助け出した女の子がアイドルだった件について   作:暁月 聖人

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昨日俺が助けた少女が花屋ですぐ再会という偶然ってよくあること……だよね?

 珍しく警察署行きにならなかった日の翌日。俺は妹に花屋に注文したものを取ってきて欲しいと頼まれた。

 

 本来は妹が行くべきだし、目付きの悪い俺が花屋に行くなんて最早地獄絵図にしかならないと思うのだが、妹は部活があるらしく、代わりに俺が行くことになった。

 

 俺も欲しい漫画の発売日だし、別にいいんだけどね。

 

「何とか買えたよ……」

 

 残り一冊とか危なかった……。意外と人気あるよな、fate。

 

「花屋ってのは……ここか」

 

 俺は妹からもらった地図をもとに花屋に訪れた。

 

「すみませーん!注文した柊木のものなんですけどー!」

 

「はい。少し待ってください」

 

 花屋の奥から声が聞こえてきて、声が聞こえてきた通り待つことにした。

 

 しかし、最近聞いた声……な気がする。

 

「何あれ?」

 

「怖いわ。いやねぇ、不良なんて……花屋になんのようかしら?」

 

 周りから聞こえるヒソヒソに俺は苦笑する。とりあえず、携帯取り出し始めたら即逃げよう。

 

 誤解が深まるが、警察なんて呼ばれたらお店側に迷惑が掛かるからな。

 

「お待たせしました……あ」

 

「え?」

 

 花束を持って花屋から出てきたのは昨日の少女だ。まさか、花屋で働いていたとは思わなかった。

 

「お、驚いた。まさか、こんなに早く再会するなんて……」

 

「私も。それに、花を買うなんて本当に外見には合わない……」

 

「いや、それは妹の注文だ。何でも今日は友達の誕生日らしくてな」

 

「妹がいたの?」

 

 何だ?いて悪いか?

 

「しかし、ここで働いていたんだな」

 

「というか、ここが実家」

 

「なるほど、納得した。とりあえず、お金」

 

「ありがとうございます。こちら、商品です」

 

 お金を入れた封筒を引き換えに花束をもらう。

 

「渋谷凛」

 

「え?」

 

「私の名前」

 

 突然の自己紹介に戸惑うが、少し微笑んで俺も自己紹介する。

 

「柊木一哉だ」

 

「……もしかして、本当に知らない……?ねぇ、柊木君ってテレビ見ないでしょ」

 

「……まあ、確かに滅多に見ないけど……」

 

 漫画やゲームで過ごすのが多いからな。大体テレビを使ってるのは妹の方だ。

 

「そっか……だからなのかな?」

 

 勝手に何かに納得する渋谷。渋谷の思考を読めない俺からしたら意味がわからなかった。

 

「テレビに何かあるの?」

 

「え?う、ううん。何もないよ」

 

 本当に訳がわからん……。

 

 俺は疑問を抱きつつも渋谷と世間話をし、花束をもって帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

「おかえりなさい、兄さん」

 

 綺麗なドレスを着て、俺を出迎えてくれたこの少女は俺の妹の紫乃だ。

 

 目付きが鋭い俺に対して、紫乃はおっとりとした目をしている。妹の友達に何回か言われたが、本当に血が繋がってるのだろうか?いや、実際繋がっているんだけど。

 

「ほい、花束」

 

「ん。ありがと」

 

 紫乃はのんびりとした調子で花束を受けとると靴を履く。

 

「兄さん、晩御飯、作ってあるから。チンして食べて」

 

「すまんな、本当は俺が作るところなんだけど」

 

「気にしない。私が作りたいから作ってる。それだけ」

 

 紫乃はいつもの端的な口調で答える。

 

 父親は他界して、母親は海外出張中なため、俺と紫乃の二人暮らしなのだが、晩飯は専ら紫乃がやってくれてる。

 

 申し訳ない気持ちがあるのだが、俺がおいしく食べる姿が見ていて心地いいから大丈夫とのことらしい。

 

「行ってきます」

 

「行ってらっしゃい。気を付けてな」

 

「ん」

 

 紫乃を見送ると俺は買ってきた漫画を自室で読むことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 適当にゲームや漫画で時間を過ごし、晩飯の時間になるとリビングに向かう。

 

「肉じゃがか……」

 

 俺の好みの一つである肉じゃがを作ってくれた紫乃に感謝しつつ、料理を電子レンジで温めて食事の支度をする。

 

「……久しぶりにテレビをつけてみるか」

 

 俺はテレビをつけるとちょうどアイドルがゲストのバラエティ番組がやっていた。

 

「アイドルかぁ」

 

 今テレビに映ってるのは“アスタリスク”というアイドルグループで、ヘッドフォンを首に掛けている子と猫耳をつけた子のコンビだった。

 

 ロック系と猫なりきり系って……何か真反対な組み合わせだな。

 

「俺には縁遠い存在だけどな」

 

 古今東西、このような平凡学生はアイドルと知り合うことは絶対ない。

 

 ましてや、この目付きだ。プロデューサー辺りがアイドル達を俺から避けようとするはずだ。

 

「あむ……自分で言ってて悲しくなってきたよ……」

 

 今日の肉じゃがは本の少ししょっぱい気がするぞ……。

 

「あっ、そういや、バイトどうしよ?」

 

 食費や光熱費などは母親の仕送りでどうにかしてるが、プライベートのお金は殆どない。いや、小遣いは出ているのだが、ほとんど紫乃に渡しているのだ。紫乃には内緒でだが。

 

 なので、バイトをしている俺だが、単発であることが多い。コンビニとかレストランとかはこの目付きのせいで落とされているからだ。

 

 次のバイト、どうしようかな……また、単発かな?

 

「いや、思いきって喫茶店行ってみよ」

 

 無謀なチャレンジだが、やってみる価値はあると思うのよね。

 

 ほら、最近読んだ“ブレ○ド・S”なんて、俺みたいに目付きの悪い女子高生が喫茶店に入れたんだから、俺もきっと……。

 

「って!漫画は漫画で、現実は現実だろ!?」

 

 少し考えたらわかることじゃん。

 

 食べ終わってからもバイトのことで悩む。本当にどうしようかな?

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