今日は日曜日だが、論文コンペに参加する人に休みはない。
なので智宏も学校へ行く準備をしていた。
しかし、昨日達也からFLTの開発第三課へ行くから先に学校へ行ってくれと言われたので、達也が来るまでは暇になる。
準備が終わり、リビングへ行くと彩音が朝食を用意してくれていた。
「智宏様、おはようございます」
「おはよ」
「朝食出来てますよ」
「おー、サンキュ」
いつもより少し遅めの朝食だが、それでも余裕があるだろう。
あっという間に食べ終わり、彩音がいれてくれたお茶を飲んでいると、智宏は携帯端末にメールが来たのに気がついた。
「ん、深雪から?何かあったのかな」
差出人は深雪。
バイクに乗っているはずなのでメールは打てないはず。どこかで止まったのだろうか。
内容はただ1文。
自分達が今いる喫茶店に来て欲しいとのことだ。
場所は添付されているファイルの中に入っていた地図に書いてあった。
「何かありましたか?」
「なんか来て欲しいんだと」
「行かれるのですか?」
「ああ、気になるから行くよ。でも少し遠いな・・・・・・バイクで行くか。彩音、着替えてくるからヘルメットとブーツ、グローブを玄関に出しておいてくれ」
「かしこまりました」
智宏は急いで自室に戻り、クローゼットの中から全然使わなかったライダースジャケットを取り出した。
制服を脱いでベッドの上に放り投げ、私服とジャケットを着込む。
2つのCAD持って玄関に向かうと、グローブとブーツが既に置かれていた。
それとヘルメットは彩音が持っていた。
「ありがとう。じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃいませ」
彩音からヘルメットを受け取った智宏は扉を開けてガレージに向かう。
この家には車はないが、大型の乗用車が入るくらいのガレージがある。車は持っていないが、今は大型電動二輪の駐輪場となっていた。
大型電動二輪に近づきエンジンをかける。
CADが2つともあるのを確認した智宏はゆっくりガレージから出て安全を確認し、行き先をナビにセットしてからその喫茶店へと走り出した。
しばらく走っていると、それらしき店が見えてきた。
深雪から送られてきた地図とこの場所を確認し、あっていたので大型電動二輪を停めて店内に入る。
「いらっしゃいませ」
「連れがいるんですが」
「お連れ様ですか?お席は・・・・・・」
「知っているので大丈夫です。あ、紅茶をください」
「かしこまりました」
店員に紅茶を頼んだ智宏は、ライダースーツを着た男女の席へ向かう。その途中店員からあの席に行くのか?と言いたげな目を向けられたが、あえて無視した。
まぁ確かに達也と深雪は日曜日にバイクで遠くに出かけようとしているカップルにしか見えない。
智宏が近づくと、まっさきに達也が気が付いた。
「来たか」
「おはようございます」
「おう、おはよう」
「突然お呼び立てして申し訳ありません」
「いやいや大丈夫さ。理由は外の奴だろ?」
「なんだわかっていたのか」
「まぁな」
そう。達也と深雪が智宏を呼んだのは自分達を付けている複数の影があったからだ。
頼んでいた紅茶が来ると、3人は小声で話し始めた。
「いやだったら深雪にやらせればよかったじゃん」
「まぁそうなのだが・・・・・・」
「智宏さん、実は先程まで化成体のカラスもいたのですが」
「まさか消されたのを見られたのか?」
「わからない。だが監視の数が多くなってきている」
深雪の言う通り、ついさっき化成体のカラスを撃ち落としたばかりなのだ。
化成体とは、霊的エネルギーを実体化させたもの。サイオン粒子の塊を土台とし、光の反射をコントロールする幻影でその姿を作る。動きも加重魔法、加速魔法、移動魔法で肉体を持っているように見せている。今の日本で化成体の使い魔を使用する術式は過去のものだ。なので術者は国外の人間と予想がつく。
ところが、それを撃ち落としたはいいものの、化成体の数は多くなってきている。もちろん全て撃ち落とせば問題ないが、深雪にやらせるには座標を教えなければならない。その方法は手を握る、だ。
しかしさっきそれをやったら周りの人が2人を誤解するような視線で見るのだ。まぁ深雪が顔にとろける様な表情を浮かべていては勘違いもするだろう。
それに深雪も恥ずかしさで悶え死にそうになっていたため、これ以上は無理だと達也は判断した。
「で?俺にやれと」
「すまない」
「いや、今は達也の護衛だからなんの問題もないよ。それに少しの間でも達也から俺に注意をそらせればいいしな」
「ありがとうございます」
「術者は消す?」
「放っておいていいだろう。まだな」
「わかった」
智宏はテーブルの下でCADをバレないように操作し、重力核で全ての化成体を攻撃した。
魔法が命中すると生き物の身体を構成していた術式が砕け散り、サイオン粒子は散り散りになっていった。
その後智宏は一旦家へ、達也と深雪はFLTへ向かって行った。
FLTについた達也を出迎えてくれたのはハッキング攻撃に対応している職員の姿だった。
どうやら達也と深雪がここへ来る直前に攻撃が始まったらしく、達也はタイミングの良さに違和感を感じていた。
10分間におよぶ謎のハッキング攻撃はFLT側もその意図がわからずに終わった。
一応カウンタープログラムを起動したが、効果は期待できないだろう。
「FLTのカウンター攻撃!」
「回線を遮断しろ」
その様子を見ながら陣は隣にいる
「どう出ると思うか?」
「不明です」
「そうだろうな。だが司波達也があそこの関係者だとしても聖遺物をセキュリティの不確かな研究室に預けるとは思わん」
「論理的に考えるならば・・・ですね」
「言いたいことはわかる。そうそう、
陣の声は好意的な物ではなかった。むしろ小馬鹿にしているような感じだ。
これでも感情を抑制しているらしいが、呂も陣が周にどんな感情を抱いているのかすぐにわかる。
それに今の命令は周の面子は丸つぶれ。
さらに貴重な協力者を失いかねない。その事は陣も理解しているはずだ。
「
しかし、呂はそんな事は気にせずにただ受命の答えを返した。