五十里と桐原を再生で治した達也は、部隊に戻って柳率いる部隊と合流。侵攻する敵機甲部隊に向かっていた。
このタイミングでなぜ機甲部隊が動いたか。それは侵攻軍司令官による決断だった。
人質の確保に失敗し、兵士や直立戦車の損耗も激しい。
しかしなんの成果もなく本国に戻る事はできなかった。そのため、魔法協会関東支部にある現代魔法技術のデータを奪取し、ついでに日本の魔法師を1人でも多く殺害して日本の戦力を削いでおこうという結論が出される。
そして港に集結した残存機械科兵力の半分が魔法協会関東支部へ向かって行った。
独立魔装大隊の一隊は響子からの連絡で報告された地点へ向かうと、ビルの間を一直線に走っている機甲部隊を発見した。
「敵機甲部隊発見」
「よし。攻撃開始!」
柳の合図でビルの屋上に降りた隊員達は一斉に攻撃を開始した。
貫通力を高めたライフルが装甲車を貫き爆発。その中に燃料タンクに当たったのか、一際大きい爆発の装甲車もあった。
しかし敵も黙って殺られるわけではなかった。
装甲車に備え付けてある機関砲や、直立戦車のバルカン砲や榴弾砲が火を吹きビルの屋上に着弾していく。榴弾砲の破片や機関砲弾の直撃を受けた隊員はバタバタと倒れていった。
『特尉』
「了解」
達也は柳の指示でCADを隊員に向けて引き金を引いた。すると被弾したはずの隊員は何事もなかったかのように立ち上がり、再びライフルで装甲車を破壊した。
そう、【再生】である。
この魔法を乱用することで独立魔装大隊はほぼ不死の軍隊となっていた。
(9・・・10・・・11)
復元した人数を数えながら飛び回る達也。その痛みは桐原達を治した時よりも大きく、大量の汗がムーバルスーツの中に流れていた。
復活した隊員はグレネードを装甲車に投げつける。だがグレネードは装甲車を無力化できず、穴を開けるだけ。隊員は機関銃による反撃でまた被弾してしまう。
達也はすかさず【再生】でその隊員を復元。彼は再び武器を持って立ち上がった。
もちろん達也は衛生兵としてこの場に来ているわけではない。左手のCADで味方を復元しながらも、右手のCADで直立戦車を優先的に攻撃していた。
戦闘開始から6分。敵機甲部隊は既に直立戦車4両、装甲車8両を失っている。
『柳大尉。奴らはどこへ向かっているのでしょう』
少し余裕ができたのか、隊員の1人が柳にそう尋ねる。
『無謀な進撃とは思えん。おそらく魔法協会関東支部に行くのだろう』
柳の考えは当たっていた。まぁ侵攻している方向を考えると簡単に推測できるのだが。
『このタイミングでの侵攻。焦っているのでは?』
『自分も同感であります』
『ああ。だから我々はここを守るしかない。やるぞ!』
独立魔装大隊の攻撃は一層激しくなり、装甲車は次々に破壊されていった。
その会話を聞きながら、達也は敵を排除し続けていた。
残る直立戦車は2両。達也は右手のCADをそのうちの1両に向けて引き金を引いた。
直立戦車のパイロットはいきなり隣の直立戦車が消えたことに驚き、それを実行したと思われる達也に視線を向けた。そして数年前に自身が体験したあの戦闘を思い出す。
「
次々に消えていく戦友、強烈な一撃で沈んでいく艦隊。パイロットは忘れていた恐怖を、頭の奥に封印していた記憶を無意識に呼び覚ましてしまう。
気がつくと、目の前の男が銃口をこちらに向けているのがわかる。
慌ててレバーを操作するも、それより早く達也が引き金を引いたため、パイロットの意識はそこで途切れてしまった。
♢ ♢ ♢ ♢
機甲部隊と独立魔装大隊の戦闘は、逐一双方の司令部へ報告されており、偽装揚陸艦の司令部は悲壮な空気に満ちていた。
「し、司令!魔法協会関東支部に向かっていた機甲部隊が・・・・・・全滅しました!」
「なんだと!?」
「報告によりますと、敵は飛行魔法を使った謎の部隊による襲撃を受けた模様です」
「飛行魔法・・・・・・この前の九校戦で第一高校が使用した物か」
司令官は歯ぎしりをしながら参謀の言葉に耳を傾ける。
大亜連合はこの作戦を開始するにあたり、日本の魔法技術がどれくらいのものなのかをよく調べていた。
もちろん高校生が競う大会、九校戦も例外ではない。九校戦の会場に来ていた諜報員の報告によると、ミラージ・バットにおいて第一高校が飛行魔法を使用したとのことだった。
大亜連合上層部はこの魔法を問題視したが、作戦決行日までに日本軍が採用するとは思えないという結論が出たため、飛行魔法による襲撃は想定されていなかった。
「司令、飛行魔法は他の日本軍では確認されていません。もしかすると1部にしか配備されていないのでは?」
「うむ。それだけでも重要な情報だ」
「それと・・・・・・」
別の参謀が追加で何か言おうとする。
「何だ」
「最後の通信で摩醯首羅という言葉が・・・・・・」
その言葉に司令官はピクリと反応する。実は彼も沖縄へ侵攻した兵の1人だったのだ。
「司令・・・・・・」
そして隣の参謀も然り。
「いや、何かの間違いだ。そうに違いない!」
だが司令官は認めなかった。否、認められなかった。
沖縄での敗北は大亜連合政府、軍部の中ではタブーとなっており、当時の侵攻軍上層部は現在行方がわからず、あの戦闘を知る者も今では少数となっていた。
よって下っ端の兵隊は詳しい事は何も知らずにこの作戦に参加していた。
「そうだ・・・・・・これは・・・・・・間違いなのだ」
司令官は椅子に座って現実から目を背けていた。これ以上は耐えられなくなるため、暗示をかけようとしているようだ。
侵攻軍司令部の動きが鈍くなった頃、達也は柳達と逃走する機甲部隊を追撃していた。
「こちら大黒。敵装甲車が街へ突っ込んで行きます」
『近寄らせるな。破壊しろ』
「了解」
達也はCADを向けて装甲車を消し去る。敵からすれば、さっきまで隣を走っていた友軍がいきなり消えたように見えるだろう。まぁ実際その通りなのだ。達也の【分解】は人としての死を迎えられないほど恐ろしいもの。表には決して出せない魔法だ。
独立魔装大隊の追撃により、敵機甲部隊は全滅。それに追従していた歩兵も全員殺られてしまった。
一方こちらの被害といえば、ビルが破壊されただけで人的被害は皆無だった。理由はもちろん達也が治したから。
「大尉。敵は全滅しました」
『の、ようだな』
『これで敵の残存兵力は全て港湾沿いにいるはずです。さらに追撃すべきでは?』
辺りを見渡している柳に、隊員の1人が意見具申をする。
『それは別の部隊にやらせよう。我々は別命あるまで市内のゲリラを掃討する』
『『『了解』』』
柳達はまだ市内に残っていると思われる敵を排除するため、内陸の方へ戻っていく。達也も追従しようとしたが、突然強い魔法力を感知した。
「これは!?」
『む、なんだ?』
どうやら柳と他数名の隊員も気がついたようだ。
(この魔法力は・・・・・・智宏か?一体何が・・・・・・)
達也が感知した智宏の魔法力。それはヘリに乗って智宏を迎えに行っていた深雪達も感じ取っていた。
「え?」
「智宏君?」
深雪や真由美は真っ先に反応する。一体彼に何があったのだろうか。真由美はパイロットに急ぐよう伝えた。