四葉を継ぐ者   作:ムイト

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第60話 レオの修行

 

 

 

 

 昼休みに智宏達が話した内容は偶然にも当たっていた。

 

 別に智宏や達也が千里眼を持っているわけではないが、情報の世界で対象を特定できればどれだけ物理的に距離が離れていてもそれを視る事が出来る。

 ただ、今回の場合は覗き見していたのではななく全くの偶然だったのだ。

 

「こら!また皺ができてる」

 

「ってぇなぁ。手を出す前に口を動かせよ!」

 

「あんたができないからでしょー」

 

 達也の読み通り、レオは千葉家の道場にてエリカに頭を叩かれて彼女の足元に蹲っていた。

 

 なぜレオが道場にいるのか。

 それは昨日の放課後に遡る。

 昨日道場に向かう前、キャビネットの中でこんな話をしていた。

 

「でも反撃するためには、アンタに足りないものがある」

 

「それは?」

 

「アンタの歩兵としての戦闘能力は1級品よ。でも決め手がない」

 

「決め手?」

 

「確実に相手を殺す技よ」

 

「おめぇにはあるのか?」

 

「ええ」

 

 レオはいきなり高評価をもらったが、喜ぶより呆気にとられていた。

 

 確かにレオには戦った相手を殺す技がない。

 九校戦で使った小通連はチューニング次第で殺傷武器になるが、決め手とするには斬れ味が足りないのだ。

 もちろんレオもそれを納得している。

 

「確かに俺は殺し技は持っていないな」

 

「で。それを身につける覚悟はある?自分の手を血で汚す覚悟はある?これから戦う相手はそういう連中よ」

 

「愚問だぜ」

 

 エリカの覚悟を問われる質問に、レオは目を逸らすことなく、簡潔に答えた。

 

「だったら私が教えるわ。秘剣・薄羽蜉蝣(うすばかげろう)。アンタにぴったりの技よ」

 

 と、言うわけで今は千葉家の道場にいる。

 

 しかし、中々上手くいかず、教わってる立場ために強く出れない。それと何回もやって成功しない自分に不甲斐なさを感じていた。

 

「少し休憩しよっか」

 

「おう」

 

 板張りの床に胡座をかいて座ったレオにコップを差し出したエリカは、その隣に正座した。

 

「マントのアレは上手くいったのにねぇ」

 

「アレか・・・・・・あの時は生地自体に展伸を補助する術式が組み込まれていたし、多少の皺があっても盾として機能していたからな」

 

「補助はこっちにもあるはずなんだけどね。達也君に相談してみる?」

 

「ダメだ。今回達也を頼るのは止めようぜ?向こうだってやる事があるんだからよ。それに、術式が組み込まれてるならそれを俺が発動すればいい」

 

 エリカの漏らした独り言にレオは横に首を振った。

 

 九校戦の時は達也が用意してくれた物を使ったが、今回の場合は違う。作ってくれ、とは絶対に言えない。

 達也には達也の仕事がある。それを邪魔するわけにはいかないのだ。

 それに自分から動くなら自分で何とかするべきだとレオは思っていた。

 

「オトコノコだね」

 

 そんなレオにエリカは含み笑いをこぼす。

 少し恥ずかしくなったレオは目を逸らして立ち上がり、再び特訓を始めた。

 

 

 ♢ ♢ ♢ ♢

 

 

 次の日は土曜日だったが、学校は休みではない。魔法科高校は週休二日制を採用していないのだ。

 

 もちろん授業はあるのだが、この日の朝、達也と深雪は八雲の寺に訪れていた。

 実は昨晩八雲から遠当ての練武場を改装したから来ないか?と誘われのだ。

 達也が本当の力で練習できる場所は少ない。人の目に付く学校の練習場は論外だ。

 

 いい機会だと思った達也は深雪を連れて寺へ向かった。智宏も達也の護衛としてついて行く。

 3人は寺につくとさっそく訓練を開始し、智宏は【ラム】で、達也は【雲散霧消】でボール状のターゲットを迎撃した。深雪も頑張っていたが、限界が来て途中でリタイアしてしまった。

 

「おつかれ」

 

「深雪、大丈夫だったかい?」

 

「は、はい。大丈夫です」

 

 達也は怪我をしていないか深雪の全身を見回して笑いかけた。

 

 この時深雪の顔が赤く上気していたが、その原因が激しい運動だけではないと智宏は悟った。

 それに薄手のシャツに膝上のスパッツ姿の深雪を身内であっても長く見つめるのは良くないと思った智宏はスっと目を背けた。

 

 訓練が終わった3人は、八雲の私的な居住空間にある縁側に座っていた。

 

「さて、学校があるから手短に」

 

 お茶を持ってきた八雲は座るなりそう切り出す。

 

「君、珍しい物を持ってるね」

 

「預かり物です」

 

 八雲の言う珍しい物とは、この前小百合が無理やり置いて行った勾玉の事だろう。

 

 達也はあっさり八雲の指摘を認めた。

 八雲相手にしらを切るのは無意味だし、彼に隠していても意味は無い。

 

「だったら家ではなく、然るべき場所に移した方がいいよ」

 

「やっぱり狙われていたんですね」

 

「ただし慎重にね。かなりの手練だ」

 

 警告を受けること自体は予想の範囲内だったが、その声色はやけに真剣味を帯びていた。

 智宏達は意外感と緊張感が呼び起こされ、ただ事ではないと体を八雲の方へ向けた。

 

 千秋による工作や不審な視線があることはわかっていたが、八雲が気にかけるほどの事だとは思っていなかった。

 また、警告には八雲が相手の正体を掴んでいるとほのめかすような物だった。

 

「何者なん・・・・・・教えてくれませんよね」

 

「まぁね。でも忠告しておこう。方位には気をつけるように」

 

「方位?」

 

「方位ですか?」

 

「ふふ、これ以上は高いよ」

 

 智宏と深雪の最後の質問に八雲は答えない。後は自分達で見つけろということなんだろう。

 

 なので八雲の邪な笑みを見た智宏達は、それ以上の詮索をやめることにした。




いよいよ今週は30FFMのネームシップが進水。いやー、いったいどんな名前なんでしょうね。
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