私たちの「舞台」は始まったばかり。~in University~   作:かもにゃんこ

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さて、必要になった模造刀も手に入れ、また今回は演劇回となります(^^)/


「最初は思ってるだけ、そう演じようとするだけで」

「おお、なんか凄い・・・」

 

「さすがと言うか、ね・・・」

 

「ミユちゃんカッコいい!」

 

「あはは、ありがとう、普通にやっただけだけどね」

 

裕美子ちゃんが書いてくれた繋ぎの部分の台本の1人芝居を始めて演じた。台本自体は彼女が書いたままのを改稿なしでとりあえず演じてみた感じ。

 

「どう、かな?こんな感じで問題ないと思う?」

 

自分ではそれなりにうまく演じれたかな?とは思ったけど、見ている人の意見も参考にしないとわからない部分があるし。

 

「・・・と、言われてもね?」

 

「うーん、俺たちじゃ何もアドバイス出来ないというか・・・」

 

あー・・・、まあ、そうだよね。1人2役のお芝居を見るのも初めてだろうし、そもそも経験者の演技に対してものを言うなんてなかなか出来ないだろうし。

 

そんなことを思う私に、思いがけない言葉が飛ぶ。

 

「とりあえずミユさんが楽しければいいんじゃないの?俺たちは見ていて凄く楽しかったし」

 

「あ、そうだね!私たちにもそう言ってくれているもんね!」

 

「そうそう、私たちが何も言えない以上何もないわけだし、ミユが楽しければきっとそれはいい演技だと思うよ」

 

「だな、俺もそう思うよ」

 

数人がそう言ってくれると、残りの人たちもそれに対してみんな頷いてくれた。何か普通に嬉しい。私の演技に対して何かを言ってくれていることではなく、私が彼ら彼女らに教えていたことを、私に対してみんなが言ってくれたことが本当に嬉しく思った。

 

「みんなありがとう」

 

たった一言それだけだったけど、みんなにはきっと十分伝わったと思う。

 

「美結ちゃんもう一回やる?」

 

裕美子ちゃんはそう私に聞いたけども、私は断る。

 

「ううん、大丈夫。後は自分で詰めてくから。通しの時だけ後は見てくれたら」

 

理由はさっきの通り。私が私を指導すればいいだけだから。

 

「あ、みんなちょっとだけごめん。私と裕美子ちゃんだけ抜けるけどいい?えーと、この間あんまり出来なかった最後のシーン、練習しておいてくれれかな」

 

「わかった!大丈夫!」

 

「やっとくねー」

 

というわけで私と裕美子ちゃんは少し後ろの方へと行く。

 

「なになに~?」

 

「なになに~?じゃないよ?裕美子ちゃんが書いてくれた台本、セリフ回しとか変なとこあったから直さないと」

 

「えっ!ホントに!大丈夫かと思ったんだけど・・・」

 

何故か本人は自信満々だった模様。

 

「えーとまずはこれ、これじゃダメでしょ」

 

「え、あー、ホントだ!」

 

「後これも」

 

「うわ~!全然気がつかなかった!」

 

「私だけ分かればいいから今手書きで直しちゃうね」

 

「うん、ごめん!」

 

ちょいちょいと線を引いてセリフを直す。

 

裕美子ちゃん結局、完全には書くことは出来なかったけど、それでも私は初めてなのにここまでやってくれたことに、感謝をしなきゃと思った。

 

「裕美子ちゃん」

 

「え!まだあった?」

 

「ううん、そうじゃなくて、ありがとう。難しかったはずなのにここまで書いてくれて」

 

私が突然そんなことを口にしたものだからちょっと驚く裕美子ちゃん。

 

「へっ!?何いきなり~!」

 

「言える時に言わないと忘れちゃうじゃん?」

 

「あはは、何それ~!うん、どういたしまして!力になれたら私も嬉しいよ!」

 

「うん。力になってくれてたよ。とりあえずみんなのところへ戻ろう」

 

私はそう言いながら彼女から振り向き、みんなの元へと戻った。なんか私も照れ臭くなってね。

 

合流した後、練習していた場面を少し指導、その後はついに殺陣の場面をやってみることに。

 

動きだけは簡単にこの間確認してはいたが、実際刀を持つと違ってくるだろう。

 

殺陣がもの珍しいこともあって、個人で台本を暗記していた人とかもぞろぞろと集まって来てみんなで見る。

 

「とりあえず2人向き合って、うん、そうそう。そしたら源は斬りかかって見て。それを平がこう受ける感じで」

 

「こうか?」

 

と言った時には斬りかかっていたため、平の体に当たる。

 

「おい!早いぞ!」

 

「うわ、ごめん!」

 

いきなり息が合わないじゃないか・・・。先が思いやられるが、やろうと決めた以上、ある程度の内容とクオリティにはしないとやらない方がましだからなあ。

 

「とりあえずその後は・・・」

 

私は自分が考えてた戦いをまず一通り説明した。そして指示通り、まずはゆっくり動きを確認してもらう。

 

「そう、そこで後ろに回って、最後は横降りで斬りかかる!」

 

「こうだな」

 

「そうそう」

 

「なんかゆっくりやればうまく出来るもんだな」

 

「だな」

 

とまあ、何はともあれなんとかなりそうな雰囲気でちょっとホッとする私。

 

「後はそのスピードで最初はやって、慣れてきたらだんだん早くすればいいと思うよ」

 

「了解!」

 

「わかりました!」

 

結局その日は授業が終わるまで2人に付きっきりで殺陣を指導。時間にして1時間近くやったため、そこそこのクオリティまでになったと思う。

 

 

× × ×

 

 

「お疲れ~!」

 

「また来週ー!」

 

授業が終わり、それぞれが解散し教室を出る中、私は1人残りみんながいなくなるの待った。

 

「・・・よし」

 

静けさの中、私は1人立ち上がり居残り稽古を始めた。

 

ぶっちゃけ言っちゃうと、別に後は台本を暗記するだけで本番に臨んでも問題はないだろう。あくまで授業だし、一応お客さんを入れて劇をするにしてもそこまでの演技はする必要はないかもしれない。

 

でもそれじゃ私が許さない。演じるからには私だって満足したい。誰よりもいい演技を見せたい。ある意味負けず嫌いな一面が私をそうさせたのだろう。

 

誰も見ていないその部屋で私は1人稽古を行う。

 

「・・・今のはここの言い方が・・・」

 

一度終わる度に自分で自分の確認。孤独ではあるけどとにかくそれの繰返し。

 

「ふぅ・・・」

 

1人稽古でも、むしろ1人の方がついつい練習に熱が入ってしまう。空調が効いているとはいえ、さすがに暑くなり少し休憩。

 

 

タオルで軽く汗を拭き、飲み物を飲む。それから誰もいないことをいいことに、カットソーの裾を上げ、手に持っていた台本でお腹をパタパタと扇ぐ。

 

「あ~、これは涼しい」

 

そう独り言を言った瞬間だった。ガラリと扉が空き、私は咄嗟のことだったのてその格好のままそちらを振り向くと。

 

「「あ・・・」」

 

何故か板倉くんがいました。

 

「ごめん!」

 

板倉くんはそう言って扉をガラッと勢いよく閉めてしまう。

 

「あっ!」

 

そう言いながら扉の方へと向かおうとしたが、焦っても良いことないなと一瞬で判断し、とりあえず冷静に状況判断する。

 

「・・・普通に考えて今のは私の不注意だよね。彼からしたら不慮の事故だし。とりあえず謝ろう」

 

そう言い聞かせ私は冷静に扉の方へと向かい、ちょっとゆっくり目に開けた。扉の向こうにはまだ少し驚いた様子の板倉くんがいた。

 

「・・・えーと、さっきのは私が一方的に悪いですね、はい、ごめんなさい」

 

苦笑いでそう彼に話す。少しテンパりながらだったけど、返事は返してくれた。

 

「あ、いや、僕もその、確認しないでいきなり開けた・・・って何で確認しなきゃいけないんだろう・・・」

 

とまあ、途中から冷静になり、おかしな事実に気が付く。そうですその通りです確認なんて必要ありません。

 

「うん、おっしゃる通りで。ぶっちゃけ私も全然気にしてないし、そもそも私が悪いのにそれはおかしいんだけど、まあそんな感じで見なかったことで手を打って下さい」

 

「う、うん、わかった」

 

とりあえず解決。

 

「っと、何でここに来たの?」

 

「あ、うん。課題やって終わったら忘れ物に気がついて」

 

「あ~、なるほどね」

 

2人で教室に入る。板倉くんの忘れ物自分の座っていた机の中にあり簡単に見つかった。

 

「あって良かったね」

 

「だね。えっと、高森さんは・・・自主、練?」

 

机の上に置いた台本を見ながらそう尋ねられる。特に否定する理由もないので頷く。

 

「うん。自分が満足する形になるまではちゃんとやらなきゃなって」

 

「・・・凄いね」

 

彼はそう一言だけ答えた。短い言葉だけど何か色々な意味が詰まっているように感じた。

 

私はその言葉に対して特に返事はしなかった。何を返そうと、それに対する否定になるからだったから。

 

誰かに褒められたくて練習するわけじゃない。人に見られてるから頑張るわけじゃない。過程でなく結果が全て。私は前からそういう性格だから。

 

少しの間が空いた後に私は「うん」とだけ1つ頷くと、再び彼が口を開く。

 

「・・・僕は前から人の目線が気になってしまうんだ」

 

「え?あ、うん」

 

あまり今までなかった、自分から話を振る板倉くんに少し驚く。

 

「人の見ているところで何かをして、それを褒められたい、みたいな」

 

「うん」

 

「そんな性格『も』変えたいって、思ってるけど・・・」

 

最後は苦笑いではあったけども、何か真剣な思いは私に伝わり、私は思い浮かんだ言葉を彼に言った。

 

「大丈夫だよ。最初は思ってるだけ、そう演じようとするだけで。そうすればきっといつか理想の自分になれると思うよ。演劇だってさ、そのキャラクターに近付けるように練習するじゃん」

 

・・・っておいおい、咄嗟に浮かんだ言葉とは言え・・・。

 

「ってごめん、私演劇脳だから。わかりにくいよね、うん」

 

苦笑いでそう言ったけども、板倉くんはと言うと。

 

「そっか・・・なるほど、うん、なんとなくわかるかも」

 

「え、今のでわかるんだ」

 

「あ、うん。なんとなくだけど、演劇を少しやってたらわかる気がしたかな」

 

「そっか。ふふふ」

 

なんかそんなことで嬉しくなった私。いきなり笑いだしたので頭に「?」が浮かぶ板倉くん。

 

「ううん!なんでもないよ。さて、私もう帰ろうかな」

 

「あ、もしかして帰るところだったのに止めちゃってた・・・?」

 

「んー、まあそうかなー」

 

私は嘘をついた。ぶっちゃけこれからまだまだ練習するつもりだったから。でもね、今からまだ練習するんだとさ、きっと板倉くんも自分もと言ってしまうだろうから。そうしたらさっき言っていた「影の努力」を否定することになるからね。

 

 




勇人が「そんな性格『も』変えたい」と言ったところで「も」を一応強調して言っているということでそう書きました。
簡単に言うと、他にも変えたい性格があるという感じで捉えていただければ問題ない、って感じですかね(*'▽')
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