すっかり日も落ちて街灯に照らされた帰り道。今日は先に帰ったレオとエリカの変わりに花音と五十里がいた。
なぜ2人がいるのかというと、保健室で聞いた事情を達也に話すためだ。千秋の狙いが達也であるならば本人に話しておく必要がある。
事情を聞いた達也達の反応はそれぞれだった。
「なるほど。そういう理由でしたか」
「それって逆恨みじゃないですか!」
「ていうか八つ当たり?」
ほのかは憤慨し、雫は理解しがたいのか首を捻っている。
「まぁ・・・八つ当たりせずにはいられなったんだね」
「そうですね。平河さんはお姉さんが大好きなようですし」
対象的に同情混じりの言葉を発したのは幹比古と美月。
ここでも一科生と二科生で意見が割れた。千秋も二科生なので、2人はその気持ちが少しだけわかるのかもしれない。
「ま、そんくらいならほっといても大丈夫かな?」
「そうだな」
「え・・・狙われてるの君なんだけど」
早々と結論を出した智宏と達也。
五十里は首を傾げ、花音は呆れた声で問いかけてきた。
その問いに対し、達也は何故か申し訳なさそうに頭を下げた。
「俺が狙われたから巻き込んでしまったようですね。申し訳ありません」
「ううん、大丈夫さ。それより平河先輩に妹を説得させてたらどうかな?」
「いえ。その必要はないでしょう。それに無理に説得したら余計に暴走するかもしれません。2人に責任はないのですから」
「へぇ~、優しいのね」
達也は五十里に解決案を出されたが、首を横に振ってその案を拒否した。
確かに平河(姉)は妹の暴走に関与していないけではない。むしろその原因だ。だが、それを関係ないと達也は言い切る。
その返答に花音は素で驚き、深雪はそれにムッとしていた。もちろん達也が深雪を上級生の目に入らないようしている。
「それに最近1高の周りをウロチョロしてるのは平河千秋だけではありませんし」
智宏の言葉にハッとなった花音と五十里、幹比古は一行の周辺に目を光らせた。
不審な影は発見できたが、微かに意図しないサイオンの波動を五十里と幹比古は感じ取れた。
「護衛・・・足そうか?」
「七草先輩並の探知能力がなければ無理ですよ。それに、智宏でも十分すぎます」
五十里は達也の護衛を増やそうとしたが、護衛対象から真由美以上の探知能力者ではないときっぱり言われた。
「五十里先輩。智宏さんの実力に不満でもあるんですか?」
雫は不満そうな視線を浴びせる。
「あっ、いや、別に疑ってるわけじゃないよ?」
もちろんわざと言ったわけでも智宏の実力を低く見ていたわけでもないので、五十里は慌てて謝った。
智宏も五十里が自分に低評価を付けていたわけではないのを知っていたので、ここは笑って済ませた。
翌日。
あれからは何事もなかった。
ほんの1部の生徒しかスパイの存在を知らないので、昼時の今でも学生食堂は賑やかだ。
ざわざわと喧騒が重なり合っているが、ある集団が姿を表すとその近くがシン・・・と静まり返る。
その一行はまっすぐ目的の場所まで向かった。
「よ、達也」
「お兄様、お待たせしました」
そう。学生食堂に入ってきたのは智宏と深雪、ほのか、雫だ。
特に、最近になってますますその美貌に磨きがかかってきた深雪はすれ違いに通り過ぎる人の注目を浴びまくっている。智宏も智宏で、九校戦が終わってから一気にファンが増えたらしく、食べるのを止めてまで彼を見る女子生徒も見えた。
智宏達があいさつをすると達也は笑って手を振った。
達也達が席取りをして智宏達が後から合流する、というのはお決まりのパターンだ。逆のパターンもあるが、6割くらい達也の方が先に来ている。ちなみに深雪が達也のいない所で昼食を食べるパターンは絶対に存在しない。
「あっ、四葉君も来たんですね」
「今来たところだよ」
「じゃあ美月と幹比古が来たから、俺達も行こうか」
そこへ昼食を持って戻って来た幹比古と美月がやって来た。
腰を下ろした2人と入れ替わりに席を立った達也は、深雪を手で促して配膳台に向かう。その後ろをほのかがトコトコとついて行き、智宏と雫は並んで3人の後ろを歩いた。
その光景を見ていた男子生徒達はさぞかし羨ましがっていただろう。
いつものメンバーならあと2人いるはずなのだが、結局トレーを持った智宏達5人を迎えてくれたのは幹比古と美月だけだった。
「ところでエリカと西城君はまだ授業ですか?」
姿が見えない2人についてほのかが何気なく達也に訊ねる。
「あの2人は休みだ」
最近は論文コンペで昼食を皆で食べる事が少なくなってきていたため、逆に誰かが欠けたり遅れたりする事が増えてきた。
しかし、予想外の達也の回答にほのかの目がキラリと光る。
「え!2人一緒にですか!?」
「ああ。2人一緒に、だ」
「意外でもない・・・よね?」
「確かに」
達也はほのかが何を誤解しているかを直ぐに察知し、人の悪い笑みを浮かべながらあえてほのかに肯定するように答えた。
また、智宏の隣に座っている雫も興味津々の目付きをしながら小首を傾げ、独り言を呟いた。智宏もだんだん面白くなってきたので雫に同調した。
「そ、そうなんですか?」
「私達に聞いてどうするの」
目を丸くして訊ねてくる美月に深雪が苦笑しながら言う。
休んでいる2人と同じクラスなのは達也と幹比古と美月だけ。他のクラスである智宏達に聞かれてもわからない。
となると美月の視線は自然と幹比古の方を向いた。
「えっ?僕?うーん・・・そんな素振りはなかったと思うけど」
「そういや昨日2人で帰ってたな」
幹比古が慌てて答えを返したところに智宏は爆弾を投下。
そして、わっ、とか、キャッとかはしゃいでいる女子達。普通の学校の女子も魔法科高校の女子も恋愛に関してはどこも違わない。
「でもエリカちゃんとレオ君はどうして休んだんでしょう?」
「病気ってわけじゃないよね」
「同感だ。昨日の2人の体調は悪そうじゃなかった」
一旦は鎮火した話題だが、全員のトレーから食べるものが無くなると再びエリカとレオの話に戻った。
幹比古と達也は揃って病欠ではないと判断した。
「偶然という可能性もありますよね?」
「ほのか、偶然じゃないっていう可能性もあるよ」
「うーん・・・そもそも偶然じゃないっていうほど仲良かったっけ?」
「何か起こってても不思議じゃないよ。ね?」
「えっ、あの、そうですね」
雫からいきなり問いかけられた美月は慌てて同意した。
「でも今2人は一緒にいるとして・・・一体どこで何をしているのかしら?」
首を傾げながら深雪が呟くと、幹比古と美月は「レオと」「エリカちゃんが」と反応し、何を思ったのか時間差で顔を赤くした。
「2人とも何を想像したの?」
「「な、なんでもないです!」」
「ほんとかぁ~幹比古~?」
「ホントだよ!」
「まぁ、何の根拠もないが案外レオがエリカにしごかれてるんじゃないか?」
「ありそうですね、それ」
幹比古と美月のわかりやすい反応に智宏はつい追い討ちをかけ、幹比古は顔を赤くしたまま反論した。
その後、昼休みが終わるまで過程の上に想像を重ねた意見が飛び交い、結局うやむやになってその日の昼休みは終わったのだった。
幹比古と美月はいじりがいがある。