地獄突きが行く   作:hawk75

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地獄突きが行く 三発目

「私はグリント」

「私はリズエラ」

「二人揃って」

「グリとリズ」

「クリトリスとか言ったら殺す」

「言わなくても思ってたら殺す」

アッハイ。

しかしあざといほどに対照的な二人である。

グリは小柄で胸も控えめ、リズは長身でばいんばいん。

グリは地黒、リズは色白。

グリは癖毛の黒髪ショート、リズはロン毛の銀髪ストレート。

グリは丸顔三白眼、リズは松本零士顔。

共通しているのはどちらも美少女で揃いのメイド服ということくらいか。

ん、メイド服?

「キミ達ひょっとして…」

「そう、私達は死神オールベルグの者」

「そしてメラ様の愛人にして使いの者」

うわー、面倒事が火の点いた火薬樽背負ってやって来た。

「シェーレという女性が見えないが?」

「貴方と行動を共にしているのでは?」

下手に誤魔化すと余計ややこしくなる、ここは正直に打ち明けよう。

「シェーレ姉さんは石仮面被ったフンドシ軍団に拉致されて邪神の生け贄にされそうになってる」

ここは「アカ斬る」世界のはずなのにどうしてこうなった?

ジョーカールーレットで諸星大二郎の世界に飛ばされたのか?

 

二時間前-

「おめでとぉーございまぁーすっ!」

独眼鉄のお面を斜めに被り、背中に「大威信八連制覇」の文字が染め抜かれた半被を着たおっちゃんが手にしたベルをカランカランと打ち鳴らせば、紙吹雪が舞いパフーパフードンドンドンと鳴り物が入る。

それほど有名ではないが知っている人は知っているという通好みの湯治場(温泉回ですよシャチョーッ!)にやって来た私達は商店の軒先で福引きをやり、シェーレ姉さんが一等賞を引き当てたのだ。

「ゴジク君見てみて!」

文字通り花が咲いたような笑顔で差し出した一等賞の景品は、ターンAガンダムとキン肉マン・ビッグボディが超神合体したようなマッスルがマックスで豪力招来な悪趣味極まりないフィギュア(しかも金ピカ)だった。

胸の前で人形を抱えて(ちょっと埋まっているのが妬ましい)ニッコニコのシェーレ姉さん。

その両サイドではキマラ1号とキマラ2号が片膝をついて両手を掲げ、シェーレ姉さんにエールを送っている。

私は微妙な笑顔で「よかったですね」と言うしかなかった。

うーんこの。

その後シェーレ姉さんを“立ちんぼう”と間違えて「一晩いくら?」と聞いてきた酔っ払いをキマラ1号がモンゴリアンチョップでKOしたり、シェーレ姉さんに「お姉さんウチの店で働かない?」と声をかけてきたアロハシャツのポン引きをキマラ2号がランニングネックブリーカーで沈めたりなんてことをやってるうちに夜もふけてきたので宿屋を探すことにする。

 

私たちは「カンブリア大爆発」というアノマロカリスでも出てきそうな名前に似合わず落ち着いたアトモスフィアを漂わせる純和風温泉旅館に泊まることにした。

「粗挽き、ネルドリップ方式」

ついそんなセリフを言って宿帳を持ってきた番頭さんに怪訝な顔をされてしまう。

「ゴジク君、今のはなに?」

「いや、番頭さんが高品格にソックリだったんで」

「ゴジク君は昔から時々ワケ分からないこと言いますね」

ハイスミマセン、たとえ転生者でも平成生まれはジャイブのCMなんて知らないよね。

そして案内された部屋はお大名様でも泊まるのかと思うような豪華さ、更に露天風呂付き。

商店街の福引きで一等を当てた人の特典だそうで、そう聞くとブサイクな人形が何やら尊いモノに見えてくる現金な私。

荷物を下ろしてくつろいだ私達は入浴組と食事組に別れることになった。

「先に始めちゃってていいですよ」

そう言って脱衣所の引き戸を閉めるシェーレ姉さん。

引き戸の向こうから聞こえてくる衣擦れの音が私の妄想をかき立てる。

ガアアアッ!鎮まれ私のネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲!

そんな私を尻目に鍋の用意を調えるキマラ1号とキマラ2号。

やがて鍋が煮えてきた。

ああ、キマラ1号!オマエなんで鍋にビール注ぐの!

ナニ、こうすると味にコクが出る?

そんな味覚の文化大革命は認めん!

おいキマラ2号!オマエは肉ばっか食うんじゃねえ、額に「にく」って書くぞ、それも油性で!

などと「死の翼アルバトロス」みたいなことをやっていたその時!

CRAAASH!

障子をブチ破って日本刀を持った黒髪のブレザー少女と石仮面を被って槍を持った褌マッチョの一団がチャンチャンバラバラと斬り結びながら飛び込んできた。

テーブルが吹っ飛び宙を舞った鍋は予定調和のごとく私の顔面に。

アツウイアツウイッ!

 

その頃シェーレ姉さんはいつの間にか露天風呂にテレポートしていた景品の人形が目から出した怪光線で失神させられ、何処かへと連れ去られていた(全裸で)のだが、それを私が知るのはちょっと後のことだ。

 

その間にもブッチャー(モドキ)軍団とポン刀ブレザー少女(以後ポンブレ)に石仮面の褌マッチョの一団を加えた三つ巴の乱闘は続く。

ポンブレ少女は集団の中で私が一番強いと見定めたのか、私を集中的に狙ってきた。

ぬお、何と速く鋭い太刀筋か!?

これは素手で捌くのは難しい!

死角から頸動脈を狙ってせり上がってくる刃を凶器シューズから抜き出したナカツガワフォークジャンボリーで受け止める。

ガッキィーン!

さすが帝具だ何ともないぜ。

鍔迫り合いを続けつつ、私は明後日の方向を指さし叫んだ。

「あーっ、あれは東北ササニシキ連合の黄金のトラクター軍団!」

「えっ、どこどこ?」

思わず注意を逸らすポンブレ少女。

「今だ!」

キマラ1号のフライングボディプレス!

その背中にキマラ2号がダイブ!

『おっとーっ!これは強烈、恐怖の黒い肉弾重ね餅だぁ!(実況:古館伊知郎)』

「キュウ…」

ポンブレ少女は沈黙した。

 

「何を隠し持ってるか分からんからな、徹底的に剥け」

私の命令に従いポンブレ少女の着衣をポポポポーンと剥ぎ取っていくキマラ1号とキマラ2号。

可憐な見た目に欺されてはいけない、先刻見せた冬の京都盆地のような底冷えのするあの殺気は、よく訓練されたベトコン-もとい、暗殺者のものだ。

私は詳しいんだ。

それにしてもやけに手慣れてないか?

そしてブレザーのポケットから出てきた薬瓶の中の錠剤に何か邪悪なものを感じていると、私の眼前にズイッと突き出される純白のブラとショーツ。

「武士の情けだ、戻してやんなさい」

こうして浴衣の帯で縛り上げあられた下着姿(+黒ニーソ)の少女を取り囲む三匹の肥満体という犯罪的な絵柄が出来上がる。

さてこれからどうしたものか。

畜生考えることが多すぎる、シェーレ姉さんを連れ去った一団の正体は?目的は何なのか?

「魔神様の生け贄でございますよ」

私がボディチェックでKOした石仮面が半身を起こして仮面を外す。

ああ、貴方は高品-じゃなかった番頭さん。

「この温泉街の住人は皆、名も失われた古い魔神を信仰しているのでございます」

渋い演技だ、実に渋い。

番頭さんによると今年は2018年に一度星辰が整う年だそうで、その年の13日の金曜日に二十代前半の処女でちょっと天然入ったメガネ美人を生け贄にすることによって伝説の魔神が甦るのだそうな。

成程、福引きの一等も含めて町ぐるみの出来レースだったのか。

どうりでこれだけの騒ぎになっても誰も覗きに来ないワケだ。

しかし何故急に寝返るようなマネを?

「私は植物の心のような穏やかな人生を送りたかったんですがね、へえ、ご近所付き合いというヤツは中々に面倒なものでございまして」

同調圧力というやつか、田舎の闇だな。

つまり渋々付き合ってきたけど帝国とのドンパチなんて真っ平だし、この際我々の腕を見込んで大事になる前に魔神の復活を阻止して欲しいと。

大体分かった、諸星大二郎じゃなくて矢野健太郎の世界だ。

ケイオスシーカー呼んでこなきゃ。

しかし温泉街の住人全部が相手となると人数的にこっちが不利なのは確定的に明らか。

せめてあと二人ほど手練れが居れば-

「話は聞かせてもらった」

「是非協力させてもらう」

「今度は何だ!」

私が叫ぶが早いか「未来世紀ブラジル」の情報省特別襲撃部隊のごとく天井に完璧な円弧を穿って飛び降りてくる二人のメイド。

「私はグリント」

「私はリズエラ」

「二人揃って」

「グリとリズ」

 

私とキマラ1号・2号は番頭さんに書いてもらった案内図を頼りに温泉旅館の裏山の中腹にある抜け穴を通って魔神復活を目論む一団のアジトである地下神殿に潜入する途上にあった。

狭苦しくて真っ暗な横穴を進んでいた私はピタリと足を止め、前方の闇の中に潜む気配に語りかける。

「ジャンジャンジャジャン、ジャンクロード」

「バンバンババン、バンバヴァンダム」

現れたのはクリトリ-もとい、グリとリズ。

「何ですかこの合い言葉は?」

「意味不明も甚だしい、訴訟」

「誰もが思いつく言葉じゃ合い言葉にはなるめえよ」

そう、このネタが通じるのは木曜の夜にヴァンダムやノリスやセガールで血を滾らせた転生者のみ。

う~んヴァンダム。

待ち伏せを警戒して別ルートを通ってきたグリとリズも無事合流し、いよいよ儀式の真っ最中の地下神殿に乗り込むブッチャー(モドキ)軍団と暗殺メイド分遣隊。

でも本当にいいの?

「私達にはメラ様から預かった手紙を届けるという使命がある」

「その返事をもらわなければ任務を達成したことにはならない」

「任務を果たせなければメラ様にお仕置きされる」

「メラ様直々のお仕置きもご褒美ではあるのだが」

「任務を達成したご褒美に愛してもらう方が」

「得られる快感はより大きいのは間違いない」

分かったから敵地のど真ん中でアヘ顔晒して妄想に浸らないでください、あと未成年お断りなイメージが溢れて幽波紋になってます。

とりあえずパチキをぶち込んで正気に戻す。

そして改めて神殿に突入すると、丁度祭壇に寝かされたシェーレ姉さん(当然のごとく全裸)の体からエクトプラズムめいた発光体が抜け出し、一等賞品の人形に吸い込まれたところだった。

すると見よ、100分の1MS-06ZAKUⅡサイズだった人形が1分の1ボルジャーノンに巨大化したではないか。

巨大魔神像は稲妻をバックにバンガオーッ!と叫び、【特殊効果:レイ・ハリーハウゼン】のクレジットが入りそうな動きで迫ってくる。

こらクリトリス、何処へいく。

「アレを倒すには火力が足りない」

「すぐに戻る、アイルビーバック」

シュワネタはOKなんかい。

なんてツッコミを入れる暇もなく槍持って飛びかかってくる石仮面褌マッチョ団をチョップやキックやヘッドバットで蹴散らしながら逃げ回っていると、突如として巨大魔神像の顔面で起きる大爆発。

そして錆びたミシンのように騒々しい音を立てながら現れたのは装甲を纏った鉄の獣。

ちょっと待ってちょっと待って、千歩譲ってこの地下神殿がマウンテンサイクルめいた遺跡なら戦車が出てくるのもよしとしよう。

だが、ナゼA9巡航戦車?しかもCS型!?

『ブラヴォー!オオッ、ブラヴォー!』

ああ歓喜の涙を流しながらユニオンジャックを打ち振る岡部いさく先生が見える…。

「われらは死神オールベルグ」

砲塔から頭を出したグリが言う。

「この世に扱えぬ武器は無し」

操縦席から顔を覗かせたリズが言う。

そーなのかー。

そしてカタログスペックを無視した超機動で走りまくり、ドッカンドッカン撃ちまくるA9巡航戦車CS型。

ガルパンはいいぞ!(錯乱)

だが全弾命中しているのにちっとも効いてない。

大口径榴弾は貫通せずとも衝撃力で装甲を「叩き割る」ことが出来るのだが、3.7インチではまだ威力不足か。

だが魔神像の注意がA9に向いたお陰で相手をじっくり観察するゆとりができた。

するとおお、右足の踵にあからさまに「開けるな危険」といった感じの栓がついてるじゃないか。

すかさず魔神像の足元目がけてダッシュ。

私を見つけた魔神像は足元に向かって剣を振るい、踏みつぶそうと足踏みを繰り返す。

だが甘い、見た目はブッチャーでも本気になった私のスピードは全盛期のサモ・ハン・キンポの三倍だ。

「グググッ、足りぬ足りぬ」

ノロマなストンピングを華麗にパルクール回避。

「いかに力があろうと、いかに巨大であろうと」

そしてこんな状況でも前世で心に刻んだ名セリフの引用が止められない私。

「カラテが足りぬ、奥ゆかしさが足りぬ!」

そして右足の裏側に回り込んでリミッター全解除!

いくぜフラッシュピストンマッハメガ盛り地獄突きオマケにフタエノキワミアッー!

KABOOOM!

栓が割れると同時にピンク色の煙が勢いよく吹き出す。

魔神像は動きを止め、ビシビシと全身がひび割れて崩壊した。

私は膝をつき、両手を天に翳して(「プラトーン」のあのポーズだ)叫んだ。

「指が痛い!」

魔神から解放された魂が肉体にカムバックし、無事シェーレ姉さんが復活したのは言うまでも無い。

 

それからの展開は実にあっさりしたものだった。

魔神像を破壊された温泉街の皆さんは憑き物が落ちたように日常に帰っていった。

どうやら活性化した魔神の気に当てられて集団催眠みたいな状態だったらしい。

オールベルグの暗殺メイド二人もシェーレ姉さんからの返事を持ってメラ様の元へ帰っていった。

そして我々はまた旅の途中である。

「ところでメラ様からの手紙というのは?」

シェーレ姉さんが私に手紙を手渡してくる。

読んでみた。

 

ラブラブ

私のハート

ラブラブ

恋はいつだってサプライズ訪問

私の子宮をトルチョックするの

今すぐ抱きたい

喰らいたい

熱い思いをチーズフォンデュにして

貴女の■■■に注ぎたい

そして二人は伝説の木の下で

体も心も一つになるの

それはとっても気持ちのいい事

今だ合体グランドクロス

お前がママになるんだよ

融合

アイゴー

ヒアウイゴー

 

…………………………。

…………………………。

……ハッ!危うく意識を因果地平に持って行かれるところだった。

私はちょっとだけ引き攣った顔でシェーレ姉さんに手紙を返し、ついでに感想を聞いてみる。

「メラルドさんって詩人なんですね」

おう神様、ここにミス残念美人ワールドチャンピョン候補がいます。

いや立ち直れ私、まだ聞く事が残ってる。

「それでメラ様への返事はなんて書いたんです?」

「これからもいいお友達でいましょうって」

 

なお浴衣の帯で縛り上げた下着姿(+黒ニーソ)の少女は放置プレイを喰らわせたままその存在を完全に失念していた。

そしてこれが後に血みどろの抗争を繰り広げることになるイエーガーズの薬漬け少女との遺恨の始まりであったのだ。

 

 

【挿絵表示】

 

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