助け出した女の子がアイドルだった件について   作:暁月 聖人

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お気に入りが450を突破!……あれ?いつの間に?
兎に角、この小説を読んでいただきありがとうございます!


自分の友達を少しだけ贔屓目で見てしまうのはきっと当たり前のことだ

 紫乃から渋谷がアイドルと知らされた。

 

 これは驚愕の真実だ。てか、何で身近にアイドルがいるのか不思議でならない。

 

「アイドル、ね」

 

 パソコンでニュージェネレーションという渋谷が所属しているグループのライブを見ながら紫乃の言葉を思い出す。

 

 “どう思った?”という言葉だ。至ってシンプルだが、その言葉はとても深い意味を感じた。

 

 だが、俺の回答は当然のように決まっていた。渋谷が何が何であれ、俺の友達であることは変わらない。

 

「しかし……綺麗な歌声だよな」

 

 ダンスもさることながら、渋谷の歌声はどこか心に響くものを感じる気がする。

 

 いや、別に島村卯月や本田未央がダメとかじゃないからな。知り合いだからそう感じるだけかもだし。

 

「兄さん、夕食できたよ」

 

「わかった」

 

 紫乃に呼ばれてリビングに向かおうとする。

 

 そこで、ふとパソコンに映るアイドル姿の渋谷を見る。

 

「渋谷がアイドルか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、俺はいつものように登校する。

 

 ただ、いつもとは違うものがあった。

 

 音楽を聴きながらこっちに来たのだ。

 

「おはよう、一哉!……なに聞いてるんだ?」

 

「おはよう、健之。いや、なに。とあるアイドルの曲をな」

 

 こっちまで走ってきた健之は最初こそ首をかしげていたが、すぐに察してニヤリとする。

 

「ついに知っちゃったかぁー。ライブとか行く予定なの?」

 

「さあな。てか、渋谷がアイドルだって言うならとことん俺を信じさせろよな。紫乃が教えてくれるまでずっと学園のアイドルだって思い込んでいたんだからさ」

 

「いやー、面白そうだったから、ついな」

 

「この野郎……」

 

 健之はこういうところがあるからムカつくわぁ。

 

「おはよう、柊木君」

 

「渋谷か。おはよう。あれ?」

 

 健之がいない?

 

「もしかして、蓑原くんのこと?何かいい笑顔を浮かべて走り去っていってけど」

 

 待って。去るまでの時間って一瞬だよね?どんだけ走るの速いんだよ!!いや、確かにあいつ、陸上部並みに足が速いけど!

 

「てか、健之のこと知ってたんだな」

 

「蓑原くんは人気者だから、この学校の女子なら誰でも知ってること。誰かさんはその真反対の立ち位置にいるけど」

 

「それ、俺のことか?俺のことだよな?」

 

 嫌われものって言いたいんか!!あーそうだよ!うるせぇよ!

 

「それで、何を聞いてるの?」

 

「え?まあ、いい曲をだよ」

 

 素直にお前のソロ曲と言えないのは恥ずかしいからである。

 

「ふーん」

 

「え?なにその視線?」

 

 訝しげにこちらを見てくる渋谷。そして、俺のイヤホンを奪った。

 

「ちょっ、おまっ!?」

 

「どれどれ……え?」

 

 恥ずかしい曲でも聞いてると思っていた渋谷はなんの躊躇もなく奪ったイヤホンを耳につける。

 

 聞いていた曲が自分の歌と知った渋谷は顔を少し赤く染めてふ、ふーんと声を出す。

 

「私がアイドルって知ったの?」

 

「妹に教えてもらった……」

 

 何か自分で気づけなかったって悲しいよなぁ。

 

「そうなんだ。でも、何で私のソロ曲を聞いてたの?」

 

 ひたすらソロ曲をリピートしていることに気づいた渋谷がそんなこと聞いてくる。

 

 俺はあーと渋谷から視線をそらした。

 

「……いや、何でもいいじゃん」

 

 そして、誤魔化した。あまりにも恥ずかしいんだから仕方ない。

 

「へぇー。すごく気になるじゃん」

 

 これはまずい。このままだととことんいじられるコースに直行だ。

 

「あ!時間がそろそろヤバい!じゃ、俺は教室に行くから!!」

 

「またお昼に聞かせてねぇー!」

 

 渋谷から強引にイヤホンを奪い返して教室へ走って行った。

 

 後ろからいじり悪魔の声が聞こえたが気にしたら負けと俺は教室まで全力疾走したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼休み時間、いつものように昼をとっていた。

 

 いや、違った。

 

「それで、何で私のソロ曲を聞いてたの?」

 

 渋谷が今日も俺と食事をとっており、俺の方へ接近してきていた。

 

 てか、近い近い!!あ、いい匂いが……ってそうじゃなくてな!!

 

「え?もしかして、匂いを嗅いでる?柊木君って匂いフェチの変態?」

 

「断じて違うからな!!」

 

 嗅いでいたけども!そんな変態属性はないわ!!

 

「そうだった。匂いフェチだったって言う事実は置いておいて」

 

「違うって言ってるじゃんか!!」

 

「で、何で私のソロ曲を聞いてたの?」

 

 結局そこに戻るんかい!

 

「えっと……それは……」

 

「うん」

 

 待って。真っ直ぐこっち見ないで……!

 

「う……」

 

「う?」

 

「歌声が……綺麗だった……から……」

 

 俺の羞恥の思いを何とか押さえ込んで絞り出すように声を出した。

 

「え……?」

 

 俺の予想外の言葉に渋谷は完全に放心してしまっていた。

 

「お、おーい。渋谷?渋谷さーん?」

 

 声をかけても反応しない渋谷。漸くはっと正気に戻った渋谷の顔は急に赤くなった。

 

「そ、そうなんだ……私の、歌声が……」

 

「熱でもあるんか?顔が赤いが……いや、そうか。照れてうひゃひゃひゃ!!?」 

 

「……私をいじろうなんて……生意気な」

 

 ちょっ!?脇腹くすぐらないで!!

 

「や、やめ……あははは!!」

 

「止めない……私をいじった罰を思い知れ」

 

「あひゃー!!!」

 

 いじったって……そんなことしてないんだけども!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰り道、渋谷はアイドルの仕事があるらしく、一緒に帰れないらしい。

 

 放課後、ラインでそう連絡があった。内心寂しく思ったのは彼女には内緒である。

 

「ん?携帯が……」

 

 携帯に着信音がなって、すぐに取り出す。

 

 電話が来てるらしい。相手は……林道おじさん?

 

『おう!一哉!!元気してっか!』

 

「うん。まあ、それなりに……。どうしたの?」

 

『実はそっちに今来てるんだよ』

 

「そうなの?旅行か何か?」

 

『いや、仕事だ。喫茶店を開くんだ!』

 

 なるほど。おじさんって、コーヒー入れるのうまいし、ケーキ作りもうまいもんな。

 

 てか、今までサラリーマンしてたのが不思議でならなかったんだ。流れに流れてそうなったって言ってたけど……。

 

「喫茶店を開くことになったんだな。おめでとう」

 

『あんがとな。それでよ。すぐに従業員を押さえられないだろうから、手伝いが必要でな』

 

 そりゃ、そうだな。

 

『一哉、手伝いに来てくれ。ウェイターとして!!』

 

「えぇー!?」

 

 俺が!?いや、ウェイターは無理だろ。この目付きじゃみんな怖がるって……。

 

『目付きなんて気にするな。秘密兵器があるからなぁ』

 

 何だよ、秘密兵器って……。

 

 でも、ものすごく好都合だ。バイトどうするかかなり悩んでたし。

 

 先月の土日休みくらいに短期バイトが終わっちゃったし……財布の中は閑古鳥が鳴いてるし……。

 

「……バイト先決めてなかったし……いいよ」

 

『本当か!?じゃ、メールか何かで喫茶店の場所教えておくから』

 

「わかった」

 

 ……悩んでいたバイト先がことも他あっさりと決まった。

 

 人生って……もしかして、意外と簡単なのかなぁ?……そんなわけないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま……ん?」

 

 家に帰ると、紫乃の靴とそれとは別に靴が置いてあった。紫乃の友達が来てるんだろ。

 

「誰か来て……俺、出掛けてくるわ」

 

「何でボクを見た瞬間に出掛けようとするんですか!?」

 

 んだよ、幸子かよぉ。また、面倒なやつが来たなぁ。

 

「兄さん、お帰りなさい」

 

「ただいま。それで、何で幸子がいるのんだ?遊びに来たのか?」

 

「そうですよ。フッフーン。お兄さんの、女友達について話していたのです」

 

 そのどや顔止めろ。腹立つから。

 

「渋谷のことねぇ。まさかとは思うけど、ショッピングモールのやつ、紫乃と一緒につけてないよな?」

 

「つ、ツケテナイデスヨ」

 

 視線をそらして、冷や汗をかいてる時点で肯定してるようなものだぞ。幸子は俺並みに分かりやすいな。それと、俺並みにからかわれやすい。

 

「紫乃、幸子とつけてたんだよな」

 

「そうだよ」

 

「何でいっちゃうんですか!?」

 

「だって、隠しても仕方ない」

 

 ズズズとお茶をすすって答える紫乃。それには俺も同意だ。

 

「あ、そうだ。紫乃、俺、おじさんの喫茶店で働くことになったから」

 

「え?おじさんって林道おじさん?でも……」

 

「サラリーマン止めて、喫茶店をこっちで開くんだと」

 

「どこで開くんですか?可愛いボクが訪れてあげます!」

 

「あー、うん。可愛い幸子が来てくれるなんてうれしいなー」

 

「兄さん、ボー読みは流石に酷いと思う」

 

 いや、だってな……。

 

「担当は?」

 

「……ウェイター」

 

「えぇー!?大丈夫何ですか?入って早々に逃げ出しませんか?」

 

「うっ」

 

 それが容易に想像できるから言うなよ……。

 

「兄さん、最低でも二人は毎日来るから大丈夫」

 

「ありがたいが、無理に来る必要はないぞ。きっと、何とかなるさ」

 

 ……多分ね。うん。

 

「話は変わりますけど、お兄さん。凛さんとはどうなんですか?」

 

「……何で名前呼びなのかは放っておくとして、何を期待してるか知らんが、俺と渋谷は友達でしかないぞ」

 

「つまらないですよ。もっとないんですか?」

 

「兄さん、朴念仁っぽいから期待しても無駄」

 

「……かもですね」

 

「何?俺がラノベ主人公みたいな鈍感っていいたいわけ?」

 

 そりゃないだろ。俺だって好意にはある程度感じ取れるはずだし。

 

「お兄さんが感じ取れるのは……悪意、ですもんね!」

 

「うまい。座布団一枚」

 

「幸子、お前なぁ!!」

 

「いたたた!!暴力反対ですぅ!!」

 

 俺はどやっ!とした顔で言う幸子に腹が立ってヘッドロックを決めるのだった。




バイトどうしようか悩んだ結果、喫茶店になりました。
今後どうなるか期待してください!
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