四葉を継ぐ者   作:ムイト

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第91話 情報収集開始

 

 

 

 智宏達が病院を出た頃、リーナはマクシミリアン・デバイス東京支社を訪れていた。ここはミカエラ・ホンゴウの勤務先であると同時に、脱走兵追跡のための拠点の1つである。

 

「では報告を」

 

「イエスマム」

 

 会議室にてリーナと向かい合ったスターダストの隊員は姿勢を正して報告をはじめる。

 対象を補足した彼らは事前に与えられたデータに従いキャスト・ジャマーを使用した。しかし対象には有効的ではなかった。

 

 魔法の発動が妨げられたのではない。なんと対象はCADを必要とせずに魔法を発動していたのだ。

 

「つまりサリバン軍曹がサイキック化していたと?」

 

「はっ。肯定であります。さらに身体能力もデータとは異なり、身体強化を受けた我々をも上回っていました」

 

「それは厄介ですね。となると対処できる人材が限られてくるわけですな」

 

 それを聞いた隊員は責められたと思ったのか、頭を下げて謝罪しようとする。

 

「ああ責めているわけではありませんよ。しかし時間がありません。今後対象を補足した場合は私が処理します。貴方達はサポートに徹底してください」

 

「イエスマム!」

 

 そう言ってリーナは隊員を下がらせた。彼女の判断は間違ってはない。本国には彼らを上回る実力者もいるが、今は増援を待つ時間はないし早急な処理を求められている。そのためリーナが対処する作戦は最も効果的なのだ。

 

 隊員が部屋から出ると、リーナは部屋に鍵をかけて元の金髪の姿に戻った。慣れたことではあるが、やはりこっちの姿の方が楽だ。

 

(やっぱりこっちの姿は楽でいいわね)

 

 リーナが軍人としての職務を全うしている一方、智宏と達也は八雲の寺で修行をしていた。

 ここ最近は三者同時に組手を行う事が多く、今回もそのパターンだった。相手が1人ではない分注意する事は増えるが、判断力も鍛えられるので智宏は結構気に入っている。

 

 ジリジリと近づく3人。そして同時に地面を蹴り、鋭い拳を放ちそれを受け流す。そして攻めきれないとなると間合いをとり次の出方を伺うのだ。

 体術は互角、体力は達也、パワーは智宏、経験は八雲というふうに、それぞれの長所はあるものの、やはり八雲には及ばない。

 

 智宏にはパワーがあるために一撃一撃が重く、受け止めるより受け流す方が防御手段として有効だった。だが智宏もタダでは下がらない。必ず受け止めさせるような攻撃を繰り出して疲労度を蓄積させていた。

 

 数十回にも及ぶ駆け引きの後、3人は八雲を中心に一直線に並んだ。

 智宏と達也は気を逃さず手刀を構えて突進するが、八雲はそれを読んでいたらしくあっさりと躱した。そしてその勢いを利用し2人を放り投げたのだった。

 

 地面に叩きつけられた2人は衝撃を完全に殺す事はできず、しばらく地面に転がっていた。

 

「うおぉ・・・・・・痛ぇ・・・!」

 

 背中を打った智宏は虫のようにピクピクと震えており、それを見た彩音は慌てて智宏に近づき手当てを始めた。

 それを見ていた達也は、苦笑しながら八雲に向かって正座の形をとる。回復力は達也の方が早いのだ。

 

「まいりました」

 

「いや〜。君達も強くなったなった」

 

 その言う割には余裕だな。

 と、ここにいる一同は思ったことだろう。

 

 今日の修行を終えた3人は身体を綺麗にした後、寺の縁側で休憩をとった。しばらく休憩していると、達也がふと思い出したかのように八雲に向き直る。

 

「師匠。実は自分の友人が人ならざるモノに襲われました」

 

「ふぅん?」

 

「パラサイトという名前もありますよ」

 

「パラサイト?イギリス風なんだね」

 

 智宏の補足に八雲はククッと笑う。

 

「現代魔法において、精霊は自然現象に伴ってイデアに記憶された情報体が実体から切り離された孤立情報体となっております。精霊魔法とはその情報から再現される魔法という解釈もありますよね?」

 

「うん。あるね」

 

「では人に寄生し操るパラサイトは何に由来する情報体なのですか?」

 

 達也の問いに八雲は少し考えた後、いつもは見せない厳しい表情をする。しかし話し始めると元の表情へと戻った。

 

「甘いね。君達は今の精霊魔法や精神魔法が全て解き明かされていると考えている。本気でそうは思っていないだろうけど、魔法とは未だ解明されていない事もあるんだ。だから僕は結論としてこう答えよう。【現段階での対策案は無い】、とね」

 

 

 ♢ ♢ ♢ ♢

 

 

 数日後、休日の午前中に智宏は情報を集めるために雫に連絡をした。パラサイトが出没したアメリカにいる雫に調査を依頼したかったのだ。元々パラサイトはあちらで発生したモノ。日本では得られない情報が分かるかもしれない。

 

 先日の八雲の答えは納得のいく答えではなかったが、言いたい事はわかった。つまりは徹底的に調べて対策案を整えろというのだろう。

 

 さて、時間的に向こうは夕方のはずだが雫は出るだろうか。

 

 そういう事を考えながらボタンをタップすると、3コールで雫の顔がテレビに映った。

 

『智宏さん!』

 

 何やら慌てた様子の雫。実は智宏からこのような形で連絡が来るとは思っていたかったのだ。

 

 日本出発前にメールのやり取りはしようと約束しており、毎日どんな事があった等を報告し合っていた。しかし智宏の顔を見たいと思い始めていた矢先に通話での連絡が来た。

 

「久しぶり。元気そうで安心したよ」

 

『うん。こっちも楽しいし、友達も出来たよ』

 

「そりゃよかった」

 

 どうやら雫も留学生活を楽しめているようで智宏は安心した。それから少しだけ近況報告をかねて世間話をした。

 

『でも急に電話なんてどうしたの?』

 

「実はな、そっちで発生している吸血鬼がいるだろ?」

 

『うん。噂になってる』

 

「それが日本でも確認された」

 

 それを聞いた雫は嬉しそうな表情から一変、真面目な表情を浮かべた。

 

『でも噂だよ?実際に発生したとは聞かないよ?』

 

 どうやらアメリカでは完全に情報統制を行い、パラサイトに関わる情報が一般人にいかないようにしているらしい。

 もしかしたら関係しているのはアメリカ政府か軍か、あるいは両方の可能性もある。

 

 自分の言葉に微妙な顔をした雫は心配そうな顔をして尋ねる。

 

『智宏さん?』

 

「いや、実は少し前にレオが襲われた」

 

『えっ・・・・・・』

 

 雫はレオとはそこまで深い関係ではない。2人で話す事もないからだ。しかし友人ではある。心配するのは当たり前だ。

 

「命に別状はないし元気そうだった。でもしばらくは入院生活みたいだね」

 

『そ、そっか。大丈夫なら良かった』

 

 雫はレオの頑丈さを思い出す。

 

『じゃあ智宏さんはこっちで何が起こっているのか知りたいんだね?』

 

「正確には達也が、だけどね。達也も情報を集めてるけど時間が足らなさすぎる。だから頼む」

 

『わかった。頑張るね』

 

「危ない橋は渡るなよ?情報統制されているくらいなんだ。アメリカ政府に目を付けられるのはマズイ」

 

『もちろん』

 

 雫は得意そうな顔をして返事をするが、智宏はやはり不安だった。本当にわかっているのかと考えてしまうが、口に出すのはさすがに失礼なので頭の中に留めておくだけにした。

 

 一応要件はこれで終わりなのだが、雫は「ああそうだ」というふうな表情をした。

 

『智宏さん。そう言えば留学生はどんな子?』

 

「んー、一言で言えば活発、かな」

 

『・・・・・・可愛い?』

 

 だんだんと雫の様子がおかしくなってきた。しかし智宏はそれに気づかない。

 

「そりゃもうアイドルよ。いろんな所に引っ張りだこ」

 

『智宏さん』

 

「ん?」

 

『1ヶ月後、楽しみにしててね』

 

「来月・・・?わかった」

 

『じゃあまたね』

 

「おう」

 

 雫との通話を終えた智宏はソファに倒れ込む。パラサイトの事を考えていたが、雫の言葉が引っかかり、その意味を悟るのに少々時間がかかった。

 

(1ヶ月後・・・あ、バレンタイン)

 

 また、久しぶりの智宏の声を聞いた雫は急いでPCを開き通販サイトである物を探し始めた。目的はチョコレート。

 今までは友チョコを作ってきたが今年は違う。本気で想いを伝える相手が出来たのだ。先程の会話で自分に替わって一高にいる女子生徒はかなりの美少女であるとわかった。

 容姿は深雪に写真でも見せてもらうとして、今はチョコレートだ。智宏が留学生に靡かないようにしっかり手綱を握っておかねばならない。

 

 アメリカにいるので直接手渡す事はできない。それだけでもライバル達に大きなアドバンテージをとられてしまう。だからデザインと味で勝負をしようと考えた。

 もちろんパラサイトの事も調べる。雫にとって忙しい日々が始まった。

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