助け出した女の子がアイドルだった件について   作:暁月 聖人

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しぶりんかわいいよ!と思った私は妄想を描いてみました。
生温かい目で見てください。


不良に絡まれている女の子を助けてしまうのは性格上仕方ないこと

「天気がいいなぁ。もうすぐ夏だって分かるくらいには暑いから余計に……」

 

 俺はただぶらぶらとふらついていた。

 

 東京だからか人の通りが激しく、さらに暑く感じる気がする。

 

 何だか周りから避けられている気がするのは気のせいではないだろう。

 

 黒髪でTシャツに半ズボンという一般的な服装をしている俺だが、この目付きが悪かった。

 

 つり目で、少し目を細めるだけでキッと睨み付けているように見えるこの目付きが俺という存在を誤解させていた。

 

 喧嘩はしてないといえば嘘になるが、喧嘩を売ったことなど一度もない。もっと言えば、買ったことすらない。

 

 起こった喧嘩と言えば、何やら絡まれた人を助けたときぐらいだ。警察に見つかったときはこれだから不良はいやだいやだみたいな視線を受けて、泣きそうになった。

 

 助けるために戦ったのに、喧嘩のために戦ったと勘違いされる。それが当たり前だった。

 

「ん?メール?」

 

 携帯に着信が届き、LINEを開く。

 

 妹からだ。晩御飯のメニューと思われる食材がズラリと並べられて、お願いねというコメントとゆるキャラみたいなものがセットのスタンプが押されていた。

 

「仕方ないな……」

 

 近くにスーパーなんてあったっけ?なんて考えながら都会を歩く。

 

「ねぇ、いいじゃない」

 

「遊ぼうよ、お嬢ちゃん」

 

「…………」

 

 公園を通りかかると一人の女の子が柄の悪い男二人に絡まれていた。

 

 周りは見て見ぬふりで通りすぎる。面倒ごとには関わりたくないと思っているのだろう。

 

 できれば、俺も見て見ぬふりをしたいが、お人好しという俺のよくない性格がそれを許さなかった。

 

「あーもう。ホント、俺ってやつはバカだよなぁ」

 

 頭をかいて覚悟を決めると柄の悪い男達に絡まれている女の子に向かって走り出した。

 

「やっと見つけた!全くどこ行ってたんだよ」

 

「え?」

 

「「あ?」」

 

 然り気無く三人の間に割って入り、女の子の手を握った。

 

 これぞ、迷子になった連れを見つけた風を装って、さっさと去ろう作戦だ!どっかのツンツン頭もやってそうな作戦だが、公園という場所だから違和感はないはず。

 

「いやー、うちのもんがすんませんねぇ。あはは」

 

「あんた、誰?」

 

「あはは……はは……」

 

 作戦失敗だ。この少女、全然空気を読んでくれない……。

 

 嘘笑いがすぐに乾いた笑いに変わり、俺は冷や汗をかく。

 

「ちょっ!?そこは合わせるとかしないの!?これ、逃げるのに絶好のチャンスだったんだよ!勇気を振り絞って助けた俺の想いを返しやがれ!!」

 

「そんなこと言われても、知らないよ」

 

 手を離して申し立てる俺。少女は少し困惑した顔で言った。

 

「おい、何だテメェ」

 

「なめてんのか、あ?」

 

「えーっとですね……これは、その……」

 

 ……やる、しかないか。デメリットが多い賭けだから本当はやりたくないんだけどなぁ。

 

「はぁ……テメェらこそ……なめてんのか、ゴラ!!」

 

 俺は全力で自分のコンプレックスである目付きを生かし、不良二人を睨み付ける。

 

「俺の目の前で下らねぇことしてんじゃねぇぞ。締めんぞ、あぁ?」

 

「「………っ!?」」

 

 これは見かけ倒しのガン飛ばしだ。内心怖くて仕方ない。

 

 お願いだから、退いてくれない?お願い、飴ちゃんあげるから。

 

「……ちっ」

 

「行くぞ」

 

 二人は大人しく退いていく。それに安堵した俺はその場に腰を抜かして、尻餅をつく。

 

「こ、怖かった……慣れないもんだな、こういうシチュ」

 

 決して初めてではない。何回も経験したことだ。

 

 だが、仕方ない。怖いものは怖い!

 

「あの、大丈夫?」

 

 俺が助けた女の子が心配そうな顔でこちらに手を差し出してくれた。

 

「あ、ありがとう」

 

 俺はその手を取って立ち上がる。改めて握ると柔らかいなぁとか考えたのは俺の心の奥だけの話だ。

 

「ううん。それはこっちの台詞だよ。ありがとう。助かった」

 

「気にしないでいいよ。俺が勝手にやったことだからさ」

 

 スッゴく怖かったけど。もうやりたくない。

 

「君!大丈夫かい!?」

 

 今頃になって、警察官がやってきた。しかし、君ってどういうことだ?何で少女の方しか心配の視線が向けられないの?

 

 え?まさか、このパターンって……。

 

「二人と言う話だが……まあいい。さあ、来い」

 

 警察官が俺の腕を強く握る。それはもう俺を逃がさないように強く。

 

 やはりと言うかなんと言うか、この警察官、盛大に勘違いしていた。

 

「ちょっと待って。俺はただ助けただけでね」

 

「はいはい。話は署で聞くから」

 

 警察官は警察署へ俺を連れていこうとする。俺はそれに逆らうことができず、涙目になっていた。

 

「待って!俺、ヒーロー側の人間なんですけど!!もう慣れたこととはいえ、こんな展開はもういやだぁー!!」

 

 という俺の叫びが公園全体に響き渡った。

 

 またも警察署行き。何度目になることだろうか……。何度も言うが、俺は悪いことなど一つもしていないというのに……。

 

 だが、そんな俺達を止めてくれる者がいた。

 

「ま、待ってください!その人は違うんです」

 

 俺が助けた女の子だ。大体の者は止めないでそのままいかせるが、この人は違った。

 

「私を助けてくれたんです」

 

「え?でも……こんな殺ってますって感じの目付きだよ?明らかに不良だよ」

 

「酷い……これ、生まれつきなのに……」

 

 これも慣れたこととはいえ、やっぱりへこむわぁ。

 

「人を見かけだけで判断するのはどうかと思います。兎に角、解放してください」

 

「は、はあ?まあ、君がそういうなら……」

 

 警察官はどこか納得がいかない顔で俺を解放してくれる。

 

 新鮮な展開だ。いつもなら知り合いの警察官が出てくるまでずっとお説教か取り調べだから……。

 

「その子に感謝するんだな。もうするんじゃないぞ」

 

 と俺に説法を説いた警察官はその場から去っていった。

 

 ええ!そりゃもう感謝するとも!!全力で!!

 

「ありがとうございました!!何か礼を……」

 

 俺は全力で女の子に頭を下げてお礼を言った。

 

「い、いいよ。大したことじゃないし……」

 

「いや、でもな……」

 

 助けてあげたにも関わらず、俺の目付きのせいで逃げ出したということもあったから余計に嬉しかったりする。

 

「……というか、今更だけど、俺のこと怖くないの?」

 

「気が抜けて腰を抜かしたような不良を私は怖がらないよ?」

 

「いや!あれは……仕方ないじゃんか!怖かったんだもん!すぐにでも逃げ出したかったんだもん!強そうなのは見た目だけで、俺は非力な一般人なんです!!」

 

 そりゃ、尻餅つかなかったらかっこ良かったかもしれないよ?でも、いつ喧嘩が始まるか気が気でなかったんだぞ!ガン飛ばししている間、足が震えていたし……。

 

「ぷっ。あはははは!」

 

「なっ!笑うことないだろ!」

 

 何が面白かったのか爆笑する少女。俺は急に恥ずかしくなったからか顔が熱くなる。きっと真っ赤になってることだろう。

 

「ご、ごめん。でも、見た目に反して弱気な性格だからおかしくて……!」

 

「うっ」

 

 人が気にしてることを……。

 

「さっきも言ったけど、お礼はいいよ。こちらこそ、助けてくれてありがとう」

 

「どういたしまして。もう絡まれるなよ」

 

 俺は少女と別れると妹の頼まれごとを思い出して、スーパーに急いだ。

 

 だが、俺はまたあの少女と会うことになるとは思いもしなかったのだ。

 

 それどころか、その子は有名人であり、これからも会う関係になるなんて誰も想像できなかっただろう……。

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