四葉を継ぐ者   作:ムイト

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第3話 風紀委員への誘い

 「おい四葉」

 「渡辺先輩、なんですか?」

 「今の魔法は?」

 「あれですか?あれは流星群ですよ」

 「流星群?」

 「智宏くん。摩利には『夜』って言った方がわかりやすいんじゃないかしら?」

 「会長と・・・十文字先輩」

 「何っ!夜!?それってあの四葉家の現当主の得意魔法じゃないか!」

 

 

 摩利が大声を出したため、いやでも他の生徒に聞こえてしまう。

 真夜の使う流星群はその使用する時の状況から『夜』と呼ばれており、克人のファランクスですら防げないので危険視されている。先程はシールドを貫通したように見せたが、実際は光を通すための穴を空けているに過ぎない。

 

 有名であるが故に一般でも見たことはないが知っている人はたくさんいるのだ。

 

 

 「そうだ。俺のファランクスですら効かない・・・正直やっかいな魔法だ」

 「私も最初聞いた時は嘘だと思ったわ。でも今回でそれが本当だとわかった・・・・・・。流石は四葉家現当主様の血を継ぐ事はあるわね」

 「四葉。お前は夜しか使えないのか?」

 「まさか。そんな事はありませんよ。流星群はメインの1つです」

 「他のはなんだ?そのCADは指輪型の割には特化型のようだし・・・」

 「知りたいですか?」

 「いいのか?」

 「はい」

 「では俺のファランクスが相手しよう」

 「十文字?」

 「問題ない。四葉、あそこにファランクスを発動する。そこに撃ち込んでくれ」

 「わかりました」

 

 

 克人がファランクスを発動する。

 すると森崎の時よりも頑丈そうな防壁が出現した。

 克人は未だサイオンを流し込んでいるので、生半可な攻撃では破壊できたとしても直後に新しい防壁が生成されるだろう。

 

 智宏は防壁から10mほど離れると、智宏が最も得意な魔法を撃ち込んだ。魔法が防壁に命中すると防壁は中心に向かって一気にぐしゃっと潰れる。

 周りの生徒達は相変わらずポカンとしていた。

 

 

 「終わりました」

 「・・・・・・」

 「十文字先輩?」

 「・・・む、すまん。今の魔法はなんだ?収縮系だと思うが」

 「違いますよ。今のは加重系魔法、重力核(グラビティコア)。重力魔法です」

 「まさかオリジナルなのか?」

 「はい。俺が創りました。近距離から中距離の対象を今のように潰したり地面に押し付けたりします」

 「なるほどな」

 「さすがです。智宏さん!」

 「深雪・・・ありがとう」

 

 

 智宏が重力核を見せるとやはり周りの生徒や克人でさえも(顔にはでていないが)驚いていた。

 

 重力を操る魔法はあるが、ここまで対人戦闘に特化した魔法は存在しない。実はこの魔法は真夜の全面協力で創られた智宏専用の魔法。

 対象の中心を軸にしてスクラップみたいに潰したり、従来通り人を地面に押さえつけたりできる。後者の使い方では重力の大きさも変えられるので、使いようによっては相手を圧死する事が可能だ。また、格闘戦でも使いようはある。人体または武器に命中した時にそれを吹き飛ばす事が可能だ。例えば腕に命中した場合、その腕に圧力がかかり瞬時に吹き飛んでしまう。

 先程智宏は中距離までと言ったが、サテライトアイを使えば達也のように遠距離攻撃も可能になる。

 

 智宏は深雪に褒められていると、横から真由美と摩利が近づいてきた。

 

 

 「これはすごいわねぇ」

 「四葉。どうだい?風紀委員会に入らないか?」

 「風紀委員にですか?」

 

 

 風紀委員とは、魔法を校内で勝手に使用した違反者の摘発、魔法を使用した争乱行為の取り締まりを行う役職だ。

 普段は交代制で校内の巡回を行っているが、春の新入生の勧誘活動期間には、期待の大きい新人の獲得争いと、CADを校内で持ち歩くのを禁止する条例の解除によって魔法による争乱行為が頻発してしまう。

 なので風紀委員は全員がフル出動することになる。特に今年は達也が活躍したそうな。(深雪談)

 

 ここで風紀委員に入っておけば世間にもいいアピールになるし周りへの抑止力となる。

 智宏の決断は早かった。

 

 

 「わかりました。風紀委員会に入ります」

 「そうか!よかった。そうそう、入るなら紹介したいやつがいるんだ。部屋に来てくれないか?」

 「はい」

 

 

 智宏は摩利と後からついてきた深雪と風紀委員が使用している部屋に向かう。

 部屋の中に入ると1人の男子生徒がCADを片付けていた。

 

 入ってきた摩利に気がついた男子生徒は少し呆れたような顔で近づいてきた。

 

 

 「渡辺先輩。途中でいなくなるのはやめてくれませんか?」

 「や、すまん。審判を真由美に頼まれてだな・・・・・・って2人もそんな呆れた目で見ないでくれないか?」

 「・・・・・・まぁいいですけど。ところで後ろの生徒は?」

 「ん?ああ。彼はあの四葉智宏君だ。優秀そうだからスカウトしてきたんだ。四葉、こいつは後ろの司波深雪の兄、司波達也君だ」

 「ああ深雪の・・・・・・初めまして。深雪のクラスメイトになりました四葉智宏です」

 「司波達也だ。よろしく」

 

 

 2人は今初めて会ったような挨拶をする。

 それが演技だと気づいているのは深雪だけ。摩利は何も違和感を感じずに自分の席に戻って行った。

 

 智宏は達也から風紀委員の詳しい仕事を聞き、明日から仕事を始めると摩利に言った。

 その日は特に何もなく、1時間後には達也の仕事が終わり、3人は校門前で集合することにした。

 智宏が周囲を監視しながら2人を待っていると、後ろから知った足音が2つ聞こえた。智宏は後ろを振り向くと達也と深雪がこちらに来ていた。

 

 

 「やあ」

 「待たせた」

 「では行きましょう。周囲にこちらを見ている人はいません」

 「達也の家に行っていいか?CADの調整をしてもらいたくてさ」

 「大丈夫だ」

 

 

 3人は達也の家に向かう。

 一応話したいこともあったのでどこかで説明する必要がある。しかし設定上初めて会ったばかりの人とそんな難しい話はできない。なのでCADの調整という名目で達也の家に行くということになる。

 

 30分ほど歩いただろうか。2人で住むには立派な家が見えてきた。

 深雪は先に玄関の鍵を開けて中に入っていく。

 智宏と達也が扉を開けると、深雪が既に靴を脱いで2人を待っていた。

 

 

 「おかえりなさいませ。お兄様、智宏兄様」

 「ああ、ただいま」

 「お、おう・・・・・・なぁ達也、お前らって毎日こんな感じなのか?」

 「問題でもあるのか?」

 「え、あっいや・・・問題ない」

 「そうか」

 

 

 達也と智宏は深雪について行き、リビングに向かう。

 リビングのソファーに座ると深雪がコーヒーを入れにキッチンに行った。

 

 智宏は尾行されていなかったので周囲の警戒を少しだけ解き、達也に向き直った。そして自分の指からCADを外して机の上に置く。

 

 

 「さてと。さっそくだが俺のCADを見てくれないか?まだ調整しなくていいから」

 「わかった。ふむ・・・・・・・・・・・・これは叔母上から頂いたCADだな?」

 「ああ」

 「さすが四葉の技術者達が作っただけあって高度なCADだ。だがまだ無駄が多いな・・・発動スピードはどうだ?」

 「他のより少し遅いかな。無理な小型化で発動スピードが遅くなったんだと思う」

 「俺のCADみたいに銃身があれば機能も安定するんだが・・・・・・」

 「一応拳銃の汎用型も持ってるんだけどそっちは加重系メインにしたい。やっぱ無理か?」

 「いや、なんとかしよう」

 「すまんな」

 

 

 智宏は戦略級魔法は別として、流星群などは指輪で発動したいと思っている。重力魔法はもう1つサブで用意した長身の拳銃型CADに入れればよい。指輪型は右手の人差し指に、拳銃型も・・・右手でいいだろう。

 CADの話が切りよく済んだところで、2人の横にコーヒーが置かれた。

 隣を見ると深雪が立っている。

 

 

 「お兄様、智宏兄様、コーヒーです」

 「ありがとう」

 「深雪が・・・どれどれ・・・・・?ん!美味い!」

 「本当ですか!ありがとうございます!」

 

 

 達也はコーヒーを持ってきた深雪を座らせる。話に深雪が加わると会話に華が付いたように感じた。

 智宏は先日達也が飛行魔法の開発にもう少しで成功すると深雪から聞いた。当然真夜も知っていると思うので、近いうちに連絡を寄越すのではないのだろうか。

 

 飛行魔法とは、加速・加重系魔法で、重力制御により地面に足を着くことなく任意に飛行(空中移動)をすることができる。

 この魔法は長きに渡り加重系魔法の技術的三大難問として扱われてきたが、ついに『トーラス・シルバー』こと達也が開発に着手したのだ。

 これまで様々な研究が行われたが、魔法の重ねがけは10回が限界で、それを超えてしまうと魔法が全て解除されてしまい術者は落下してしまう事もあった。

 

 ちなみに飛行魔法で出せる速度は魔法師がどれだけこの魔法を習熟しているかによって決まる。

 

 途中達也は智宏のCADを調整しに下に降りて行く。智宏はその時に深雪から達也の昔話を聞いたりして2人で盛り上がっていた。

 20分ほどすると達也はリビングに戻ってきた。

 

 

 「何でそんなに盛り上がっているんだ?」

 「今智宏兄様にお兄様の昔話をしていたのです」

 「どっちかって言うと深雪の昔話みたいなもんだったけどな。沖縄の事を聞くと改めて深雪の豹変ぶりに驚くよ」

 「もう・・・そんな事仰らないでください!」

 「智宏、あんまり深雪を弄らないでくれ。それはそうと・・・できたぞ」

 「おっ!」

 「テストしてみてくれ」

 「わかった」

 

 

 智宏は達也からCADを返してもらうと、いらなくなったメモ用紙に向けて魔法を放つ。

 

 すると指輪型は前よりも発動スピードが一段と上がっており(元々特化型なので早くないとおかしい)、拳銃型の汎用型も同様だった。拳銃型には重力核を初め、重力魔法が組み込まれていた。

 さすがだとしか言いようがない。

 

 

 「どうだ?」

 「素晴らしいよ。前よりも全然いい」

 「そうか、よかった」

 「さすがはお兄様ですね!」

 

 

 3人で改良したCADの結果に満足し、拳銃型の説明を達也から受けていると、テレビ電話にコールがかかった。

 

 それは秘匿回線。

 四葉家からだった・・・

 

 

 




深雪のコーヒー飲んでみたい
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