助け出した女の子がアイドルだった件について   作:暁月 聖人

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いくら可愛い子でも同じ学校に通ってることに気づかないもんなんだな

 さて、月曜日だ。面倒な一週間の始まりが来た。

 

 俺は目覚ましで起きるとカーテンを開けて、日の光を浴びる。

 

「んー!いい朝だ」

 

 紫乃を起こしてくるか。

 

 紫乃はのんびりとした性格にあって朝に弱い。

 

 今もぐっすりと眠っていることであろう。

 

 紫乃の部屋の前に来るとノックをする。返事はなし。寝てるな。

 

「紫乃ー!起きろー!」

 

「ふぁーい。後、2時間……」

 

「遅刻するぞ……」

 

 ドア越しで声かけて起こすが、この調子じゃあ二度寝して遅刻するパターンに入るな。

 

 俺は部屋に入ると早速二度寝してる紫乃のところに向かう。

 

「紫乃さーん。起きてくれー」

 

 紫乃を揺すって起こす。しかし、びくともしない。

 

「駄目、兄さん。そこは……むにゃむにゃ」

 

「どんな夢見てんだこいつは……」

 

「そこは……あぅん」

 

「本当にどんな夢見てんの!?」

 

 まさか、起きてんじゃないだろうな?

 

「起きろ!てか、変な夢見てんじゃねぇ!!」

 

「むにゃ?あ、にいひゃん……」

 

 あ、にいひゃんじゃないから……。

 

「……おはよう。ふわあ。何か、兄さんにマッサージしてもらってる夢見てた」

 

 いや、そんなことをしてるような声をあげてなかったんだけども!?

 

「兄さんが私に……胸の、マッサージ」

 

「頬を赤くして言うな!!」

 

 ポッと頬を赤らめて呟く紫乃に俺は強くツッコミを入れる。

 

 紫乃はなんという夢を見てるんだ。まさか、俺にそんなことをさせたいとか?

 

 俺は紫乃の中学生なのに豊かな胸を見て、ゴクッと唾を飲む。が、すぐに理性を働かせて、欲求を押さえる。

 

 妹相手に何を考えてるんだ?バカかよ、俺は。

 

「……すぐに支度しろ。例のごとく朝飯作るから食べて出掛けろよ」

 

「うん……」

 

 朝飯とは言ったが、トーストと目玉焼や添えた程度のトマトという簡素なものだけどね。

 

 晩飯は紫乃だが、朝が弱い紫乃のために俺が朝飯を作るようにしている。料理は得意な方ではないため、紫乃のように凝ったものは作れないが。

 

「弁当持ったし、支度もすんだ。行くか。行ってきます」

 

「いってらっひゃい、にいひゃん」

 

 支度を済ませると紫乃に向けて挨拶すると紫乃は口に含みながら返してくれる。しかし、行儀が悪いので注意することにする。

 

「紫乃、まず飲み込んでから喋ろうな」

 

「んぐんぐんむ。行ってらっしゃい、兄さん」

 

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 学校につくと俺は早々に浮いていた。

 

 周りからは怖がられ、避けられる。

 

「慣れてますけどね。うん、悲しくないよ」

 

 この目付きの悪さがいつものように俺を不良と勘違いさせていた。

 

「よっ!今日も怖がられてるな」

 

 少し沈んだ気持ちでいると爽やか系のイケメンが俺に声かけて来た。

 

 こいつは俺の見た目のことなんて一切気にしない唯一の友達、蓑原健之だ。

 

 健之は俺とは違って友達たくさん、女子にモテモテというリア充の鑑である。正に、俺とは正反対にいる世界の住人だ。

 

「健之、お前だけだよ。俺のこと怖がらずに声をかけてくれるの」

 

「お前の性格については中学の頃から知ってるからな。警察のお世話になることが多い困ったやつだけど」

 

 こいつはいつも一言多い!

 

「あ、女の子が待ってるから先行ってるな」

 

 そして、女たらしだ。毎週違う女の子とデートしてるらしい。本当、リア充の鑑なんだよ。男の敵なんだよ。

 

 一部の男子なんかはあまりの憎さに同盟を組んでるって話がある。本当かどうかは定かではないがな。

 

「俺も行かないとな」

 

 教室へ急ぐため、人目を気にしつつ足を急がせた。

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 私は学校につくととある少年を見て驚いた。

 

 その少年は周りから避けられ、逃げるように足を急がしていた。

 

「……でも、あの背中……」

 

 一昨日、私を不良から助けてくれた人……?

 

「怖いねぇ、何でうちに不良がいるんだろね?」

 

「私も知りたいよぉ」

 

 きっと遠目であの少年を見ていた女子生徒達だ。怖がりながら、口々にあの少年のことを言っていた。

 

 私を助けてくれた少年も警察官に不良に間違えられて捕まったのを思い出して、私はまさかと思い始める。

 

「……柊木君、なのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 授業中、窓際にいる俺は何となく外を見ていた。外は今朝と違って太陽が雲に隠れつつある。

 

「少し曇ってるな……雨降らないといいな」

 

 いっておくが、とら○ラの主人公みたいに目付きが悪いが成績が優秀ってわけじゃないし、頭が良い訳じゃないからな?

 

 補習を受けるほどではないが、一部の教科は赤点ギリギリだ。英語なんて特にな。

 

 数学とか英語とか何の役に立つってんだよ。絶対使わないって。歴史に至っては知ったところで何だという感じだ。

 

「そういえば、渋谷は今頃何してるかな?」

 

 思い出すのはつい最近不良から助け出した少女である。

 

 歳は俺に近かったし、きっと俺みたいに授業を受けてるんだろうか?受けてるとして、真面目に受けてそう。

 

 ほら、なんというかそんな雰囲気ありそうじゃん、渋谷って。やることは真面目にやります的な?

 

「───という感じで解くんだ。では、この問題を……柊木、解いてみろ」

 

「…………え?」

 

 数学の先生から指名されてしまった。やべっ。俺、この問題わかんねぇんだけども。というか、授業自体聞いてない。

 

「どうした、柊木?」

 

「え、えっと……」

 

 誰か!俺を助けて!

 

 そういう視線を周りに掛けてみるが、俺の目付きが“なに見てやがる!”みたいに取らせたみたいで、周りは俺から視線をそらした。

 

 もうやだ、この目付き。ろくなことになりゃしない。

 

「柊木、授業を聞いていればわかる問題だぞ」

 

 だろうね。でも、聞いてなかったしな……。

 

「聞いてませんでした……」

 

 俺は正直に白状した。そして、廊下に立たされるのだった。

 

 大体の先生は俺の目付きによって怖がることは殆どない。ありがたいが、こういうときは怖がってほしかった。その方が俺を指名することも怒ることもないから安心して寝れるし。

 

 授業中は眠ってはいけない?でも、頭が悪いやつにとっては先生の言葉はもはやドラ○エのラ○ホーである。わかる人にはわかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、曇ってて天気が怪しいとは思っていたが、本降りである。

 

 雨が降るとは思ってなかったから傘なんて持ってきてない。折り畳みもないから、帰るに帰れない。

 

「ついてねぇ……」

 

 天気予報じゃ、雨は降らないって言ってたんだがな。

 

 最近の天気予報は当てにならない。もう信じないぞ。(とか言いながら天気予報を見て今日の天気を判断するんだが)

 

「くそ……傘が欲しい」

 

 俺は校舎から出ると憎々しげに雨空を見上げる。止むまで雨宿りか、濡れるのを覚悟して帰るか……。

 

「そんな怖い顔してどうしたの?」

 

「え?」

 

 後ろから声をかけられて振り返るとそこには傘を持った渋谷の姿があった。

 

「渋谷!?」

 

 え!?何で渋谷がここに!?

 

「みんな、怖がってるよ?」

 

「……本当だな」

 

 周りが怯えた目でこちらを見ていた。そんなに怖かったのだろうか?

 

「何か、親の仇を見る目してた」

 

「待て、それはおかしい。俺はそこまで強く空を睨んでないぞ」

 

 精々止んでくれよと思ったくらいでな。目付きか?またこの目付きのせいか!?

 

「傘、ないの?」

 

 俺が自分のコンプレックスを憎んでいると渋谷がそんなことを言ってきた。

 

 俺はあーと声を出すとどこか遠くを見るように渋谷から視線をそらして言う。

 

「雨が降るなんて思ってなかったからな。あーあ、風邪ひくの覚悟で帰るかな。あはは……」

 

 健之は女の子の傘に入れてもらって帰ってた。周りなんかは普通に傘を共有して使ってる。俺と違って、友達がいるからできる所業だ。

 

 俺は健之を除けば友達なんていないから傘に入れてくれる人がいない。泣ける……。

 

「入る?」

 

「入るって?」

 

「私の傘の中、入る?」

 

「…………ごめん。もう一回いってくれる?」

 

 渋谷は持っている傘を俺に見せるように上げて言った。

 

「私の傘の中に入るって言ったの」

 

「…………へ?」

 

 なん……だと……?

 

 

 

 

 

 

 

 二人で傘をさしながら無言で歩く。

 

 俺は渋谷の傘に入って渋谷の家まで向かい、そこで傘を借りて帰ることになった。

 

 ……待て。これはどういう状況だ?何で俺は渋谷と二人きりになってるの?

 

 というか、これって相合い傘じゃないか?って、意識するな!意識したら羞恥心が……!

 

「同じ学校だったんだね」

 

「え?あ、ああ」

 

 一人恥ずかしがっているところに渋谷が話しかけてきたので、つい反射的に生返事してしまった。

 

「えっと……渋谷は何年だ?」

 

「1年。柊木君は……同じ学年だよね?」

 

「よくご存じで……」

 

 大方クラスメイト辺りに俺のことを聞いたのだろうな。俺って有名だから。マイナス方面でだけど。

 

「柊木君、色々と話が出来てるよ。“睨みだけで人を気絶させた”とか、“不良集団相手に喧嘩を起こした”とか、“警察のブラックリストに登録されてる”とか」

 

「…………」

 

 心当たりがあるから何も反論できない……。

 

 なんと言えば不良だと誤解せずに済む?とりあえず、誤魔化すしかないか。

 

「し、渋谷。俺は……その、な?」

 

「分かってるよ」

 

「え?」

 

「柊木君って優しいから、みんなが言うように悪い人じゃないのは分かるよ。勇気を出して私を助けてくれたし」

 

 渋谷に褒められて俺は頬を掻いて視線をそらす。

 

「あ。照れてる?」

 

「うるせ!て、照れてないっての!」

 

「照れてる顔、可愛いよ」

 

「可愛い言うな!」

 

 渋谷がニヤニヤと笑いながら俺をからかう。俺、弄ばれてる……?

 

「柊木君ってからかい甲斐があるよね」

 

 え?なに?渋谷ってSっ気があるの?スゴい意外なんだけども。

 

「そういえば、これって相合い傘だよね?」

 

「うっ!?」

 

 折角気にしないようにしてたのに……!

 

「ふふっ。顔真っ赤」

 

「し、仕方ないだろ!お、女の子と相合い傘なんて……初めてだし」

 

「また照れてる」

 

「照れてねぇ。絶対照れてねぇ」

 

 と会話していると渋谷の家である花屋についた。

 

 俺達は傘を閉じると早急に家の屋根の下に避難する。そして、渋谷は俺に持っていた傘を渡した。

 

「傘はこれを使えば良いよ。それと、別に返さなくて良いから」

 

「いいのか?」

 

「いいよ。安いビニール傘だし」

 

「ありがとな、渋谷」

 

 俺は渋谷にお礼を言って傘を開ける。

 

「あ、待って」

 

「ん?」

 

 帰ろうとすると、携帯を取り出した渋谷が俺を呼び止めた。

 

「LINE交換して」

 

「えーっと、QRでいい?」

 

「大丈夫だよ」

 

 LINE交換を済ますと俺は別れの挨拶をして家に帰った。

 

 家に帰る途中、渋谷からよろしくのキャラクターのスタンプが押されたので、俺は微笑みながらスタンプで返した。

 

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