四葉を継ぐ者   作:ムイト

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第47話 予期せぬお誘い

 智宏達が雫の別荘から帰ってきて数日後。

 七草邸にて―――

 

(あーあ。進展ないわねぇ・・・・・・あらメール?誰?)

 

 広い屋敷の一室に彼女、七草真由美はいる。

 

 真由美が珍しく自室のベッドの上でゴロゴロしていると、隣に置いてあった携帯端末にメールが届いた。

 メールを開くと、そこには少量の文章に数枚の写真が添付されてあった。

 初めは「ふーん」とばかりに見ていたが、1枚の写真を見た瞬間真由美の身体はベッドから跳ね起きる。

 

(こ、これって!)

 

 真由美が凝視した写真には、智宏が船の中らしき場所で寝ている写真。しかもその隣には智宏の腕にひっつくようにして寝ている雫がいた。そう。これは先日、智宏達が北山家の別荘から帰ってきた時の物だ。

 

 このメールアドレスは知らない物だったが、メールの要件の所に差出人の名前が書いてある。まぁこんな事をするのは1人しかいない。もちろんエリカである。勘のいいエリカは真由美の気持ちにも少しずつだが気づいていたのだろう。それを知って送ってくるとは、もはや挑発行為だ。

 

 そして写真を見ていると、ふつふつと真由美の中から何かが出てきそうになる。

 真由美は送ってきたエリカに文句を言うより、雫に対して嫉妬の感情が大きくなって返信をすることを忘れてしまった。

 

(北山さん・・・やるわね。わ、私だって)

 

 何かを決意した真由美は智宏宛にメールを送った。

 

 一方、智宏と彩音は一旦東京の家に戻ってきており、明後日にはもう一度実家に帰る予定でいた。

 リビングでCADを磨いていた智宏は、自分の携帯端末に着信が来ているのに気がつく。差出人は真由美だ。

 

 「珍しい、会長からだ。なになに・・・・・・・・・?はぁ?」

 

 智宏の所に来たメールを要約すると、

 

 明日暇なら私の買い物に付き合いなさい。これは会長命令よ。

 

 との事だ。

 他にも集合場所や時間も書いてある。

 幸い明日は暇なので行けないこともないが、なぜ急に誘われたのだろうか。『暇だったら』という文章を付けてくれただけでもありがたい。まぁ会長命令なら仕方ないので、とりあえずOKのメールを返信した。

 まさかここで会長の権力を使ってくるとは思わなかったが、それだけ何か大切な事があるのだろうと智宏は無理矢理納得する。

 

 そして智宏は彩音に(誰と行くとは言ってない)明日出かけてくる事を伝え、真由美は上機嫌にさっそく着ていく服を選んでいた。

 

 翌日。

 智宏は集合場所である駅前に10分前には到着しており、真由美を待っていた。

 すると――

 

 「智宏くーん」

 

 九校戦の時とは別のサマーワンピースを着た真由美がパタパタと智宏の所へかけてきた。

 

 「お久しぶりです」

 

 「そうね。今日は大丈夫だったの?」

 

 「はい。でも明日は実家に帰る予定だったのでギリギリでしたね」

 

 「よかった。それで・・・どう?」

 

 この場合の「どう?」は服の事だろう。さすがに智宏でもわかった。

 

 「綺麗ですよ。似合ってます」

 

 「そ、そう!(よし。つかみはオッケー)」

 

 「じゃあ行きますか?」

 

 「ええ」

 

 2人は電車に乗って都心へと向かう。

 この時2人は以外と多くの人に目撃されている。まあ十師族である智宏と真由美は九校戦で注目度が高まり、魔法師だけでなく一般の国民でも知っている者が増えているのだ。

 

 そして1番騒いでいるのが一高生(主に女子)。七草会長が男と一緒に出かけてる!という目撃情報が友人に渡り、さらにその男が四葉智宏だと知れるとそれまた騒ぎになった。

 

 電車に揺られること数十分。

 智宏と真由美は目的地のある駅に到着した。

 

 「よし着いた」

 

 「会長、そういえば今日はどこへ?」

 

 「できたばかりのショッピングモールで買い物よ」

 

 「ショッピングモールなら地元にもありませんでしたっけ?」

 

 「い、いいのよここで!」

 

 「まぁいいですけど」

 

 真由美は誤魔化したが、理由として新しいショッピングモールに行ってみたかった事もあるが、本当は地元で2人っきりでいて同級生と鉢合わせるのが嫌なのだ。

 できれば知ってる人が誰もいない場所で買い物(デート)したいというのが真由美の本音。もっとも何人かには集合場所でバレているのだが・・・。

 

 駅から少し歩くと、目的地のショッピングモールが見えてきた。この建物は元々あった古い団地を壊しその上に建てたらしい。

 中に入ると予想以上の人が歩いている。開店してから数日は混むというのはどこの店でも同じなのだろう。

 

 「最初はどうします?」

 

 「安心して。ルートは決めてるから」

 

 「さすがですね」

 

 「まずは服よ!もちろん私と智宏君の!」

 

 2人は手は繋がなかったが、肩が触れ合うほど距離は近い。これも真由美が写真を見せられたからか、智宏が少し横にズレても真由美はその分智宏の方に移動した。何度かこれを繰り返したが、智宏もさすがにあきらめたのか、店につく頃には大人しくなった。

 

 「さあ着いたわよ」

 

 「まずは会長からですね」

 

 「どれにしようかしら・・・・・・」

 

 今回真由美が欲しかったのは秋と冬どちらも着れる上着だった。ちなみに智宏も似たような買い物をする予定だ。そろそろ9月なので秋の上着は出ているはず。

 

 この店は割と有名な所で、智宏もテレビで何度か他の場所にあるこの店を見たことがある。特に若い女性に人気があるこの店は、服の値段は高いがそれでも買ってくれる人が大勢いるため結構儲かっているそうな。

 店内に入ると既に秋用の上着が店頭近くや真ん中に置いてあった。夏の終わりを実感できる。

 

 「見て見て!どっちがいいかしら?」

 

 真由美が持ってきたのは2種類の上着。智宏の前に持ってくると目の前で着たり脱いだりしてくれた。その時智宏は荷物係で、真由美のバッグを持たされた。

 

 「そうですね・・・・・・こっちの方が可愛らしいですよ。でも冬も着るならこっちですかね」

 

 「そう?じゃあ、こっちにする」

 

 「いいんですか?」

 

 「いいのよ」

 

 可愛らしさを選ぶか実用性を選ぶか。

 結局真由美は智宏が「可愛らしい」と言ってくれた上着を選んだ。別に暖かくなくてもいい。智宏に褒められた事が真由美は嬉しかったのだ。

 

 会計を済ませ、次に向かったのは男性服売り場。この店も有名な所で、智宏も分家の人が店の服を着ていたのを覚えていた。

 真由美は店に入るなり智宏を置いて店員に話しかけ、何度かこっちを見てから店員は店の奥に消えて行った。

 しばらくすると、店員は4着ほど持って戻って来た。

 

 「こちらはいかがですか?」

 

 「智宏君はどれとどれがいい?」

 

 「俺は・・・・・・これと・・・これで」

 

 「じゃあ後の2着は戻して来てください。ありがとうございました」

 

 「かしこまりました」

 

 店員は選ばれなかった服を持って奥へ消えていく。智宏は真由美に鏡の前までグイグイ引っ張られた。

 

 「よし。じゃあ着てみて」

 

 「両方とも?」

 

 「当たり前よ」

 

 智宏は2着の服を順番に着た。

 そして何かの審査員になったかのように真由美は上着を着た智宏を前後左右から観察し、挙句の果てには縦鏡に映った智宏をじーっと見ていた。

 

 おそらく智宏が買う服は真由美が選んでくれるのだろう。智宏は真由美は多少変なのでも選ぶんじゃないかと思ったが、ここは彼女のセンスを信じた。

 

 そして智宏がマネキン状態になってから数分後―――

 

 「これがいいわ」

 

 ―――と、真由美が選んだのは長身の智宏が着ると結構似合うやつ。

 

 結果自分がいいなーと思っていた服が選ばれたので、智宏は少しホッとした。ただ、さっき真由美が買った服と色が少し似ているのは気の所為だと信じたい。

 

 「じゃあ会計行ってきます」

 

 「私は店の外で待ってるわね」

 

 会計を済ませた智宏は店の前にいた真由美と合流し、真由美があらかじめ予約してあった店で昼食を食べた。

 

 その後は敷地内にある噴水を見たり、開店のイベントを見たりして楽しみ(主に真由美が)、あっという間に夕方となる。

 この日は2人共明日は予定があったので、早めの16時の電車に乗って八王子へと戻った。

 

 「帰ってきましたね」

 

 「そうね。智宏君、今日はありがとう」

 

 「いえこちらこそ」

 

 「あ、私車待たせてるから」

 

 「お疲れ様です」

 

 「じゃあねー。また今度どこかに行きましょ」

 

 

 使用人に運転させている車に乗って真由美は自宅へと帰って行く。智宏も明日の支度をするため早足で戻った。

 

 その夜、真由美はにやけながらベッドの上を転がり、何事かと部屋に入ってきた妹達に気持ち悪いと言われてしまう。まぁ昼食の時に「あーん」を(無理矢理)してもらったり、それを見た店員にカップルと間違えられたりしたので、真由美はとても嬉しかったのだ。

 

 そして智宏は自宅に帰ると、出迎えてくれた彩音に「お風呂へどうぞ。女性の匂いがしますよ」と若干尖った声で言われてしまったのだった。




ついに始まりましたね。アニメ。
リーナのポンコツっぷりが健在でよかったよかった。
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