四葉を継ぐ者   作:ムイト

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第49話 会長選挙・前編

 「そっかぁ・・・私達も今月で引退なのね」

 

 夏休みの話題で盛り上がっていた生徒会室の空気を変えたのはそんな真由美の一言だった。

 

 長いのか短いのかわからない夏休みが終わり、各クラスでは女性が自慢話をしたりいろんな体験談を話したりしている。また1部の女子生徒から、「パーカーを無理矢理・・・」とか「ベッドに押し倒された」などというセリフがクラスを飛び交い、健全な男子高校生の居心地を悪くしていた。

 

 もちろん智宏の周りでそんな人間はいないが・・・・・・

 

 「そう言えば今月には会長選挙がありますよね?」

 

 と、達也は「女子のお話」を変えるために問いかけた。

 

 「そうよ。今年はあーちゃんとはんぞーくんの一騎打ちね」

 

 「じゃあ身内同士の争いですね」

 

 「だな」

 

 智宏と達也は真由美の意見に納得したが、納得できなかったのは有力候補として指名されたあずさだった。

 

 「待ってください!わたしには生徒会長なんて無理ですよぉ!」

 

 「えー。じゃあ今度の生徒会長ははんぞーくん?」

 

 「6年ぶりに首席以外の生徒会長か・・・」

 

 「去年の首席は中条先輩だったんですね」

 

 そう。確かにあずさは首席で入学した。

 ちなみに理論は五十里が首席であずさが次席、服部が三席。実技は服部が首席であずさが次席。つまりあずさと服部はほとんど差がないのだ。

 

 逆にあずさが花音より実技が上だと言う事に智宏は驚かされたりしている。見た目と性格からは全く分からない。

 

 この後、達也は摩利から頼まれて花音に風紀委員の巡回コースを教えるために一緒に出て行った。また、一応智宏も風紀委員であるため、パトロールはやらなければいけないのでいつものコースに向かう(何故か真由美も一緒に)。

 

 智宏と達也のパトロールが終わり、生徒会の仕事が終わった深雪。クラブ活動が終わったレオ、エリカ、美月、雫、ほのか。実験室での自主トレが終わった幹比古は校門前で合流すると駅までの途中にある喫茶店でテーブルを囲んでいた。

 

 「中条先輩か・・・ちょーっと頼りねぇかな」

 

 というレオの意見に

 

 「実力は高いよ」

 

 「生徒会長は優しい人がいいです」

 

 といった雫とほのかの意見

 

 「服部先輩は立候補しないんでしょ?なら中条先輩しかいないわよ」

 

 というエリカの消去法の選択などなど、話題はやはり生徒会選挙に持ちきりだ。

 

 実際、服部は克人の跡を継ぐらしく、さすがにそこから引き抜く訳にもいかないそうな。

 

 「このままだと会長候補がいなくなるんじゃね?」

 

 「しかし中条先輩を無理には会長にさせたくはないな」

 

 智宏と達也も意見が並行して中々話が進まない。

 

 「あ、じゃあ深雪がなればいいじゃない。生徒会長に」

 

 「「「え?」」」

 

 エリカの予想外のセリフにここにいる全員が固まった。

 

 そんな様子を見て笑ってしまったエリカ曰く、1年生が生徒会長になってはいけないというルールはない。深雪は九校戦で活躍し、その実力や知名度は問題ない。というらしい。

 

 「ねぇ深雪〜。生徒会長になったら達也くん。引き抜けるんだよぉ?」

 

 と、いう悪魔(エリカ)の囁きに、深雪は思いっきり動揺した。

 

 「そ、それはっ」

 

 「じゃあ達也がやれば?面白そうじゃん」

 

 「いいなぁ。俺投票するぜ」

 

 「僕も」

 

 一方智宏達男性陣は達也に1票を入れだした。

 

 「無理だ。俺に票は集まらないよ」

 

 「そんな事ありません!私は達也さんに投票します!」

 

 「だってさ」

 

 「智宏、じゃあお前がやればいいだろ?」

 

 「勘弁してくれ。俺が生徒会長になったら大変だぞ?」

 

 達也が言った通り智宏が生徒会長になる選択肢もある。十師族の跡継ぎ候補で九校戦でも大いに活躍した。深雪並に実力と知名度はあるだろうが、智宏の言う通りもし生徒会長になんてなったら大変だ。

 四葉というだけで恐ろしいのに、その直系が生徒会長というのはいささか不安を覚える人は少なからず存在するだろう。十師族でも七草を筆頭にうるさいのが出てくるかもしれない。

 

 達也も理由を悟ったのか、追撃をしてこなかった。

 

 翌日、なんと昼休みの時に智宏のクラスに真由美が入ってきた。

 いくら年下とはいえ、1年生のクラスに堂々と入られると止められる者も止められない。もちろん真由美が立ち止まったのは本を読んでいた智宏の目の前。

 

 「ねぇ智宏君」

 

 「はい?(俺かよ)」

 

 「ちょーっと来てくれないかしら?」

 

 パンッと音を立てて手を合わせて言ったため、このセリフは周りにも聞こえていただろうが、大きくざわつかなかったのは真由美の後ろに鈴音がいたからだろう。

 勘違いをしないクラスメイトがいて有難いと思う智宏だった。実際は夏休みに真由美とデートしていたことがバレ、とっくのとうに手遅れなのだ。

 

 「なんでです?授業始まりますよ?」

 

 「生徒会の公務って事じゃダメ?減点されないから。ね?ね?」

 

 真由美のお願いにはどこか嫌な予感が付き物。智宏はこの時点で断ろうとしたが、真由美の手を見てそれを止めた。

 なぜなら合わせた手が徐々に下がってきており、【合掌】から【祈り】に手が変化しそうな兆候が見て取れたからだ。

 

 胸の前で手を組み、瞳を潤ませ、キラキラした視線でお願いをする。もはやお願いではなく命令や脅迫に近い形になるが、真由美ならやりかねない。否、やるだろう。

 

 「・・・わかりました」

 

 「じゃ、行きましょ」

 

 真由美は生徒会長権限のIDカードを智宏の机に置いてある端末にかざし、3人は教室を出て行こうとした。

 

 教室の出入口まで来ると、そこには――

 

 「智宏さん、授業始ま・・・・・・る、会長?」

 

 「うふふ。北山さん、智宏君借りてくわね」

 

 「すみません」

 

 雫がトイレから帰ってきていた。

 しかし何かある前に真由美はグイグイと智宏を引っ張っていったので、鈴音が謝罪をする程度しかできなかった。

 

 その後智宏は真由美に頼まれて達也を呼びに行き、4人に増えた一行・・・というか真由美に連行された智宏と達也は生徒会室に入れられた。

 

 「俺達に何か?」

 

 「実は・・・あーちゃんの説得をして欲しいの。このままじゃ強引に誰かを生徒会長にしなくちゃいけなくなるかもしれないわ」

 

 「しかしどうやって・・・」

 

 「うーん・・・・・・・・・あ」

 

 「智宏君?」

 

 「ちょっと失礼。達也、こっちこっち」

 

 智宏は頭に浮かんだアイディアを伝えるために、達也を呼んで生徒会室の端っこで携帯端末に文字を打ち込んだ。口で言わなかったのは真由美に悟られないためだ。

 

 そのアイディアを見た達也はしばらく考え込み、10秒ほどで決心したように真由美に向き直った。

 

 「会長。俺がやります」

 

 「ホント!?是非、是非頼むわ!」

 

 真由美が智宏と達也の手を握ってブンブン振り回してこの話は終わり、各々の教室へ戻って行った。

 

 放課後、智宏は「達也の分まで見回りやっとくわ!」と言ってさっさと行ってしまい、達也は深雪と2人であずさの教室に行かなくてなならなくなった。

 しかし兄と一緒ならどんな大犯罪でも引き起こしそうな深雪は可愛げに手を振って智宏を見送る。達也と2人で仕事ができる事が嬉しかったようだ。

 

 あずさのいる教室に2人が入ると、クラス中から視線が突き刺さる。ちなみにあずさはいそいそと帰り支度をしている真っ最中。真由美達に捕まらないように逃げようとしていたのだろう。

 だが達也と深雪はあずさの机の前まで来ると、逃げられないように2人で脱出路を塞いだ。

 

 「中条先輩」

 

 「司波君?何ですか?」

 

 「お話しがあります。来てください」

 

 克人ほどではないが、低く落ち着いた声でこう言われたあずさはついに来たかと固まってしまう。

 さらに有無を言わせない圧力に、クラスの女子は「あら強引」とか「ちょっといいかも」といった声も上がる。もちろん達也と深雪にも聞こえている訳で、深雪は少し不機嫌モードになっていた。

 

 これ以上深雪を教室に置けなくなった達也は話を終わらせる事にした。

 

 「5分でいいので」

 

 「5分なら・・・・・・」

 

 「では行きましょう」

 

 「はい。さ、先輩」

 

 「ちょ、ちょっと深雪さん!」

 

 深雪に引きずられるようにして、あずさは近くにある空き部屋に連れて来られた。

 3人はそこにあったテーブルに座る。傍から見れば取り調べを受けている人だ。

 

 「それで・・・なんですか?」

 

 「単刀直入に言います。生徒会長になってください」

 

 「私はならないですよ!」

 

 やはりあずさは断った。

 まぁ断わられる前提で来ているのでさほど驚きはしなかったが・・・・・・。

 

 ここで達也は智宏から提案された案をあずさに話してみる事にした。

 

 「そう言えば・・・・・・再来週に発売する飛行デバイス。あれが昨日2つほど手に入りまして」

 

 この言葉を聞いたあずさの目は爛々と輝き出し、自然とテーブルに身を乗り出して来た。

 

 「もしかしてシルバー・モデルの?シルバー・モデルの新作ですか!?」

 

 「まぁ。しかもモニター品なのでシリアルナンバーが刻まれていない非売品です」

 

 「うっ」

 

 「生徒会長の就任祝いにと用意したかったのですが・・・・・・」

 

 「や・・・や・・・や・・・やります!」

 

 「本当ですか?」

 

 「中条先輩なら上手くやれますよ!」

 

 「私頑張ります!どんな人が相手でも負けません!」

 

 あずさはまだ見ぬ相手の幻影を睨みつけて力強く断言した。

 そもそも他に立候補する人がいないからあずさに頼んだのだ。このまま行くと選挙ではなく確実に生徒会長に就任するだろう。

 結果的にあずさは智宏の案により物で釣られたわけだが、これで達也と深雪の目的は達せられた。

 

 教室を出たあずさは、やる気半分CAD欲しさ半分といった感情で家に帰って行った。

 

 ついに生徒会長に立候補したのはあずさだけだった。

 立候補者が少ないのは珍しい訳ではない。

 今回の理由としては、生徒会長の座にそれほど魅力を感じない人がいるから・・・・・・という訳ではない。魔法科高校も社会的に見れば普通の生徒会組織のトップにしか見えない。権力も影響力もあまりない名誉職。

 しかし、その名誉のレベルが普通の高校と違うのだ。

 

 知っての通り魔法科高校は全国に9つしか存在しない学校。増やそうにも、教師が足りなくて魔法の高等教育ができる高校が作れないのだ。

 日本にたった9名しかいない魔法科高校の生徒会長。その肩書きは魔法師として生きていく限り永久的にくっついてくる。三等勲章にすら匹敵する名誉なのだ。

 

 ではなぜ今回は1人なのか。

 それは人為的な力(・・・・・)が働いていたからだ。

 生徒会長の座を狙っている者は多い。しかし智宏は生徒会室で目の前にいる現生徒会長が何かしたとしか思えなかった。

 どうやってかは知らないが、立候補を断念させるために説得(?)して回ったのだろう。もしかするとあの笑顔でうまーく丸め込んだのだろうか?智宏は少し怖くなり、考えるのを止めた。




ああー、リーナ可愛すぎ
雫も酔ってたなぁ。はやくそこの話を書きたい
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