四葉を継ぐ者   作:ムイト

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第30話 モノリス・コードへ参戦

 

 

 

 新人戦5日目。

 各校は1高がまたモノリス・コードに出るとは予測しておらず、しかも登録していない生徒が出場するのを知って困惑した表情で試合の開始を見守った。

 だがその困惑は1高の中にも広がっており、冷静に観ているのは幹部を含め数人だった。

 

 また、達也達3人が姿を現すと、困惑した者達に拍車を掛けた。

 

 

 「うわ・・・目立ってるな」

 「智宏さん、あれでは目立たない方がおかしいですよ。しかしお兄様が出るのです。負けはしません」

 「そ、そうだな」

 「でも1番目立ってるのはアイツの剣よねぇ」

 

 

 そう。CADを3つを着けている達也よりも、腰に剣らしきものをぶら下げているレオの方が目立っているのだ。

 それ以前に物理的な直接攻撃が禁止されているのを、強豪校である1高が知らない訳が無い。それほど『小通連』の存在がざわめきをさそっている。

 

 そしてついに、第1高校対第8高校の試合が始まった。フィールドは森林ステージだ。

 

 

 「始まったな」

 「森林ステージ・・・8高の得意な場所だね」

 「し、雫。達也さんなら大丈夫だよ!」

 

 

 モノリス・コードで使用されるステージは5種類。岩場、平原、渓谷、事故があった市街地、そして今回の森林だ。

 第8高校は最も野外実習が多く、森林で戦わせたら強いだろう。

 

 ちなみにフィールドはランダムで選ばれるのだが、今回8高に有利な場所が与えられた。

 さすがにこれには大会委員の何かしらの介入があったのだと思っても無理はない。

 しかし達也が九重八雲の所で修行をしているの知っている1高生徒はあまり心配していない。なぜなら『忍術』は森林ステージのような場所において強い力を発揮する事を知っていたからだ。

 

 互いのモノリスまでこのフィールドだと5分は必要とする。もちろん何も妨害がなければの話だ。

 ところが5分も経たない内に、8高側で戦闘が発生した。

 

 

 「早いな」

 「お兄様にとってあの距離はなんの問題でもありません」

 

 

 達也は素早く8高のディフェンスに魔法を使用してバランスを崩させた。

 そのまま達也はモノリスに向かって疾走していく。

 

 すると突然誰かが「あっ!」と声を上げた。

 ディフェンスがCADを達也に向けたのだ。

 しかし魔法が発動する瞬間、展開していた起動式が想子の爆発に消し飛ばされ、ディフェンスの手からCADが地面に落ちた。

 今達也はいつの間にか右手にCADを握っており、いつ抜いたのかがわからなかった。

 

 

 「ぐ、術式解体(グラムデモリッション)!?」

 

 

 吉祥寺は先程達也が使用した魔法がなんなのかわかったみたいだ。

 驚きの声を上げているのは吉祥寺や将輝だけではない。1高の天幕にいる真由美達も驚いていた。

 

 

 「今のは・・・」

 「術式解体か・・・達也君やっぱり使えたのね」

 「真由美?今のを知っているのか?」

 「ええ。術式解体は圧縮した想子粒子の塊をイデアを経由せずに直接ぶつけて爆発させる対抗魔法よ。領域干渉にも影響されずに発動途中の魔法を吹き飛ばすのよ。射程が短い以外に欠点はないから『最強の対抗魔法』だなんて呼ばれてるわ」

 「なるほどな」

 「でも起動式を吹き飛ばすなんて力技なのよ?達也君って思ってたよりパワータイプなのね」

 「じゃあバスの時に四葉のを吹き飛ばしたのもこれか・・・・・・」

 「私も今のを観るまで気が付かなかったわ。達也君ってどれ程の想子を持っているのかしら?」

 

 

 各校でも知っている人が知らない人に今のを説明し終わった時には達也はモノリスに魔法を掛けていた。

 モノリスは真っ二つに割れ、裏に文字が書いてある場所が出現した。

 

 すると達也は向きを変えてどこかへ行ってしまう。

 

 

 「やった!モノリスが開いた!」

 「あれ?智宏さん、なんで達也さんは離脱したの?」

 「達也が離脱した理由?そんなの簡単だ。な、深雪?」

 「はい。いくらお兄様でも512文字を敵の妨害を前に打ち込むのは無理ですから」

 

 

 モノリス・コードの勝利条件は、相手を全て戦闘不能にするか512文字のコードをキーボードに打ち込む事。100文字程度なら達也はいけるかもしれないが、この状況では難しい。

 消えた達也を追うように、8高のディフェンスが走り出した。

 

 一方、1高のモノリス付近に8高選手がたどり着いていた。

 木の影からオフェンスが姿を表すと、レオは反射的に自分に銃口を向けた相手選手に向かって小通連を横に一振りする。すると離れている刀身は木々にぶつかる事なく8高選手の横っ腹に命中した。

 そして手元に刀身が戻ってきたのを確認したレオは間髪入れずに小通連を上に向け、空中に刀身を撃ち出す。雄叫びと共に振り下ろされた刀身は、倒れ込んだ8高選手にものすごい勢いで殴りつけて戦闘不能にした。

 

 1高3年生のエンジニア達は達也の作った武装一体化デバイスを観て「あれはなんだ」と問いかけ、あずさがそれに応じた。あずさはたまたま調整を手伝った時に『小通連』の存在を知ったのだ。

 

 8高選手の3人目はフィールドの両モノリスの途中にある森でさまよっていた。

 

 

 「どこだ!姿を見せて俺と戦え!」

 

 

 軽い耳鳴りが響く中、8高選手は苛立ち気味に叫ぶが誰も出てこない。

 彼はオフェンスの援護に向かうはずだったが、いつまで経っても森を抜けられていない。それは幹比古が作った罠『木霊迷路』だった。この魔法は三半規管を狂わせて方向感覚をおかしくする。なのでかかってしまえば術者の位置もわからずに同じ場所を何度もぐるぐる回ってしまうのだ。

 

 

(達也・・・後は任せたよ)

 

 

 幹比古は木々の間から8高選手をこっそり見ながら術を発動しており、作戦通りに事が進んでいるのに満足している。

 達也は追ってきたディフェンスを気配を消して回り込んで背中に魔法を撃って倒し、そのまま走って最後の選手の所に向かった。

 

 達也は加重軽減の魔法を使用してそれに気づいた8高選手の後ろに木々を跳び移って回り込み、先程と同じように魔法を撃ち込んだ。

 よろめき崩れ落ちる8高選手を観て、観客達は1高の勝利を確信した。

 試合終了のサイレンが鳴ると、1高の観客席は大騒ぎだった。

 

 

 「やった!達也さん達勝ったよ!」

 「おめでとう深雪」

 「やったな」

 「はい、ありがとうございます!」

 

 

 ほのかと雫、智宏に祝われた深雪は嬉しそうに応えた。

 

 1高勢が歓声を上げる中、3高の将輝と吉祥寺はパネルに映る達也の顔を観て話し込んでいた。

 

 

 「最後のは『共鳴』だね」

 「ああ・・・ジョージ、の試合をどう思う?」

 「そうだね・・・・・・彼は術式解体が使えるのには驚いたけど、最後の共鳴は意識を刈り取るほどの威力はなかった。もしかしたら彼はそんな強い魔法が使えないんじゃないかな」

 「それとスペックの低いCADで本来の実力が出せないとかな」

 「うん。とにかく彼の作戦に乗る必要はない。あとの2人も警戒はいらないね」

 「俺が正面から行けば勝てる・・・か?」

 「そう。もし『草原』だったら、九分九厘僕達の勝ちだよ」

 

 

 今の試合を観た吉祥寺は達也達が使っていた魔法や戦術を分析し、そう判断したのだった。




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