四葉を継ぐ者   作:ムイト

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第39話 悪魔の降臨

 智宏と別れた達也と響子は目立たない所に車を停め、横浜ベイヒルズタワーに侵入した。

 響子のハッキングで監視カメラの映像をいじったり、屋上のロックを解除したりしたので2人は何事もなく屋上にたどり着いた。

 

 一方、無頭竜の東日本総支部では撤退の準備が行われていた。

 ジェネレーターが必要な資料を集めているのを尻目に、幹部達は呪詛を漏らしている。

 

 

 「くそ・・・まさかジェネレーターが四葉と日帝軍の特殊部隊に押さえられるとは」

 「このままでは済まさんぞ!」

 「しかしその前にあの司波達也という餓鬼は何者だ?調べたのだろう」

 「ああ。だがわかったのは個人的な情報だけで奴以外の情報は出てこなかった」

 「何者なんだ・・・?」

 「「「・・・ッ!」」」

 「どうした!」

 

 

 荷造りしていた6体のジェネレーターは、3体ほど残して消滅してしまった。

 彼らは唖然とし、今何が起こったのか認識できていない。だが、背後の壁に穴が空いているのに気が付く。そしてそれが物理的な攻撃でなく魔法による攻撃という事も。

 

 すると不意に部屋に備え付けてある専用電話が鳴る。幹部の1人が全員の顔を見合わせ、恐る恐る通話ボタンを押した。

 

 

『Hello.無頭竜東日本総支部の諸君』

 

 

 スピーカーから聞こえたのは若い男の声。彼らはこの男が攻撃をしかけてきたのだとすぐに察した。

 

 時は少しだけ遡り、達也は響子のハッキングが完了するまで目標のビルを見つめていた。

 ハッキングが完了したと響子から聞いた達也は、後ろで「時間外労働云々」と呟いている上官を無視しながら、手に持った『トライデント』の銃口を壁に向けてなんの躊躇いもなく引き金を引いた。

 するとビルの壁が分解され、達也がもう一度引き金を引くと今度はジェネレーターが数体消え去る。これが『分解』。この魔法を受けた者は生物として、人間として死ぬ事が許されない。最初から存在していなかったかのように認識できるような恐ろしい魔法だ。

 

 達也は唖然とする幹部連中を確認し、彼らの部屋に電話をかけた。響子がハッキングしているため、なんの抵抗もない。

 そして通話ボタンが押されたのを確認すると、達也は友達に話しかけるようにこう言った。

 

 

 「Hello.無頭竜東日本総支部の諸君」

『何者だ!』

 「富士では世話になったな。その返礼に来た」

 

 

 男達はなぜこの場所がバレたのかわからなかった。まぁ独立魔装大隊と公安が動いているなら無頭竜のアジトを調べていてもおかしくない。彼らはさっさと退散しなかった自分達に怒りを抱く。

 

 すると側にいたはずのジェネレーターが消え去り、その時の熱源に反応したスプリンクラーが消火のため水を噴き出した。

 

 

 「なっ・・・・・・14号!どこからだ!?」

 

 

 幹部の1人が慌ててジェネレーターに攻撃を仕掛けてきた者の場所を聞いた。

 心を持たないジェネレーターは、気が動転している幹部達と違いパニックにならない。『14号』と呼ばれたジェネレーターは、ゆっくりとした動作で壁に空いた大きな穴の外に見える横浜ベイヒルズタワーを指さした。

 

 幹部は慌てて部屋に持ち込んでいたスナイパーライフルを手に取り、ジェネレーターが示した方角にスコープの照準を合わせた。

 倍率を上げていくと、少しずつだが横浜ベイヒルズタワーの屋上に人のシルエットが見える。そこに見えたのは黒い服を来た男の姿だった。

 スナイパーライフルで覗いているのに気が付いたのか、達也の口には歪んだ笑みを浮かべられる。

 

 すると突然達也を見ていた幹部が悲鳴を上げて仰向けに倒れた。達也がスコープを分解した事により、その破片が眼球に刺さったのだ。

 

 

 「14号と16号!やれ!反撃するんだ!」

 「不可能です」

 「攻撃範囲外です」

 「口答えするな!」

『やらせると思うか?反撃したいなら自分でやればいい』

 

 

 幹部が14号と16号に命令するが、2体共動かない。いくら改造人間だからと言って達也がいる場所に攻撃をしかけるのは無理だと判断したのだろう。

 だが回答した瞬間、2体のジェネレーターは仲良く消え去った。

 

 

 「ならば・・・おい」

 「なんだ」

 「兵をホテルに向かわせろ」

 「・・・・・・わかった」

『無理だな』

 「何!?」

『そろそろなんだが・・・ん、来たか。俺だ・・・そうだが問題ない。終わったのか・・・・・・?』

 「奴は誰と話しているんだ?」

 「さ、さあ?」

『了解した。じゃあこっちに来てくれ。さてと、お前らに残念な知らせだ。倉庫にいた兵士は全て死んだぞ』

 「「「なんだと!?」」」

『こちらも別働隊を用意していたのでな』

 

 

 智宏が兵隊を壊滅させた報告が達也に入り、達也は隠すことなくそれを彼らに教えた。

 

 すると何人かが有線電話に飛びつき、慌てて外に連絡に助けを求めようとする。

 だが――

 

 

『やめておけ』

 「ひぃ!」

『その部屋から通信できるのは俺だけだ』

 「くっ・・・」

 「なぜだ・・・」

『では始めようか』

 

 

 達也の処刑宣告とも言えるセリフに耐えられなくなった幹部の1人は扉に向かってはしりだす。その瞬間、男はジェネレーターと同じように消えた。

 もはや自分達は逃れる事はできない。心臓にナイフを突き付けられているのだと察した。

 

 仲間の消滅を見た無頭竜の支部長は慌てて受話器を他の仲間からひったくって叫んだ。

 

 

 「ま、待て!」

『ん?』

 「我々はもう九校戦には手を出さない!この東日本総支部と西日本総支部を引き上げさせる!」

『日本から撤退すると?』

 「そ、そうだ!」

『お前にそんな権限があるのか?ダグラス・(ウォン)

 「私はボスの側近だ。それなりの権力を持っている(なぜ私の名が・・・)」

『ほう』

 「拝謁も許されているし顔も知っている!」

『では聞こう。ボスの名前は?』

 「・・・・・・・・」

 

 

 達也が無頭竜のボスの名前を聞くと、ダグラス・黄は固まってしまう。ボスの名前は組織の最高機密となっている。

 長年の忠誠はボスの名前を言うことを引き止めた。

 

 だが、黙ってしまった故に――

 

 

 「ジェームズ!?」

 

 

 仲間がまた1人消えた。

 

 

『今のがジェームズ・(チュー)か。次はお前だ。早く答えろ』

 「・・・・・・ボスの名前は・・・・・・リチャード・(スン)だ」

『表の名は?』

 「孫・・・・公明」

 

 

 それからダグラス・黄は達也の質問に答え続けた。無頭竜の中でもほんの少数の人間しか知らない事まで。そこには必死さはなく、機械のように回答していた。

 

 5分くらい経っただろうか。

 ダグラス・黄は全てを話し終えた。

 

 

 「これ以上は知らない。本当だ」

『そのようだな』

 「で、では!」

『ああ。ご苦労だったな』

 

 

 残った幹部達はホッとして顔を上げ、横浜ベイヒルズタワーに向けた。これで助かったと。

 しかし現実はそう甘くはなかった。

 

 幹部がダグラス・黄を残して全て消されたのだ。

 

 

 「なっ!お前達・・・!?見逃してくれるのではなかったのか!?」

『いつそんな約束をした?』

 「九校戦で誰も死ななかったではないか!」

『関係ない。正直お前達が何人殺そうが俺にはどうでもよかった。ただ、お前達は俺の逆鱗に触れた。それがお前達が消える理由だ』

 「・・・悪魔め」

『ダグラス・黄、その悪魔の力を目覚めさせてくれたのはお前達無頭竜のおかげだ』

 「まさか貴様沖縄の時の・・・デーモンライト!?」

 

 

 それがダグラス・黄の最後の言葉となった。

 達也が分解を放つと断末魔を上げて消え去り、部屋に残ったのは転がったテーブルと備品だけ。人としての死を迎えられない惨劇があったなど誰も思わないだろう。

 

 響子も達也が無慈悲に幹部達を消しているのを見て、少しだけ悲しそうな目で達也を見た。

 感情のほとんどがなくなっている達也はジェネレーターに近い人間兵器だ。しかし、達也は深雪のためだけに感情を解放する事ができる。その力の解放がどれだけ恐ろしい物か。響子は改めて思い知らされた。

 

 2人は行きと同じように横浜ベイヒルズタワーから外に出る。近くに止めている車には1人の男がよっかかっていた。智宏である。

 智宏は2人と軽く会話をして車に乗り込み、響子の運転でホテルに戻って行ったのだった。




死体も残らないしなぁ
やっぱ怖いわ

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