四葉を継ぐ者   作:ムイト

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第43話 眩しい女性陣

 マリーナから別荘がある聟島列島まで約900キロ。智宏達が乗っているクルーザーでおよそ6時間の船旅だ。

 

 現代では自家用飛行機を使うのが普通なのだが、わざわざ船で行く理由が達也には理解できなかった。

 エリカとレオ曰く、

 

 「これが旅の醍醐味」

 

 だそうだ。

 そんな答えを聞きながら、智宏は2人の相性はいいんじゃないかと思ってしまう。

 

 今智宏達が乗っているクルーザーは予想以上に大きく、桟橋から乗る時にその大きさにみんなで驚いていた。

 10人ちょっとがこの船に乗り込んでいるのにまだまだスペースに余裕があり、北山家の財力を改めて思い知らされる。

 ちなみにこのクルーザーを操舵しているのはハウスキーパーとして雇われている黒沢女史。いやメイドでいいじゃんと智宏は思ったが、事情を聞かない方がいいと悟った。

 

 智宏にくっついてきた彩音は操舵している黒沢の代わりに飲み物などを達也達に配っている。雫や深雪は「申し訳ないから休んで」と言っていたが、彩音は自分はメイドであると言ってキッパリ断った。

 

 適当に喋ったり飲んだりしていると時間はあっという間に過ぎ、嵐に巻き込まれることなく別荘がある(なこうど)島に到着した。

 

 智宏はクルーザーから降りると島全体をちゃっかりサテライトアイで見渡す。

 

(さすが北山家。立派な島だ)

 

 媒島はしっかり整備されており、ヘリポートまで作ってある。

 四葉にも別荘はある。行ったことはないが、智宏の頭の中では全ての施設は要塞化されていると思ってしまう。

 それに比べてここは遊ぶために作られた別荘。本当にいい場所だ。

 

 一行は別荘で水着に着替えてビーチに向かう。ヨットパーカーを着た智宏は同じ物を着てパラソルの下で涼んでいる達也の前で準備運動をしていた。

 

 「智宏」

 

 「ん?」

 

 「レオと幹比古はどうした?」

 

 「2人なら・・・・・・ほらあそこ」

 

 「うおぉぉりゃあぁぁぁ!」

 「レ、レオ!何すんだよ!」

 「はっはっはっ!幹比古、あっちまで競争だ!」

 「えぇ・・・・・・しょうがないなぁ」

 

 「「・・・・・・・・・」」

 

 「幹比古も大変だな」

 

 「あはは・・・」

 

 レオと幹比古はいきなり競泳し始めた。幹比古は巻き込まれたみたいだが、楽しそうなのでこれ以上何も言うまい。

 

 今日は本当にいい天気だ。

 雲ひとつない空、白い砂浜、ジリジリと照りつける太陽。しかし、このビーチにはそれ以上に眩しい光景があった。

 

 「智宏くーん、達也くーん。泳がないの〜?」

 

 「お兄様ー!気持ちいですよ〜!」

 

 「おう待ってろ!今行く!・・・・・・しっかし達也」

 

 「なんだ」

 

 「眩しいな」

 

 「そうだな」

 

 2人は何が眩しいとは言わない。いや、言わなくてもわかってる。何が眩しいかって?それはビーチで戯れる少女達の水着姿である。

 

 派手な色のスポーツ水着を着たエリカは道場で鍛えているだけあって、水着は彼女のプロポーションを1層引き出させている。

 

 その隣で手を振っている深雪は花デザインがプリントされた水色のワンピース。相変わらずその美貌は全ての人を振り向かせるような不思議な力がある。

 

 セパレートながらワンショルダーにパレオを巻き、アンシンメトリーなスタイルで大人っぽくキメているほのか。プロポーションだけならこの中で1番だろう。

 

 雫は少女達の中で唯一フリルがいっぱいくっついている少女らしいワンピース。いつもクールな雫が着ると何やら妖しい魅力が・・・・・・。

 

 意外だったのが美月だ。プライベートビーチのためか、いつも大人しく縮こまっている彼女の水着は水玉模様で、ビキニほど露出はないが胸元のカットは深く豊かな胸がバーンと強調されていた。

 

 智宏にくっついてきた彩音は今も智宏と達也の後ろに立っているが、彼女も水着姿だ。深雪が無理矢理着せたのはスカート付きの白いビキニ。智宏がチラリと彩音を見ると恥ずかしいのか、顔を赤くして俯いてしまう。

 

 その光景に智宏はうんうんと頷き、達也はジッと見つめているのは失礼だと感じて視線を横にズラす。

 智宏は達也を誘おうとしたが、後ろに人の気配を感じた。

 

 「お兄様!智宏さん!」

 

 「2人とも泳ごうよー」

 

 「そうですよ!パラソルの下じゃもったいないです!」

 

 「智宏さん。行こ」

 

 立っていた智宏にはわからなかったが、座っている達也にとって今の状況はいささか問題がある。

 腰を屈めて達也を覗き込んでいる深雪とほのか、そして2人を囲んでいる雫、エリカ、美月が水着姿でこんなに近づいているのだ。この時達也は自分の精神的な問題に少しだけ感謝した。

 

 「じゃあ泳ぎますかね」

 

 「智宏様。お預かりします」

 

 「サンキュ」

 

 智宏がパーカーを脱ぐと無駄な肉が一切ない鋼の肉体が姿を現した。

 

 「おお・・・」

 

 「す、すごいですね」

 

 「智宏さんって鍛えてるの?」

 

 「まぁな・・・・・・って雫?なんで突っついてるの?」

 

 「すごいなって」

 

 「いや〜照れるなぁ」

 

 「ウチの道場でも中々いないわよ。深雪はそんなに驚いてなさそうだけど知ってたの?」

 

 「ええ。智宏さんとお兄様が鍛錬で手合わせした時に見たの」

 

 智宏の腹筋を雫が突っつき、エリカも道場の娘として智宏の肉体をジロジロ観察していた。

 

 一方、彩音は智宏から預かったパーカーを大事そうに胸に抱え、少しだが漂ってくる智宏の匂いに酔いしれている。もちろんその表情は表には出していない。

 

 「達也も行こうぜ」

 

 「わかった」

 

 「お兄様、パーカーを」

 

 「ありがとう深雪」

 

 達也も立ち上がってパーカーを脱ぐ。

 その時、智宏の時とは違った空気が流れた。

 

 「達也君それって・・・」

 

 エリカの声には隠しきれないほどの同様がある。しかしそれはエリカだけではない。雫も、ほのかも、美月も達也の身体から目を離せなくなった。

 

 達也の肉体は智宏と同じくらい鍛え上げられているが、それとは別に様々な傷跡が皮膚に刻まれていたのだ。

 1番多いのが切り傷。

 その次が刺し傷。

 所々にある火傷の痕。

 いたるところに傷跡があり、とてもじゃないが普通の生活をしてきたようには見えない。実際に斬られたり刺されたり焼かれたり、血を流しながらの拷問ではないとここまで酷くならないだろう。

 

 「すまない。気持ち悪いか」

 

 あまりこの傷跡に触れてほしくない達也は先程預けたパーカーを取ろうとして、深雪に手を伸ばしたがパーカーを取ることら叶わなかった。深雪がギューッと抱えているからだ。

 妹とはいえ女性の胸に手を伸ばすわけにはいかず、達也の手は行くところをなくしてしまった。

 

 しかし、空ぶった達也の腕は深雪によって右腕に抱え込まれた。

 

 「わっ」

 

 この行為に美月がうっかり驚きの声を上げしまった。

 達也と深雪はピッタリ密着しており、深雪の胸は布1枚を隔てただけで達也の腕に押し付けられている。しかし深雪本人に恥ずかしがった様子はない。

 

 「お兄様、私は気にしません。その傷跡はお兄様が誰よりも努力した証ですから」

 

 「深雪・・・」

 

 深雪の言葉に達也の顔は微かに緩む。

 その直後、達也は右腕に柔らかい衝撃を覚えた。

 達也は原因がなんなのか予想はついていたが、一応首を捻って自分の右腕を包み込んでいる正体を確かめた。

 

 その予想は当たり、右腕に抱きついてきたのはほのかだった。

 ほのかは深雪と張り合うように抱きついており、密着している胸が達也の腕に触れているかどうかわからないが、ほのかの顔は深雪以上に真っ赤になっている。

 

 「わ、私も気にしませんよ!」

 

 ほのかは何故自分がこのような行動に出たのかさっぱりわからなかった。まぁ勢いで抱きついてしまったのはわかる。

 それ以前に恋人でもない異性に水着姿でくっつくなんて普通はしないだろう。もちろんほのかは達也が好きなので嫌ではないはず。

 

 それはともかく、ほのかの行動は謎だった。

 そう。これはまるでーー

 

 「これって・・・妹と恋人の板挟みの図みたいですね」

 

 「しっ!ダメよ美月、今いいところなんだから」

 

 「妹と恋人ね。なるほど」

 

 妹と恋人の板挟み。

 この美月のセリフは、達也に抱きついている2人以外の人の頭の中に浮かんだ言葉だろう。智宏もほのかの勇姿に思わず「やるなぁ」と思ってしまう。

 

 真っ赤にした顔を下に向けたほのかと嬉しそうにくっついている深雪を達也は交互に見ると、「仕方ないか」と言いたげな顔で海へ向かった。

 

 智宏達も3人の後を追いかける。その時、智宏の隣にいた雫は俯いたままの親友を見て「よくやった」と心の中でグッジョブしていた。




みんなスタイル良すぎ

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