1高のプレゼンはあと30分で始まる。
鈴音と五十里と達也は最終の打ち合わせに入っていた。
ちなみに控え室にいるのは達也達意外に深雪と花音、真由美と摩利だ。
一方、客席ではいつものメンバーが固まって座っていた。
午後から合流した雫とほのかや、得物を隠して持ち込んだエリカとレオは1高の出番を待っている。
もちろん何もしていないわけではない。幹比古も美月も、自分が最大限出来ることで敵の襲来に備えていた。
智宏もロビーから発表会場とは反対側の2階のフロアに移動し、警備を続けた。今のところ異常は見られない。
午後3時。とうとう第1高校のプレゼンテーションが始まった。
今回の論文コンペで注目されているのは吉祥寺だが、加重系魔法の技術的3大難問の1つである【重力制御型熱核融合炉】をテーマにしている1高チームも大きな注目を浴びていた。
ステージにはコンペに使う機械が並び、鈴音はその横で説明を行っていた。達也は舞台袖でモニターと起動式の切り替え、五十里は鈴音の隣でデモンストレーションの機器を操作している。
始めの説明を終えた鈴音はガラス球の横に立った。
「熱核融合炉の実用化に何が必要か。それは燃料となる重水素をプラズマ化し、反応に必要な時間の間は状態を保つ事です」
鈴音がCADに触れると、ガラス球に入っていた重水素ガスがプラズマ化して内側に塗られた塗料に反応、煌びやかな閃光を放った。
今言った鈴音の言葉は過去に何度も実演されており、会場に訪れている魔法大学の教授や研究機関の研究者も予想通りだというふうに頷いている。
「しかし、発電を行うにあたって、問題があります。プラズマ化した原子核の電気的斥力に逆らい、反応が起こる瞬間原子核同士が接触してしまうのです」
ガラス球の閃光が止むとステージが暗くなり、スクリーンが降りてきた。
スクリーンには今まで繰り返されてきた実験の映像や結果が映っていた。
これまで、何人もの研究者がこの問題に立ち向かってきた。
超高温による気体圧力の増加。
表面物質の気化を利用した爆縮。等々・・・・・・。
だが、容器の耐久性や燃料の補充、生み出すエネルギーが大きすぎるといった別の問題が出てきた。
鈴音がスクリーンの説明を終えると、再びステージが明るくなりスクリーンが上がった。
彼女の後ろには円筒型の電磁石が2つ向かい合わせで吊るされている。昔の公園にあった遊具のよう。
五十里が魔法で持ち上げ、触れていた手を離した。すると反対側の電磁石は間にゴムボールでも挟まっているかのように、ぶつかる前に振り上がった。
「強い同極のクーロン力を持つ物体が接近すると斥力が増大し、衝突はしません。しかし――」
鈴音は五十里は実験機器の付近に備えられたヘッドセットを装着してパネルを操作した。
その瞬間、2つの電磁石は中央で衝突し、会場に轟音が木霊する。機器から離れているとはいえ、ヘッドセットを付けていない生徒達は耳を塞いだ。それが1番後ろの生徒まで響いていたのだから相当な音なのだろう。
再び鈴音がパネルを操作すると電磁石は無音の弾き合いに戻った。
「――このように魔法によって電気的斥力は低減できます。そして私達はこのクーロン力を10万分の1に低下する魔法式を完成させました」
会場は大きくどよめいた。
そして1高のメインのデモ機が舞台下からせり上がってくる。その見た目は巨大なピストンがついたエンジン。コンペ用に中が透けて見える素材を使っている。
鈴音はこのデモ機の説明を始めた。
「この装置は中性子線の有毒性を考慮して水素ガスを使っています。まず、円筒内に充填させた水素ガスを放出系魔法によってプラズマ化し、クーロン力と重力制御の魔法を同時に発動させます」
デモ機は五十里が操作し、ゆっくりと動き出した。
「そしてクーロン力制御魔法によって斥力の低下したプラズマは円筒中央に集められ、核融合反応が発生します。この過程に必要な時間は0.1秒です」
鈴音の説明は続く。
「核融合反応は自律的に継続できません。そこで、私達の融合炉機関は核融合反応停止後に水素ガスを振動系魔法で冷却します。この時回収した熱量は重力制御とクーロン力制御のエネルギーに当てられます」
説明通りに動くデモ機に会場にいる誰もが見入っていた。
あたりまえだ。
誰も成し遂げたことがない事を、今、この場で見る事ができているのだから。
「現段階では高ランクの魔法師が必要です。しかし、いずれは点火用の魔法師だけで十分な重力制御型魔法式熱核融合炉が実現できる・・・・・・そう私達は確信します」
こう鈴音が締めくくると、会場は今まで以上に大きな拍手に包まれた。
審査員の席に座っているあずさや他校の生徒、深雪やほのか達、研究者や教授らも全員が拍手していた。
これまで重力制御型熱核融合炉が不可能とされてきたのは、対象の質量が減少してしまうからだった。
それを新技術である【ループ・キャスト】を使って実現させる事ができた。もし、実験機ではなく本物の機関の制作に成功すれば鈴音達の名前は教科書に載るだろう。
会場内全体が高揚している頃、埠頭の一角では無人のトラックがある場所を目掛けて走り出した。荷台の中に危険な物を乗せて。
もちろんそんな事はまだ誰も知らない。トラックは徐々にスピードを上げていった。
他校の発表まで10分ある。この時間は交代時間となっており、デモ機の片付けや次の舞台のセッティングをする。ただのコンペではないため、メンバー達はこの短い時間での作業が1番忙しいのではないだろうか。
片付けをしている達也は、不意に後ろから声をかけられた。
「やぁ。見事だったよ」
「カーディナル・ジョージか。ありがとう・・・とでも言うべきかな?」
「別にいいよ」
狙ったかのように話しかけたのは吉祥寺だった。
吉祥寺はわざわざ達也と同じ場所にコンソールを設置した。効率よくコンペを進めるためにもう1つコネクターがあるのだが、おそらく達也に話しかけたかったのだろう。
「まさか重力制御型熱核融合炉がテーマだったとはね。でも、僕も負けないよ」
吉祥寺は舞台から降りようとした達也の背中にそう言った。
そしてその頃、警備の学生らはコンペが順調に進む事で完全に油断していた。もちろん全員ではない。しかし、高校生の身で長時間の警備活動は心身共に疲労が溜まる。実戦経験のある生徒は10人に1人いれば良い方だろう。
さすがにもう大丈夫。
そう思う彼らを嘲笑うかのように・・・・・・
爆発の衝撃と轟音が会場を揺らした。
これは復帰回です。原作とほぼ同じなので消すかもしれませんが・・・・・・。
ですが次から動きます。