四葉を継ぐ者   作:ムイト

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第38話 智宏VS実行部隊

 「響子さん。ありがとうございました」

 「気をつけてね」

 「智宏、終わったら連絡してから横浜ベイヒルズタワーの前に来てくれ」

 「わかった」

 

 

 智宏はとある場所で降りた。

 そこは中華街から少し離れた場所にある横浜の倉庫群。この中の1つに彼らの兵隊がいるらしい。構成員数(智宏にとって)はそんなに多くはなく、アサルトライフルを持った兵士約30人と精鋭部隊の魔法師が10名、計40名程度がそこにいるはずだ。

 ジェネレーターもいる可能性も考えたが、おそらく達也が襲撃する場所に全員いると推測された。

 

 静かな倉庫群を歩いていくと、目的の倉庫に近づいてきた。

 智宏はCADが2つ共あるのを確認し、達也から渡されたデータを見ながら倉庫の中に入って行く。倉庫の中はひんやりとしており、夏なのにあまり暑くない。倉庫の中は大部屋が1つと数個の小部屋に分かれているらしく、気配を探ると何人かが小部屋で、他の全員は大部屋で待機している。

 

 一瞬悩んだが、とりあえず智宏は大部屋に向かった。

 気配からしても彼らは完全に油断している。武器の手入れはしっかりしているようだが、これでは敵の襲撃に耐えられないだろう。今みたいに。

 

 智宏は学校の教室に入る感じで大部屋に入った。部屋のドアは分厚く、これから何をしようが中の音はほとんど外に漏れることはないだろう。

 ドアを閉めて辺りを見渡すと、中にいた者達は智宏に対して全く警戒を示していなかった。

 

 

 「よぉ。上からなんか来たか?」

 「いやいや。多分まだ会議中じゃねーの?」

 「そうかそうか・・・・・・」

 「「・・・・・・」」

 「って誰だ!?」

 「誰だって言われてもねぇ」

 

 

 気安く話しかけられた智宏は呆れに呆れ、相手が智宏がこちらの人間ではないと気がついた時には自分が何者なのかを言う気も失せていた。

 

 智宏が部屋の中心に進んで行くと、驚いた彼らは武器をとって銃口を智宏に向ける。

 すると1人の魔法師が目の前にいる男が何者なのか気がついたようだ。

 

 

 「お、お前は四葉の!」

 「知ってるのか?」

 「ああ、四葉家の次期当主の息子だ。だが九校戦に出ているはずだぞ!なんでここにいる!」

 「なんでってそりゃあ・・・・・・」

 

 

 なぜここにいると言うより、なぜこの場所を突き止めたと普通聞くだろうにと智宏は思っていたが、ひとまず質問に答えるため、見せしめとして1番近くにいた兵士にCADを持った右手を向けて重力核を放つ。

 魔法が当たると、その兵士は身体の中心に押し込まれるかのように収縮し、グシャっと音を立てて潰れてしまった。残ったのはジュースのように搾られた血のみ。肉体はそのまま圧縮されて消えてしまっていた。この時智宏は初めて人を殺した。しかし人を殺めても何も感じない。普通の人ならば躊躇う所を智宏は躊躇なく実行したのだ。これも四葉の血かと納得してしまう。

 

 見た目は結構エグいな、と達也がいればそう言っただろう。彼以外は多分嘔吐するかもしれない。

 

 この出来事を隣にいた者はしばらく認識出来ていなかった。さっきまで飲み食いしていた仲間が肉体を残さずその血のみを残して殺られてしまったのだ。「え?」という風にもなるのかもしれない。

 魔法を放ち終わった智宏は、止めておいたセリフを再開して言った。

 

 

 「・・・お前らを殺すためだ」

 

 

 このセリフを聞いた兵士達は智宏が何を言っているのかがわからなかった。

 

 

 「な、なぜ・・・」

 「なぜ?お前達が無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)の兵隊だからだろ」

 「なんだと!?」

 「くそ!撃て撃て!」

 

 

 彼らはアサルトライフルとCADの引き金を引いて智宏を蜂の巣にしようとしたが、引き金に触れた指に力を入れるか入れないかぐらいのタイミングで、智宏以外の武器は魔法で砕けてしまった。

 もう直せないぐらいにボロボロになったアサルトライフルとCADは持ち主の足元に散らばり、彼らを唖然とさせてしまう。

 

 飛び道具を失った彼らにはまだコンバットナイフがある。だがとっさにナイフを手に出来たのは精鋭と他数名だけ。他はアサルトライフルを構えたポーズのまま固まっていた。

 

 

 「銃が!」

 「ま、まて。近接戦闘なら数の多い我々が有利なはずだ」

 「そうだな。おい!お前は反対側から部屋を出て他の連中を武装させて呼んでこい!」

 「わかった!」

 「よし、俺達は奴を殺るぞ!」

 「「「おう!」」」

 「士気は高い・・・か(まぁそれでもお前らの処分は確定しているけどな)」

 

 

 固まっていた兵士もナイフを抜き、じりじりと智宏に迫る。

 1人は小部屋にいる兵士達を呼びに行ったが、智宏は別に逃げるのではないのなら今殺すつもりはなかった。

 

 約30人が智宏を囲むように動き出し、智宏まであと5mに迫った時、智宏は再び重力核を発動させた。対象は目の前にいる全ての敵。

 彼らはもう一歩踏み出そうとするが、その足は動かない。いや、足だけでなく身体全体が動かないのだ。

 そして先程と同じように仲間が潰れ、床に血溜まりが出来た。

 

 次は2人。

 その次は3人。

 さらにその次は4人。

 

 殺される人数は増えていき、残りの人数が10人になった時、智宏は一旦殺すのを止めた。

 智宏は攻撃が止んだのを不思議に思っている兵士達から一旦視線を外し、CADを向けたままそこらへんにあった椅子に座る。

 

 

 「そうそう。死ぬのは確定だから冥土の土産に聞いていくといい。俺は別にお前らがおとなしくしていればこんな事はしなかったんだ。でもな。身内に・・・従妹に手をだされて、黙ってる兄貴はいねーんだよ。もしかするとお前らを九校戦の会場に突撃させる可能性もあった。だからここに来たのさ。恨むんなら上の連中を恨みな・・・。さて、とりあえずお前ら全員・・・・・・・・・潰れろ」

 

 

 残った兵士が最後に見たのは、智宏の顔だった。若干俯いていたのでよく見えなかったが、智宏の口元は笑っているように見えた。

 それを最後に全員が潰され、その血だけが現世に留まった。

 潰れた衝撃で血は辺りに飛び散り、返り血を避けていた智宏も方向が悪かったのか、顔や服に少しだけ血を付けてしまった。

 

 肉体を一欠片も残していないのを確認した智宏は、後ろからバタバタと走ってくる気配に気が付き、椅子から立ち上がって扉に向き直り彼らを待つ。

 扉が開かれると完全武装をした兵士が7人ほど立っており、血溜まりの中に立っている智宏を見て驚いている。

 

 

 「・・・遅かったじゃないか」

 「あ、あいつらはどこだ?」

 「さあ?どこでしょうね~」

 「まさか!30人以上いたんだぞ!」

 「やりやがったな!お前ら撃て!」

 「学ばないねぇ(お前らは人として死ねるだけ有難く思えよな)」

 「「「ッ!」」」

 

 

 智宏は再び彼らの武器を壊し、身体にも魔法を放つ。

 今度は別に長々と生かしておく必要はない。さっさと終わりにするため、智宏は残存兵を全て殺した。

 

 その場に残ったのは40人分の血。それは排水溝のある場所まで川を作っていた。

 

 血なまぐさくなってきた大部屋から出た智宏は、そのまま倉庫の外に向かう。入ってきた時の通路を辿って外に出る前に、ひとまず魔法で返り血を落とした。顔や服、靴にまでついた血をそのままにしておくわけにはいかない。そして外に出ると重力核を倉庫に発動して床ごと粉々に砕き、跡形もなくして無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)の施設を更地に変えてしまった。まぁ最初から施設ごと潰せばよかったのだが、それではお楽しみが減ってしまうのだ。

 

 全ての作業を終了した智宏は携帯端末を取り出して達也に電話をかけた。

 3回目のコールで達也は応答する。

 

 

 「おっす。取り込み中か?」

『そうだが問題ない。終わったのか?』

 「ああ。全員消した」

『了解した。じゃあこっちに来てくれ』

 「おう」

 

 

 智宏は電話を切ると、達也と響子がいる横浜ベイヒルズタワーに向かった。

 

 途中、四葉家にも電話をかける。一応報告するためだ。まさか智宏と真夜の回線をハッキングすることができる人間がいるとは思いたくないが、とりあえず達也にハッキング対策はしてもらっているので響子並の実力がないと侵入できないはずだ。

 

 こちらは1回目のコールで出た。

 

 

 「もしもし、母上?」

『私の所に直接かけてくるなんて少し驚いたわ』

 「忙しかったですか?」

『いいえ、さっきまでミラージ・バットを観ていたからまだ暇よ。要件はなにかしら?』

 「今さっき愚者の手足を消しました。その報告をと」

『射抜いたの?それとも潰したの?』

 「潰しました」

『やっぱりそっちの方が処理が簡単なのね。怪我はしてない?』

 「かすり傷ひとつ負ってません。返り血は浴びましたが・・・」

『ならいいわ。あとは達也さんね。九校戦を狙っていた無頭竜東日本総支部を壊滅させたのが四葉の関係者というのはいいカードになるわ。ありがとうね』

 「いえ」

 

 

 真夜は智宏と達也が無頭竜の東日本総支部を消すのを四葉家のカードにするつもりだ。しかしなにかあった時のために手持ちのカードを増やすのはいい事だろう。

 

 真夜は智宏に労いの言葉をかけると、隣に座っていた彩音に受話器を渡した。

 

 

『彩音さんに変わるわね』

 「え?」

『・・・智宏様?』

 「彩音か。どした?」

『私も大会を観ておりました。アイス・ピラーズ・ブレイクでの優勝おめでとうございます』

 「ありがとう。九校戦が終わったらすぐに帰ってきてよ。久しぶりに彩音の作る飯が食べたいからさ」

『わ、わかりました!頑張ります!』

 「じゃあそろそろ切るよ。・・・・・・あ、そうだ。母上に伝えておいて欲しい事があるんだけど」

『はい』

 「夏休み中少しの間だけそっちに帰れますって言っといてくれ。じゃな」

『あ、あの――』

 

 

 彩音が何か言おうとしていたが、智宏はそれに気付かず通話を切ってしまった。

 智宏はそのまま目的地まで向かって行った。

 

 ちなみに四葉家では、いきなり電話を切られた彩音が受話器を持ったまま硬直している。理由は後ろに控えている葉山にもわかる。真夜が不機嫌になっているのだ。

 

 

 「全く・・・なんで切っちゃうのよ」

 「も、申し訳ございません」

 「貴女は悪くないわ」

 

 

 彩音はとりあえず謝ったが、真夜が不機嫌なのは四葉家当主としてではなく、1人の母親としてだという事に気が付き少しホッとしていたのだった。しかし、この後彩音が智宏からの伝言を伝えると真夜の機嫌が治ったのは言うまでもないだろう。




お久しぶりです。
忙しくて投稿できませんでした。
これからも少しずつ投稿していきます。

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