのかが出場する。

 

 

 「ほのかは最終レースなんだな」

 「はい!なので雫と重なりません!」

 

 

 ほのかはニコニコと笑いながら、「調整しろ」と言いたげな圧力を達也に押し付けている。

 達也が担当する競技は女子の3種目。

 女子ばかりなのは偶然ではなく、男性陣が嫌がっていたのと1年女子達から強い要望があったからだ。

 おそらく達也をチームメイトにアピールしたのは今達也の目の前にいるほのかとか、深雪とかだろうと智宏でも予想はついた。

 

 ぐいぐい寄ってくるほのかになぜか深雪は何も言わない。珍しい事もあるもんだ・・・・・・。ふと深雪の手を見ると達也に見えない角度でギュッと握っている。我慢しているのだろう。

 

 

 「CADの調整はできないけど、作戦とかは確認できるから傍で観ているよ」

 「ホントですか!?やった!」

 

 

 この時深雪はクスリと笑い、智宏は笑いで吹きそうになったのをこらえていた。

 この時智宏はこう思った。

 

 

(達也って意外と女誑しだな)

 

 

 と。

 もっとも、達也も雫と真由美に言い寄られている(?)智宏には言われたくないと思うが・・・

 

 雫の競技が始まる前、智宏と達也と雫はCADの調整に来ていた。

 達也は小銃形態のCADの最終チェックを終わらせて雫に持たせる。何か不具合があるといけないので、早めにバグなどを解決しなければいけない。

 

 

 「うん。自分のより快適」

 「よかった」

 「達也さん。卒業したら雇われない?」

 「ん?」

 「お父さんに推薦しておくからさ。ウチの会社の技術開発部に入ってよ」

 「冗談が言えるなら問題ないな」

 「冗談じゃないよ」

 「残念だが俺は卒業したら入りたい会社は決まってるんだ」

 「・・・・・・そう」

 

 

 雫の家は十師族のような家柄ではないが、『大富豪』と名乗っていいほどの金持ちだ。(周囲からは『北山財閥』なんて呼ばれている)

 それに加えて国防軍の兵器のほとんどを北山家で生産しているので年間の収入もバカにできない。

 

 雫は残念がっていたが、もし達也が北山家で本格的に動きだしたら日本の軍事力は一気に高まり、世界から警戒されてしまうだろう。

 達也の断りに雫も理解したのか、そこまでしつこく勧誘しなかった。

 そろそろ競技の時間になる。

 

 

 「雫、時間だ。なにか違和感があったら言ってくれ」

 「行ってこい。練習の成果を見してやれ」

 「うん。智宏さん、達也さん。頑張るよ」

 

 

 雫が会場に向かい、智宏と達也も歩いて会場のベンチまで歩き始めた。

 そして観客席には深雪が到着した。

 

 

 「エリカ、隣いいかしら?」

 「深雪じゃん。いーよ」

 「ん?智宏はどこに行った?」

 「智宏さんはお兄様と下にいるわ」

 「・・・・・・」

 

 

 深雪が観客席に座ろうとすると、なにやら緊張しているほのかが視界に入る。

 カッチカチに固まっていた。

 

 

 「ほのか。今から緊張していては身がもたないわよ」

 「深雪・・・うん。そだね」

 

 

 深雪がほのかの緊張を解いているその少し離れた観客席には真由美、摩利、鈴音が陣取っていた。

 

 怪我人である摩利がここにいてもいいのか。

 それは真由美も鈴音も同じ考えだ。

 

 

 「摩利・・・寝てなくていいの?」

 「あたしは大丈夫だ。もう元気さ」

 「そうですね。渡辺さんは頑丈ですし」

 「市原・・・・・・まぁいい。ところでアイツのエンジニアとしての腕を実戦で見るのは初めてか?」

 「そうね〜。楽しみだわ」

 「北山さん以外の女性選手からもかなり人気を得ているそうですよ」

 「ほぉー」

 

 

 摩利の好奇心がむき出しのセリフに真由美と鈴音も頷くしかない。確かに達也の腕前を見るのは初めてなのだ。

 

 そして鈴音の達也情報に真由美と摩利も顔のにやけが止まらなくなってしまう。本人が見たら少し引くかもしれない。

 

 

 「それと、1年の女子生徒は自分のCADを持ち込んでいるそうですよ」

 「あらあら。彼って地道にファンを増やしているのね」

 「本人にその意思はないだろうがな」

 

 

 3年生がこんな会話をしていると、準備が出来た雫がCADを構えた。

 

 そして開始のランプが光る。

 光った瞬間、クレーが飛び出してきた。

 その瞬間、クレーはエリアの中央で砕け散った。次の2つのクレーも同じく砕け散る。

 観客席からは嘆声が止まらない。

 

 

 「うわ・・・豪快ね」

 「もしかして、エリア全てを?」

 

 

 エリカがぽつりと呟き、美月の質問にほのかは自信たっぷりに答える。

 

 

 「そうですよ。雫は領域内にある標的に振動波を与えて砕いているんです」

 「なるほど・・・」

 

 

 ほのかが雫の説明をしていると、同じような会話が真由美達のところでも話されていた。

 解説役は達也から調整プランを受け取っている鈴音だ。

 

 

 「――と、まぁエリア内に震源を作っているわけです。スピード・シューティングの得点有効エリアは決まっていますから、魔法の範囲も決められます。司波君はそこに注目したのでしょう」

 「・・・なんか余計に力を使ってないか?」

 「いえ。この魔法は精度よりも速度を重視しています。スピード・シューティングは選手の立つ位置、クレーの強度、方向などが全て同じ。なので北山さんは座標に番号を入力し、それを発動時に指定して目標を破壊します。つまり、引き金を引くだけでクレーは砕けるのです」

 

 

 解析をしている間にも競技は進んでいく。

 撃ち漏らしはなく、ついにパーフェクトで競技が終わった。

 

 

 「魔法の名称は『能動空中機雷(アクティブエアーマイン)』。司波君のオリジナルらしいですよ」

 「よくもまぁこんな魔法を思いつくわね」

 

 

 真由美は驚きすぎて呆れた声が多く出てしまった。

 それを見た2人は同じような感想だったのだろう。摩利は苦笑し、鈴音は小さく頷いていた。

 

 そして競技が終わった雫。

 雫は智宏にまっすぐ駆け寄った。

 

 

 「智宏さん」

 「やったな」

 「うん」

 「雫」

 「達也さん。なんだか拍子抜けだった」

 

 

 スピード・シューティングの予選通過ラインは命中率80パーセント以上。

 あっさりパーフェクトを取った雫には物足りないのだろう。

 

 

 「どうやら意地悪な軌道設定はされてなかったみたいだな」

 「達也さん気にしすぎだよ」

 「そうだな。じゃあ別のCADの調整も済ませてあるから、雫も確かめてくれ」

 「わかった」

 

 

 本戦と同じく、予選と決勝トーナメントでは試合形式が違う。

 決勝トーナメントは同じエリアに射出されるクレーをより多く破壊した方が勝ちとなる。

 相手の魔法に邪魔されない干渉力を競う面もあるので、CADは変える必要があるのだ。

 

 試合の準備に入るため、雫は急いでもう1つのCADが保管されている天幕に向かった。

 

 そして1高の本部では、スピード・シューティングの結果が伝えられる。

 

 

 「3人とも予選通過か・・・すごいわね」

 「今年はレベルが高いのか?」

 

 

 真由美と摩利が呟く。

 予選から決勝トーナメントに出場できるのは24人の内8人。その8人の中に1高選手3人全員が入っているのには驚かざるをえないだろう。

 

 同じくバトル・ボードは男子が2人落ちるが、ほのかの予選突破は確実だろう。

 あずさにはもっと頑張ってもらわなければいけない。

 

 

 「俺達も技術者の育成に力を入れた方がよさそうだな。このままだと来年は選手の力だけでは勝てまい」

 

 

 克人の呟きは来年の戦力が減ることを意識した3年生の心境を代表して言ったものだった。

 




今年の1年(7割くらい女子)は優秀
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